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  • 平成5年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第5 阪神高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

深礎杭工事における岩石破砕費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


深礎杭工事における岩石破砕費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (項)高速道路建設事業費
部局等の名称 阪神高速道路公団本社
工事名 上谷上工区下部及び道路工事ほか2工事
工事の概要 高速道路建設工事の一環として、橋台、橋脚の基礎杭及び地滑り抑止杭として深礎杭を築造するなどの工事
工事費 8,707,620,000円
(当初契約額8,425,400,000円)
請負人 東亜・大日本・新日本・石黒建設工事共同企業体ほか2共同企業体
契約 平成3年4月〜5年4月 指名競争契約、随意契約
過大積算額 4100万円
<検査の結果>
 上記の各工事において、深礎杭の施工に伴う岩石破砕費(積算額1億8,283万余円)の算定が適切でなかったため、積算額が約4,100万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっていたのは、岩石破砕作業についてバックホウ等の機械を使用して効率的な施工が行われているのに、積算の基準にこれに適合する歩掛かりがなかったことによるもので、施工の実態に即した積算の基準を整備する要があると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、阪神高速道路公団では、平成6年10月に、岩石破砕費の積算が施工の実態に適合したものとなるよう積算の基準を改正し、同月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

1 工事の概要

(工事の内容)

 阪神高速道路公団(以下「公団」という。)では、高速道路建設工事の一環として、平成5年度に、橋台、橋脚及び地滑り抑止杭等を築造する工事を3工事(工事費総額87億0762万円)施行している。これらの工事では、橋台、橋脚の基礎杭及び地滑り抑止杭として、深礎杭を、円形のもの124本(直径2〜6m)、小判形のもの5本(断面積69.6m2 、78.7m2 )、計129本施工している。

(深礎杭の施工)

 深礎杭は、掘削時の孔壁の崩壊を防ぐため、高さ50cmの波形鋼板を孔壁に沿ってリング状に組み立てながら、土砂等を人力又はバックホウ等の機械により支持地盤まで掘削した後、掘削孔に鉄筋を組み立て、コンクリートを打設して築造するものである(参考図1参照)

(工事費の積算)

 公団では、本件各工事の深礎杭の工事費は、本社制定の「土木工事標準歩掛」(以下「標準歩掛」という。)に基づいて積算することとしている。このうち軟岩及び硬岩(以下これらを「岩石」という。)の破砕費についてみると、標準歩掛では、作業員がハンドブレーカ(20kg級)を使用して破砕する工法(以下「人力破砕」という。)と火薬による発破工法との2種類の歩掛かりを定めており、施工条件によりいずれかの工法を採用することとしている。
 本件各工事で施工する深礎杭129本のうち岩石破砕を伴う110本については、施工場所が民家に近接しているなどのため発破工法を採用できないことから、人力破砕によることとしていた。そして、1m3 当たりの単価を、軟岩については7,654円から9,305円、硬岩については12,280円と算出し、これらの岩石破砕費を総額1億8,283万余円と算定していた。

2 検査の結果

(調査の観点)

 標準歩掛では、深礎杭の土砂掘削については、杭の直径が4m以上であるなどの場合には小型のバックホウ等の機械を使用して効率的に施工することとしているが、本件深礎杭の岩石の破砕については、掘削孔内の広さにかかわらず、すべて人力破砕により施工することとしている。そこで、本件各工事の岩石破砕作業の施工の実態を調査した。

(調査の結果)

 前記110本の深礎杭のうち、未施工の分を除いた深礎杭92本について調査した。その結果、直径4m未満の円形のもの54本については、人力破砕により施工していたが、直径4m以上の円形のもの33本、小判形のもの5本、計38本については、次のとおり、土砂掘削用の小型のバックホウに、近年普反している岩石破砕用のブレーカを装着して使用するなどして、効率的に施工していた(参考図2参照)

(ア) 円形の杭については、ブレーカ(200kg級)を装着した0.06m3 級のバックホウ1台及びハンドブレーカ1台により施工していた。

(イ) 小判形の杭については、ブレーカ(600〜800kg級)を装着した0.2m3 級のバックホウ2台及びハンドブレーカ2台により施工していた。

 そして、上記のような方法によれば、バックホウ等の機械経費が増加することを考慮しても、労務費が大幅に減少するため、人力破砕に比べて岩石破砕費を相当低減できることになる。

 したがって、岩石破砕費の積算は、上記の機械施工の実態に即して行う要があると認められた。

(低減できた積算額)

 本件各工事における岩石破砕費を施工の実態に即して修正計算すると、円形の杭(直径4m以上のもの)及び小判形の杭の場合、1m3 当たりの岩石破砕の単価は、軟岩については5,652円から7,053円、硬岩については9,827円となり、積算額1億8,283万余円を約4,100万円低減できたと認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、6年10月に、岩石破砕費の積算が施工の実態に適合したものとなるよう、標準歩掛に機械施工の歩掛かりを新たに定めて、同月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

(参考図1)

(参考図1)

(参考図2)

(参考図2)