株式会社ゆうちょ銀行(以下「ゆうちょ銀行」という。)は、銀行法(昭和56年法律第59号)等に基づく預金の受入れなどの業務(以下「銀行業務」という。)を、本店、支店及び出張所(以下、これらを合わせて「直営店」という。)において行っている。
また、ゆうちょ銀行は、日本郵便株式会社(以下「日本郵便」といい、ゆうちょ銀行と合わせて「両会社」という。)と銀行代理業務等に係る委託契約を締結して、銀行業務を委託している。
そして、日本郵便は、直営店が併設されていない郵便局に、銀行代理業務等を行うための窓口を設置している(以下、直営店及び銀行代理業務等を行うための窓口が設置されている郵便局等を合わせて「店舗」という。)。
また、ゆうちょ銀行、日本郵便及び株式会社かんぽ生命保険は、日本郵政株式会社と日本郵政グループ協定(以下「グループ協定」という。)を締結しており、これによりグループ各社が相互に連携するなどして、シナジー効果を発揮する体制を構築するとしている。
ゆうちょ銀行は、銀行業務を行う日本郵便の社員等を支援するなどのために、全国50か所(注1)にパートナーセンターを設置している。パートナーセンターでは、日本郵便の社員等のうち主に銀行業務の経験者に対して、銀行業務に係る事故防止等のための研修を実施しているほか、郵便局からの問合せへの対応等を行っている。
また、日本郵便は、全国59か所(注2)に研修施設を、全国4か所(注3)に研修センターをそれぞれ設置しており、これらの施設では、主に新採用社員に対して、銀行業務を含む郵便局の業務に従事するために必要な研修を実施している(以下、研修施設及び研修センターを合わせて「郵便研修施設」といい、パートナーセンター及び郵便研修施設を合わせて「研修施設等」という。)。
ゆうちょ銀行は、銀行業務を行う窓口における入出金のデータ入力、伝票処理等の機能を有する窓口端末機を店舗に配備して運用している。また、両会社の社員に対して窓口端末機を利用した銀行業務に係る研修(以下「実機研修」という。)を実施するために、研修施設等にも窓口端末機を配備している。
ゆうちょ銀行は、平成22年に調達した窓口端末機(以下「旧型端末」という。)を更改するために、令和2年7月に、窓口端末機の製造請負、設置、保守等に係る契約を締結している(以下、2年7月の契約により調達した窓口端末機を「新型端末」という。)。ゆうちょ銀行は、新型端末の調達に当たり、新型端末の店舗への配備台数について、ネットバンキングの普及等の影響で窓口端末機による取扱件数(以下「取扱件数」という。)が減少している実態を踏まえた台数とする一方、研修施設等への配備台数については、相当量の実機研修を新たに実施する必要が生ずることも想定して、旧型端末の配備台数とほぼ同じ645台とするなどして、5年1月から6年9月までの間に順次、計35,337台の新型端末を配備するなどしている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
窓口端末機は、銀行業務を実施するために必要なものであり、使用状況等を十分に踏まえて配備することにより、各窓口端末機が有効に活用されるようにすることが重要である。
そこで、本院は、効率性、有効性等の観点から、新型端末は研修施設等に効率的に配備され、有効に活用されているかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、研修施設等に配備された新型端末645台(6年10月末の帳簿価額3億4149万余円)を対象として、ゆうちょ銀行本社において、新型端末の配備等の考え方について説明を聴取するとともに、13エリア本部(注4)管内の42パートナーセンター並びに日本郵便本社及び4研修センターにおいて、新型端末の使用状況や実機研修の実施状況を確認するなどして会計実地検査を行った。また、両会社本社から、全国の各店舗における新型端末の使用状況及び各研修施設等における実機研修の実施状況に関する資料の提出を受けて、その内容を確認するなどして検査した。
(検査の結果)
研修施設等における新型端末の配備状況についてみると、新型端末が配備されている研修施設等は、47都道府県に所在する計77施設となっており、配備台数は研修施設等ごとに異なっていた。また、47都道府県のうち27都道府県(注5)においては、同一都道府県内のパートナーセンターと郵便研修施設の両方に新型端末が配備されており、かつ、パートナーセンターと郵便研修施設とが比較的近くに所在していた。
そして、27都道府県のパートナーセンター及び郵便研修施設計54施設における実機研修の年間平均実施日数をみたところ、4年度は2.5日、5年度は4.0日と少なくなっており、また、実機研修が全く実施されなかった施設が、4年度は30施設、5年度は23施設見受けられた。
両会社に対して、実機研修の実施日数が少なくなっている理由を確認したところ、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて研修施設等における実機研修を控えたこと、各郵便局における業務中の操作訓練が一般的となり、研修施設等における実機研修の必要性が低くなったことなどによるとのことであった。
一方、各店舗における新型端末の使用状況についてみると、取扱件数の多い店舗も見受けられる状況であり、一部の郵便局からは、取扱件数の増加による混雑時の対応等のために、より多くの台数を配備してほしいとの要望が日本郵便の支社等に対してなされている状況となっていた。
そこで、27都道府県において、実機研修の実施場所をパートナーセンター又は郵便研修施設に集約することに支障はないかを両会社から聴取するなどして確認した。その結果、27都道府県のうち19府県(注6)においては、パートナーセンターに配備されている新型端末の台数で郵便研修施設の研修生を受け入れることとすれば、実機研修の実施場所をパートナーセンターに集約して、郵便研修施設に配備されていた新型端末を店舗に移設しても特段の支障はないと認められた。
上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
愛媛県内のパートナーセンター及び郵便研修施設は、同県松山市内の同一建物の同一フロア内に所在している。
パートナーセンターには、新型端末が6台配備されており、実機研修の年間実施日数は、令和4年度は8日、5年度は7日と少なくなっていた。また、郵便研修施設には、新型端末が5台配備されているものの、4、5両年度とも実機研修が全く実施されていなかった。
そこで、実機研修の実施場所をパートナーセンター又は郵便研修施設に集約することに支障はないか両会社に確認したところ、実機研修の実施場所をパートナーセンターに集約して、郵便研修施設に配備されていた新型端末5台を店舗に移設しても特段の支障はないと認められた。
したがって、19府県における実機研修の実施場所をパートナーセンターに集約すれば、19府県の19郵便研修施設に配備されている新型端末計88台(6年10月末の帳簿価額4565万余円)は、今後配備し続ける必要がなく、取扱件数の多い店舗に移設することが可能であると認められた。
このように、郵便研修施設における実機研修の実施日数が少なくなっていて、新型端末が効率的に配備されず、有効に活用されていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、ゆうちょ銀行において、パートナーセンターにおける実機研修の実施状況を踏まえて、グループ協定を締結している日本郵便と連携して、郵便研修施設における実機研修の実施状況も確認した上で、研修体制の見直しや新型端末の移設について検討していなかったことなどによるものと認められた。
本院の指摘に基づき、ゆうちょ銀行は、日本郵便に対して協力を求め、両会社は、7年6月に、新型端末の有効活用等に関する文書を取り交わすなどして、次のような処置を講じた。
ア 両会社は連携して、19府県における実機研修の実施場所をパートナーセンターとするよう研修体制を見直して、19府県の19郵便研修施設に配備された新型端末88台を取扱件数が増加するなどしている郵便局に移設することとした。
イ 両会社は、研修施設等に配備されている新型端末について、今後は、郵便研修施設における新型端末の使用状況を日本郵便からゆうちょ銀行へ伝達するとともに、適宜、協議の場を設けるなどして両会社が相互に連携することにより、新型端末が有効に活用されるよう適時適切に検討を行うこととした。