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  • 平成15年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 文部科学省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

教育情報衛星通信ネットワークにおける送受信設備の有効活用等を図るよう改善させたもの


(1)教育情報衛星通信ネットワークにおける送受信設備の有効活用等を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 (1)    一般会計  (組織)文部科学本省  (項)学校教育振興費
(2)  一般会計  (組織)文部本省  (項)文部本省
   一般会計  (組織)文部科学本省  (項)生涯学習振興費
         平成12年度以前は、  
      (1)  (組織)文部本省  (項)学校教育振興費
      (2)イ  (組織)文部本省  (項)生涯学習振興費
部局等の名称 文部科学本省(平成13年1月5日以前は文部本省)
補助等の根拠 予算補助、委託契約
補助事業等 (1)   教育情報通信ネットワーク整備事業(補助事業)
  (2) 衛星通信利用による教育のネットワークモデル事業(委託事業)
    学習活動支援設備整備事業等(補助事業)
補助事業等の概要 (1)   教育関係職員の研修等の実施に必要となる送受信設備等を整備する都道府県等に対して補助するもの
  (2) 社会教育施設等に、教育情報衛星通信ネットワークの番組を受信するための受信設備を委託により整備等するもの
    社会教育施設等に受信設備を整備する都道府県又は市町村等に対して補助するもの
検査した施設数及びこれに係る設備整備の事業費 (1)   12箇所 8億4480万余円 (平成10、11、13各年度)
(2) 196箇所 1億2255万余円 (平成10年度)
  114箇所 1億7084万余円 (平成11年度〜14年度)
上記に対する国庫補助金交付額及び委託費総額 (1)     4億2221万余円 (国庫補助金交付額)
(2)   1億2255万余円 (委託費総額)
    8198万余円 (国庫補助金交付額)
設備が十分活用されていなかったなどの施設数及びこれに係る設備整備の事業費 (1)   7箇所 4億6839万円 (平成10、11両年度)
(2) 186箇所 1億1238万円 (平成10年度)
  96箇所 1億3405万円 (平成11年度〜14年度)
上記に対する国庫補助金交付額及び委託費総額 (1)     2億3401万円 (国庫補助金交付額)
(2)   1億1238万円 (委託費総額)
    6428万円 (国庫補助金交付額)

1 制度の概要

(教育情報衛星通信ネットワークの概要)

 文部科学省(平成13年1月5日以前は文部省)では、地域における生涯学習の支援、教職員の研修機会の拡充等を目的として、10年度に教育情報衛星通信ネットワーク(education and learning Network。以下「エル・ネット」という。)の整備に着手し、11年7月からその運用を開始している。
 エル・ネットは、地域住民を対象とした番組、文部科学省等からの教育行政情報・研修番組及び道府県等の教育センター等(以下「教育センター」という。)が制作した番組を送信したり受信したりすることができる設備を有する送受信局(Very Small Aperture Terminal。以下「VSAT局」という。)と、番組及びこれに係る放送スケジュール等(以下「番組等」という。)を受信することができる設備を有する受信局等の間を、衛星通信回線等により結ぶネットワークである(下図参照)

(図)エル・ネットの概要

(図)エル・ネットの概要

 VSAT局は、文部科学本省(13年1月5日以前は文部本省)、独立行政法人国立オリンピック記念青少年総合センター(13年3月31日以前は国立オリンピック記念青少年総合センター。以下「国立青少年センター」という。)等5箇所及び教育センター29箇所、計34箇所に設置されている。また、受信局は、各都道府県等における公民館、図書館等2,177箇所(15年度末現在)に設置されている。

(教育センターに設置されたVSAT局の設備の整備)

 文部科学省では、上記のうちVSAT局の設置された教育センター29箇所については、地域における学校教育関係の研修、研究発表会等の番組を制作及び送信するため、撮影及び映像編集機器、送受信装置、パラボラアンテナ、CSチューナー等の設備(以下「番組制作設備及び送信設備」という。)を整備等する教育情報通信ネットワーク整備事業を実施する道府県等に対し、これに要する経費の一部として10、11、13各年度に国庫補助金総額12億6572万円を交付している。

(受信局の設備の整備)

