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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成19年9月

政府開発援助(ODA)に関する会計検査の結果について


   第2 開発コンサルタント、NPO等への委託契約の状況について

1 18年報告の概要

(1) 18年報告の検査の対象、観点、着眼点及び方法

 18年報告の検査の対象、観点、着眼点及び方法は、次のとおりである。

ア 18年報告の検査の対象、観点及び着眼点

 会計検査院は、18年次において、開発コンサルタント会社、特定非営利活動法人(Non Profit Organization。以下「NPO」という。)等(以下、これらを総称して「コンサルタント」という。)への委託契約の状況について、我が国の援助実施機関である外務省、国際協力銀行(Japan Bank for International Cooperation。以下「JBIC」という。)及び独立行政法人国際協力機構(Japan International Cooperation Agency。以下「JICA」という。)が12年度から16年度までの5年間にコンサルタントと締結した事務・業務の委託契約を対象として検査した。
 JICAがコスタリカ共和国(以下「コスタリカ」という。)で実施した開発調査「テンピスケ川中流域農業総合開発計画」において、JICAが株式会社パシフィックコンサルタンツインターナショナル(以下「PCI」という。)と締結した委託契約に係る業務の一部の再委託契約の実施に関し不祥事が発覚した。この不祥事は、PCIがコスタリカ国土地理院と締結した再委託契約に係る経費の一部が使途不明となったというものである。会計検査院は、JICAに対して事実関係及び現地における調査の結果について説明を求めるとともに、合規性等の観点から、委託契約及び精算の適否に着眼して検査した。
 また、同種事案の有無については、JICA及びJBIC(以下「JICA等」という。)がPCIと締結した委託契約のうち、現地で再委託契約が締結されているもののすべてを対象とし、現地における調査をJICA等に求めるとともに、合規性等の観点から、委託契約及び精算の適否に着眼して検査した。さらに、PCI以外のコンサルタントと締結した契約についても、PCIに対すると同様の現地における調査を行うようJICA等に求めた。

イ 18年報告の検査の方法

 会計検査院は、18年次に、外務本省、JBIC本店、JICA本部等において、会計実地検査を行い、我が国の援助実施機関がコンサルタントと締結した委託契約の状況について、各援助実施機関から決算書等の関係書類に基づき業務実施等に関する説明を聴取した。
 対コスタリカODAにおけるPCIに係る不祥事や同種事案の有無については、JICA等から委託契約書、PCIから提出された再委託契約書、領収書、成果品等関係する証憑の提示を受けるなどして国内での書類審査の状況を聴取するとともに、JICA等に対し現地での再委託先に対する調査を実施するよう求めた。
 また、PCIに対しては、本社に赴き、社員から社内の会計処理について関係書類に基づき説明を聴取し、また、同社が保存している本件「テンピスケ川中流域農業総合開発計画」に関する銀行の出入金の記録等の証憑を精査するなどして実地に検査した。
 さらに、会計検査院は、コスタリカに職員を派遣し、再委託先等の関係者から事情を聴取するとともに、関係書類を確認した。

(2) 18年報告の検査の結果に対する所見

 18年報告の検査の結果に対する所見は、次のとおりである。

 ODAにおいては、対象となる分野が多岐にわたっており、高い技術力と援助ニーズの多様化に伴う専門性が従来にも増して要求されていることから、コンサルタントの果たす役割とそれに対する信頼が不可欠となっている。特に、JICAが開発調査等を実施するためにコンサルタントと締結する業務実施契約においては、その過半において再委託契約が締結される現状となっている。そうした中で、コンサルタントが現地で締結した再委託契約の精算に当たって、JICAにおいて、対コスタリカODAのPCIに係る不祥事が発覚し、さらに、4箇国4案件について適正を欠く事態があり、また、JBICにおいて1箇国2案件について適切でなかった事態があったことは遺憾である。
 コンサルタントは、JICAから事前に承認を得て現地で再委託契約を締結することとされていたが、JICAは、承認後は、再委託先及び再委託契約の実施状況の把握を十分行っていなかった。上記の事態を踏まえ、JICAは、ガイドラインを定め、再委託契約締結後の契約の確認の徹底と再委託契約業務完了後の第三者機関による抽出検査の導入等を図っているところである。また、JBICは、運用指針に則した精算を行うよう指導を徹底しているところである。
 JICA等においては、再委託契約を伴うコンサルタントとの委託契約についてガイドライン等に沿って、適正な契約の履行の確保に徹底を期する必要がある。また、外務省においては、このような事態が生じることがないように、JICA等に対し指導監督等を十分に行う必要がある。
 会計検査院としては、今後とも、ODAに関するコンサルタントとの委託契約について、特に再委託契約に関しては、JICA等が講じた再発防止策が有効に機能して、適正な契約の履行が確保されているか、引き続き注視していく。
 そして、今回の検査によって、再委託契約に係る経理処理や精算手続が事実と異なっていることが判明したJICAとPCIとの委託契約に係る11箇国13案件については、今後、JICAによる精査の結果の報告を踏まえ、引き続き検査を実施する必要がある。
 また、PCI以外のコンサルタントとの委託契約について、現地での再委託契約の精算の適否について報告を求めたところ、JICAでは39箇国における20コンサルタントに係る60案件、JBICでは7箇国における8コンサルタントに係る11案件の再委託契約の精算の適否について、特に問題がなかった旨の報告を受けている。これらの71案件については、JICA等の報告における調査内容を検証する必要がある。
 したがって、これらPCIに係る13案件の検査及びPCI以外のコンサルタントに係る71案件の検証の結果については、取りまとめが出来次第報告することとする。