• 令和6年度
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等
  • 第3節 特定検査対象に関する検査状況

第4 独立行政法人の関係会社に係る財務等の状況について


検査対象
15独立行政法人
関係会社の概要
独立行政法人が出資等の関係を通じて財務及び営業又は事業の方針を決定する機関を支配しており、かつ、業務一体性を有する会社や、財務及び営業の方針決定に対して重要な影響を与えることができるなどの会社
令和5年度末における関係会社の数
145関係会社
上記に対する独立行政法人の出資
9493億円(令和5年度末)

<構成>

1 検査の背景(1リンク参照)

(1) 独立行政法人制度(1-1リンク参照)

ア 独立行政法人の概要(1-1-aリンク参照)

イ 財務報告(1-1-bリンク参照)

ウ 不要財産の国庫納付(1-1-cリンク参照)

エ 中期目標期間又は中長期目標期間の終了に伴う積立金の国庫納付(1-1-dリンク参照)

(2) 独立行政法人の関係会社(1-2リンク参照)

ア 関係会社の定義(1-2-aリンク参照)

イ 関係会社に対する出資(1-2-bリンク参照)

ウ 関係会社株式の評価(1-2-cリンク参照)

(3) これまでの検査の実施状況(1-3リンク参照)

2 検査の観点、着眼点、対象及び方法(2リンク参照)

(1) 検査の観点及び着眼点(2-1リンク参照)

(2) 検査の対象及び方法(2-2リンク参照)

3 検査の状況(3リンク参照)

(1) 関係会社に対する出資の状況(3-1リンク参照)

ア 関係会社の数(3-1-aリンク参照)

イ 出資金の額(3-1-bリンク参照)

(2) 関係会社の財務等の状況(3-2リンク参照)

ア 損益の状況(3-2-aリンク参照)

イ 利益剰余金及び繰越欠損金の状況(3-2-bリンク参照)

ウ 配当の実施状況(3-2-cリンク参照)

エ 独立行政法人による出資金の回収等の状況(3-2-dリンク参照)

(3) 独立行政法人における配当の要請や出資金の回収に係る検討状況(3-3リンク参照)

ア 配当の要請に係る検討状況(3-3-aリンク参照)

イ 出資金の回収に係る検討状況(3-3-bリンク参照)

ウ 関係会社の財務の状況の分析(3-3-cリンク参照)

(4) 関係会社に係る情報開示の状況(3-4リンク参照)

ア 科学技術振興機構(3-4-aリンク参照)

イ エネルギー・金属鉱物資源機構(3-4-bリンク参照)

4 本院の所見(4リンク参照)

1 検査の背景

(1) 独立行政法人制度

ア 独立行政法人の概要

独立行政法人は、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体に委ねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものを効果的かつ効率的に行わせるために設立される法人である。

独立行政法人の運営の基本その他の制度の基本となる共通の事項については、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)において定められており、各独立行政法人の目的及び業務の範囲については、各法人の名称、目的、業務の範囲等に関する事項を定める法律(以下「個別法」という。)等において定められている。

イ 財務報告

通則法によれば、独立行政法人は、その業務の内容を公表することなどを通じて、その組織及び運営の状況を国民に明らかにするよう努めなければならないこととされており、業務の透明性の確保が求められている。

また、通則法によれば、独立行政法人の会計は、原則として、企業会計原則によることとされており、独立行政法人を所管する府省の省令等において、「「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」」(平成12年2月独立行政法人会計基準研究会策定。以下「会計基準」という。)を適用することとなっている。会計基準によれば、独立行政法人の会計は、独立行政法人の財政状態及び運営状況に関して、国民その他の利害関係者に対し真実な報告を提供するものでなければならないとされており、また、財務諸表によって、国民その他の利害関係者に対し必要な会計情報を明瞭に表示し、独立行政法人の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならないこととされている。

会計基準は、独立行政法人が財務報告として財務諸表を作成するに当たって準拠すべき基準として策定されたものであり、独立行政法人は他に合理的な理由がない限り、会計基準に定めるところに従わなければならないこととなっている。

ウ 不要財産の国庫納付

通則法によれば、独立行政法人は、業務の見直し、社会経済情勢の変化その他の事由により、その保有する重要な財産であって主務省令で定めるものが将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる場合には、当該財産(以下「不要財産」という。)を処分しなければならないこととされている。そして、独立行政法人は、不要財産であって、政府からの出資又は支出に係るものについては、遅滞なく、主務大臣の認可を受けて、これを国庫に納付することとされている。

エ 中期目標期間又は中長期目標期間の終了に伴う積立金の国庫納付

通則法によれば、独立行政法人は、その利益の処分及び損失の処理について、毎事業年度(以下、事業年度を「年度」という。)、損益計算において利益が生じたときは、前年度から繰り越した損失を埋めて、なお残余があるときは、その残余の額を積立金として整理しなければならないことなどとされている。そして、中期目標期間又は中長期目標期間の終了時に最終年度における積立金の整理を行った後に、当該積立金の額から次の中期目標期間又は中長期目標期間の業務の財源に充てるために主務大臣の承認を受けた額を控除してなお残余があるときは、個別法の規定に基づき、その残余の額を国庫に納付しなければならないこととなっている。

(2) 独立行政法人の関係会社

ア 関係会社の定義

独立行政法人は、業務の一環として、個別法に基づき他の法人に出資し、また、他の法人と契約を締結して業務の委託等を行い、資金を支出する場合がある。

会計基準によれば、独立行政法人は、出資等の関係を通じて財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいう。以下「意思決定機関」という。)を支配しているなどの会社や、財務及び営業の方針決定に対して重要な影響を与えることができるなどの会社について、当該会社に係る情報を特定関連会社及び関連会社(以下、これらを合わせて「関係会社」という。)に係る情報として財務諸表において明らかにしなければならないこととされている。

