会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)衆議院 | (項)衆議院 |
平成14年度国庫債務負担行為及び19年度国庫債務負担行為 | |||
(組織)衆議院 | |||
(事項)民間資金等活用衆議院施設整備等事業 | |||
(事項)金利の変動に伴う民間資金等活用衆議院施設整備等事業に係る限度額の増額
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部局等 | 衆議院 | ||
事業の根拠 | 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号) | ||
契約名 | 衆議院赤坂議員宿舎整備等事業 | ||
契約の概要 | 衆議院赤坂議員宿舎の施設整備、維持管理、運営支援及び代替施設提供 | ||
契約の相手方 | 赤坂シグマタワー株式会社 | ||
契約 | 平成15年3月 一般競争契約 | ||
契約額 | 349億1084万余円 | (平成14年度〜43年度) | |
上記のうち消費税相当額 | 16億6242万余円 | ||
割高になっている契約額 | 3億4601万円 |
衆議院赤坂議員宿舎整備等事業契約における消費税の取扱いについて
(平成20年10月31日付け 衆議院議長あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求する。
記
貴院は、老朽化して手狭になった旧赤坂議員宿舎を建て替えて、その維持管理、運営支援等を行わせることを目的として、衆議院赤坂議員宿舎整備等事業(以下「赤坂議員宿舎事業」という。)を実施している。
赤坂議員宿舎事業は、財政負担の縮減並びに民間の資金、経営能力及び技術的能力の活用を図るため、PFI手法(注1)
を適用することとされた。そして、貴院は平成14年4月に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(平成11年法律第117号)第5条第1項の規定に基づく特定事業(注2)
の実施に関する方針を定めて、同年5月に赤坂議員宿舎事業を同法第6条の規定に基づく特定事業(以下「PFI事業」という。)に選定した。
貴院は、赤坂議員宿舎事業について、総合評価方式による一般競争入札を実施して、15年2月に、総合評価の最も高かった鹿島建設株式会社を代表企業とする企業グループを落札者と決定した。そして、同年3月に、同企業グループが赤坂議員宿舎事業の実施を目的に設立した赤坂シグマタワー株式会社(以下「シグマ社」という。)との間でBTO方式(注3)
によるPFI事業として事業契約(契約金額333億9276万余円)を締結した。その後19年4月に事業契約が変更されて、契約金額は349億1084万余円となっている。
そして、シグマ社は事業契約に基づき19年3月に赤坂議員宿舎の建設工事をしゅん工して施設を貴院に引き渡しており、赤坂議員宿舎は貴院が所管する国有財産となっている。
事業契約によると、シグマ社は、旧赤坂議員宿舎の解体及び撤去、仮宿舎の提供及び維持管理、新赤坂議員宿舎の設計及び建設、新赤坂議員宿舎に係る施設の国への譲渡、及び44年3月までの25年間にわたる維持管理、運営支援等を行うこととされている。そして、契約金額は仮宿舎提供費、施設購入費及び維持管理・運営支援費から成っており、このうち仮宿舎提供費については15年11月から19年6月までの間に計9回に分割して、施設購入費については19年4月から44年4月までの間に年2回(4月及び10月)計51回の元利均等払いによる割賦方式により、また、維持管理・運営支援費については19年10月から44年4月までの間に年2回(4月及び10月)計50回に平準化した金額により、それぞれ貴院がシグマ社に支払うこととされている。貴院は15年度から19年度までに計47億9869万余円をシグマ社に支払っている。
(注1) | PFI手法 Private Finance Initiativeの略称。公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法
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(注2) | 特定事業 公共施設等の整備等に関する事業であって、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用することにより効率的かつ効果的に実施されるもの
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(注3) | BTO方式 Build, Transfer and Operateの略称。民間事業者が施設を建設して、施設完成直後に管理者等に所有権を移転した上で、民間事業者が維持・管理及び運営を行う事業方式
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消費税法(昭和63年法律第108号)によれば、消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)の課税対象は、国内において事業者が行った事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(以下「資産の譲渡等」という。)とされている。
そして、国内において行われる資産の譲渡等のうち、消費税法施行令(昭和63年政令第360号)第10条第3項第10号に定める「資産の譲渡等の対価の額又は当該対価の額に係る金銭債権の額を二月以上の期間にわたり、かつ、三回以上に分割して受領する場合におけるその受領する賦払金のうち利子又は保証料の額に相当する額で当該賦払に係る契約において明示されている部分を対価とする役務の提供」については、同法第6条の規定により、利子を対価とする貸付金等に類するものとして消費税を課さないとされている(以下、この規定に基づき消費税を課さないとされる役務の提供に係る対価を「課税されない利子等」という。)。
