会計名及び科目 | 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)老人医療・介護保険給付諸費 | |
部局等 | 厚生労働本省 | |
国の負担の根拠 | 介護保険法(平成9年法律第123号) | |
事業主体 | 24都道府県 | |
国庫負担対象事業 | 介護保険の財政の安定化に資する事業 | |
財政安定化基金の概要 | 市町村が通常の努力を行ってもなお生ずる保険料の未納や介護給付費の見込みを上回る伸びなどにより、介護保険財政の財源に不足が生じた場合に、市町村に貸付け又は交付を行うもの | |
上記の都道府県における基金造成額 | 1693億円 | (平成18年度末) |
上記の基金に対する国庫負担金交付額 | 575億円 | (平成12年度〜18年度) |
(平成20年5月21日付け 厚生労働大臣あて)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
介護保険制度は、高齢者の介護を社会全体で支える新たな仕組みとして介護保険法(平成9年法律第123号)に基づき平成12年4月から実施されたもので、保険者が要介護状態等になった被保険者に対して、必要な介護サービスに係る給付を行い、国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的としている。
介護保険の保険者は、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)とされ、被保険者は、当該市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者(以下「第1号被保険者」という。)等とされている。そして、要介護状態等にあることについて市町村による認定を受けた被保険者(以下「要介護者等」という。)は、介護サービス計画に基づき保険給付を受けることとなる。この保険給付には、訪問介護、通所介護等の居宅サービスと介護老人福祉施設等における施設サービスがある。
そして、17年6月の介護保険法の改正により、18年度からは、認知症対応型共同生活介護等の地域密着型サービス等が新たに開始され、これらのサービスについて市町村は、介護サービス事業者(注1)
の指定、監督等の権限を保有し、自らが必要整備量を計画的に定め、地域の実情に応じた弾力的な指定基準・報酬設定ができるようになった。
市町村は、介護保険制度を円滑に実施するため、3年を1期とする介護保険事業計画(以下「事業計画」という。)を策定し、3年ごとに見直すこととなっており、12年度から14年度までは第1期、15年度から17年度までは第2期、18年度から20年度までは第3期となっている。そして、この事業計画には、当該市町村の区域における被保険者、要介護者等の人数や介護サービスの利用状況等を勘案して、各年度の介護サービスの種類ごとの量の見込み、当該見込量の確保のための方策、第1号被保険者に係る保険料(以下「第1号保険料」という。)等を定めることとされている。
介護保険制度における費用負担については、介護サービス事業者が介護サービスの提供に要した費用のうち、被保険者の負担分(原則として1割)以外の部分(以下、この部分を「介護給付費」という。)の100分の50を被保険者の保険料で、残りの100分の50を公費で賄うこととなっている(図1
参照)。
市町村は、3年間の計画期間ごとに、第1号保険料の基準額を算定することとなっている。
そして、第1号保険料は、年額18万円以上の年金給付を受けている者については、特別徴収として年金から保険料の天引きを行うこととなっており、また、特別徴収の対象とならない者については、普通徴収として個別に徴収することとなっている。第1号保険料の徴収額については、特別徴収分がその大部分を占めている。
市町村は、介護保険に係る歳入及び歳出について特別会計を設けることとなっている。介護保険は、3年間の計画期間ごとにその期間を通じて同一の保険料を、介護サービスの見込量に見合って設定するという中期財政運営方式を採用しており、介護給付費が総じて増加傾向にあることから、計画期間の初年度は一定程度の剰余金が生ずることが想定されていて、この剰余金を管理するために市町村は介護給付費準備基金(以下「準備基金」という。)を設けることができるとされている。
そして、介護給付費が見込みを下回るなどの場合は剰余金を準備基金に積み立て、介護給付費が見込みを上回るなどの場合は、前年度以前に積み立てられた準備基金から必要額を取り崩し、計画期間の最終年度において残高がある場合には、次期保険料を見込むに当たり準備基金を取り崩すことが基本的な考え方となっている。
