歳入歳出決算等の検査対象別の概要は第1節に記述したとおりであるが、国の会計等のより的確な理解に資するために、決算でみた国の財政の状況を述べると次のとおりである。
我が国の財政状況をみると、昭和40年度に初めて歳入補塡のための国債が発行されて以降、連年の国債発行により国債残高は増加の一途をたどっている。そして、令和6年度末において、建設国債(注1)、特例国債(注2)、復興債(注3)、脱炭素成長型経済構造移行債(注4)(以下「GX経済移行債」という。)、子ども・子育て支援特例公債(注5)(以下「子ども特例債」といい、復興債及びGX経済移行債と合わせて「復興債等」という。)、借換債(注6)等のように利払・償還財源が主として税収等の歳入により賄われる国債(以下「普通国債」という。)の残高は1079.7兆円に達している。また、6年度の国債の償還等に要する国債費の一般会計歳出決算総額に占める割合は20.8%となっている。
こうした厳しい財政状況が続いている中で、政府は、平成8年12月に「財政健全化目標について」を閣議決定するなどして、9年度を「財政構造改革元年」と位置付けて、財政健全化の努力目標を設定するとともに、財政構造改革を強力に推進することとした。
25年には、「当面の財政健全化に向けた取組等について―中期財政計画―」(平成25年8月閣議了解)において、①国・地方を合わせた基礎的財政収支(注7)(以下「国・地方PB」という。)を2020年度(令和2年度)までに黒字化し、その後に②債務残高の対名目GDP比(以下、名目GDPを「GDP」という。)の安定的な引下げを目指すという財政健全化のための目標を掲げた。
その後、政府は、「経済財政運営と改革の基本方針2018」(平成30年6月閣議決定)において、「新経済・財政再生計画」を定めて、国・地方PBの黒字化の目標年度を2025年度(7年度)とし、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指すこととした(以下、2025年度(7年度)の国・地方PBの黒字化を目指す目標を「7年度黒字化目標」という。)。
そして、政府は、「経済財政運営と改革の基本方針2025」(令和7年6月閣議決定)において、「金利のある世界において、我が国の経済財政に対する市場からの信認を確実なものとするため、財政健全化の「旗」を下ろさず、長期を見据えた一貫性のある経済財政政策の方向性を明確に示すことが重要である。このため、2025年度(7年度)から2026年度(8年度)を通じて、可能な限り早期の国・地方を合わせたPB黒字化を目指す。ただし、米国の関税措置の影響は不透明であり、その経済財政への影響の検証を行い、的確に対応すべきであり、必要に応じ、目標年度の再確認を行う。その上で、「経済・財政新生計画」の期間(注8)を通じて、その取組の進捗・成果を後戻りさせることなく、PBの一定の黒字幅を確保しつつ、債務残高対GDP比を、まずはコロナ禍前の水準に向けて安定的に引き下げることを目指し、経済再生と財政健全化を両立させる歩みを更に前進させる」こととしている(以下、2025年度(7年度)から2026年度(8年度)を通じて、可能な限り早期の国・地方PBの黒字化を目指す目標を「7年度から8年度を通じた黒字化目標」という。)。
また、国・地方PB、財政収支、債務残高(注9)及びそれぞれの対GDP比については、内閣府が、半年ごとに経済財政諮問会議に提出している「中長期の経済財政に関する試算」(以下「内閣府試算」という。)において実績値等(注10)を公表している。
本院は、これまで、財政の健全化に向けた政府の動向を踏まえつつ、国の決算額等により国の財政状況を継続して検査している。そして、平成28年度以降の検査報告の第6章において、財政健全化のための目標等において用いられる国・地方PB、財政収支対GDP比及び債務残高対GDP比について、国の一般会計の決算額等を用いて分析した結果を掲記するなどしている。
財政健全化のための目標等において用いられている指標には、基礎的財政収支、財政収支及び債務残高に関するものがある(以下、これらに関する指標を「財政健全化の指標」という。)。そして、財政健全化の指標のうち、国・地方PB、財政収支及びそれぞれの対GDP比は内閣府試算により公表されていて、国民経済計算の作成基準等に従い各種の基礎統計を利用して推計されているものであるが、詳細な内訳等は公表されていない。