会計基準における関係会社の種別ごとの定義は、おおむね図表1のとおりとなっている。

図表1 関係会社の種別ごとの定義

種別 定義
特定関連会社 意思決定機関を独立行政法人に支配されており、かつ、当該独立行政法人と業務一体性を有する会社 独立行政法人が会社の議決権の過半数を所有している場合であって、かつ、当該会社が独立行政法人との業務委託契約等に基づき当該独立行政法人の個別法に規定されている業務を実施している場合
関連会社 ①意思決定機関を独立行政法人に支配されている会社であって、当該独立行政法人と業務一体性を有しない会社
②独立行政法人及び当該独立行政法人に意思決定機関を支配されている会社が、それぞれ単独で又は共同で、出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、特定関連会社以外の会社の財務及び営業の方針決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該会社 注(1)
独立行政法人が単独で又は独立行政法人及び当該独立行政法人の特定関連会社が共同で、特定関連会社以外の会社の議決権の100分の20以上を実質的に所有している場合 注(2)
  • 注(1) ①又は②のいずれかに該当する会社が関連会社である。
  • 注(2) 「定義」欄の②に該当する会社の例である。

イ 関係会社に対する出資

独立行政法人が関係会社に対して出資する目的は、おおむね、①関係会社が行う事業に必要な資金を供給するため、又は②自らの業務の一部を関係会社に代行させるのに必要な資金を供給するための二つに分けられる。このうち①の例として、中心市街地の活性化や石油の探鉱等の特定の事業を遂行するために設立された会社に対する出資や、研究開発法人(注1)に指定された独立行政法人による研究開発法人発ベンチャー等(注2)に対する出資がある。また、②の例として、独立行政法人が所有する建物の管理運営に係る業務を行っている会社に対する出資がある。

会社法(平成17年法律第86号)によれば、株主は、剰余金の配当を受ける権利等を有するとされており、独立行政法人は、関係会社が利益を上げた場合に、出資者(株主)として出資割合に応じて配当を受けている。また、出資目的が果たされたと認められた場合は、関係会社に対して株式の取得を要請するなどして、自らが出資した出資金を回収している。

多くの独立行政法人は、国の一般会計や特別会計からの出資金を主な財源として、関係会社に対する出資を行っている。また、財政投融資特別会計(投資勘定)からの出資金については、産業投資(注3)の性質上、政策的必要性に加えて、一定の収益性も期待されている。

(注1)
研究開発法人  「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」(平成20年法律第63号)に基づき、科学技術に関する研究開発等の業務を行う独立行政法人のうち、実用化等を図ることが特に必要な研究開発の成果を保有するものとして指定を受けた法人
(注2)
研究開発法人発ベンチャー等  研究開発法人の研究開発の成果を活用する事業者等。研究開発法人は、研究開発の成果の実用化及びこれによるイノベーションの創出を図るために、個別法の定めるところにより、研究開発法人発ベンチャー等に対する出資並びに人的及び技術的援助の業務を行うことができるとされている。
(注3)
産業投資  産業の開発及び貿易の振興のために国の財政資金をもって行う出資及び貸付け。政策的必要性が高く、リターンが期待できるものの、リスクが高く民間だけでは十分に資金が供給されない分野に資金を供給する機関に対して、出資及び貸付けが行われる。

ウ 関係会社株式の評価

会計基準によれば、独立行政法人は、有価証券について、各独立行政法人が有価証券を保有する目的による区分ごとの評価額をもって貸借対照表価額とすることとされている。

そして、関係会社の株式(以下「関係会社株式」という。)については、元年度決算までは、関係会社の財務諸表を基礎とした純資産額に持分割合を乗じて算定した額(以下「出資先持分額」という。)が取得原価を下回る場合には出資先持分額、上回る場合には取得原価をもって貸借対照表価額とすることとされていた。

一方、令和2年3月の会計基準の改訂により、関係会社株式の評価方法が一部変更され、2年度決算からは、出資先持分額が取得原価を上回る場合と下回る場合のいずれの場合においても、出資先持分額をもって貸借対照表価額とすることとされた。

(3) これまでの検査の実施状況

本院は、独立行政法人の関係会社に係る財務等の状況について、これまでにも検査を実施してその結果を検査報告に掲記するなどしており、その主なものは図表2のとおりである。

図表2 独立行政法人の関係会社に係る財務等の状況について本院が検査した結果を掲記するなどしたもの

報告名 掲記区分等 件名 所見等
会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告(平成26年9月) 国会及び内閣に対する報告 「独立行政法人における関連法人の状況について」 独立行政法人からの出資金により実施される関係会社の事業が順調に実施され、利益剰余金が発生していて、独立行政法人が関係会社株式を全部又は一部処分したとしても同事業を継続していくことが可能となっているなどの場合、出資目的の達成状況を踏まえて、関係会社株式を処分することなどにより出資金の回収を図ることを十分に検討して適切な措置を執ることなどに十分留意すること
平成25年度決算検査報告 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項 「保有している株式について、出資金を回収するかどうかを判断するための具体的な判断基準を定めて、出資金の回収について検討を行い、適切な処置を講ずるよう改善させたもの」 本院の指摘に基づき、独立行政法人農畜産業振興機構は、平成26年8月に出資金の全部又は一部を回収するかどうかを判断するための具体的な判断基準を定めた規程を制定するなどして、出資金の回収が適切に行われるようにするなどの処置を講じた。
会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告(平成30年7月) 国会及び内閣に対する報告 「石油・天然ガスの探鉱等に係るリスクマネーの供給について」 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(令和4年11月14日以降は独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)は、探鉱段階の関係会社株式の評価方法について、現在の評価方法に改善を加えるなどしてより適切なものとすることを検討することなどに留意すること
平成30年度決算検査報告 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項 「団地管理業務等を実施する子会社が保有している金融資産について、経営を継続していくために必要な金融資産の規模を検討させ、余裕資金に相当する額を納付させるよう改善させたもの」 本院の指摘に基づき、独立行政法人都市再生機構は、元年8月に、特定関連会社である株式会社URコミュニティに対して必要資金の規模を検討させ、余裕資金に相当する19億5021万余円を同機構に対して納付させることとする処置を講じた。

2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

独立行政法人は、個別法に基づき、自らの事務及び事業の実施に必要があるとして、関係会社に対する出資を行っている。

一方、近年の我が国の厳しい財政状況下において、独立行政法人については、事業の見直しや効率化とともに、保有資産の規模の見直しや不要な資産の国庫納付等の検討が求められている。このため、関係会社に対する出資金の主な財源が国費であることなどを踏まえて、独立行政法人は、出資者として配当を受けることや出資金の回収についての適時適切な検討を行う必要がある。