介護保険法の規定に基づき、都道府県は、管内の市町村が通常の努力を行ってもなお生じる第1号保険料の未納や介護給付費の見込みを上回る伸びなどにより、介護保険財政の財源に不足が生じた場合に、当該市町村の一般会計からの繰入れを回避するため、財政安定化基金(以下「安定化基金」という。)を設け、市町村に対し資金の貸付け及び交付(以下「貸付等」という。)を行うこととなっている。
ア 造成
都道府県は、介護保険の国庫負担金の算定等に関する政令(平成10年政令第413号。以下「算定政令」という。)で定めるところにより、市町村から財政安定化基金拠出金(以下「拠出金」という。)を徴収し、その金額の3倍に相当する額を安定化基金に繰り入れることとなっている。そして、国は、都道府県が繰り入れた額の3分の1に相当する額を財政安定化基金負担金(以下「国庫負担金」という。)として負担することとなっている。これらの3者は、毎年度拠出を行うなどして、3年間で当該計画期間に必要な安定化基金の造成を行うことになっている。
各都道府県は、拠出に当たり、管内市町村における3年間の介護給付費の見込額の総額に対し、国が標準として定めた割合(以下「標準拠出率」という。)を参考にして条例で定めた割合(以下「拠出率」という。)等により拠出金を算定する。この拠出金は、第1号被保険者が負担する第1号保険料により賄われている。そして、各都道府県はそれぞれの安定化基金の貸付状況や残高等を勘案した上で、翌計画期間の3年間分の事業に必要な金額に見合った拠出率を定めることになる。
貴省では、都道府県が設置する安定化基金の造成資金の一部として、12年度から17年度までの間に、47都道府県に対し計827億余円の国庫負担金を交付している。
イ 運営
算定政令によると、安定化基金の運営に必要な事項は都道府県の条例で定めることとされている。そして、都道府県は、地方自治法(昭和22年法律第67号)に基づき、拠出率の設定、貸付け、交付、基金の管理、処分等の必要事項を条例で定めており、また、基金は、確実かつ効率的に運用しなければならず、貸付等の目的のためでなければこれを処分することができないこととなっている。
ウ 貸付等
安定化基金の貸付けは、図2のとおり、事業計画に基づく見込みを上回る介護給付費の増加や第1号保険料の未納などにより、基金事業対象費用額(注2)
(以下「費用額」という。)が基金事業対象収入額(注3)
(以下「収入額」という。計画期間の最終年度においては、基金事業対象収入額、当該計画期間における基金事業借入金及び基金事業交付金の合計額)を上回ると見込まれる市町村に対し、算定政令で定めるところにより算定した額を限度として当該年度に貸し付けるものである。
また、安定化基金の交付は、第1号保険料の収納率が悪化するなどにより、計画期間の全体について、実績保険料収納額が予定保険料収納額に不足すると見込まれ、かつ、収入額が費用額に不足すると見込まれる市町村に対して、算定政令で定めるところにより算定した額を計画期間の最終年度に交付するものである。
(注2) | 基金事業対象費用額 標準給付費総額(現物給付実績と償還払い実績)と拠出金と安定化基金の償還額の計
|
(注3) | 基金事業対象収入額 実績保険料収入額と介護給付費交付金交付実績額と公費負担金交付実績額(国、都道府県、市町村負担分)等の計
|
図2 貸付等の概念図
・初年度、次年度の貸付額 〔1〕 、〔2〕 =(単年度の費用額−単年度の収入額)×1.1
・交付額(原則) 〔3〕 =(予定保険料収納額−実績保険料収納額)×1/2
・最終年度の貸付額 〔4〕 ={(計画期間の費用額−計画期間の収入額)−初、次年度に既に貸付済の額−交付額}×1.1
安定化基金から貸付けを受けた市町村は、原則として次期計画期間の3年間で、貸付金を償還することとなっている。償還に要する費用は、次期計画期間における第1号保険料の一部として算定され、第1号被保険者から徴収することとなっている。なお、第1期の貸付けについては、償還期間を最長9年間に延長できる特別の措置が執られた。
本院では、18年10月に、参議院からの検査要請に基づき、参議院議長に対して、「社会保障費支出の現状に関する会計検査の結果について」を報告した。そして、同報告において、47都道府県の16年度末現在における安定化基金の貸付残高は413億余円で、財政安定化基金造成額の2326億余円に対する貸付割合は17.7%となっていること、これを都道府県別にみると0.0%から75.2%までとなっていることを記述し、「各市町村の財政状況、保険給付の状況等の制度全般にわたる動向について、引き続き注視しながら検査していく」としたところである。