一方、国の一般会計の決算額でみた基礎的財政収支(以下「一般会計PB」という。)は、税収等(注11)から政策的経費(注12)を差し引いた収支差で表されるもので、その時点で必要とされる政策的経費を、その時点の税収等でどれだけ賄えているかを示す指標であり、計算の基礎となる詳細な決算額を歳入決算明細書や歳出決算報告書等により把握することが可能である。また、国の一般会計の決算額でみた財政収支(以下「一般会計財政収支」という。)は、税収等から財政経費(注13)を差し引いた収支差で表されるもので、その時点で必要とされる財政経費を、その時点の税収等でどれだけ賄えているかを示す指標であり、一般会計PBと同様に、計算の基礎となる詳細な決算額を歳入決算明細書や歳出決算報告書等により把握することが可能である。ただし、国・地方PB(又は財政収支)は国の特別会計及び独立行政法人の一部、地方普通会計等の決算が計算対象に含まれており、一般会計PB(又は一般会計財政収支)はそれらの決算が計算対象に含まれていないなどの点で、両者には相違がある。
令和6年度の国の財政の状況について、引き続き、財政健全化の指標である国・地方PB、国・地方PB対GDP比、財政収支対GDP比及び債務残高対GDP比の状況がどのようになっているかなどをみると、次のとおりである。
国・地方PB、一般会計PB及び地方の基礎的財政収支(以下「地方PB」という。)について、平成22年度から令和6年度までの推移をみると、図1のとおり、一般会計PBは、平成24年度以降は改善傾向にあったものの、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う大幅な歳出の増加により特に令和2年度に大幅に悪化した。そして、その後は再び改善する傾向にあったものの、6年度は、前年度のマイナス8.3兆円から0.7兆円悪化してマイナス9.1兆円となっている。
また、国・地方PBは、一般会計PBとおおむね同じように推移している。これは、地方財政計画を通じて国から地方に交付される地方交付税交付金等によって地方の財源が保障される仕組みなどにより、地方PBがほぼ均衡して推移していることなどによる。そして、7年度黒字化目標を設定した平成30年度以降の国・地方PBの推移は、図2のとおりであり、7年度から8年度を通じた黒字化目標に対して、令和6年度は、前年度のマイナス12.3兆円から4.9兆円改善してマイナス7.4兆円となっている。
国・地方PB及び一般会計PBのそれぞれの対GDP比について、平成22年度から令和6年度までの推移をみると、図3のとおり、国・地方PB対GDP比と一般会計PB対GDP比は、国・地方PBと一般会計PBと同様に、6年度までおおむね同じように推移している。そして、一般会計PB対GDP比は、6年度は、前年度から横ばいのマイナス1.4%となっている。また、国・地方PB対GDP比は、6年度は、前年度のマイナス2.1%から0.9ポイント改善してマイナス1.2%となっている。
図3 国・地方PB及び一般会計PBのそれぞれの対GDP比の推移
そこで、一般会計PBの内訳となる税収等及び政策的経費について、平成22年度から令和6年度までの推移をみると、図4のとおり、全ての年度において政策的経費が税収等を上回っている。そして、6年度は税収等が5.5兆円、政策的経費が4.7兆円それぞれ前年度から減少している。
6年度の税収等の前年度からの減少5.5兆円の内訳を租税及印紙収入、前年度剰余金受入及び「その他」に区分してみると、図5のとおり、租税及印紙収入が3.1兆円増加している一方、前年度剰余金受入については、3年度から5年度までの間は21.3兆円(5年度)から36.9兆円(3年度)までの間で推移していたが、6年度は8.7兆円減少して12.6兆円となっており、前年度剰余金受入の減少が税収等の減少の主な要因となっている。
租税及印紙収入について、2年度から6年度までの推移をみると、図6のとおり、2年度の60.8兆円から14.4兆円増加し、6年度は75.2兆円となっている。
