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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成18年10月

財投機関における財政投融資改革後の財務状況と特殊法人等改革に伴う財務処理の状況について


検査対象
国が資本金の2分の1以上を出資している法人のうち、平成16年度において財政投融資の対象となっている37法人、及び12年度において財政投融資の対象となっていた法人で16年度までに財投事業を廃止するなどして財政投融資の対象ではなくなった2法人の計39法人
財政投融資の対象となっている37法人の資産合計
(負債・資本合計)
286兆4079億円
(平成16年度末)
負債合計
258兆4050億円
(平成16年度末)
資本合計
28兆0029億円
(平成16年度末)
上記の37法人に対して交付された政府出資金
5495億円
(平成16年度)
上記の37法人に対して国から交付された補助金、交付金及び補給金
2兆1137億円
(平成16年度)
財政投融資の対象ではなくなった事業(2法人)に係る最終決算時の欠損金合計
256億円
 
特殊法人等改革の過程で生じた政府出資金の減少額のうち財政負担となるものの額
2兆4095億円
 
うち事業の承継に伴うもの
2兆1106億円
うち事業の廃止等に伴うもの
2988億円

1 検査の背景

 会計検査院は、平成12年度決算検査報告において「財投機関の決算分析について」、(以下「12年度報告」という。)を掲記している。財政投融資の対象となっている機関(以下「財投機関」という。)を取り巻く環境は、その後、財政投融資改革(以下「財投改革」という。)や特殊法人等改革が行われるなど大きく変化した。
 両改革は、特殊法人等改革の対象に財投機関が含まれているなど内容的に密接に関連するところがあるが、その概要は以下のとおりである。

(1)財投改革等の概要

ア 財政投融資制度の概要

 財政投融資は、財政政策の一環として、有償資金等を活用して、民間では実施が困難な大規模・超長期プロジェクトや長期資金の供給など特定の事業等を政策的に支援する仕組みである。
 財政投融資は、財政融資、政府保証及び産業投資の3つから成り立っており、その概要はおおむね次のとおりである。

〔1〕 財政融資

 財政融資資金特別会計が発行する国債(以下「財投債」という。)により金融市場から調達した資金等を財源として財投機関に融資(財投機関の発行する債券の引受けを含む)を行うものである。国の信用に基づき最も有利な条件で資金調達しているため、長期・固定・低利での資金供給が可能となる。

〔2〕 政府保証

 財投機関が金融市場で資金を調達する際に、元利金の支払について政府が保証を付するもので、財投機関は、事業に必要な資金を円滑かつ有利に調達することができる。

〔3〕 産業投資

 産業投資特別会計(以下「産投特会」という。)が、投資先からの配当金や国庫納付金等を財源として、産業の開発及び貿易の振興のために行う投資である。

イ 財投改革の概要

 財政投融資制度については、13年度に抜本的な改革が行われ、郵便貯金や年金積立金の全額を資金運用部に預託する制度が廃止された。そして、財投機関が財政投融資を利用して行う事業(以下「財投事業」という。)について民業補完の観点から見直しを行うとともに、真に必要な事業の資金調達については、財投機関が金融市場において個別に発行する政府保証のない公募債券(以下「財投機関債」という。)の発行により金融市場での自主調達に努め、財投機関債による資金調達では当該政策分野に必要な資金需要を満たすことができない機関又は資金コストが大幅に上昇してしまう機関に対しては、国民の負担を最小にする観点から、財投債により金融市場で調達した資金等を財政融資資金として財投機関に融資する仕組みに改められた。
 また、政府保証債(政府保証が付された債券)については、財政規律の確保等の観点から、直ちには財投機関債を発行することが困難な機関等について、個別に厳格な審査を経た上で限定的に発行を認めることとされた。
 なお、財投機関債は、財投機関に対して、ディスクロージャーを促進させ、市場との緊張関係を通じた業務効率化へのインセンティブを高める点において、効果があると考えられている。

(2)特殊法人等改革等の概要

ア 特殊法人等改革の概要

 政府は、特殊法人等改革に関し、行政改革大綱(平成12年12月閣議決定)及び特殊法人等改革基本法(平成13年法律第58号)に基づき、特殊法人等整理合理化計画(平成13年12月閣議決定)を策定している。この改革では、行政改革の一環として、全特殊法人等の事業の徹底した見直しを行い、これを踏まえ、組織形態について廃止・民営化等に向けた見直しを行うこととしており、同計画では、163の特殊法人等を対象に、事業及び組織形態の見直し内容を個別に定めるとともに、各特殊法人等が共通的に取り組むべき改革事項を掲げている。その結果、16年度末までに135法人について廃止、民営化、独立行政法人化等の措置が講じられた。また、国民生活金融公庫ほか7公庫等(注1) については「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(平成18年法律第47号。以下「行政改革推進法」という。)により、廃止、民営化を含めた組織形態の抜本的改革を行う政策金融改革が現在進められている。
 上記の163法人には、特殊法人等である財投機関も含まれているが、これらの財投機関について、行政改革大綱においては、財政支援の在り方について抜本的に見直し、財投改革を着実に実施するとの観点から、〔1〕財政投融資の縮減・重点化、〔2〕財投機関債発行機関の拡充などの、財政投融資の不断の見直しを進めるとされている。

(注1)
 国民生活金融公庫ほか7公庫等 別表1参照


イ 特殊法人等改革に伴う独立行政法人への移行

 特殊法人等改革の結果、財投機関に関しては、16年度末までに、23の特殊法人等の組織・事業を統廃合するなどして18の独立行政法人が設立されている。
 独立行政法人の会計は、原則として企業会計原則によることとされているが、公共的な性格を有し、利益の獲得を目的とせず、独立採算制を前提としないなどの独立行政法人の特殊性を踏まえて、企業会計原則に必要な修正を加えた独立行政法人、会計基準が12年2月に策定(15年3月、17年6月改訂)されており、独立行政法人は、その会計を処理するに当たってこの基準に従わなければならないとされている。