 受信局については、文部科学省において、公民館、図書館等に、エル・ネットの番組等の受信に必要となるパラボラアンテナ、CSチューナー、テレビ、パーソナルコンピュータ、プリンタ等の設備(以下「受信設備」という。)を整備しており、これにより、10年度に1,070箇所の受信局が、また11年度から15年度までの間に648箇所の受信局が設置されている。
 このうち、上記1,070箇所の受信局については、「衛星通信利用による教育のネットワークモデル事業」(委託事業)により事業費9億0823万余円で同省が受信設備を整備した後、公民館等にこれを無償で貸し付けたものである。
 また、上記648箇所の受信局については、学習活動支援設備整備事業等を実施する都道府県又は市町村等に対して国庫補助金総額4億5331万余円を交付し、受信設備を整備したものである。

(子ども放送局及びオープンカレッジ)

 前記のエル・ネットで放送される番組のうち、地域住民を対象とした番組には、主に、子ども放送局、オープンカレッジがあり、これらを受信するために設備を整備した公民館、図書館等の社会教育施設等において放映されている。
 このうち、子ども放送局は、全国の子供たちが双方向の通信により著名なスポーツ選手や科学者と直接会話したり、工作等をスタジオと一緒に体験したりするもので、この番組の制作及び放送は11年度から国立青少年センターが行っている。また、オープンカレッジは、エル・ネットを活用して大学の公開講座等を主として社会教育施設へ提供するもので、この番組の制作及び放送は同省が11年度から委託により実施している。

(番組を有効活用するための取組)

 エル・ネットは、地域における学習機会の充実を図り、地域住民の主体的な学習活動を支援するための一つの重要な手段として、その効果的な活用が期待されているものである。
 このため、文部科学省では、地域住民を対象とした番組が活用されるためには、社会教育施設等において、〔1〕子ども放送局を見ながら体験学習活動を行うなどの主催事業を行ったり、〔2〕地域住民に対する生涯学習の講座にオープンカレッジを組み入れたり、〔3〕これらの番組を録画し、地域住民に貸し出すことができるようにビデオライブラリーとして整理したりするなどの取組を行うことが有効であるとして、社会教育施設等に対し広報に努めるなどしている。

(番組制作及び送受信に係る設備の効率的運用及び管理)

 文部科学省では、前記の国庫補助事業等により整備された番組制作及び送受信に係る設備については、補助金の交付要綱等において、善良な管理者の注意をもって管理し、効率的運用を図らなければならないなどとしている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 VSAT局の設置された教育センターにおいて番組制作設備及び送信設備が活用されているか、また、受信局の大宗を占める社会教育施設等において子ども放送局及びオープンカレッジの番組を有効活用するための取組を行うことにより受信設備が活用されているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象)

 北海道ほか13府県(注) において、10、11、13各年度に番組制作設備及び送信設備を教育情報通信ネットワーク整備事業により整備した教育センター12箇所(補助対象事業費4億4480万余円(国庫補助金4億2221万余円))、及び10年度から14年度までに、受信設備を文部科学省が委託事業で整備して無償貸付けを行い又は学習活動支援設備整備事業等により整備した社会教育施設等310箇所(無償貸付けした受信設備の整備費1億2255万余円、補助対象事業費1億7084万余円(国庫補助金8198万余円))を対象として検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、VSAT局の設置された教育センターにおいて番組制作設備及び送信設備が十分活用されていなかったり、受信局の設置された社会教育施設等において受信設備が十分活用されていなかったりなどしていて、本件補助事業等の効果が十分に発現しているとは認められない事態が、15年度に北海道ほか13府県(注) の289箇所(うちVSAT局の設置された教育センター7箇所、受信局の設置された社会教育施設等282箇所。これらに係る無償貸付けした受信設備の整備費1億1238万余円、補助対象事業費6億0244万余円(国庫補助金2億9829万余円))において見受けられた。
 これらを態様別に示すと次のとおりである。
(1)VSAT局の設置された教育センターにおいて番組制作設備及び送信設備が十分活用されていなかったもの