6年度の租税及印紙収入は75.2兆円に上り、このうち主要な税目である所得税、法人税及び消費税の合計は64.1兆円となっていて、租税及印紙収入の8割以上を占めている。これら3税目について、平成22年度から令和6年度までの推移を景気動向の推移と併せてみると、図7のとおり、所得税及び法人税は、景気拡張期に増加し、景気後退期に減少するなどの傾向があり、景気動向の推移とおおむね連動している。2年6月以降は景気拡張期となり、法人税は、6年度において前年度から2.0兆円増加して17.9兆円となっているものの、所得税は、5年度は税制改正、6年度は定額減税等によりそれぞれ前年度と比べて減少し、6年度においては21.2兆円となっている。一方、消費税は、所得税及び法人税と異なり景気動向に左右されにくく、消費税率(地方消費税分を含む。)の改定(平成26年4月の5%から8%及び令和元年10月の8%から10%)の影響を強く受けた平成26年度及び令和2年度に大幅に増加していた。また、2年度以降は消費税が所得税を上回っていて、6年度は、前年度から1.9兆円増加して25.0兆円となっている。
6年度の政策的経費の前年度からの減少4.7兆円の内訳を主要経費別にみると、図8のとおり、地方交付税交付金等は2.4兆円増加している一方、その他の事項経費(注14)が4.1兆円、防衛関係費が2.9兆円それぞれ減少しており政策的経費の減少の主な要因となっている。
また、6年度の政策的経費97.7兆円を主要経費別にみると、社会保障関係費が35.7兆円、地方交付税交付金等が19.6兆円、その他の事項経費が12.3兆円、防衛関係費が8.6兆円及び公共事業関係費が8.3兆円となっており、これら五つの主要経費計84.8兆円で政策的経費の8割以上を占めている。これら五つの主要経費について、2年度から6年度までの推移をみると、図9のとおりであり、社会保障関係費については、新型コロナウイルス感染症への対応等により3年度に増加した後、4、5両年度はそれぞれ前年度と比べて減少して、6年度は新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金が減少したことなどにより前年度から0.4兆円減少して35.7兆円となっている。地方交付税交付金等については、3年度に増加した後、4、5両年度はそれぞれ前年度と比べて減少したものの、6年度は前年度から増加して19.6兆円となっている。その他の事項経費については、3年度は特別定額給付金給付事業費補助金がなかったことなどにより前年度から減少した。また、6年度はエネルギー価格激変緩和対策事業費補助金が減少したことなどにより前年度から4.1兆円減少し12.3兆円となっている。防衛関係費については、2年度から4年度までの間は5.5兆円(2年度)から6.0兆円(3年度)までの範囲で推移していたが、5年度は、防衛力強化資金が創設され、同資金への繰入れが生じたことなどにより前年度から大幅に増加したものの、6年度は同資金への繰入額が減少したことなどにより前年度から2.9兆円減少して8.6兆円となっている。公共事業関係費については、2年度から5年度までの間は8.1兆円(4年度)から8.6兆円(3年度)までの範囲で推移しており、6年度は前年度からほぼ横ばいの8.3兆円となっている。
図9 社会保障関係費、地方交付税交付金等、その他の事項経費、防衛関係費及び公共事業関係費の推移
6年度の社会保障関係費35.7兆円は、政策的経費97.7兆円のうち最も大きな割合(36.6%)を占めている。社会保障関係費について、平成22年度から令和6年度までの推移を高齢化率の推移と併せてみると、図10のとおり、我が国の高齢化に伴い増加傾向となっている。そして、新型コロナウイルス感染症への対応等が行われた2、3両年度にそれぞれ前年度と比べて大幅に増加したものの、4、5両年度はそれぞれ前年度と比べて大幅に減少して、6年度は新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金が減少したことなどにより前年度から減少している。
