• 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書
  • 令和7年5月

官民ファンドにおける業務運営の状況に関する会計検査の結果について


別図表1 ガイドラインの項目

1 運営全般(政策目的、民業補完等)

① 公的資金の活用であることに鑑み、法令上等の政策目的に沿って効率的に運営されているか。また、民業補完に徹するとともに、各ファンドの政策目的の差異、対象となる運用先の差異が適切に把握されているか。

② 政策的観点からのリスク性資金であるが、国の資金であることにも十分配慮された運用が行われているか。

③ 法令上等の政策目的に沿ってベンチャー企業支援や地域経済を支える地元企業(地域での起業を含む)支援等のために必要十分な資金供給等がなされているか。また、そのために必要な組織構成(投資態勢、窓口体制、人材育成機能等)となっているか。

④ 各ファンドと民間のリスクマネー供給(民間のプライベートエクイティ、ベンチャーキャピタルファンドや銀行のメザニン等)との関係・役割分担等は適切に理解されているか。

⑤ ファンド全体の業績評価について、ファンド設立・運営の趣旨を踏まえ、中長期的な視点から総合的に実施されているか。

⑥ 支援が競争に与える影響を勘案したものとなっているか。

⑦ サンセット条項の下、限られた期間内で民間プレイヤーの呼び水となり、将来民間で活躍できる事業創造の核となる人材を育成する目的が共有されているか。

⑧ 閣僚会議及び幹事会に対して、各ファンドが政策目的にかなった運営を行っているかについての定期的な報告が、正確かつ透明性をもって行われているか。


2 投資の態勢及び決定過程

2.1 投資の態勢

① 案件発掘及びデューディリジェンスを行う主体は十分な能力を保有しているか。

② 投資に係る決定を行う組織の役割が明確化され、適切に開催され、機能しているか。

③ 執行部を中立的な見地から監視、牽制する仕組みの役割が明確化され、導入され、機能しているか。

④ 投資に係る決定を行う組織を監視、必要に応じて牽制する仕組みの役割が明確化され、導入され、機能しているか。また、通常の投資に係る決定を行う組織から上位の決定を行う組織への重要な意思決定案件等の付議について、適切な仕組みのもとに行われるようになっており、機能しているか(大型案件、標準的な投資案件でない案件、想定内であっても初めて行う案件、利益相反が懸念される案件等の付議案件の明確化等)。

⑤ 投資プロフェッショナルの報酬は適切か(給与・賞与レベル、成功報酬、競業避止義務等の退職に関する制限の有無等)。

⑥ ファンドオブファンズとなる官民ファンドの場合、特にファンドオブファンズ業務を行うことに対応した監視、牽制の仕組みの役割が明確化され、導入され、機能しているか。

2.2 投資方針

① 投資方針、チェック項目は、政策目的に沿って、適切なものか(業種、企業サイズ、事業ステージ、リスク選好度等から見て、当該ファンド全体としての運用対象は政策目的に沿ったものか(標準類型等))。

② 投資に当たって、その定性面と定量面から以下の点は検討されているか。

  • 成長戦略への貢献の度合い、成長戦略との整合性の評価
  • 民間資金の呼び水機能
  • 民業圧迫(民間のリスクキャピタルとの非競合の担保等)の防止や競争に与える影響の最小限化
    (補完性、比例(最小限)性、中立・公平性、手続透明性の原則の遵守等)
  • 投資先企業等の経営管理(ガバナンス)態勢や各種のリスク管理(法令遵守等)態勢
  • 投資採算(投資倍率、回収期間、IRR等)、EXIT実現可能性の確認
  • 利益相反事項の検証と確認(ファンドへの出資者との関連取引のチェック、案件の共同出資者との条件の公平性等)
  • 各ファンドの政策目的を踏まえたESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス))投資とSDGs(Sustainable Development Goals))への取組の推進

2.3 投資決定の過程

① 投資に係る決定を行う組織で政策目的に基づいた投資の基本的な方針等に従って検討されているか。
また、適切な手続きによる審査を経て投資に係る決定を行う組織で中立的な立場から決定されているか。
投資に係る決定を行う組織で否認された案件は適切な検証を経て否認されたか。

② 案件の選別は、持込投資案件総数、投資検討実施件数(DD実施件数)、投資に係る決定を行う組織への付議案件数、投資提案件数、投資決定案件数等からみて、適切に行われているといえるか。

2.4 経営支援(ハンズオン)

