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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成18年9月

政府開発援助(ODA)に関する会計検査の結果について


3 検査の結果に対する所見

 草の根無償は、開発途上国において活動しているNGO、地方公共団体、教育・医療機関等が現地において実施する比較的小規模な案件に対して、我が国の在外公館が迅速かつ的確に対応することにより草の根レベルに直接効果が発現することを目的としている。
 草の根無償は、15年度に人間の安全保障の考えを反映させ草の根無償資金協力から草の根・人間の安全保障無償資金協力に改称され、予算額が増加され、供与限度額は従来の最大5000万円から1億円までに拡充されており、在外公館においては、供与資金の適正な使用に対する説明責任の徹底が求められている。そして、外務本省では、15年度以降、ガイドラインにより、在外公館における案件の申請、モニタリング、フォローアップ等に関する実施手順などを具体的に示している。
 今般、会計検査院は、草の根無償の実施状況について、外務本省及び7箇国10在外公館において検査を実施した結果、13、14両年度に比べて15、16両年度では、案件現場の視察による事前調査が緊急案件を除きすべて実施されるようになっており、また、案件実施中における現場視察の実施率が増加している状況となっていたが、その一方で、以下のような事態が認められた。
〔1〕 草の根無償は、贈与契約の締結から1年以内の決められた期日までに案件を終了することとされているのに、案件終了まで1年以上経過しているものが少なからず見受けられ、贈与契約上の終了期日までに終了していないものが多く見受けられる一方、契約期間の変更に関する承認手続がほとんど行われていない状況となっている。
〔2〕 最終報告書の提出が遅延しているものがあったり、案件現場の視察による終了時の確認が十分に実施されていないものがあったり、一部の案件が未終了となっていたりしている。
〔3〕 案件終了後の現場におけるフォローアップは、一部の在外公館を除き実施が低調となっている。
 外務本省においては、以上の検査の結果を踏まえ、在外公館における草の根無償の実施の実態を把握した上で、草の根無償が制度の趣旨に沿って適正に実施され所期の目的を果たすよう、在外公館に対し以下の点について指示を徹底し、また、在外公館においては、今後の業務運営等に当たり更に留意することが必要であると考えられる。
〔1〕 贈与契約の締結等の際には、契約上の期日以内に案件を終了すること、契約期間等の変更には承認手続が必要なこと、案件終了後速やかに最終報告書を提出することなど贈与契約の内容に沿った適切な案件の実施について被供与団体に対し十分に説明し、草の根無償の制度の趣旨を一層周知徹底すること
〔2〕 被供与団体との連絡を密に取り、案件の進ちょく状況や最終報告書の提出状況などを踏まえ、案件現場の視察を必要に応じて、遺漏がないよう実施し、施設、機材の現況を確認し同団体の活動状況を把握して案件が未終了のままとならないよう努めること
〔3〕 案件終了後における事業効果の発現状況について、案件現場に赴き施設や機材の利用状況を把握するなどして、終了した案件を事後的に評価し、将来の案件形成にフィードバックすることが不可欠な業務であることを十分認識して、計画的、効率的なフォローアップに一層努めること
 会計検査院としては、開発途上国においては草の根無償の事業内容が多様化し、援助実績も増加してきていることにかんがみ、今後とも、草の根無償が制度の趣旨に沿って適切に実施され、当初想定したとおりの事業効果が発現しているかについて注視していくこととする。