財政収支、一般会計財政収支及び一般会計PBのそれぞれの対GDP比について、平成22年度から令和6年度までの推移をみると、図11のとおり、財政収支対GDP比と一般会計財政収支対GDP比はおおむね同じように推移している。これは、地方財政計画を通じて国から地方に交付される地方交付税交付金等によって地方の財源が保障される仕組みなどにより、地方の財政収支がほぼ均衡して推移していることなどによる。また、同期間内において一般会計財政収支と一般会計PBの差である国債等の利払費の金額の変動が少なかったため、一般会計財政収支対GDP比と一般会計PB対GDP比についても同じように推移している。
一般会計財政収支対GDP比は、平成24年度以降は改善傾向にあったものの、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う大幅な歳出の増加により特に令和2年度は大幅に悪化した。そして、3年度以降は改善していたものの、6年度は、前記のとおり一般会計PBが前年度から0.7兆円悪化したことなどにより前年度のマイナス2.6%から0.1ポイント悪化してマイナス2.7%となっている。また、財政収支対GDP比は、6年度はマイナス1.9%となっており、前年度のマイナス2.9%から1.0ポイント改善している。
図11 財政収支、一般会計財政収支及び一般会計PBのそれぞれの対GDP比の推移
一般会計財政収支の内訳となる税収等と財政経費について、平成22年度から令和6年度までの推移をGDP成長率の推移と併せてみると、図12のとおり、税収等については、おおむねGDP成長率が継続してプラスのときに増加する傾向が見受けられる。6年度においては、GDP成長率はプラス3.7%であったが、税収等は、前年度剰余金受入が前年度から8.7兆円減少したことなど(図5参照)により前年度から5.5兆円減少して88.5兆円となり、財政経費は、前年度から4.2兆円減少して105.6兆円となっている。
6年度における前年度からの財政経費の減少4.2兆円の内訳を政策的経費と利払費に区分してみると、図13のとおり、政策的経費が4.7兆円減少しているものの、利払費は0.5兆円増加している。
財政経費のうち利払費は、普通国債の残高と金利(利率)によって決定される。普通国債の利率加重平均(年度末の残高に係る表面利率の加重平均)について、平成22年度から令和6年度までの推移をみると、図14のとおり、平成22年度の1.29%から令和4年度の0.76%までは毎年度低下し続けていたが、5年度には上昇に転じ、6年度は前年度の0.77%から0.06ポイント上昇して0.83%になっている。そして、利払費は、平成28年度から令和4年度までは、普通国債の利率加重平均の低下による影響が普通国債の残高の累増による影響を上回っていることから減少傾向となっていた。これに対して、5年度は、普通国債の利率加重平均が前年度から上昇するとともに、同年度末の普通国債の残高が前年度末から増加した中で、利払費は、平成27年度以来8年ぶりに増加に転じた。令和6年度においても、普通国債の利率加重平均が前年度から上昇するとともに、同年度末の普通国債の残高が前年度末から26.0兆円増加して1079.7兆円となっている中で、利払費は前年度から0.5兆円増加して7.9兆円となっている。
債務残高とその内訳について、平成22年度末から令和6年度末までの推移をみると、図15のとおり、普通国債のうち復興債等(その借換債を含む。)を除いた国債(以下「復興債等を除いた普通国債」という。)が債務残高の大半を占めており、その残高は引き続き増加している。そして、6年度末の復興債等を除いた普通国債の残高は、前年度末から24.9兆円増加(対前年度比2.3%増)して、1071.2兆円となっている。
6年度末の復興債等を除いた普通国債の前年度末からの増加24.9兆円の内訳を建設国債、特例国債及びその他の普通国債(それぞれの借換債を含む。以下(3)において同じ。)に区分してみると、図16のとおり、その他の普通国債は0.1兆円減少している一方、建設国債が6.7兆円、特例国債が18.3兆円それぞれ増加している。
図16 令和6年度末における前年度末からの復興債等を除いた普通国債の増加の内訳
建設国債及び特例国債の残高については、平成22年度末以降、特例国債の残高が建設国債の残高を上回る状況が続いている。また、いずれも22年度末から令和6年度末にかけて増加しているが、その増加額は特例国債が建設国債を大幅に上回る状況となっている(図15参照)。