そこで、国庫負担金について、有効性等の観点から、安定化基金の基金規模は過去の貸付等状況及び将来の基金需要見込みからみて適切なものとなっているか、都道府県が設定した拠出率は将来の基金需要見込みを反映した適切なものになっているかなどに着眼して検査した。
本院は、貴省及び24都道府県(注4)
において、会計実地検査を行った。そして、第1期、第2期及び第3期の18年度までの安定化基金の造成、貸付等の状況、拠出金の算定状況等について事業実績報告書等により検査した。
また、19年6月末日現在に24都道府県に所在する市町村で、15年度から18年度までの間に一度でも貸付等を受けた合併前の旧市町村を含む227市町村と、貸付等を受けなかった市町村のうち18年度末現在で第1号被保険者数が1万人以上の289市町村との計516市町村について、資料の提出を求め、貸付けを受けた理由、保険料収納状況、介護サービス給付額等を検査し、このうち236市町村については会計実地検査を行った。
24都道府県の安定化基金の造成額は、第1期1359億余円、第2期292億余円、第1期、第2期の造成額合計(第1期の交付額を除く。)は1644億余円となっており、これに第3期(18年度)の82億余円を加えた第1期から第3期(18年度)までの造成額合計(第1期、第2期の交付額を除く。)は1693億余円となっている。このうち国庫負担金の額は第1期452億余円、第2期96億余円、第3期(18年度)26億余円で、合計575億余円となっている。
また、安定化基金からの貸付等額は、第1期247億余円、第2期334億余円、第3期(18年度)5億余円で、各期の造成額に対する貸付等額の割合(以下「貸付等割合」という。)は第1期18.2%、第2期20.3%となっている。
表1 | 24都道府県における第1期、第2期の安定化基金造成及び貸付等状況 | (単位:千円) |
都道府県 | 第1期(平成12〜14年度) | 第2期(15〜17年度) | 17年度末貸付残高 〔12〕 =〔2〕 −〔3〕 +〔7〕 −〔8〕 |
安定化基金造成額に対する貸付残高割合 〔12〕 /〔11〕 *100 |
|||||||||||||
造成額 〔1〕 |
貸付額 〔2〕 |
償還額 〔3〕 |
交付額 〔4〕 |
貸付等額 〔5〕 =〔2〕 +〔4〕 |
貸付等割合 〔5〕 /〔1〕 *100 |
造成額 〔6〕 |
貸付額 〔7〕 |
償還額 〔8〕 |
交付額 〔9〕 |
貸付等額 〔10〕 =〔7〕 +〔9〕 |
造成額合計 〔11〕 =〔1〕 −〔4〕 +〔6〕 |
貸付等割合 〔10〕 /〔11〕 * |
|||||
100うち国庫負担金 | うち国庫負担金 | ||||||||||||||||
北海道 | 9,994,308 | 3,324,461 | 1,828,487 | − | 314,231 | 2,142,719 | 21.4% | 2,411,868 | 793,400 | 400,756 | 1,326,782 | 117,505 | 518,261 | 12,091,944 | 4.2% | 902,461 | 7.4% |
宮城県 | 3,398,098 | 1,130,033 | 68,132 | − | − | 68,132 | 2.0% | 168,908 | 53,379 | 69,579 | 58,574 | − | 69,579 | 3,567,007 | 1.9% | 79,137 | 2.2% |
茨城県 | 3,728,085 | 1,239,564 | 174,901 | − | 16,306 | 191,207 | 5.1% | 16,870 | − | 234,400 | 164,401 | 8,535 | 242,935 | 3,728,649 | 6.5% | 244,900 | 6.5% |
群馬県 | 3,201,896 | 1,066,706 | 110,485 | − | 282 | 110,767 | 3.4% | 787,373 | 260,666 | 73,300 | 69,682 | − | 73,300 | 3,988,987 | 1.8% | 114,103 | 2.8% |
埼玉県 | 6,847,029 | 2,280,667 | − | − | − | − | 0.0% | 1,762,957 | 580,970 | 395,016 | − | 24,214 | 419,231 | 8,609,986 | 4.8% | 395,016 | 4.5% |
