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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

国有財産の管理に当たり、国有財産部局長が管理する国有財産について、適切に登記の嘱託を行えることとするため、訓令を改正するよう意見を表示したもの


(2) 国有財産の管理に当たり、国有財産部局長が管理する国有財産について、適切に登記の嘱託を行えることとするため、訓令を改正するよう意見を表示したもの

部局等 25国有財産部局
国有財産の区分 一般会計所属 (分類)行政財産 (種類)公用財産
登記特別会計所属 (分類)行政財産 (種類)公用財産
登記の嘱託の概要 法務省所管国有財産事務取扱規程により、土地又は建物を購入、交換、寄附又は所管換により取得したときや、借地に建物を新築したときなどに、遅滞なく行うこととされている登記の嘱託
登記の嘱託を行っていなかった国有財産に係る面積 一般会計所属国有財産
 土地 24,150m2 (平成19年度末現在)
 建物 55,677m2 (建面積)/288,678m2 (延面積)
  (平成19年度末現在)
登記特別会計所属国有財産
 建物 11,985m2 (建面積)/27,149m2 (延面積)
  (平成19年度末現在)
上記の国有財産の国有財産台帳価格 一般会計所属国有財産
 土地 25億1236万円
 建物 259億2620万円
登記特別会計所属国有財産
 建物 29億1196万円
計   313億5052万円

【意見を表示したものの全文】

 国有財産の管理における登記の嘱託について

(平成20年10月31日付け 法務大臣あて)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 貴省における国有財産の管理等の概要

(1) 国有財産の管理

 国が、国の事務、事業又は国の職員の住居の用に供するなどとして所有する土地、建物等は、国有財産として、国有財産法(昭和23年法律第73号)に基づき、取得、維持、保存及び運用(以下「管理」という。)並びに処分を行うこととされている。
 国有財産の管理のうち、取得については、〔1〕 購入する場合、〔2〕 寄附による場合、〔3〕 交換による場合、〔4〕 各省各庁の長や所属を異にする会計の間で所管を移す所管換による場合等があり、建物についてはこれらの場合以外に新築、増築及び改築する場合がある。
 また、保存については、修繕、盗難・紛失の防止、未登記財産に係る登記等、国有財産の保全に必要な行為と解されている。
 そして、各省各庁の長は、国有財産法に基づき、国有財産の分類及び種類ごとに国有財産台帳を、土地を基準として設定した口座別に作成して、口座ごとに財産の区分、種目、用途、数量、価格等を記載することとなっている。

(2) 貴省における国有財産の管理

 貴省は、貴省が所管する国有財産の取扱いに関して、法務省所管国有財産事務取扱規程(昭和59年営訓第1100号。以下「訓令」という。)を定めて、法務局、刑務所、少年鑑別所、保護観察所等の長及び法務省大臣官房施設課長を部局長として、それぞれの部局に所属する国有財産に関する管理等の事務を分掌させることとしており(以下、当該事務を分掌する部局長を「国有財産部局長」という。)、国有財産部局長に対して、常に、その管理する国有財産の現況を把握させて、その管理及び処分を適正に行わせることとしている。
 そして、国有財産部局長は、訓令第11条の規定により、土地又は建物を購入、寄附、交換又は所管換により取得したときや、借地に建物を新築したときなどの場合については、不動産登記法(平成16年法律第123号)の定めるところにより、遅滞なく当該土地又は建物に係る登記をその土地又は建物の所在地を管轄する登記所(法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又は出張所)に嘱託しなければならないとされている。

(3) 不動産登記の概要

 不動産の登記制度は、不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための制度であり、民法(明治29年法律第89号)第177条の規定により、不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従い、その登記をしなければ第三者に対抗することができないとされている。
 不動産登記法によれば、登記には、不動産の表示に関する登記と不動産の所有権、地上権等の権利に関する登記がある。そして、土地又は建物を取得した者は、当該土地又は建物に係る権利に関する登記の申請をすることができるとされており、土地又は建物を取得した者が国であって、権利に関する登記をするときは、遅滞なく、当該登記を登記所に嘱託しなければならないこととなっている。
 そして、権利に関する登記は、表示に関する登記がなされていることが必要であることから、表示に関する登記がない新築の建物等を取得した場合には、取得した日から1月以内に、表示に関する登記を申請しなければならないこととなっている。
 この表示に関する登記の申請義務については、国が所有する土地又は建物は、一般的に、直ちに取引の対象となるわけではないこと、国有財産台帳で管理されていることなどの理由から、国に対する適用が除外されている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、合規性等の観点から、土地又は建物を購入、交換、寄附又は所管換により取得したときや、借地に建物を新築したときなどに、訓令により国有財産部局長が行うこととされている国有財産の取得に係る登記の嘱託が適切に行われているかなどに着眼して、39部局(注1) において会計実地検査を行った。そして、表1のとおり、499口座、国有財産台帳に記載されている価格(以下「国有財産台帳価格」という。)の合計344,374,366,978円(平成19年度末現在。以下同じ。)を対象として、これらに係る国有財産台帳等を確認したり、実務担当者から国有財産の管理や登記に関する実態を聴取したりなどして検査をした。