債務残高及び債務残高対GDP比について、平成22年度から令和6年度までの推移をGDPの推移と併せてみると、図17のとおり、債務残高は一貫して増加している。債務残高対GDP比は、4年度までは一貫して上昇していた一方、5年度は、GDPの増加率が債務残高の増加率を上回ったことから平成22年度以降初めて低下した。令和6年度においても、GDPの増加率が債務残高の増加率を上回ったことから、債務残高対GDP比は対前年度比4.0ポイント低下の201.3%となっている。
国の一般会計の決算額でみた財政健全化の指標と、普通国債の発行・償還等との間には一定の関係があることから、普通国債の発行・償還等の推移について、財政健全化の指標の理解に資するための参考として示すと、次のとおりである。
平成22年度から令和6年度までの普通国債の発行額(収入金ベース(注15))等の推移をみると、図18のとおり、建設国債は、平成25年度から令和元年度まではおおむね横ばいで、また、特例国債は、平成22年度から30年度までは減少傾向で推移していたものの、いずれも令和2年度に大幅に増加している。そして、建設国債は、3年度には元年度の水準(9.1兆円)に戻っており、6年度は前年度からほぼ横ばいの9.6兆円となっている。特例国債は、3年度以降の各年度で前年度から減少していたものの、6年度は前年度から1.5兆円増加して27.4兆円となっており、元年度の水準(27.4兆円)となっている。一方、借換債は、3年度に増加した以降も各年度で前年度から増加していたが、6年度は前年度から減少して132.9兆円となっている。
国の一般会計歳入決算総額に占める国債の発行収入金の割合は、2年度は50%を超える状況となったが、3年度以降の各年度で前年度から低下していたものの、6年度は前年度から上昇して27.3%となっている。
なお、財務省は、国債の確実かつ円滑な発行等を図るために、国債発行に当たっては、市場の動向及び投資家のニーズ等を勘案して、各年度のカレンダーベース市中発行額(注16)について償還年限別の発行額を決定している。国債のカレンダーベース市中発行額について償還年限別の推移を示すと、図19のとおりであり、2年度に短期国債の発行額が大幅に増加した結果、フローベースの平均償還年限(注17)は、元年度の9年0か月から2年度の6年8か月へと2年以上短期化した。一方、3年度からは短期国債の発行額が前年度から減少するなどした結果、6年度のフローベースの平均償還年限は8年5か月となっている。
図19 国債のカレンダーベース市中発行額における償還年限別発行額等の推移
国債費は、過去に発行された国債の償還及び利払等の財源として一般会計から国債整理基金特別会計に繰り入れられた額等であり、国債の償還のために繰り入れられた額(以下「債務償還費」という。)と利子等の支払のために繰り入れられた額等(以下「利払費等」という。)で構成されている。
平成22年度から令和6年度までの国債費の決算額の推移についてみると、図20のとおり、債務償還費が増加傾向であることなどから、国債費の決算額は増加傾向となっていて、平成22年度に19.5兆円であったものが、令和6年度には25.6兆円(対前年度0.1兆円増)となり、この間に6.1兆円増加している。
また、普通国債の発行残高の推移をみると、図20のとおり、一貫して増加しており、平成22年度末に636.3兆円であったものが令和6年度末には1079.7兆円(対前年度26.0兆円増)となり、この間に443.4兆円増加している。
国・地方PB及び国・地方PB対GDP比は、平成22年度から令和6年度まで一般会計PB及び一般会計PB対GDP比とおおむね同じように推移している。6年度の一般会計PBは、前年度から悪化してマイナス9.1兆円となっている。一般会計PBの内訳となる税収等及び政策的経費について、平成22年度から令和6年度までの推移をみると、全ての年度において政策的経費が税収等を上回っている。そして、6年度においては、税収等及び政策的経費がそれぞれ前年度から減少している。6年度の一般会計PBの内訳の前年度からの増減要因についてみると、収入面では、6年度の税収等のうち、租税及印紙収入が3.1兆円増加している一方、前年度剰余金受入が8.7兆円減少している。