四国旅客鉄道株式会社(以下「JR四国」という。)は、生産性向上やサービス水準の維持・向上を目指すために、各種の情報システム(以下「システム」という。)を構築して運用している。そして、システムを円滑かつ安定的に運用するためにシステムに係る稼働状況の監視、問合せ対応等を行う業務(以下「保守等業務」という。)について、毎年度、システムごとに随意契約により外部に委託して実施させている(以下、JR四国が保守等業務を実施させるために締結している契約を「保守等業務契約」という。)。
JR四国が定める契約事務取扱準則(平成7年財会第212号)によれば、随意契約によろうとする場合には、見積書を徴することとされている。また、契約責任者は、仕様書等の資料に基づき、基準価格を設定して基準価格書を作成することとされていて、見積金額を精査するとともに、基準価格を参考として、契約金額を定めることとされている。そして、JR四国は、基準価格は契約金額の上限額になることが原則であるとしている。
JR四国は、保守等業務契約に係る基準価格について、契約相手方から徴した見積書を基に、主に次の方法により設定している。
① 見積金額をそのまま基準価格として設定する方法
② 見積書に記載されるなどしている作業内容ごとの工数(以下「見積工数」という。)に、市販の積算参考資料を基に算出した技術者の1時間当たり単価(以下「人件費単価」という。)を乗ずるなどして基準価格を設定する方法
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、経済性等の観点から、保守等業務契約に係る基準価格の設定は適切に行われているかなどに着眼して、JR四国が令和5、6両年度に締結した保守等業務契約計49件(契約金額計2億9805万余円、基準価格計3億0373万余円)を対象として、JR四国本社において、基準価格書、仕様書、見積書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
JR四国は、保守等業務契約49件のうち24件について、基準価格の設定に当たり、見積書等により把握した見積工数に人件費単価を乗ずるなどして基準価格を設定していた。そして、当該24件のうち16件については、一定の期間ごと又は契約期間終了後に契約相手方から保守等業務の作業内容ごとの実際に要した工数(以下「実工数」という。)が確認できる書類(以下「作業報告書」という。)の提出を受けていた。
そこで、作業報告書の提出を受けていた16件について、同一年度における見積工数と実工数とを比較したところ、防災・施設指令支援システムに係る保守等業務契約(5、6両年度の計2件、基準価格は両年度とも632万余円)については、5、6両年度の見積工数がいずれも780時間となっているのに対して、実工数は5年度76.5時間、6年度71時間となっていて、実工数が見積工数を大幅に下回っていた。
また、労働時間管理システム(以下、防災・施設指令支援システムと合わせて「2システム」という。)に係る保守等業務契約(5、6両年度の計2件、基準価格は両年度とも622万余円)についても、5、6両年度の見積工数がいずれも624時間となっているのに対して、実工数は5年度217.3時間(注)、6年度84.2時間となっていて、実工数が見積工数を大幅に下回っていた。
JR四国は、2システムに係る計4件の保守等業務契約について、作業報告書により実工数を把握していたものの、システムを円滑かつ安定的に運用するためには見積工数による作業が必要であるとして、見積工数に人件費単価を乗ずるなどして基準価格を設定していた。しかし、実際には、見積工数を大幅に下回る実工数による作業でも2システムは円滑かつ安定的に運用されていることなどから、2システムの保守等業務契約について、実工数を基準価格の設定に反映させることにより、基準価格の設定をより適切なものとすることが可能であったと認められた。
そこで、2システムに係る4件の保守等業務契約のうち、基準価格の設定に当たり前年度の作業報告書により実工数を確認することが可能であった3件(防災・施設指令支援システムに係る5、6両年度の保守等業務契約2件、労働時間管理システムに係る6年度の保守等業務契約1件)について、前年度の実工数に人件費単価を乗ずるなどして基準価格を試算すると、計673万余円(5年度196万余円、6年度計477万余円)となり、当該3件の基準価格計1887万余円を約1210万円低減できたと認められた。
JR四国は、保守等業務契約49件のうち16件について、契約相手方から作業報告書の提出を受けていたが、残りの33件(基準価格計1億1909万余円)については、保守等業務が支障なく行われていれば実工数を把握する必要はないなどとして、契約相手方に作業報告書の提出を求めることなどをしておらず、実工数を把握していなかった。
そのため、当該33件の保守等業務契約のうち見積工数を把握していた8件については、実工数と見積工数とを比較することができず、また、残りの見積工数を把握していなかった25件については、実工数に人件費単価を乗ずるなどして算出した額と見積金額とを比較することができないことから、見積工数等の妥当性を検証することができない状況となっていた。
しかし、保守等業務契約に係る基準価格の設定を適切に行うためには、実工数を把握することが重要であることから、これら33件についても、原則として作業報告書の提出を求めることとするなどして実工数を把握して、見積工数等の妥当性を検証した上で検証結果を基準価格の設定に反映させる必要があったと認められた。
このように、保守等業務契約において、実工数が見積工数を大幅に下回っているのに実工数を基準価格の設定に反映させていなかった事態、及び基準価格の設定に当たり、実工数を把握しておらず、見積工数等の妥当性を検証していなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、JR四国において、保守等業務契約について、実工数を把握して見積工数等の妥当性を検証した上で、検証結果を基準価格の設定に反映させることの重要性についての認識が欠けていたことなどによると認められた。
本院の指摘に基づき、JR四国は、実工数が見積工数を大幅に下回っていた2システムのうち7年度も保守等業務契約を締結している防災・施設指令支援システムについて、実工数を反映させて同年度の保守等業務契約の基準価格を設定した上で7年4月に契約金額を変更した。また、同年8月に関係部署の契約責任者に対して事務連絡を発して、実工数を把握して見積工数等の妥当性を検証した上で、検証結果を基準価格の設定に反映させることを原則とすることにより基準価格の設定を適切なものとするよう周知する処置を講じた。