表1
 検査の対象とした国有財産

  一般会計 登記特別会計
土地 部局数 39 9 39
口座数 341 15 356
面積(m2 1,632,861 15,867 1,648,728
国有財産台帳価格(千円) 268,139,407 718,750 268,858,157
建物 部局数 39 15 39
口座数 249 121 370
建面積/延面積(m2 257,919/771,365 70,456/158,434 328,375/929,799
国有財産台帳価格(千円) 62,209,218 13,306,990 75,516,209
部局数 39 15 39
口座数 377 122 499
国有財産台帳価格(千円) 330,348,626 14,025,740 344,374,366

注(1)  土地及び建物の部局並びに口座には、それぞれ重複があることから、それぞれの合計は計欄と一致しない。
注(2)  面積は、国有財産法施行細則(昭和23年大蔵省令第92号)第6条に基づき、端数を切り捨てて計上している。

(検査の結果)

 検査したところ、土地又は建物を取得しているもののほとんどの口座において、土地については、訓令の規定どおり、登記の嘱託が行われていたり、貴省が所有している土地に新築した建物については、前記の国に対する適用除外規定に基づき、登記の嘱託が行われていなかったりなどしていた。
 しかし、土地又は建物を購入、交換又は所管換により取得した場合や、借地に建物を新築したなどの場合であるにもかかわらず、訓令第11条の規定により国有財産部局長が行うこととされている登記の嘱託が行われていないものが、表2のとおり、25部局(注2) の56口座、国有財産台帳価格の計31,350,529,547円見受けられた。

表2
 登記の嘱託が行われていないもの

  一般会計 登記特別会計
購入、交換又は所管換により取得した土地又は建物について、登記の嘱託が行われていないもの(訓令第11条第1号)
土地 部局数 6 0 6
口座数 8 0 8
面積(m2 24,150 0 24,150
国有財産台帳価格(千円) 2,512,363 0 2,512,363
建物 部局数 14 1 14
口座数 30 1 31
建面積/延面積(m2 55,660/288,661 30/30 55,690/288,691
国有財産台帳価格(千円) 25,926,036 139 25,926,175
借地に新築した建物等について、登記の嘱託が行われていないもの(訓令第11条第2号)
建物 部局数 1 9 10
口座数 1 17 18
建面積/延面積(m2 17/17 11,955/27,119 11,972/27,136
国有財産台帳価格(千円) 168 2,911,822 2,911,990
部局数 18 10 25
口座数 38 18 56
土地の面積(m2 24,150 0 24,150
建面積/延面積(m2 55,677/288,678 11,985/27,149 67,662/315,827
国有財産台帳価格(千円) 28,438,568 2,911,961 31,350,529
  うち土地に係る分 2,512,363 0 2,512,363
  うち建物に係る分 25,926,205 2,911,961 28,838,166

注(1)  土地及び建物の部局並びに口座には、それぞれ重複があることから、それぞれの合計は計欄と一致しない。
注(2)  面積は、国有財産法施行細則第6条に基づき、端数を切り捨てて計上している。これらの事態を示すと、次のとおりである。

ア 購入、交換又は所管換により取得した土地又は建物について、登記の嘱託が行われていないもの

 所管換により取得した土地が合筆されて、管理する土地の地番が登記簿上無くなっていたり、所管換により取得した建物について、登記の嘱託が行われていなかったりしているものなどが見受けられた。

<事例1>

 A市所在のA職員宿舎の土地(面積3,042m 。国有財産台帳価格353,492千円)は、貴省が、昭和45年に大蔵省(平成13年1月6日以降は財務省。以下同じ。)からの所管換により、一般会計所属の国有財産として3筆の土地を取得したものである。
 この土地について、国有財産部局長として管理しているB法務局長は、当該土地の取得に係る登記の嘱託を行っていなかった。
 その結果、昭和56年7月に、大蔵省が、この土地を他の土地と合筆して、一つの地番で登記したため、B法務局長が国有財産台帳で管理している土地は、登記簿上、3筆の土地の地番が無くなっている。

