ページトップ
  • 平成15年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第3節 特に掲記を要すると認めた事項

第1 海上自衛隊舞鶴航空基地及びSH−60J型哨戒ヘリコプターの活用について


第1 海上自衛隊舞鶴航空基地及びSH−60J型哨戒ヘリコプターの活用について

検査対象 内閣府(防衛庁)
会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本庁 (項)航空機購入費
    (項)施設整備費ほか
  (組織)防衛施設庁 (項)施設運営等関連諸費
部局等の名称 防衛庁本庁
整備の概要 (1) 海上自衛隊舞鶴地区にヘリコプターのための航空基地を整備したもの
(2) 哨戒ヘリコプターの調達
15年度末までの整備費の合計 (1) 施設整備費 278億円  
  物品購入費 70億円 (平成15年度末の物品現在額)
(2) 哨戒ヘリコプター 315億円  
  663億円  

1 舞鶴航空基地等の整備の概要

(防衛計画の大綱に基づく防衛力の整備)

 防衛力の整備については、我が国の防衛力の在り方についての基本的な指針である「防衛計画の大綱」及びその内容の実現を計画的に進めるための「中期防衛力整備計画」等に基づき、防衛庁において、各年度における必要な予算について国会の審議及び議決を経た上で、計画的に実施することとなっている。

(舞鶴航空基地の整備)

(1)舞鶴航空基地の概要

 防衛庁では、京都府舞鶴市に所在する海上自衛隊舞鶴地区に、ヘリコプター(以下「ヘリ」という。)のための航空基地を整備することとし、同市雁又地区に平成5年度から用地の取得、施設の建設等を行い、13年3月、海上自衛隊で日本海側唯一の航空基地となる舞鶴航空基地を開設した。同基地は、面積が約24万m で、長さ400m、幅45mの滑走路、SH−60J型哨戒ヘリ(以下「SH−60J」という。)10機及び外来の大型掃海・輸送ヘリ2機、計12機までが駐機可能なエプロン、航空保安施設である飛行場灯火等を有している。さらに、ヘリの配備に伴って必要となる関連施設として、格納庫1棟、整備用の格納庫1棟、航空機部品等の補給倉庫等が、また、敷地外には、気象レーダー施設等が設置されている。
 以上についての15年度末までの整備費は、用地購入等約139億円、基地施設建設等約139億円、計約278億円、また物品購入約70億円(15年度末の物品現在額)と多額に上っている。
 そして、基地開設に際しては、「海上自衛隊の編成等に関する訓令」(昭和42年海上自衛隊訓令第1号)により、ヘリの運用等のための舞鶴航空分遣隊、ヘリの整備等のための舞鶴整備補給分遣隊及び航空基地の管理等のための舞鶴航空基地隊を、千葉県館山市所在の館山航空基地に司令部を置く第21航空群所属の部隊として、舞鶴航空基地に新編している。

(2)舞鶴航空基地整備の目的

 舞鶴地区には、昭和63年度及び平成元年度に哨戒ヘリを1機搭載可能な護衛艦(以下「DD」という。)がそれぞれ1隻ずつ配備された。しかし、同地区には航空基地がないため、海上自衛隊では、DDが出港の都度、護衛艦に搭載する哨戒ヘリ(以下「艦載ヘリ」という。)を遠隔の航空基地から舞鶴地区に進出させて搭載せざるを得ないことから、天候状況に左右されやすいだけでなく、搭載前後における艦載ヘリの整備、補給等が適時適切に行い難いなど、DDと艦載ヘリの一体運用に支障を来たしている状況となっていた。
 そこで、防衛庁では、この状況を解消するため、前記のとおり、艦載ヘリを最大10機程度、外来の大型掃海・輸送ヘリ2機を含めれば計12機まで対応可能な規模をもつ艦載ヘリ支援基地として、舞鶴地区に航空基地を整備することとした。

