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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成19年10月

各府省等が締結している随意契約に関する会計検査の結果について


第3 検査の結果に対する所見

ア 各府省等が締結している随意契約等について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、契約全般の状況を把握するとともに、契約事務が適切に行われ、公正性、競争性及び透明性が確保されているかなどに着眼して会計実地検査を行った。また、随意契約先公益法人等への再就職者数については、所管府省及び随意契約先公益法人の協力を得て調査を実施し、提出された調査票等から把握できた範囲でその結果を記述した。
 検査の結果は、次のとおりである。

(ア) 契約方式について

a 契約方式については、18年度対象契約全体でみると、随意契約の割合(件数56.5%、支払金額62.2%)の方が競争契約の割合(同43.5%、同37.8%)より高く、平均落札率も競争契約は86.3%、随意契約は97.3%で、随意契約の方が競争契約より11.0ポイント高くなっており、競争性及び経済性の面で十分ではない状況となっている。また、契約相手方別にみると、競争契約の割合は、民間企業が最も高く(件数55.2%、支払金額55.1%)、公益法人はそれに比べて件数で41.1ポイント、支払金額で51.6ポイント低い状況となっている。

b 随意契約としている理由については、法令上の適用理由を「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」に該当するためとしている契約が8割以上を占める。その具体的な理由をみると、「専門的又は高度な知識、知見、技術を有する」、「契約実績、経験を有する」など他に履行可能な者がいないことが必ずしも明確にされていないものが相当数見受けられる。
 そして、契約の一部を抽出して随意契約とした理由の妥当性を実際に検証したところ、「専門的又は高度な知識、知見、技術を有する」などを具体的な理由として契約相手方を選定している随意契約の中には、その理由の妥当性に関して検討の余地があったものが多く見受けられる。また、随意契約の理由の妥当性に関して検討の余地があったものについて、19年8月1日現在における見直し状況をみると、措置未済や措置予定なしのものが残されているほか、競争契約等に移行済みのもののうち約半数は応札者(応募者)が1者しかおらず、その平均落札率は移行前とほぼ同水準となっている。

c 随意契約に当たって企画競争が実施されている場合もあるが、各府省等によっては統一的な実施基準を作成していない省庁もあり、企画競争の実施方法においても公平性及び透明性の確保が十分でないものがある。

(イ) 公益法人を契約相手方とする随意契約について

a 公益法人を契約相手方とする契約については、随意契約の割合が18年度対象契約全体でみた場合よりも件数で29.4ポイント、支払金額で34.3ポイント高く、企画競争を経ない随意契約の割合についても、同様に契約全体でみた場合よりも件数で20.1ポイント高い。また、随意契約としている理由については、法令上の適用理由を「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」に該当するためとしている契約が100%近くを占めており、その具体的な理由をみると、「専門的又は高度な知識、知見、技術を有する」としているものの割合が随意契約全体でみた場合よりも23.2ポイント高くなっている。

b 契約相手方が公益法人である随意契約における再委託については、契約条項において再委託に関する規定を設けていないものが1割強見受けられる。また、事前の承認を必要とする旨の契約条項を定めているにもかかわらず、実際には書面による申請及び承認がなされないまま再委託が行われているものも見受けられる。さらに、再委託が行われている契約のうち17年度分の再委託率をみると、再委託率が50%以上となっているものの割合が件数で20.3%、支払金額で44.4%を占めており、再委託率が50%以上の契約の中には、契約相手方を唯一の者であるとしている随意契約の具体的な理由との整合性に疑義のあるものが見受けられる。

(ウ) 契約の透明性の向上に向けた取組について

 契約の透明性の向上に向けた体制整備については、各省庁ともおおむね随意契約の理由の妥当性を審査する際の具体的な基準等を作成している。しかし、各種契約情報のホームページでの公表において、掲載方法や掲載項目に関し、契約情報へのアクセスの面で利便性に欠ける状況が見受けられる。

このように、国の支出の原因となる契約については、公正性、競争性、透明性等の面で様々な課題が見受けられる。そして、これらの課題に対しては、現在、政府においても、公共調達の適正化に向けた取組が行われている。

イ 国においては、行政事務の遂行上、引き続き、多様な内容の契約を実施する必要があるが、その支出が国民の貴重な財源をもって充てられることにかんがみ、契約の締結に当たっては、より一層経済的及び効率的に行っていくことが要請される。
 したがって、各府省等においては、今般の随意契約点検の結果を踏まえて作成した「随意契約見直し計画」(改訂)の着実な実施と的確なフォローアップ及び必要に応じた計画内容の見直しを図るとともに、新たな契約の締結に当たっては、競争契約を原則とする会計法令の趣旨に則り厳格な運用を行うほか、次の点に留意することにより、契約の公正性、競争性及び透明性の確保に努める必要がある。

(ア) 契約方式について

a 他府省等や他部署の契約実例を調査して参考にするとともに、発注する業務の内容を仕様書等においてより具体的かつ詳細に定めるほか、少額購入等を予定している調達についてもこれを計画的に集約することにより一括契約を可能とするなどして競争契約を拡大し、契約の透明性の向上を図る。併せて、競争契約を実施する場合においては、国民生活に対する安全性等への配慮を十分行った上で、実質的な競争性の確保を図る。

b やむを得ず随意契約によらざるを得ないとき、特に「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」という理由を適用する場合には、他に履行可能な者がいないかの把握等を厳格に行う。

c 仕様書等の内容を具体的に提示できる場合は、総合評価方式を含む競争契約に移行することに努める。そして、仕様書等の内容の具体的な提示が困難で随意契約によらざるを得ない場合でも、可能な限り企画競争の可能性を検討するとともに、企画競争については、審査員の構成、審査方法等に関して統一的な実施基準を作成し、これに基づいて実施するなどして公平性及び透明性の一層の向上を図る。

(イ) 公益法人を契約相手方とする随意契約について

a 従来から公益法人を契約相手方としてきた随意契約について、契約の具体的な業務内容を精査し、他に履行可能な者がおらず、真に随意契約によらざるを得ない場合に該当するもの以外は、速やかに競争契約に移行する。

b 再委託については、禁止する又は承認を要する旨の契約条項を設けるとともに、再委託の承認に当たっては、契約条項を遵守して書面により申請させるほか、随意契約とした理由との整合性に留意する。

(ウ) 契約の透明性の向上に向けた取組について

 契約の透明性の向上に向けて一層の体制整備に努めるとともに、契約情報をホームページで公表する場合には、掲載方法や掲載項目名を工夫するなどして、必要な情報へのアクセスを容易にし、その利便性を向上させる。
 会計検査院としては、本報告の取りまとめに際して、時間的制約等から各府省等の見直し状況に係る検証を終えるに至っていない部分があることから、これを中心に引き続き検査を実施し、検査の結果については、取りまとめが出来次第報告することとする。