給与等支給額を増加させるなどした場合においてその増加額の一定割合の税額控除を可能とする制度は、企業の給与等支給の増加を促す措置として平成25年度税制改正において創設された後、平成30年度税制改正において教育訓練費に係る上乗せ税額控除が導入されるなど、税額控除の適用規模が拡大し、4年度には適用件数約21万件、適用総額約5150億円となっている。そして、令和6年度税制改正においても、物価上昇を十分に超える持続的な賃上げが行われる経済の実現を目指す観点から強化等を行うこととされた。また、特別措置については、その効果、政策手段としての妥当性等の検証について引き続き国会等において議論となっている。
そこで、会計検査院は、有効性等の観点から、租税特別措置(給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除制度)における教育訓練費に係る上乗せ税額控除の適用状況、検証状況等について、次の点に着眼するなどして検査した。
検査に当たっては、平成30事業年度から令和3事業年度までに給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除制度を適用していた法人の申告(注7)のうち、電子申告を行った平成30事業年度89,976法人、令和元事業年度71,839法人、2事業年度84,297法人、3事業年度88,604法人、計延べ334,716法人(平成30年度から令和3年度までにおける合計適用件数498,450件の67.1%に相当)の申告に係る適用状況等を対象として、国税庁から当該法人に係る電子申告書データの提出を受けて分析した。そして、経済産業省から経済産業省企業活動基本調査(注8)(以下「企業活動基本調査」という。)に係るデータの提供を受けて教育訓練費と給与等の関係を分析するなどして検査した。また、経済産業省等において、教育訓練費に係る上乗せ税額控除の趣旨、教育訓練費に係る上乗せ税額控除の導入及び延長が決定された平成30年度から令和6年度までの税制改正要望書の内容、事前評価書の検証状況等を確認するとともに、財務省において、税制改正要望書等の検証状況等を聴取するなどの方法により会計実地検査を行った。