<事例2>

 C区所在の合同庁舎の建物(建面積12,863m 、延面積172,991m 。国有財産台帳価格18,635,365千円)は、大蔵省及び建設省所管(平成13年1月6日以降は財務省及び国土交通省所管)特定国有財産整備特別会計(以下「特特会計」という。)により新築されて、貴省が、2年6月に特特会計からの所管換により、一般会計所属の国有財産として取得したものである。そして、貴省は、この建物の土地を同年11月以降に大蔵省等からの所管換等により、一般会計所属の土地として取得している。
 しかし、この建物及び土地について、国有財産部局長として管理している大臣官房施設課長は、土地については11年2月に所有権の保存に関する登記の嘱託を行っていたが、建物については訓令で登記の嘱託を行うこととされていない貴省所管の土地に貴省が建物を新築した場合と同じ取扱いができるとして、特特会計から所管換により取得した建物でありながら、表示に関する登記の嘱託を行っていなかった。

イ 借地に新築した建物等について、登記の嘱託が行われていないもの

 地方公共団体から借り受けている借地に新築した建物について、登記の嘱託が行われていないものなどが見受けられた。

<事例3>

 D市所在のE地方法務局D支局の建物(建面積1,186m 、延面積4,656m 。国有財産台帳価格591,980千円)については、貴省が、登記特別会計により新築して、平成20年2月に同特別会計所属の国有財産として取得したものであり、この建物が所在する土地は、同地方法務局がD市から借り受けている。
 この借地の賃貸借契約書によれば、契約期間は1年間で、貸主であるD市が契約期間満了の3か月前に契約解除の意思表示をした場合には、契約は更新されず、同地方法務局は現状に復して返還することとされている。
 しかし、この建物について、国有財産部局長として管理している同地方法務局長は、この建物が所在する土地の所有者が地方公共団体であるとして、表示に関する登記の嘱託を行っていなかった。
 国が所有する土地又は建物については、国有財産台帳に記載されていることなどから、不動産登記法による表示に関する登記の申請義務の適用が除外されているが、登記があれば借地権は第三者に対する対抗力を有すると解されている。
 貴省は、訓令において、土地又は建物を購入、交換又は所管換により取得したときや、借地に建物を新築したときなどは、遅滞なく、登記を嘱託しなければならないと規定しているにもかかわらず、各部局において、登記の嘱託を行っていないものが見受けられる状況となっている。そして、その中には、登記の嘱託を行うこととした旧法務省所管国有財産取扱規則(昭和56年営訓第335号。昭和59年に訓令に改正された。)が定められる以前に土地又は建物を購入等により取得したり、借地に建物を新築したりなどしてから現在まで登記の嘱託を行っていないものも見受けられる状況となっている。

(改善を必要とする事態)

 前記のとおり、訓令において、土地又は建物を購入、交換、寄附又は所管換により取得したときや、借地に建物を新築したときなどは、不動産登記法の定めるところにより登記の嘱託を行うことと定めているものの、所管換により取得した土地や建物について登記の嘱託を行っていなかったり、借地に新築した建物について登記の嘱託が行われていなかったりなどしている事態は、国有財産の管理の面からみて適正とは認められず、改善の要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、訓令において、登記の嘱託に係る必要性や具体的手続が明確になっておらず、各国有財産部局長の訓令に関する理解が十分でないことなどによると認められる。

3 本院が表示する意見

 貴省が所管する国有財産に関する取扱いを定めている訓令は、国有財産法が各省各庁の長にその所管に属する国有財産の管理をゆだねていることを踏まえて、制定されたものである。したがって、貴省は、訓令に基づき適正に国有財産を管理する必要がある。しかし、訓令は、登記の嘱託の必要性や登記の嘱託を行うに当たって必要な具体的手続が明確になっていないなど、実務上、十分でない面が見受けられた。
 ついては、貴省において、各国有財産部局長が所管する国有財産について、訓令に基づいた適切な登記の嘱託を行い、適正な管理を行えるよう、登記の嘱託に係る必要性や具体的手続を明確にする訓令の改正を行い、各国有財産部局長に対して、改正後の訓令の周知徹底を図るよう意見を表示する。

(注1)
 39部局  法務省大臣官房施設課、東京、名古屋、高松各法務局、旭川、水戸、前橋、新潟、甲府、静岡、奈良、松江、長崎、熊本、那覇各地方法務局、仙台、名古屋両高等検察庁、仙台、長野、金沢、京都、高松、大分各地方検察庁、秋田、栃木、川越少年、千葉、松山、大分各刑務所、新潟少年学院、旭川、宇都宮、新潟、静岡、京都、松江各少年鑑別所、旭川保護観察所、仙台、大阪両入国管理局
(注2)
 25部局  法務省大臣官房施設課、東京、名古屋、高松各法務局、旭川、水戸、前橋、新潟、甲府、静岡、奈良、長崎、熊本、那覇各地方法務局、名古屋高等検察庁、長野、金沢両地方検察庁、秋田、栃木、千葉、松山、大分各刑務所、宇都宮少年鑑別所、旭川保護観察所、大阪入国管理局