(3)舞鶴航空基地整備の経緯

 防衛庁の施設の整備は、「防衛庁設置法」(昭和29年法律第164号)等に基づいて、防衛施設庁(以下「施設庁」という。)が防衛庁長官の定めるところにより行うこととされている。これに基づき、施設庁では、用地の取得、施設の建設等を行うほか、施設の取得に関する事務及び施設の使用条件についての利害関係人又は関係機関との連絡及び交渉並びにそれらの間の意見の調整を行うこととなっている。
 そこで、防衛庁では、舞鶴航空基地の整備に当たり、元年8月に、施設庁に対し、航空基地の整備が円滑に実施できるよう地元関係者との所要の調整(以下「地元調整」という。)を指示し、6年9月に地元の基本了承を得るなどして、13年3月に舞鶴航空基地を開設した。
 そして、このうち、地元調整においては、艦載ヘリ支援基地として、艦載ヘリが最大で10機程度(通常7機程度)まで対応可能な飛行場を整備することのほか、その運用等に当たっては、艦載ヘリは護衛艦の出港に合わせて日本海に進出の上、訓練の終了後舞鶴航空基地に帰還すること、飛行回数は護衛艦への搭載訓練に必要な限られたものとすることなど市民生活に極力支障が生じることのないよう十分に配慮することなどについて地元に説明し了承を得ていた。

(海上自衛隊における哨戒機部隊の整備)

 海上自衛隊の哨戒機部隊は、護衛艦と行動をともにする艦載ヘリ部隊と航空基地を行動の拠点とする陸上哨戒機部隊とに大別される。このうち、陸上哨戒機部隊には、周辺海域の監視哨戒等の任務に当たる固定翼哨戒機の部隊と、沿岸海域において主要な港湾、海峡などの警備及び防備に当たる哨戒ヘリ(以下「沿岸哨戒ヘリ」という。)の部隊とがある。
 上記の陸上哨戒機部隊については、舞鶴航空基地を建設中の7年11月に閣議決定された現行の「平成8年度以降に係る防衛計画の大綱」(以下「現防衛大綱」という。)において、13個隊を編成することとされている。そして、その内訳は、固定翼哨戒機部隊8個隊と沿岸哨戒ヘリ部隊5個隊となっている。
 このうち、沿岸哨戒ヘリ部隊5個隊については、地域的欠落を生じさせない態勢を最小限確保するという考え方に基づき、大湊、横須賀、呉、佐世保及び舞鶴の各地方隊が受け持つ警備区域毎に1個隊ずつ編成することとされている。
 そして、艦載ヘリ部隊及び沿岸哨戒ヘリ部隊が保有する哨戒ヘリについては、中期防衛力整備計画に基づき、SH−60J(1機約44億円)を整備することとし、15年度までに100機の調達を完了している。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 11年の能登半島沖不審船事案において、海上自衛隊創設以来初めて海上における警備行動が発令されるなど、日本海を含めた周辺海域における防衛と海上交通の安全確保などを含め、これら事態への態勢の整備が強く意識されるようになった。
 このような状況の中で、多額の国費を投下して整備された舞鶴航空基地及びSH−60Jは、有効に活用されているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象)

 舞鶴航空基地(15年度末までの施設整備費等約278億円、物品購入費約70億円)及び調達済のSH−60Jについて検査した。

(検査の結果)

 上記について検査したところ、次のような事態となっていた。
 沿岸哨戒ヘリ部隊についてみると、前記のとおり、海上自衛隊の各地方隊が受け持つ5つの警備区域毎に、1個隊ずつ、計5個隊を編成することとされている。そして、大湊、呉、佐世保各地方隊には、それぞれ大湊航空隊、小松島航空隊、大村航空隊が、また、横須賀地方隊の警備区域には館山市に所在する第21航空群第101航空隊が、沿岸哨戒ヘリ部隊として編成されており、それぞれ担当区域の警備等の任務に当たっていた。
 しかし、舞鶴航空基地については、海上自衛隊で日本海側唯一の航空基地として整備され、運用開始されてから3年を経ているにもかかわらず、防衛庁が、以下の点を考慮するなどしてきたため、同基地には、舞鶴地方隊の警備区域(以下「舞鶴警備区」という。)を担当する沿岸哨戒ヘリ部隊が編成されておらず、沿岸哨戒ヘリも置かれていない状況となっていた。

