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  • 平成15年度|
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介護保険の普通調整交付金の交付が不当と認められるもの


(74)−(81)介護保険の普通調整交付金の交付が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織) 厚生労働本省
  (項) 老人医療・介護保険給付諸費
部局等の名称 厚生労働本省(交付決定庁)
東京都ほか5県(支出庁)
交付の根拠 介護保険法(平成9年法律第123号)
交付先 市2、町5、村1、計8市町村(保険者)
普通調整交付金の概要 65歳以上の者に占める75歳以上の者の割合等の市町村間における格差による介護保険財政の不均衡を是正するため、市町村に交付するもの
上記に対する交付金交付額の合計 489,171,000円 (平成13、14両年度)
不当と認める交付金交付額 38,427,000円 (平成13、14両年度)

1 交付金の概要

(介護保険の財政調整交付金)

 介護保険は、介護保険法に基づき、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)が保険者となって、市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者(以下「第1号被保険者」という。)等を被保険者として、加齢による疾病等の要介護状態などに関し、保健医療サービス及び福祉サービスの給付を行う保険である。
 介護保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、財政調整交付金が交付されている。財政調整交付金は、市町村が行う介護保険財政が安定的に運営され、もって介護保険制度の円滑な施行に資することを目的として、各市町村における介護給付等に要する費用の総額の5%に相当する額を国が負担し、それを各市町村に交付するもので、普通調整交付金と特別調整交付金とがある。

(普通調整交付金の概要)

 普通調整交付金(以下「交付金」という。)は、市町村における第1号被保険者の総数に占める75歳以上の者の割合(以下「後期高齢者加入割合」という。)及び所得段階の区分ごとの第1号被保険者の分布状況(以下「所得段階別加入割合」という。)が、市町村間で格差があることによって生じる介護保険財政の不均衡を是正するために交付するものである。

(交付金の算定方法)

 交付金の交付額は、次により算定することとなっている。

交付金の交付額は、次により算定することとなっている。

調整率 当該年度に交付する普通調整交付金の総額と市町村ごとに算定した普通調整交付金の総額とのかい離を調整する割合

 上記算式の調整基準標準給付費額及び普通調整交付金交付割合については、次のとおりとされている。

(ア)調整基準標準給付費額

 調整基準標準給付費額は、当該市町村における前年度の1月から当該年度の12月までにおける居宅介護サービス費、施設介護サービス費等の支給を行う介護給付に要した費用及び居宅支援サービス費等の支給を行う予防給付に要した費用(以下、これらの費用を「介護給付費等」という。)などの合計額とする。

(イ)普通調整交付金交付割合

 普通調整交付金交付割合は、当該市町村における後期高齢者加入割合を国から示されるすべての市町村における後期高齢者加入割合と比較した係数と当該市町村における所得段階別加入割合を国から示されるすべての市町村における所得段階別加入割合と比較した係数(以下「所得段階別加入割合補正係数」という。)を用いるなどして算出した割合とする。

(交付手続)

 交付金の交付手続については、〔1〕交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書を提出し、〔2〕これを受理した都道府県は、その内容を審査の上、厚生労働省に提出し、〔3〕厚生労働省はこれに基づき交付決定を行い交付金を交付することとなっている。
 そして、〔4〕当該年度の終了後に、市町村は都道府県に実績報告書を提出し、〔5〕これを受理した都道府県は、その内容を審査の上、厚生労働省に提出し、〔6〕厚生労働省はこれに基づき交付額の確定を行うこととなっている。

2 検査の結果

 北海道ほか21都府県の341市町村において、平成13、14両年度に交付された交付金について検査した結果、東京都ほか5県の8市町村において、交付金交付額計489,171,000円のうち計38,427,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
 これを態様別に示すと次のとおりである。

(1)調整基準標準給付費額を過大に算定しているもの

7市町村 14,621,000円

(2)普通調整交付金交付割合を過大に算定しているもの

1市 23,806,000円

このような事態が生じていたのは、市町村において制度を十分に理解していなかったこと、都県において実績報告書の審査、確認が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを都県別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

  都県名 交付先
(保険者)
年度 交付金交付額 左のうち不当と認める額
        千円 千円

(1)調整基準標準給付費額を過大に算定しているもの
(74) 愛知県 海部郡飛島村 14 8,381 3,041
(75) 滋賀県 甲賀郡甲南町 14 24,234 2,361
(76) 和歌山県 海草郡下津町 13 44,283 3,114
(77) 那賀郡那賀町 14 27,359 1,044
(78) 有田郡湯浅町 13 53,884 1,533
(79) 徳島県 阿南市 13 214,896 1,170
(80) 高知県 香美郡香我美町 13 33,931 2,358
  (1)の計     406,968 14,621

 上記の7市町村では、調整基準標準給付費額の算出に当たり、介護給付費等の額を誤るなどしていたため、調整基準標準給付費額が過大に算定されていた。
 上記の事態について一例を示すと次のとおりである。
<事例>
 下津町では、調整基準標準給付費額の算出に当たり、介護給付費等の額が、毎月厚生労働省に報告する介護保険事業状況報告(当該市町村における第1号被保険者数や介護給付費等の支給状況等に関する報告)に記載されていることから、この額を基に算出していた。
 しかし、上記事業状況報告の介護給付費等の支給額が誤っており、その誤った額に基づいたため、調整基準標準給付費額が過大に算定されていた。
 したがって、適正な調整基準標準給付費額に基づいて交付金の交付額を算定すると41,169,000円となり、3,114,000円が過大に交付されていた。

(2)普通調整交付金交付割合を過大に算定しているもの
(81) 東京都 国立市 13 82,203 23,806

 国立市では、所得段階別加入割合補正係数を算出するに当たり、その算出の基礎となる所得段階の区分ごとの第1号被保険者数として普通徴収の方法(注) により保険料を徴収している第1号被保険者数を用いて算出し、これにより普通調整交付金交付割合を4.13%と算出していた。
 しかし、上記の算出の基礎となる第1号被保険者数は普通徴収の方法により保険料を徴収している者だけでなく特別徴収の方法(注) により保険料を徴収している第1号被保険者も合わせた数であり、これに基づいて算出した所得段階別加入割合補正係数により普通調整交付金交付割合を算出すると2.93%となり、普通調整交付金交付割合が過大に算出されていた。
 したがって、適正な普通調整交付金交付割合に基づくなどして交付金の交付額を算定すると58,397,000円となり、23,806,000円が過大に交付されていた。

介護保険の第1号被保険者の保険料の徴収方法には、市町村が納入の通知をすることによって保険料を徴収する普通徴収の方法と、国民年金法(昭和34年法律第141号)等の年金各法で定める保険者に保険料を徴収させ、市町村に納入させる特別徴収の方法とがある。


  (1)、(2)の計     489,171 38,427