内閣府公表資料によると、国は、赤坂議員宿舎事業と同様のBTO方式によるPFI事業を赤坂議員宿舎事業を含めてこれまでに42事業(20年5月31日現在、実施方針公表済段階のもの。)実施している。そして、国の各機関が公表している事業契約書等によると、このうち14年度にPFI事業の実施方針を公表した1事業及び衆議院新議員会館整備等事業(以下「新議員会館事業」という。)を含めて15年度以降に実施方針を公表した35事業のすべてにおいて、施設費の割賦支払に伴う利子等は、課税されない利子等に該当するとして、これに係る消費税相当額は契約金額に含まれていない。
これに対して、赤坂議員宿舎事業では、事業契約において、サービス対価を一体としてとらえていることなどから、その中に課税されない利子等に該当するものはなく、サービス対価の総額に係る消費税相当額を契約金額に含める取扱いとしている。
PFI事業に係る施設費の割賦支払に伴う利子等については、これが事業契約において課税されない利子等に該当する場合は消費税は非課税となり、該当しない場合は消費税が課されることとなる。近年のBTO方式によるPFI事業においては、施設費の割賦支払に伴う利子等が課税されない利子等に該当するように事業契約を定めて、これに係る消費税相当額を契約金額に含めない取扱いとなっている。こうしたことから、本院は、経済性等の観点から、赤坂議員宿舎事業についても同様の取扱いとすることにより契約金額の節減が図れないかなどに着眼して、契約金額349億1084万余円(うち消費税相当額16億6242万余円)を対象に、貴院及びシグマ社において、契約書、入札説明書等の関係書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、貴院は、19年4月に変更した事業契約において、サービス対価の総額332億4841万余円(消費税抜き)の全体に消費税が課されるとして、この金額に100分の5を乗じた16億6242万余円を消費税相当額として加えた349億1084万余円をもって契約金額としており、その内訳は、〔1〕 仮宿舎提供費31億6061万余円、〔2〕 施設購入費210億7171万余円及び維持管理〔3〕 運営支援費106億7850万余円となっている。
そして、上記のうち施設購入費の契約上の取扱いは、次のとおりとなっている。
〔1〕 施設購入費は、前記のとおり、19年4月から44年4月までの25年1か月の期間にわたり年2回(4月及び10月)合計51回の元利均等払いによる割賦方式により支払うこととされている。
〔2〕 施設購入費には、施設設計及び整備費、工事監督費、建設期間中の資金調達に伴う金利その他の事業に伴う費用の総額である割賦元金138億0536万余円に加えて、この金額を契約に定める回数の分割払でシグマ社に支払うことから必要となる割賦金利を含むとされている。
〔3〕 割賦金利の計算上の金額は、契約書に記載された施設購入費から割賦元本分を差し引いた72億6635万余円となり、その具体的な計算方法をみると、施設の引渡時期から年2回到来する各支払時期までの期間に対応する利子額となっている。しかし、契約書には割賦金利の金額として明示されているものはない。
また、貴院及びシグマ社は、上記の割賦金利部分について、予算上又は決算上、次のとおり元本部分と異なる取扱いとしている。
〔1〕 貴院からシグマ社への支払額は、歳出予算上、割賦元本は(項)衆議院施設費(目)不動産購入費に、割賦手数料(割賦金利)は(項)衆議院(目)公共施設等維持管理運営費に、区別して計上されており、また、衆議院赤坂議員宿舎の国有財産価額の算定上も割賦元本のみを計上の対象として、割賦手数料(割賦金利)については建設費に含まれないとして対象外としている。
〔2〕 シグマ社は同社の損益計算書において、貴院が同社に支払った施設購入費のうち割賦元本は割賦収入に、割賦金利は金融収益に、区別して計上している。
これらのことからすれば、貴院が事業契約に基づいてシグマ社に支払うこととされている割賦金利72億6635万余円は、施設購入費のうちの元本部分を分割して支払うことに伴い必要となる利子相当額と認められる。そして、割賦金利について消費税が課されているのは、割賦金利の金額を契約書において明示しておらず、サービス対価の総額から割賦金利を控除することなくその全体に100分の5を乗じた額を加えて契約金額としていることなどによると認められる。
したがって、上記のような割賦金利の性格、支払実態等をみると、貴院が割賦金利を課税されない利子等に該当するように契約内容を定めておらず、割賦金利に係る消費税相当額を含めて契約金額を算定しているのは適切とは認められない。
なお、貴院がシグマ社に支払った消費税相当額は納税までの間事業資金等に充てられることなくシグマ社において消費税納税準備金として留保されている。
上記により、割賦金利が課税されない利子等に該当するとしていれば、契約金額は前記の349億1084万余円が345億6482万余円となり、割賦金利に係る消費税相当額3億4601万余円が割高となっていると認められる。
上記のように、割賦金利が課税されない利子等に該当するとして事業契約を定めて、これにより契約金額を算定していれば、割賦金利に係る消費税相当額を支払う必要はないのに、割賦金利に係る消費税相当額を契約金額に含めて支払を継続している事態は適切でなく、是正を図る要があると認められる
このような事態が生じているのは、赤坂議員宿舎事業が国にとって初めてのPFI事業であったという事情はあるものの、貴院において、契約金額を経済的に算定するための検討が十分でなかったことなどによると認められる。
本件事業契約に係る施設購入費は、事業期間が終了する44年まで長期にわたって支払を継続することとなっており、現在の契約のままでは、契約金額に含まれている割賦金利に係る消費税相当額を今後も引き続き支出することになる。
ついては、貴院において、赤坂議員宿舎事業の支払額の節減を図るため、割賦金利など課税されない利子等とする額を特定した上で、新議員会館事業など近年のPFI事業の事例における契約書その他契約内容を十分参考に、速やかに契約相手方と協議の上、割賦金利に係る消費税相当額が契約金額に含まれないよう契約変更を求めるなどの是正の処置を要求する。