〔1〕 7年11月に現防衛大綱が決定されたが、元年以降の地元調整において、同基地は艦載ヘリ支援基地として使用すると説明し、これにより地元の基本了承を得て基地整備を進めてきたこと

〔2〕 同基地開設前の12年12月に、現防衛大綱に基づく中期防衛力整備計画が決定され、その中で、将来の防衛力の在り方について検討を行うこととされたことから、沿岸哨戒ヘリ部隊の将来体制の検討の必要性が生じたこと

 そして、同基地及び哨戒ヘリは次のような状況となっていた。

(1)舞鶴航空基地の現況

 舞鶴地区には、従来から配備されているDDに加えて9年度以降、哨戒ヘリ3機搭載可能な護衛艦(以下「DDH」という。)が配備されており、舞鶴地区における哨戒ヘリが搭載可能な護衛艦は、DDH1隻及びDD2隻となっていて、舞鶴航空基地は、これら護衛艦に搭載される艦載ヘリの支援を実施している。
 しかし、同基地は、前記のとおり最大12機までのヘリに対応可能な規模を有しているのに対し、実際のヘリに対する支援状況は、基地運用開始から15年度末までの平均で1日当たり約4機となっていた。このことから、同基地は、哨戒ヘリ7機を保有の基本とする沿岸哨戒ヘリ部隊の編成にも対応可能であるなど、より多くのヘリの運用に対応できる規模を有していると認められた。

(2)哨戒ヘリについて

 哨戒ヘリについては、15年度納入分をもって、必要なSH−60J100機の調達を完了していた。そして、その中には、舞鶴警備区を担当することとされている沿岸哨戒ヘリ部隊に必要な哨戒ヘリ7機(これに係る調達額計約315億円)も含まれていた。
 しかし、この7機は、前記のように、舞鶴航空基地に沿岸哨戒ヘリ部隊が編成されていないため、既に沿岸哨戒ヘリ部隊として編成されている前記の4個隊等の航空部隊に保有されており、必要な場合には遠隔地の航空部隊から舞鶴警備区に進出せざるを得ず、即応性の点からも有効に活用されていない状況となっていた。

3 本院の所見

 今後の防衛力については、15年12月に閣議決定された「弾道ミサイル防衛システムの整備等について」において、その在り方を明らかにするため、16年末までに新たな防衛計画の大綱を策定するとしており、また、海上自衛隊等の基幹部隊について、新たな編成等の考え方を構築するとしている。これを受けて、防衛庁では、現在、新たな防衛計画の大綱策定に向けて、防衛力の在り方について検討を行っている。
 近年、安全保障環境の変化に伴い、日本海を含めた周辺海域における防衛と海上交通の安全確保などの重要性が強く意識され、哨戒ヘリについては多様な事態への対応のための新たな任務が増加していることから、整備した航空基地やヘリ等を有効に活用して国民の期待に応えることが重要である。
 こうした中で、海上自衛隊で日本海側唯一の航空基地である舞鶴航空基地は、艦載ヘリ支援基地としての位置付けに止められてきたため、より多くのヘリの運用に十分対応できる規模を有しているのに、十分に活用されておらず、また、舞鶴警備区を担当する沿岸哨戒ヘリ部隊に必要なものとして調達された哨戒ヘリは、他の航空部隊で保有されていて有効に活用されていない状況となっている。
 したがって、防衛庁においては、今後の防衛力の在り方を踏まえ、防衛力の整備に資するものとなるよう、地元に対して協力を要請するなどして、舞鶴航空基地及び調達された哨戒ヘリを有効に活用するために必要な措置を講ずることが望まれる。