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  • 平成15年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第2 首都高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

床組構造改築工事における炭素繊維シート貼付工の材料費の積算を施工の実態等に適合するよう改善させたもの


床組構造改築工事における炭素繊維シート貼付工の材料費の積算を施工の実態等に適合するよう改善させたもの

科目 (項)高速道路改築事業費
部局等の名称 西東京管理局(平成15年5月19日以前は東京第一保全部)、神奈川管理局
工事名 床組構造改築工事1−60ほか6工事
工事の概要 交通量の増大及び通行車両の大型化によるコンクリート床版の損傷や劣化の進行を抑制するため、床版を補強するなどの工事
工事費 36億0906万円
請負人 住友重機械工業株式会社ほか5社
契約 平成14年3月〜16年3月 公募型指名競争契約、指名競争契約
炭素繊維シートの材料費の積算額 9億6383万余円
低減できた炭素繊維シートの材料費の積算額 3600万円

1 工事の概要

(工事の内容)

 首都高速道路公団(以下「公団」という。)西東京管理局(平成15年5月19日以前は東京第一保全部)及び神奈川管理局では、14、15両年度に、交通量の増大及び車両の大型化によるコンクリート床版(以下「床版」という。)の損傷や劣化の進行を抑制するため、床版を補強するなどの床組構造改築工事を7工事(工事費総額36億0906万円)施行している。

(床組構造改築工事の概要)

 床組構造改築工事は、橋りょう上部における桁端部及び床版等の補強工事を行うものであり、床版の補強工事の工法には炭素繊維格子接着工法、鋼板接着工法等がある。このうち炭素繊維格子接着工法は、炭素繊維を一方向に配列した幅25cmのテープ状の炭素繊維シート(以下「シート」という。)を床版下面に主鉄筋方向と配力鉄筋方向それぞれに間隔を空けて格子状に樹脂により接着するなどして、シートと床版とを一体化させ、曲げ耐力の増大を図るとともに、ひび割れの発生・進行を抑制し、疲労耐久性等の向上を図るものである(参考図参照)

(シートの材料費の積算)

 公団では、シートの材料費を積算するに当たって、シートの接着工事(以下「シート貼付工」という。)の積算基準等がないことから、シート貼付工を行う際に設計数量に対して生ずるシートの損失の割合(以下「シートの損失率」という。)に1を加えて得た値を積算における割増係数とし、これを業者からの見積りに基づき1.06としていた。そして公団の調査等に基づくシート1m 当たりの単価に、この値を乗ずるなどしてシートの積算単価を算出し、これに前記工事の設計数量の68,778m を乗じて、シートの材料費を9億6383万余円と積算していた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 近年、公団における床版の補強工事は、従来の工法である鋼板接着工法等に加え、より軽量な材料であるシートを貼付する炭素繊維格子接着工法による施工が行われるようになった。そして、炭素繊維格子接着工法による工事は、これまでに多数施工され、シートの材料費も多額に上っており、また、今後もこの工法による工事が多数見込まれることから、シートの材料費の積算が適切なものとなっているかに着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、シートの割増係数1.06は、次のとおり、設計図書等及び工事の施工の実態から算出される割増係数と異なっており、本件各工事におけるシートの材料費の積算について適切とは認められない事態が見受けられた。
 すなわち、床版下面の主桁と横桁に囲まれた区画(以下「区画」という。)のうち、路線の直線部及び曲線部それぞれの任意の1区画について、設計図書等から貼付作業時における作業員のつかみしろ等をシートの損失分として考慮して、必要とされる使用数量を算定したところ、設計数量は、それぞれ20.04m 及び16.30m であるのに対して、必要とされる使用数量は、20.41m 及び16.64m であった。これによると、シートの損失率は1.8%及び2.1%となり、これにより割増係数を算定すると1.02程度となる。
 そこで、本院の指摘に基づき公団において多数の区画から構成される径間ごとにシートの設計数量と使用数量の比較によるシートの損失率について実態調査を実施したところ、設計数量は、1径間当たり415.1m から492.3m であるのに対し、使用数量は、425.0m から507.5m であった。この実態調査によると、シートの損失率は1.7%から3.7%となり、見積りに基づく割増係数の1.06を下回っており、割増係数は1.02程度とすることが適切であると認められた。
 したがって、公団において、シートの材料費の積算に当たり、設計図書等及び施工の実態に適合した割増係数により積算を行う要があると認められた。

(低減できた積算額)

 上記により、本件各工事におけるシートの割増係数を1.02としてシートの材料費を修正計算すると、総額9億2780万余円となり、前記の積算額9億6383万余円を約3600万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、シートの材料費の積算に当たって、見積りを徴取して、割増係数を決める際に、設計図書等及び施工の実態を反映させるための検討が十分でなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、16年8月に床組構造改築工事におけるシート貼付工の割増係数について施工の実態等に適合した適切なものとなるよう事務連絡を発し、同月以降契約する工事から適用する処置を講じた。

(参考図)

(参考図)