また、独立行政法人は、会計基準に基づき、国民その他の利害関係者に対し必要な会計情報を明瞭に表示することが求められている。

そこで、本院は、正確性、合規性、効率性、有効性及び国民への説明責任の向上(注4)等の観点から、関係会社に対する出資の状況及び関係会社の財務等の状況はどのようになっているか、独立行政法人は出資者として関係会社から適切な配当を受けているか、出資目的が達成されているなどの場合に出資金の回収は適時適切に行われているか、関係会社の財務等の情報は適切に開示されているかなどに着眼して検査を実施した。

(注4)
会計検査院法における「その他会計検査上必要な観点」に位置付けられるものである。

(2) 検査の対象及び方法

元年度末から5年度末までの間に関係会社を有していた15独立行政法人(注5)を対象として、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき各独立行政法人から提出された財務諸表等のほか、関係会社に対する出資等の状況についての調書等の提出を求め、これらを在庁して分析するとともに、当該15独立行政法人のうち5年度末における関係会社に対する出資金の額が多額であるなどの10独立行政法人(注6)において会計実地検査を行った。

(注5)
15独立行政法人  国立研究開発法人情報通信研究機構、独立行政法人国際協力機構、国立研究開発法人物質・材料研究機構、国立研究開発法人防災科学技術研究所、国立研究開発法人科学技術振興機構、国立研究開発法人理化学研究所、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、独立行政法人農畜産業振興機構、国立研究開発法人産業技術総合研究所、独立行政法人情報処理推進機構、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構、独立行政法人中小企業基盤整備機構、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構、独立行政法人都市再生機構
(注6)
10独立行政法人  独立行政法人国際協力機構、国立研究開発法人物質・材料研究機構、国立研究開発法人防災科学技術研究所、国立研究開発法人科学技術振興機構、国立研究開発法人理化学研究所、独立行政法人農畜産業振興機構、独立行政法人情報処理推進機構、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構、独立行政法人中小企業基盤整備機構、独立行政法人都市再生機構

(以下、各法人の名称中、「独立行政法人」及び「国立研究開発法人」は記載を省略する。)

3 検査の状況

(1) 関係会社に対する出資の状況

ア 関係会社の数

5年度末における関係会社の数は、14独立行政法人の計145社(特定関連会社6社及び関連会社139社(注7))となっていた。また、元年度末から5年度末までの間の推移は、図表3のとおりとなっており、関係会社を有する独立行政法人の数が元年度末の10独立行政法人から5年度末の14独立行政法人と4独立行政法人増加していた一方、関係会社の数は元年度末の155社から5年度末の145社と10社減少していた。

これらの主な要因は、新規の出資により関係会社となる研究開発法人発ベンチャー等を有することになった独立行政法人が4独立行政法人あったこと、経営不振等により清算を行った関係会社が21社あったことであった。

(注7)
独立行政法人及び当該独立行政法人に意思決定機関を支配されている会社が、それぞれ単独で又は共同で、出資等の関係を通じて、特定関連会社以外の会社の財務及び営業の方針決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該会社(孫出資会社)のうち、独立行政法人が当該会社に対して配当の要請や出資金の回収を行うことが想定されないものは除いている。

図表3 関係会社の数

(単位:社、法人)
種別 (参考)
平成24年度末
令和
元年度末
2年度末 3年度末 4年度末 5年度末
元年度末と5年度末とを比較した場合の増減
関係会社 192 155 152 148 145 145 10
特定関連会社 22 10 6 6 6 6 4
関連会社 170 145 146 142 139 139 6
関係会社を有する独立行政法人 9 10 10 13 13 14 4
特定関連会社を有する独立行政法人 6 6 4 4 4 4 2
関連会社を有する独立行政法人 7 8 9 12 12 13 5
  • 注(1) 「(参考)平成24年度末」欄には、「独立行政法人における関連法人の状況について」(平成26年9月報告)に記載した平成24年度末に関係会社を有する独立行政法人に係る関係会社の数を記載している。
  • 注(2) 「関係会社を有する独立行政法人」欄は、1独立行政法人が複数の種別の関係会社を有する場合であっても1独立行政法人として集計しているため、関係会社の種別ごとの独立行政法人の数の合計とは一致しない。

イ 出資金の額

5年度末における14独立行政法人の関係会社145社に対する出資金の額(注8)は、計9493億余円となっていた。また、元年度から5年度までの各年度末の出資金の額は、図表4のとおりとなっており、出資金の額の合計は、元年度末の7320億余円から2173億余円増加した。さらに、独立行政法人ごとにみると、出資金の額が増加したのは8独立行政法人となっており、特に、エネルギー・金属鉱物資源機構については、関係会社のうち2社に対してそれぞれ1000億円前後の増資を行ったことなどから、2182億余円の増加となっていた。

(注8)
出資金の額  独立行政法人による関係会社に対する出資の累計額から、既に回収を行った額及び減損等により評価減を行った額を控除したもの

図表4 出資金の額

(単位:社、百万円)
主務省名 独立行政法人名 令和元年度末 2年度末 3年度末 4年度末 5年度末
元年度末と5年度末とを比較した場合の増減額
関係会社の数
出資金の額
関係会社の数
出資金の額
関係会社の数
出資金の額
関係会社の数
出資金の額
関係会社の数
出資金の額
総務省 情報通信研究機構 2380 2380 2380 2380 2380
外務省 国際協力機構 750,555 751,469 751,883 751,883 751,883 1,327
文部科学省 物質・材料研究機構 13 133 133 33
防災科学技術研究所 116 116 116 16
科学技術振興機構 190 190 190 190 190
理化学研究所 190 290 290 290 290 0
厚生労働省 医薬基盤・健康・栄養研究所 1268 1268 1268 1268 268
農林水産省 農業・食品産業技術総合研究機構 15 5
農畜産業振興機構 155,450 155,450 155,450 155,450 155,450
経済産業省 産業技術総合研究所 1200 200
情報処理推進機構 93,600 93,600 83,200 83,200 83,200 400
エネルギー・金属鉱物資源機構 45618,709 43714,537 39684,175 39774,170 40836,918 218,208
中小企業基盤整備機構 7043,104 6842,879 6642,218 6341,594 6141,118 1,985
国土交通省 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 1167 1167 1167 167
都市再生機構 49,790 49,790 49,790 49,790 49,790
15法人 155732,040 152828,557 148797,735 145887,137 145949,344 217,304