このうち、6年度の租税及印紙収入についてみると、所得税は減少、法人税及び消費税は増加している。支出面では、6年度の政策的経費のうち、地方交付税交付金等が2.4兆円増加している一方、その他の事項経費が4.1兆円、防衛関係費が2.9兆円それぞれ減少している。また、政策的経費の8割以上を占める社会保障関係費、地方交付税交付金等、その他の事項経費、防衛関係費及び公共事業関係費についてみると、社会保障関係費については、6年度は新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金が減少したことなどにより前年度から減少している。地方交付税交付金等については、6年度は前年度から増加している。その他の事項経費については、6年度はエネルギー価格激変緩和対策事業費補助金が減少したことなどにより前年度から減少している。防衛関係費については、6年度は防衛力強化資金への繰入額が減少したことなどにより前年度から減少している。公共事業関係費については、6年度は前年度からほぼ横ばいとなっている。そして、社会保障関係費は、6年度の政策的経費のうち最も大きな割合を占めており、平成22年度から令和6年度までの推移を高齢化率の推移と併せてみると、我が国の高齢化に伴い増加傾向となっていて、新型コロナウイルス感染症への対応等が行われた2、3両年度にそれぞれ前年度と比べて大幅に増加したものの、4、5両年度はそれぞれ前年度と比べて大幅に減少して、6年度は新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金が減少したことなどにより前年度から減少している。
財政収支対GDP比は、平成22年度から令和6年度まで一般会計財政収支対GDP比とおおむね同じように推移している。そして、一般会計財政収支と一般会計PBの差である国債等の利払費の金額の変動が少なかったため、一般会計財政収支対GDP比と一般会計PB対GDP比についても同じように推移しているが、6年度の一般会計財政収支対GDP比は、一般会計PBが悪化したことなどにより前年度から悪化してマイナス2.7%となっている。一般会計財政収支の内訳となる税収等と財政経費について、平成22年度から令和6年度までの推移をGDP成長率の推移と併せてみると、税収等については、おおむねGDP成長率が継続してプラスのときに増加する傾向が見受けられる。6年度においては、GDP成長率はプラスであったものの、前年度剰余金受入の減少等のため税収等は減少している。財政経費については、6年度は前年度から減少しており、その内訳についてみると、政策的経費が4.7兆円減少している一方、利払費が0.5兆円増加している。利払費は、平成28年度から令和4年度までは、普通国債の利率加重平均の低下による影響が普通国債の残高の累増による影響を上回っていることから減少傾向となっていたが、5年度は平成27年度以来8年ぶりに増加に転じた。令和6年度においても普通国債の利率加重平均が上昇するとともに、普通国債の残高が増加している中で、利払費は前年度から増加している。
復興債等を除いた普通国債の残高は債務残高の大半を占めていて引き続き増加しており、6年度末の復興債等を除いた普通国債の残高は、前年度末から24.9兆円増加(対前年度比2.3%増)して、1071.2兆円となっている。6年度末の復興債等を除いた普通国債の前年度末からの増加の内訳についてみると、その他の普通国債(その借換債を含む。)は0.1兆円減少している一方、建設国債(その借換債を含む。以下同じ。)が6.7兆円、特例国債(その借換債を含む。以下同じ。)が18.3兆円それぞれ増加している。建設国債及び特例国債の残高については、平成22年度末から令和6年度末にかけて、いずれも増加しているが、その増加額は特例国債が建設国債を大幅に上回る状況となっている。
債務残高対GDP比については、4年度まで一貫して上昇していた一方、5年度は平成22年度以降初めて低下し、令和6年度においてもGDPの増加率が債務残高の増加率を上回ったことから、対前年度比4.0ポイント低下の201.3%となっている。
本院としては、これらを踏まえて、国の財政の状況について引き続き注視していくこととする。