科目 | 独立行政法人農畜産業振興機構(畜産勘定) |
平成15年9月30日以前は、
農畜産業振興事業団(畜産助成勘定) (項)畜産助成事業費 |
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部局等の名称 | 農林水産本省 |
独立行政法人農畜産業振興機構(平成15年9月30日以前は農畜産業振興事業団)本部 | |
助成の根拠 | 独立行政法人農畜産業振興機構法(平成14年法律第126号) |
平成15年9月30日以前は、
農畜産業振興事業団法(平成8年法律第53号) |
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助成事業者 | 独立行政法人農畜産業振興機構 |
事業主体 | 社団法人中央酪農会議 |
助成事業 | 土地利用型酪農推進 |
事業の概要 | 畜産環境問題に適切に対応するとともに、飼料作物の作付地を確保するなど飼料基盤に立脚した酪農経営を支援するため、酪農経営者に対し、経産牛1頭当たりの飼料作物作付地の面積の水準に応じて飼料基盤強化奨励金を交付するなどのもの |
奨励金の交付額 | 85億8771万余円 | (平成15年度) |
飼料作物の作付けを実施していない酪農経営者に対して交付された奨励金額 | 1億3997万円 | (平成15年度) |
1 事業の概要
農林水産省では、畜産環境問題に適切に対応するとともに、飼料作物の作付地(以下「飼料作物作付地」という。)を確保するなど飼料基盤に立脚した酪農経営を支援するため、土地利用型酪農推進事業を、独立行政法人農畜産業振興機構(平成15年9月30日以前は農畜産業振興事業団。以下「機構」という。)に、機構の畜産業振興事業の一環として、実施させている。
土地利用型酪農推進事業は、農林水産省が定めた「土地利用型酪農推進事業実施要領」(平成11年11畜A第1460号農林水産省畜産局長通知。15年9月30日に廃止。)、15年10月以降については機構が定めた「土地利用型酪農推進事業実施要綱」(平成15年15農畜機第48号。以下「実施要綱」という。)等(以下、これらを併せて「実施要領等」という。)に基づき、社団法人中央酪農会議(以下「中央酪農会議」という。)を事業主体として実施されるもので、飼料基盤の強化奨励対策及び飼料基盤の強化推進の2種類からなっている。
このうち、飼料基盤の強化奨励対策に係る事業は、機構から助成を受けた中央酪農会議が、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法(昭和40年法律第112号)第5条に規定する指定生乳生産者団体(以下「指定団体」という。)に対して補助金を交付し、指定団体はこの補助金を基に、酪農経営者に対し、経産牛1頭当たりの飼料作物作付地の面積の水準に応じて飼料基盤強化奨励金(以下「奨励金」という。)を交付することなどを内容とするものである。
そして、奨励金の交付の対象となる酪農経営者は、実施要領等によれば、指定団体に対し自らが生産した生乳を原則として当該年度に年間を通して出荷すること、飼料作物作付けの確認等この事業の実施に関し協力することなどの一定の要件(以下「交付要件」という。)のすべてに適合する者となっている。
上記の奨励金の額の算出方法は、実施要領等によれば次のとおりとなっている。
〔1〕 指定団体ごとに個々の酪農経営者の補助対象経産牛頭数を算出する。
〔2〕 補助対象経産牛1頭当たりの飼料作物作付地の面積の水準に応じて、指定団体ごとに、酪農経営者をAランクからDランクまでの4ランクに分類し、各ランクに応じた1頭当たりの奨励金単価を所定の方法により設定する。
〔3〕 上記〔2〕の奨励金単価に、〔1〕の補助対象経産牛頭数を乗じて奨励金の額を算出する。
そして、ランクごとの奨励金単価は、上記のように指定団体ごとに設定されているが、その一例を挙げると下表のとおりとなっている。
地域 | ランクの分類 | 補助対象経産牛1頭当たりの飼料 作物作付地の面積の水準 |
ランク別奨励金単価 (補助対象経産牛1頭当たり) |
関 東 |
Aランク Bランク Cランク Dランク |
8a以上 4a以上8a未満 2a以上4a未満 0a以上2a未満 |
2,658円 2,354円 2,050円 1,139円 |
実施要領等によれば、Dランクの面積の水準は0a以上とされており、飼料作物の作付けを実施していない酪農経営者であっても交付要件のすべてに適合していれば、Dランクに該当するものとして、奨励金が交付されることとなっている。
そして、上記の方法により算出された奨励金の総額に対して、機構は中央酪農会議に当該年度分の補助金を交付しており、中央酪農会議ではこの補助金を原資として、指定団体を経由して酪農経営者に対し奨励金を交付している。
2 検査の結果
上記のとおり、交付要件のすべてに適合していれば飼料作物の作付けを実施していない酪農経営者に対しても奨励金は交付されることとなっているが、農林水産省では、その理由を、飼料生産のための土地の確保等への取組を誘導するためであるとしている。
そこで、飼料作物の作付けを実施していない酪農経営者に対する奨励金の交付が、飼料生産のための土地の確保等への取組を誘導するものとして機能を果たしているかという点に着眼して、15年度に機構が中央酪農会議に奨励金の原資として交付した補助金85億8771万余円を対象に検査を実施した。
検査の結果、次のような事態が見受けられた。
15年度に奨励金の交付を受けた酪農経営者は23,955名であるが、このうち、飼料作物の作付けを実施していなかった者は3,430名となっていた。
そして、上記の酪農経営者3,430名のうち、11年度から15年度までの間、継続して奨励金の交付を受けた酪農経営者2,931名について、個別に11年度以降の飼料作物の作付状況を検査したところ、13年度以降の3年間にわたって飼料作物の作付けを全く実施していない酪農経営者が2,297名となっていて、さらにそのうちの1,855名については、11年度から15年度までの5年間にわたって、飼料作物の作付けを全く実施していない状況となっていた。
上記のとおり、15年度において飼料作物の作付けを実施していない酪農経営者のうち、その大半が、継続して飼料作物の作付けを実施していないという状況をみると、奨励金の交付は飼料生産のための土地の確保等への取組を誘導する機能を果たしていないと認められた。
以上のことから、15年度に飼料作物の作付けを実施していない酪農経営者3,430名に対して奨励金1億3997万余円(15年度分)を交付している事態は、飼料基盤に立脚した酪農経営を支援することとしている本件事業の趣旨に沿ったものとなっておらず、改善を図る要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、農林水産省において、飼料作物の作付けを実施していない酪農経営者に対し、奨励金を交付することが飼料生産のための土地の確保等への取組を誘導する機能を果たしていないにもかかわらず、奨励金の交付要件の見直しを行うことなく飼料作物の作付けを実施していない酪農経営者についても奨励金の交付対象者とし続けていたことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、16年3月に機構に対して、奨励金の交付が本件事業の趣旨に沿ったものとなるよう、交付要件の見直しを行うことなどを要請する旨の通知を発し、また、この要請に基づき、機構では、同年7月に実施要綱を改正して、飼料作物の作付けを実施していない酪農経営者を奨励金の交付対象者から除外することとし、その内容を関係者に周知する処置を講じた。