(2) 関係会社の財務等の状況

ア 損益の状況

5年度における関係会社143社(注9)の損益の状況をみると、10独立行政法人の85社において当期純利益を計上していた一方、9独立行政法人の58社において当期純損失を計上していた。また、元年度から5年度までの各年度の損益の状況は、図表5のとおりとなっており、各年度とも、当期純利益を計上していた関係会社の数が当期純損失を計上していた関係会社の数よりも多くなっていた。

(注9)
令和5年度末における関係会社145社のうち2社については、海外に所在しており我が国の会計に関する基準に沿った財務諸表が作成されておらず、他の関係会社と比較可能な形で財務の状況を示すことが困難であることなどから、対象から除外した。

図表5 損益の状況

(単位:社)
独立行政法人名
令和元年度 2年度 3年度 4年度 5年度
当期純利益を計上していた関係会社の数
当期純損失を計上していた関係会社の数
当期純利益を計上していた関係会社の数
当期純損失を計上していた関係会社の数
当期純利益を計上していた関係会社の数
当期純損失を計上していた関係会社の数
当期純利益を計上していた関係会社の数
当期純損失を計上していた関係会社の数
当期純利益を計上していた関係会社の数
当期純損失を計上していた関係会社の数
情報通信研究機構 2111122
国際協力機構 3333424215
物質・材料研究機構 111
防災科学技術研究所 111
科学技術振興機構 11111
理化学研究所 122211
医薬基盤・健康・栄養研究所 1111
農業・食品産業技術総合研究機構 1
農畜産業振興機構 96132132105114
産業技術総合研究所 1
情報処理推進機構 99888
エネルギー・金属鉱物資源機構 18261527162214241524
中小企業基盤整備機構 53174721452138254120
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 111
都市再生機構 44444
計(15法人) 100539555965086578558

イ 利益剰余金及び繰越欠損金の状況

5年度末における関係会社の利益剰余金及び繰越欠損金の状況をみると、9独立行政法人の81社において計6119億余円の利益剰余金を計上していた一方、10独立行政法人の62社において計5622億余円の繰越欠損金を計上していた。

このうち、利益剰余金の状況を独立行政法人ごとにみると、図表6のとおりとなっており、①エネルギー・金属鉱物資源機構(18社、計3963億余円)、②国際協力機構(3社、計1256億余円)、③都市再生機構(4社、計694億余円)の順に、関係会社の利益剰余金の額が多額となっていた。

これらの独立行政法人において関係会社の利益剰余金が多額となっていた要因を確認したところ、①エネルギー・金属鉱物資源機構については、石油の開発・生産等を実施している関係会社13社が、開発・生産段階の安定的な石油の生産等により継続的に利益を上げており、計3663億余円の利益剰余金を計上したこと、②国際協力機構については、石油化学製品の製造・販売やメタノールの製造を実施している関係会社2社が、出資した海外の合弁会社から近年多額の配当を受けるなどしており、計1250億余円の利益剰余金を計上したこと、③都市再生機構については、同機構が保有する賃貸住宅の管理業務の受託事業や同機構が実施した都市再開発事業により整備された施設等の賃貸事業を実施している関係会社2社において継続的に利益を上げており、計672億余円の利益剰余金を計上したことなどとなっていた。

また、元年度から5年度までの各年度末における利益剰余金の状況をみると、合計額が増加傾向となっていた。

図表6 利益剰余金の状況

(単位:社、百万円)
独立行政法人名
令和元年度末 2年度末 3年度末 4年度末 5年度末
利益剰余金を計上していた関係会社の数
利益剰余金の額の計
利益剰余金を計上していた関係会社の数
利益剰余金の額の計
利益剰余金を計上していた関係会社の数
利益剰余金の額の計
利益剰余金を計上していた関係会社の数
利益剰余金の額の計
利益剰余金を計上していた関係会社の数
利益剰余金の額の計
情報通信研究機構 21882227125712932325
国際協力機構 3130,0633122,5924147,7884129,6653125,613
物質・材料研究機構 10
防災科学技術研究所 10
理化学研究所 111288222823472308
農畜産業振興機構 126,879127,557128,442128,985139,653
情報処理推進機構 51,17161,28061,43661,63261,774
エネルギー・金属鉱物資源機構 16259,21817275,18716303,89216350,37218396,314
中小企業基盤整備機構 377,429387,567347,834327,797328,290
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 11751248
都市再生機構 448,921452,133456,524465,422469,434
計(11法人) 80453,88484466,63380526,40479564,69181611,964

一方、繰越欠損金の状況を独立行政法人ごとにみると、図表7のとおりとなっており、5年度末において、エネルギー・金属鉱物資源機構の関係会社21社の繰越欠損金の額が計5493億余円と多額となっており、全体額5622億余円の97.7%を占めていた。

同機構において関係会社の繰越欠損金が多額となっていた要因を確認したところ、石油の探鉱等を実施している関係会社17社が、商業生産の段階に至っていないことにより収益が得られておらず、継続的に損失を計上していて、計4865億余円の繰越欠損金を計上していたことなどとなっていた。