4府県 7箇所 補助対象事業費 4億6839万余円
    国庫補助金 2億3401万余円

 これらは、教育センターにおいて、地域の教育に係る番組、研究発表会等の地方からの情報発信番組を積極的に制作及び送信することについての意識や意欲が乏しかったことなどにより、番組の制作及び送信が行われておらず番組制作設備及び送信設備が全く活用されていなかったり、これらの設備がごく低利用にとどまっていたりしていたと認められるものである。
(2)受信局の設置された社会教育施設等において、受信設備が十分活用されていなかったり、その管理が適切でなかったりしていたもの(ア、イの態様には、事態が重複しているものがある。)

14道府県 282箇所 無償貸付けした受信設備の整備費 1億1238万余円
(186箇所)
    補助対象事業費
国庫補助金
1億3405万余円
6428万余円
(96箇所)

ア 子ども放送局及びオープンカレッジの番組を有効活用するための取組を行っていなかったため、受信設備が十分活用されていなかったもの
 受信局の設置された社会教育施設等の中には、番組を有効活用するため、社会教育施設等の主催事業や生涯学習の講座に子ども放送局又はオープンカレッジの番組を組み入れるなどの前記取組を行っているものも見受けられた。
 しかし、その一方で、受信設備を活用することについての意識が乏しく番組を有効活用するための取組を行っていなかったため、番組の放映を全く行っていなかったり、放映の際に視聴者がいなかったりなどしていて、主に子ども放送局、オープンカレッジの番組を受信するために整備した設備が十分活用されていなかった社会教育施設等が、14道府県の262箇所(無償貸付けした受信設備の整備費1億0843万余円、補助対象事業費1億3015万余円(国庫補助金6238万余円))で見受けられた。
イ パーソナルコンピュータ等が利用されていなかったり、その管理が適切でなかったりしていたもの
 受信局の設置された社会教育施設等において、番組に係る放送スケジュール等を受信するためのパーソナルコンピュータ又はプリンタが利用されていなかったり、廃棄されていたりなどしていたものが、14道府県の212箇所(無償貸付けした受信設備の整備費5400万余円、補助対象事業費2726万余円(国庫補助金1310万余円))で見受けられた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、主として次のことによると認められた。
(ア)VSAT局の設置された教育センターにおいて、番組制作設備及び送信設備を活用し、積極的に地方の情報を発信することについての意識や意欲が乏しかったこと
(イ)受信局の設置された社会教育施設等において、〔1〕番組を地域の主催事業に取り入れるなどの取組を行っておらず、受信設備を活用しようとする意識に乏しかったこと、〔2〕受信設備は国庫補助事業等により整備されたにもかかわらず、これを補助目的等に従って適切に管理することについての認識が十分でなかったこと
(ウ)文部科学省において、〔1〕VSAT局の設置された教育センターに対し、番組制作設備及び送信設備の活用方策について周知徹底していなかったこと、〔2〕受信局の設置された社会教育施設等に対し、番組を有効活用するための取組方法について周知徹底していなかったこと、〔3〕受信局の設置された社会教育施設等に対し、廃棄等を行う際の手続を明確に示していなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、文部科学省では、エル・ネットの番組及び送受信設備の有効活用等を図るよう、16年9月に各都道府県等に対し通知を発するとともに、同年9月及び10月に同省主催の会議を開催して同通知の周知徹底を図るなどして、次のような改善の処置を講じた。
ア VSAT局の設置された教育センターに対し、番組制作設備及び送信設備を活用し積極的に地方の情報を発信するよう指導するとともに、これらの設備を活用する際の参考に資するための活用事例集を配付した。
イ VSAT局の設置された教育センター及び受信局の設置された社会教育施設等について、エル・ネットの担当者リストを作成し、担当者に対し電子メール等により、同省から番組の情報等を直接提供したり、常時連絡したりできる体制を整備した。
ウ 受信局の設置された社会教育施設等に対し、番組を有効活用するための取組を行って受信設備を活用するよう指導するとともに、受信設備を活用する際の参考に資するための活用事例集を配付した。
エ 受信局の設置された社会教育施設等に対し、無償貸付けした受信設備について今後の活用に係る調査を行い、利用計画等を作成させることとした。
オ 受信局の設置された社会教育施設等に対し、受信設備の廃棄等を行う際の手続について明確化を図り、受信設備を適切に管理するよう指導した。

北海道ほか13府県 北海道、京都府、青森、秋田、山形、栃木、群馬、新潟、石川、愛知、岡山、福岡、長崎、熊本各県