• 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書
  • 令和7年5月

官民ファンドにおける業務運営の状況に関する会計検査の結果について


別図表8 JOIN検証報告の概要

令和5年度決算において損失を計上した主な案件の概要
1
テキサス高速鉄道事業(損失額約417億円)
テキサス州で高速鉄道開発事業を進めている米国の民間企業に出融資・事業参画し、ダラス~ヒューストン間を新幹線システムで結ぶ事業
2
ブラジル都市鉄道整備・運営事業(損失額約81億円)
三井物産及びJR西日本と共同で出資するSPCを通じて、現地パートナーとともに、ブラジルにおいて参画した四つの都市鉄道整備・運営事業
3
ミャンマー都市開発3事業(損失額約179億円)
① ヤンゴンランドマーク事業
三菱商事及び三菱地所と共同で設立するSPCが、ミャンマーの現地企業とともに、ヤンゴン中央駅の西においてオフィス、ホテル等の建設及び運営を行う都市開発事業
② ヤンゴン博物館跡地開発事業
フジタ及び東京建物と共同で出資するSPCが、ミャンマーの現地企業とともに、ヤンゴン中央駅の北西においてオフィス、商業施設等からなる複合施設の建設及び運営を行う都市開発事業
③ ヤンキン都市開発事業
鹿島建設と共同で出資するSPCが、ヤンゴン中央駅の北のヤンキン地区においてオフィス、ホテル等から成る複合施設の建設及び運営を行う都市開発事業
JOINの役割・在り方の検証
1 インフラ海外展開は政府の重要な施策であり、現下の状況においてもJOINの役割には政策的意義・必要性はある。
2 設置期限の定めがない代わりに実施する5年毎の制度の見直しにおいては、外部有識者の目を入れて組織の存廃を含めて実施すべき
3 民業補完の原則を踏まえ、民間事業者がイニシアティブを発揮して事業に取り組む場合に、民間のみでは負いきれないリスクを負担する官民ファンドが必要
4 長期・大型インフラプロジェクトへの初期段階からの出資は高いリスクを伴い、通常は公的資金を含めた資金構築が必要。収益の見通しの立たないリスクの高い事業については、官民ファンドを活用する妥当性に乏しい。
個別事業検証も踏まえ、高速鉄道システム全体を導入する事業については、開発リスクの高さに鑑みて、整備に至るまでの初期段階からのエクイティ出資は、対象外とすべき
5 JOINには JBIC/JICAでは対応できない機能・役割(ハンズオン支援活用による初期段階からのリスクマネー供給)があり、これらを有機的に活用可能であれば、官民ファンドによる支援は有効
今後留意すべき事項
1 報告書で提示した対応策の措置状況を確認するため、第三者の目を入れたフォローアップが必要
2 累積損失解消のための改善目標・計画(改善計画)の策定に当たっては、固定費の削減に努めるべき
課題への対応策 1 (投資リスク管理について)
①リスクを踏まえた全体ポートフォリオ管理の的確な実施
  • カントリーリスクの高い国・地域への投資規模、1件当たりの投資規模を抑制
    (上限割合の設定)
  • ベンチャー投資は、当面控える。
  • 市場リスク、環境リスク等のリスクの多寡を可視化
  • リスク管理等の状況を確実にチェックできるよう、定期的な第三者評価の導入
  • 当面の間、着実な収益確保に努められるようなポートフォリオ管理を進める。既存案件についても、より一層のモニタリングと価値向上に努め、EXITをタイムリーに行うことができるようにして、累積損失の解消に最大限努める。
②厳格なリスク管理のための方策の実施
  • 大幅な収益悪化時等の客観的な撤退要件や退出(EXIT)方針の明確化
  • JOINによる先行出資は対象外とする。
  • 相手国政府が適切なリスクを負う確約の取得等、リスク予防・抑制を実施
③JOIN外の組織との連携、監督官庁の関与の在り方の改善
  • 協調案件の実施やリスク情報の共有等、JBIC、JICA等との効果的な連携策を構築
  • 国土交通省のサポートが必要な場面における対応の強化及び支援基準の適用状況の事後的なチェック体制の構築
2 (損失計上や公表について)
損失計上等のリスク情報・ネガティブ情報については、関係者への早期の説明が必要。公表内容も改善する。
2 (組織体制について)
まずは累積損失解消が第一の経営目標になることについて、事業委員会を含めJOIN内部でコンセンサスを図る。効果的なハンズオン支援のための専門的知見の提供方策の強化を行う。JOIN内部の事業推進に対する牽制機能の強化等の内部統制の確立、エクイティファイナンス審査体制の強化といった組織ガバナンスの構築が必要