図表7 繰越欠損金の状況

(単位:社、百万円)
独立行政法人名
令和元年度末 2年度末 3年度末 4年度末 5年度末
繰越欠損金を計上していた関係会社の数
繰越欠損金の額の計(繰越欠損金の合計額に占める割合)
繰越欠損金を計上していた関係会社の数
繰越欠損金の額の計(繰越欠損金の合計額に占める割合)
繰越欠損金を計上していた関係会社の数
繰越欠損金の額の計(繰越欠損金の合計額に占める割合)
繰越欠損金を計上していた関係会社の数
繰越欠損金の額の計(繰越欠損金の合計額に占める割合)
繰越欠損金を計上していた関係会社の数
繰越欠損金の額の計(繰越欠損金の合計額に占める割合)
情報通信研究機構 12
(0.0%)
12
(0.0%)
国際協力機構 33,014
(0.5%)
33,494
(0.6%)
21,606
(0.3%)
22,624
(0.5%)
33,881
(0.6%)
物質・材料研究機構 117
(0.0%)
169
(0.0%)
防災科学技術研究所 10
(0.0%)
13
(0.0%)
科学技術振興機構 155
(0.0%)
178
(0.0%)
155
(0.0%)
116
(0.0%)
10
(0.0%)
医薬基盤・健康・栄養研究所 1487
(0.0%)
1485
(0.0%)
1483
(0.1%)
1471
(0.0%)
農業・食品産業技術総合研究機構 10
(0.0%)
農畜産業振興機構 3491
(0.0%)
3490
(0.0%)
3535
(0.1%)
3599
(0.1%)
2595
(0.1%)
産業技術総合研究所 1152
(0.0%)
情報処理推進機構 4970
(0.1%)
3912
(0.1%)
2851
(0.1%)
2829
(0.1%)
2824
(0.1%)
エネルギー・金属鉱物資源機構 28587,272
(97.7%)
25566,260
(97.6%)
22463,570
(97.6%)
22516,637
(97.6%)
21549,390
(97.7%)
中小企業基盤整備機構 338,793
(1.4%)
308,277
(1.4%)
327,523
(1.5%)
317,743
(1.4%)
297,348
(1.3%)
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 134
(0.0%)
計(13法人) 73601,085
(100.0%)
66579,998
(100.0%)
66474,665
(100.0%)
64528,942
(100.0%)
62562,265
(100.0%)

また、5年度末に繰越欠損金を計上していた関係会社62社のうち、国際協力機構、エネルギー・金属鉱物資源機構及び中小企業基盤整備機構の3独立行政法人に係る12社は、債務超過となっていた。

ウ 配当の実施状況

5年度決算に基づく関係会社の配当の実施状況は、5独立行政法人の20社に係る計133億余円となっており、5年度末に利益剰余金を計上していた関係会社81社の約4分の1で配当が実施されていた。また、元年度以降の各年度の決算に基づく配当の実施状況は、図表8のとおりとなっており、配当額については年度ごとに大きく増減していて、配当を実施した関係会社の数については元年度の13社から4、5両年度の20社に増加していた。

図表8 配当の実施状況

(単位:社、百万円)
独立行政法人名 令和元年度 2年度 3年度 4年度 5年度
配当を実施した関係会社の数
配当額の計
配当を実施した関係会社の数
配当額の計
配当を実施した関係会社の数
配当額の計
配当を実施した関係会社の数
配当額の計
配当を実施した関係会社の数
配当額の計
配当を実施した関係会社の数
配当額の計
情報通信研究機構 1111
国際協力機構 24,188313,84728,88924,20711,022332,154
物質・材料研究機構
防災科学技術研究所
科学技術振興機構
理化学研究所
医薬基盤・健康・栄養研究所
農業・食品産業技術総合研究機構
農畜産業振興機構
産業技術総合研究所
情報処理推進機構 2435353535325
エネルギー・金属鉱物資源機構 42,18053,35753,78779,804811,444930,574
中小企業基盤整備機構 12365154848542
鉄道建設・運輸施設整備支援機構
都市再生機構 3751490647394860490444,162
計(15法人) 137,1281818,1221913,4372014,8862013,3842566,960
  • 注(1) 年度の表示は、配当算定の基となった決算の年度であり、配当実施はその翌年度となる。
  • 注(2) 複数の年度に配当を実施した関係会社があるため、各年度の関係会社の数を合計しても計欄と一致しないものがある。

そして、情報通信研究機構、国際協力機構、情報処理推進機構、エネルギー・金属鉱物資源機構、中小企業基盤整備機構及び都市再生機構の6独立行政法人が元年度から5年度までの決算に基づく配当を受けていた。また、これらの配当は、いずれの独立行政法人においても、関係会社に出資した事業を管理する勘定の収益とされており、積立金として整理されるなどしていた。

エ 独立行政法人による出資金の回収等の状況

独立行政法人による出資金の回収等の状況をみると、図表9のとおり、元年度から5年度までの間に、6独立行政法人が関係会社29社について出資金を回収するなどしていた。そして、29社のうち25社については、自己株式の取得等により6独立行政法人が計430億余円の出資金を回収しており、残りの4社については、1独立行政法人が回収を断念して出資金の全額を損失処理していた。

上記の29社について、出資金を回収するなどした時点での出資金の額に対する回収額の割合(以下「回収率」という。)をみると、全体で54.1%となっていた。このうち、エネルギー・金属鉱物資源機構については、14社全体の回収率は51.9%となっていたが、自己株式の取得により出資金を回収した1社については回収率が114.9%(出資金の額308億余円に対して回収額354億余円)と100%を上回っていた。また、清算された関係会社21社の中には、回収を断念した結果出資金が全く回収されなかったものや、回収率が30%を下回っていたものが見受けられた。

独立行政法人名 独立行政法人が出資金を回収するなどしたもの
出資金を回収するなどした時点での出資金の額(B)
回収率(A/B)
①株式譲渡 ②自己株式の取得 ③清算 注(1) ④その他 注(2)
関係会社の数
回収額の合計(A)
関係会社の数
回収額の計
関係会社の数
回収額の計
関係会社の数
回収額の計
関係会社の数
回収額の計
情報通信研究機構
国際協力機構
物質・材料研究機構
防災科学技術研究所
科学技術振興機構
理化学研究所
医薬基盤・健康・栄養研究所 17117126826.6%
農業・食品産業技術総合研究機構
農畜産業振興機構
産業技術総合研究所
情報処理推進機構 1334133440083.7%
エネルギー・金属鉱物資源機構 135,463121,39512,0591438,91874,91551.9%
中小企業基盤整備機構 443015426818111,7901,98590.1%
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 10100100.0%
都市再生機構 11,95011,9501,950100.0%
計(15法人) 4430236,005212,62024,0092943,06679,51954.1%
  • 注(1) 「③清算」欄の計21社のうち、エネルギー・金属鉱物資源機構の関係会社4社については、関係会社の清算に伴い、独立行政法人が当該関係会社からの出資金の回収を断念してその全額を損失処理していたものである。
  • 注(2) 「④その他」欄の計2社については、独立行政法人から出資を受けた資本金を資本剰余金に振り替えた上で、当該資本剰余金を原資に独立行政法人に対して配当を実施しており、実質的に出資金の回収に当たるものと整理している。