① 経営支援(ハンズオン)を行うファンドにおいては適切に経営支援が行われているか。

2.5 投資実績の評価及び開示

① 次の点を踏まえて、適切にモニタリングを行っているか。

  • 財務諸表等の指標に基づくモニタリングの基準を設定する
  • 投資先企業の財務情報や経営方針等の企業情報を継続的に把握する
  • EXITの方法、時期は、個別の案件ごとに取決め、円滑な退出を確保する

② 時価評価は適切に行われているか(内部評価と外部監査の有無)。

③ 政策目的との関係で効果的な運用となっているか。その運用状況を適時適切に評価、検証できるよう、個別案件及びファンド全体において、次の点を踏まえたKPI(Key Performance Indicators)を設定、公表しているか。

  • 政策性と収益性を適切に評価、検証できる指標にする
  • ファンド間で達成状況の比較検証が可能な指標にする
  • ファンドの設置期限の到来前であっても、その運用状況を適切に評価、検証できる指標にする
  • 各ファンドの政策目的を踏まえ、運用状況を評価、検証するために必要な指標に限定する

④ 投資実績に対するモニタリングや評価の基本となるべき開示情報が、可能な限り数値化されているか。

2.6 投資の運用方針の見直し

① 投資の運用実績の評価に基づき、運用方針の変更等が適切に行われているか。
(実績の評価、投資後のモニタリングにおいて、個別案件ごとのターゲット(PLやBS等の指標)、ターゲットから外れた場合の対応、個別案件のEXITを判断する基準、運用失敗の場合の判断基準とその場合の対応などが適切に行われているか)


3 ポートフォリオマネージメント

① 個別の案件でのリスクテイク(その際、政策的な必要性の説明責任を果たせるか)とファンド全体での元本確保のバランスを取るポートフォリオマネージメントは適切に行われているか。またポートフォリオマネージメントを確保する態勢(責任者、組織等)は整備されているか。

② 投資実績、運用実績を評価し、運用方針の変更などを行える態勢が整備され、機能しているか。そのために必要な投資後のモニタリングについては、投資チームとは別のチームが行う等、態勢が適切に整備されているか。


4 民間出資者の役割

① 民間出資者に求める役割が明確化されているか。

② 各ファンドの投資案件に対する民間出資者のインセンティブや動機は確認されているか。

③ 民間出資の条件(手数料や成功報酬、特別な利益供与などのサイドレターの有無、案件によるオプトアウト条項(競合他社への出資の忌避等)の有無、出向者やオブザーバーでの受入の有無等)は適切なものか。

④ 各ファンドは民間出資者に対して、民間ファンドと民間出資者との関係を参考にし、投資実績を適時適切に報告しているか。

  • 投資決定時における投資内容(投資先企業名、事業内容、投資額等)、決定プロセスや決定の背景の適切な開示に加え、投資実行後においても、当該投資について適切な評価、情報開示を継続的に行い、説明責任を果たしているか。
  • 投資実行後において、各投資先企業についての財務情報、回収見込み額、出資に係る退出(EXIT)方針、投資決定時等における将来見通しからの乖離等について、適時適切に報告しているか。

5 監督官庁及び出資者たる国と各ファンドとの関係

① 監督官庁及び出資者としての国と、投資方針の政策目的との合致、政策目的の達成状況、競争に与える影響の最小限化等について、必要に応じ国からの役職員の出向を可能とする措置を講じるなど、密接に意見交換を常時行うための態勢を構築しているか。

② 投資決定時における適切な開示に加え、投資実行後においても、当該投資について適切な評価、情報開示を継続的に行うほか、ファンド全体の経営状況に関する情報を定期的に開示するなど、国民に対しての説明責任を果たしているか。特に、政府出資等に重要な影響を与え得る損失が生じる場合にも、情報の秘匿性に留意しつつ、適時適切に情報開示を行っているか。

③ 監督官庁であり出資者である国が、政策目的の実現及び出資の毀損の回避の観点から、各ファンドによる投資内容及び投資実行後の状況等について適時適切に把握するため、各ファンドは次の事項について、監督官庁及び出資者それぞれに、適時適切に報告しているか。

  • 投資内容(投資先企業名、事業内容、投資額等)、投資決定のプロセスや背景等
  • 投資実行後における、適切な評価に基づく、各投資先企業についての財務情報、回収見込み額、出資に係る退出(EXIT)方針、投資決定時等における将来見通しからの乖離等

④ 守秘義務契約により上記の運用報告が妨げられる場合において、当該守秘義務契約の存在及びその理由について事前の説明も含め適切に報告しているか。