出資金の回収に伴う国庫納付の状況をみると、図表10のとおり、元年度から5年度までの間に出資金を回収した実績がある6独立行政法人のうち、医薬基盤・健康・栄養研究所は回収額0.7億余円の全額を、中小企業基盤整備機構は回収額17億余円のうち11億余円を、それぞれ不要財産として国庫納付していた。また、情報処理推進機構は、回収額3億余円の全額を8年度末までに国庫納付する予定としていた。

なお、これら以外の回収額について、各独立行政法人は、回収額を収益処理した勘定において繰越欠損金が計上されているなどのため、国庫納付の予定はないとしていた。

独立行政法人名
独立行政法人が出資金を回収した関係会社の数
回収額の計
 
うち国庫納付額
医薬基盤・健康・栄養研究所 1 71 71
情報処理推進機構 1 334
エネルギー・金属鉱物資源機構 10 38,918
中小企業基盤整備機構 11 1,790 1,101
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 1 0
都市再生機構 1 1,950
計(6法人) 25 43,066 1,173

(3) 独立行政法人における配当の要請や出資金の回収に係る検討状況

ア 配当の要請に係る検討状況

独立行政法人は、出資者としての立場に鑑み、また、関係会社に対する出資金の主な財源が国費であることなどを踏まえて、関係会社の性格や財務の状況に十分留意しつつ、財務の健全性が一定程度確保されていると判断されれば、関係会社に対して適切な配当を要請することが求められる。しかし、(2)ウのとおり、5年度末に利益剰余金を計上していた関係会社が81社あった一方で、このうち5年度決算に基づき配当を実施していたのは20社であった。

そこで、81社のうちの78社(注10)について、配当の要請に係る具体的な検討状況を確認したところ、次のとおりとなっていた。

(注10)
令和5年度末に利益剰余金を計上していた関係会社81社のうち3社については、株主間の取決めにより借入金の返済を行っている間は配当を実施しないこととしていたなどのため、残りの78社の状況を確認した。

(ア) 関係会社の自主性に委ねており、配当を受けることや配当額について具体的な検討を行っていなかったもの 3独立行政法人(農畜産業振興機構、エネルギー・金属鉱物資源機構及び中小企業基盤整備機構)の計49社

(イ) 一定の検討は行っていたとしているが、関係会社の財務の状況について分析を行うなどの配当の要請に係る詳細な検討までは行っていなかったもの 7独立行政法人(情報通信研究機構、国際協力機構、理化学研究所、情報処理推進機構、エネルギー・金属鉱物資源機構、鉄道建設・運輸施設整備支援機構及び都市再生機構)の計18社

(ウ) 関係会社の財務の状況について分析を行うなどの配当の要請に係る詳細な検討を行った上で、関係会社に対して望ましい配当額の提示を含む具体的な配当の要請を行っていたもの 2独立行政法人(国際協力機構及びエネルギー・金属鉱物資源機構)の計11社

このように、(ア)又は(イ)に該当する9独立行政法人の関係会社計67社について、9独立行政法人は、関係会社の財務の状況について分析を行うなどの配当の要請に係る詳細な検討を行っていなかった。

イ 出資金の回収に係る検討状況

独立行政法人が関係会社に対して出資する目的は、おおむね、①関係会社が行う事業に必要な資金を供給するため、又は②自らの業務の一部を関係会社に代行させるのに必要な資金を供給するための二つに分けられる。このうち②については、業務を代行させている間の出資金の回収は基本的に想定されない。一方、①については、出資後相当の期間が経過するなどして出資目的が達成されていて、かつ、当該関係会社の財務の健全性が一定程度確保されていると判断されれば、関係会社に対する出資金の主な財源が国費であることなどを踏まえて、出資金の回収についての検討を行うことが求められる。

これについて、各関係会社に対する出資目的が①と②のいずれに該当すると認識しているかなどを各独立行政法人に確認したところ、情報通信研究機構、農畜産業振興機構、エネルギー・金属鉱物資源機構及び中小企業基盤整備機構の4独立行政法人は、関係会社のうち計76社について、出資目的が①に該当しており、出資目的やその達成状況を踏まえて出資金の回収を考えているとしていた。そこで、76社のうちの71社(注11)について、出資金の回収に係る具体的な検討状況を確認したところ、次のとおりとなっていた。

(注11)
出資目的が①に該当しており、出資目的やその達成状況を踏まえて出資金の回収を考えているとしていた関係会社76社のうち5社については、令和7年8月時点において、関係会社からの求めに応じて関係会社株式の売却に向けた交渉が既に行われているなどのため、残りの71社の状況を確認した。

(ア) 出資金の回収に係る具体的な検討を行っていなかったもの 1独立行政法人(中小企業基盤整備機構)の49社

(イ) 一定の検討は行っていたとしているが、関係会社の財務の状況について分析を行うなどの出資金の回収に係る詳細な検討までは行っていなかったもの 2独立行政法人(情報通信研究機構及び中小企業基盤整備機構)の計3社

(ウ) 関係会社の財務の状況について分析を行うなどの出資金の回収に係る詳細な検討を行っていたもの 3独立行政法人(農畜産業振興機構、エネルギー・金属鉱物資源機構及び中小企業基盤整備機構)の計19社

このように、(ア)又は(イ)に該当する2独立行政法人の関係会社計52社について、2独立行政法人は、関係会社の財務の状況について分析を行うなどの出資金の回収に係る詳細な検討を行っていない状況となっていた。

ウ 関係会社の財務の状況の分析

ア及びイのとおり、多くの独立行政法人では、配当の要請や出資金の回収に係る詳細な検討が行われているとは必ずしもいえない状況となっていた。そこで、配当の実施や出資金の回収の実現可能性を確認するために、本院において、関係会社の財務諸表等の提出を受けるなどして関係会社の財務の状況について分析を行った。分析に当たっては、関係会社の財務の健全性を判断するための指標として、①財務基盤の安全性の視点から自己資本比率(総資本に占める自己資本の割合)を、②資金繰りの安全性の視点から当座比率(換金性が高い当座資産と流動負債の割合)を、③損益計算の視点から3か年度分の累計の損益を、それぞれ用いることとした。

その結果、図表11のとおり、14独立行政法人の関係会社計143社のうち、5年度末における自己資本比率が50%以上(注12)の関係会社は110社となっており、110社のうち、5年度末における当座比率が100%以上(注13)の関係会社は93社となっていた。さらに、93社のうち、3年度から5年度までの3か年度分の累計の損益が黒字である関係会社は66社となっていた。これら66社については、将来的な資金需要等を勘案する必要はあるが、5年度末において財務の健全性が一定程度確保されていると思料された。

(注12)
自己資本比率が50%以上  財務省の「法人企業統計調査(令和5年度)」における自己資本比率の全産業平均41.8%を一定程度上回っていれば、財務基盤の安全性の視点からは財務の健全性が一定程度確保されていると整理した。
(注13)
当座比率が100%以上  財務省の「法人企業統計調査(令和5年度)」における当座比率の全産業平均91.5%を一定程度上回っていれば、資金繰りの安全性の視点からは財務の健全性が一定程度確保されていると整理した。
独立行政法人名
関係会社の数
 
自己資本比率が50%以上のもの
 
自己資本比率が50%未満のもの
当座比率が100%以上のもの
 
令和3年度から5年度までの3か年度分の累計の損益が黒字のもの
情報通信研究機構 2222
国際協力機構 65541
物質・材料研究機構 111
防災科学技術研究所 11
科学技術振興機構 1111
理化学研究所 21111
農業・食品産業技術総合研究機構 111
農畜産業振興機構 15101095
産業技術総合研究所 11
情報処理推進機構 87771
エネルギー・金属鉱物資源機構 392516914
中小企業基盤整備機構 615547316
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 11
都市再生機構 42222
計(14法人) 143110936633

財務の健全性が一定程度確保されていると思料された上記66社のうち、5年度末においてその他利益剰余金を計上している(注14)関係会社は52社となっていた。

これら52社のうちの50社(注15)については、出資者としての立場に鑑みて独立行政法人が適切な配当を要請する対象になり得るが、図表12のとおり、50社のうち43社については、独立行政法人が関係会社の財務の状況について分析を行うなどの配当の要請に係る詳細な検討を行った上で関係会社に対して望ましい配当額の提示を含む具体的な配当の要請を行っていなかった。

(注14)
会社法上はその他資本剰余金及びその他利益剰余金の合計額が主な配当の原資とされているが、実務上はその他利益剰余金を原資として配当が実施されることが通例である。
(注15)
令和5年度末においてその他利益剰余金を計上している関係会社52社のうち2社については、株主間の取決めにより借入金の返済を行っている間は配当を実施しないこととしていた。

このため、43社に出資している8独立行政法人(情報通信研究機構、国際協力機構、理化学研究所、農畜産業振興機構、情報処理推進機構、エネルギー・金属鉱物資源機構、中小企業基盤整備機構及び都市再生機構)は、関係会社の財務の状況について分析を行うなどして、関係会社の財務の状況等を踏まえた適切な配当について検討し、必要に応じて、関係会社に要請する必要がある。

また、財務の健全性が一定程度確保されていると思料された前記66社のうち、出資目的がイの①(関係会社が行う事業に必要な資金を供給するため)に該当していて、かつ、出資金の回収に充当可能な余裕資金がある(注16)と認められる関係会社は12社となっていた。

これら12社については、出資目的が達成されているかについての検討を含め、独立行政法人が出資金の回収についての詳細な検討を行う対象になり得るが、図表12のとおり、12社のうち11社については、独立行政法人が関係会社の財務の状況について分析を行うなどの出資金の回収に係る詳細な検討を行っていなかった。

(注16)
関係会社が自己株式の取得を行うためには、会社法の規定に基づき、その他資本剰余金及びその他利益剰余金の合計額に所要の調整を加えた額が出資金の額を上回っていることが必要となる。また、出資金の回収には、出資金の回収に充当可能な余裕資金の額が、出資金の額を上回っている必要がある。そこで、これらを満たした場合に、出資金の回収に充当可能な余裕資金があるとしている。そして、余裕資金の額を、換金可能性が高い当座資産、長期性預金及び投資有価証券のそれぞれの額の合計額から、将来的な資金流出が想定される負債及び目的積立金のそれぞれの額の合計額を控除した金額としている。

このため、11社に出資している2独立行政法人(情報通信研究機構及び中小企業基盤整備機構)は、関係会社の財務の状況について分析を行うなどして、出資目的や関係会社の財務の状況等を踏まえ、出資金の回収について適時適切に検討を行う必要がある。

独立行政法人名
関係会社の数
 
財務の健全性が一定程度確保されていると思料されるもの
 
配当の要請 出資金の回収
検討の対象となるもの
 
検討の対象となるもの
 
検討状況 検討状況
(ア) (イ) (ウ) (ア) (イ) (ウ)
情報通信研究機構 222211
国際協力機構 64211
物質・材料研究機構 1
防災科学技術研究所 1
科学技術振興機構 11
理化学研究所 2111
農業・食品産業技術総合研究機構 1
農畜産業振興機構 15999
産業技術総合研究所 1
情報処理推進機構 8766
エネルギー・金属鉱物資源機構 39982611
中小企業基盤整備機構 613120201091
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 1
都市再生機構 4222
計(14法人) 14366503112712921
  • (注) 図表中の(ア)、(イ)及び(ウ)は、それぞれ、ア及びイの(ア)、(イ)及び(ウ)に対応している。

上記について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

中小企業基盤整備機構(以下「機構」という。)は、中心市街地都市型産業支援施設の整備・管理に関する事業を実施しているソリオ宝塚都市開発株式会社(兵庫県宝塚市所在)に対して、平成12年3月に7億円の出資を行っており、令和5年度末における出資金の額は同額の7億円となっている。そして、機構は、同社の議決権のうち37.8%を保有していることなどから、同社が関連会社に該当するとしている。

同社の5年度末におけるその他利益剰余金の額は16億2767万余円となっていたが、同社は、5年度決算に基づく配当を実施していなかった。そして、機構の同社に対する配当の要請に係る検討状況を確認したところ、機構は、同社の自主性に委ねており、これまで配当を受けることや配当額について検討を行っていなかった。

また、機構は、同社に対する出資の目的は、同社が行う事業に必要な資金を供給するためとしており、出資目的が達成された場合は、出資金の回収を行う対象となるとしていた。しかし、機構の同社に対する出資金の回収に係る検討状況を確認したところ、機構は、これまで検討を行っていなかった。

そこで、本院において同社の財務の状況を分析したところ、同社の5年度末における自己資本比率は85.0%、当座比率は828.6%となっており、また、3年度から5年度までの3か年度分の累計の損益は2億5737万余円の黒字となっており、5年度末において財務の健全性が一定程度確保されていると思料された。

これらのことから、同社は、機構が適切な配当の要請や出資金の回収について詳細な検討を行う対象になり得るが、機構は、配当の要請や出資金の回収についての詳細な検討を行っていなかった。

(4) 関係会社に係る情報開示の状況

会計基準によれば、独立行政法人が保有する関係会社株式は、出資先持分額をもって貸借対照表価額とすることとされている。

5年度末で関係会社への出資額がある14独立行政法人について、関係会社株式の評価方法についてみたところ、12独立行政法人は、会計基準のとおり出資先持分額をもって貸借対照表価額としていた。一方、科学技術振興機構及びエネルギー・金属鉱物資源機構の2独立行政法人の評価方法は次のとおりとなっていた。

ア 科学技術振興機構

科学技術振興機構は、関係会社と締結した投資契約書において、当該関係会社の残余財産を分配する際に取得価額分を他の株主より優先して取得できることなどが記載されていることから、関係会社株式の貸借対照表価額について、当該関係会社の取得価額に相当する純資産額の分配を優先して受けることなどを加味していた。これは会計基準に明確に規定されてはいないが、企業会計原則に準拠しているものと思料された。

イ エネルギー・金属鉱物資源機構

エネルギー・金属鉱物資源機構は、特定の関係会社株式の貸借対照表価額について、会計基準による出資先持分額とするのではなく、同機構の定めた「石油開発事業に係る出資株式の評価について」(2005年(財経)通達第105号)に従い、次のとおりとしていた。

すなわち、石油等の探鉱段階の関係会社株式については、事業の成否を判断することは困難であるとして、同機構の出資額の2分の1を時価として評価し、当該評価額をもって貸借対照表価額としていた。また、石油等の開発・生産段階の関係会社株式については、関係会社ごとの石油等の生産計画に基づく長期収支を予測した上で、関係会社が実施する事業から今後配当等が見込まれる金額を評価額として、当該評価額をもって貸借対照表価額としていた(ただし、元年度決算までは、当該評価額が取得原価を上回る場合は取得原価をもって貸借対照表価額としていた。)。

元年度末から5年度末までの同機構の関係会社株式の貸借対照表価額についてみると、図表13のとおりとなっており、2年度末の貸借対照表価額は元年度末の2倍超となっていて、2年度末以降も増加傾向となっていた。このように増加傾向となっていたのは、会計基準の改訂による評価方法の一部変更を受けて、同機構において、同機構の評価額が取得原価を上回る場合に取得原価ではなく当該評価額をもって貸借対照表価額とした結果、上回った分の差額が財務諸表に反映されることになったためなどであった。

そして、5年度末における同機構の評価方法による貸借対照表価額と会計基準による出資先持分額の試算額とを比較したところ、図表13のとおり、貸借対照表価額1兆6594億余円は、試算額6974億余円を9619億余円上回っており、試算額の2.37倍となっていた。

区分 令和元年度末 2年度末 3年度末 4年度末 5年度末
貸借対照表価額 413,316 985,263 1,143,273 1,148,226 1,659,438
出資先持分額の試算額 514,520 615,278 597,495 621,088 697,463
差額 101,203 369,985 545,778 527,138 961,975

なお、同機構と同業種の企業では、平成29年度以降の各年度の財務諸表において、関係会社株式の取得原価を貸借対照表に計上するとともに、引当金を貸借対照表に計上することで関係会社株式の損失に備えることとしていた。このため、同機構の評価方法は、同業種の企業の評価方法とも異なるものとなっていた。

これらのことから、エネルギー・金属鉱物資源機構は、関係会社株式に係る出資先持分額についても財務諸表に併せて示すなど、関係会社に係る情報開示の在り方について改善を加えるなどして、説明責任の向上の観点から国民その他の利害関係者に有用な情報を提供することを検討する必要がある。

4 本院の所見

近年の我が国の厳しい財政状況下において、独立行政法人については、事業の見直しや効率化とともに、保有資産の規模の見直しや不要な資産の国庫納付等の検討が求められており、独立行政法人から関係会社に対する出資金の主な財源が国費であることなどを踏まえると、独立行政法人は出資者として配当を受けることや出資金の回収についての適時適切な検討を行うなどする必要がある。

しかし、関係会社に対して出資を行っている独立行政法人において、配当の要請について関係会社の財務の状況の分析を行うなどの詳細な検討を行った上で関係会社に対して望ましい配当額の提示を含む具体的な配当の要請を行っていない状況や、出資金の回収について関係会社の財務の状況の分析を行うなどの詳細な検討を行っていない状況等が見受けられた。

ついては、8独立行政法人(情報通信研究機構、国際協力機構、理化学研究所、農畜産業振興機構、情報処理推進機構、エネルギー・金属鉱物資源機構、中小企業基盤整備機構及び都市再生機構)において、関係会社に係る財務等の状況について、今後、次の点に留意する必要がある。

ア 配当に関して、財務の健全性が一定程度確保されていると思料されるなどの関係会社43社に出資している8独立行政法人は、関係会社の財務の状況について分析を行うなどして、関係会社の財務の状況等を踏まえた適切な配当について検討し、必要に応じて、関係会社に対して配当を要請すること

イ 出資金の回収に関して、財務の健全性が一定程度確保されていると思料されるなどの関係会社11社に出資している2独立行政法人(情報通信研究機構及び中小企業基盤整備機構)は、関係会社の財務の状況について分析を行うなどして、出資目的や関係会社の財務の状況等を踏まえ、出資金の回収について適時適切に検討すること

ウ エネルギー・金属鉱物資源機構は、関係会社株式に係る出資先持分額についても財務諸表に併せて示すなど、関係会社に係る情報開示の在り方について改善を加えるなどして、説明責任の向上の観点から国民その他の利害関係者に有用な情報を提供することを検討すること

本院としては、独立行政法人及び関係会社に係る財務等の状況について、引き続き注視していくこととする。