東京都 | 17,825,268 | 5,937,921 | 90,933 | − | 18,979 | 109,912 | 0.6% | 4,365,472 | 1,436,302 | 1,575,948 | 33,550 | 217,025 | 1,792,973 | 22,171,762 | 8.0% | 1,633,331 | 7.3% |
神奈川県 | 10,350,697 | 3,445,427 | 13,640 | − | 225 | 13,865 | 0.1% | 2,554,091 | 849,109 | 280,624 | 13,640 | 36,500 | 317,125 | 12,904,564 | 2.4% | 280,624 | 2.1% |
新潟県 | 4,677,633 | 1,558,607 | 1,604,181 | − | − | 1,604,181 | 34.2% | 1,199,724 | 398,849 | 1,185,155 | 1,612,745 | 32,890 | 1,218,045 | 5,877,358 | 20.7% | 1,176,591 | 20.0% |
福井県 | 1,697,153 | 562,780 | 3,578 | − | 865 | 4,443 | 0.2% | 405,139 | 131,185 | − | 3,578 | − | − | 2,101,427 | 0.0% | − | 0.0% |
山梨県 | 1,370,287 | 456,409 | 274,699 | − | 13,962 | 288,661 | 21.0% | 344,220 | 114,160 | 269,344 | 245,824 | 1,657 | 271,001 | 1,700,545 | 15.9% | 298,219 | 17.5% |
長野県 | 3,711,910 | 1,236,505 | 1,593,429 | − | 15,347 | 1,608,776 | 43.3% | 1,018,026 | 338,772 | 1,340,600 | 1,423,722 | 18,016 | 1,358,616 | 4,714,589 | 28.8% | 1,510,306 | 32.0% |
愛知県 | 8,468,231 | 2,819,624 | 70,696 | − | 3,081 | 73,777 | 0.8% | 2,069,985 | 682,753 | 1,737,219 | 70,696 | 725,995 | 2,463,214 | 10,535,135 | 23.3% | 1,737,219 | 16.4% |
三重県 | 3,031,484 | 1,009,781 | 58,000 | − | 5,171 | 63,171 | 2.0% | 748,057 | 248,638 | 851,612 | 58,000 | 1,993 | 853,605 | 3,774,371 | 22.6% | 851,612 | 22.5% |
京都府 | 4,139,562 | 1,377,037 | 2,331,514 | − | 1,226 | 2,332,740 | 56.3% | 1,110,974 | 367,967 | 1,144,863 | 868,605 | 387,640 | 1,532,503 | 5,249,310 | 29.1% | 2,607,771 | 49.6% |
大阪府 | 12,599,110 | 4,194,229 | 107,072 | − | 71,806 | 178,878 | 1.4% | 3,048,192 | 1,008,002 | 6,887,910 | 107,072 | 365,471 | 7,253,381 | 15,575,496 | 46.5% | 6,887,910 | 44.2% |
兵庫県 | 8,372,177 | 2,785,323 | 613,600 | − | 36,984 | 650,584 | 7.7% | 2,050,419 | 663,611 | 2,976,900 | 563,333 | 463,073 | 3,439,973 | 10,385,612 | 33.1% | 3,027,166 | 29.1% |
奈良県 | 2,168,990 | 720,708 | 65,255 | − | 607 | 65,862 | 3.0% | 465,109 | 151,341 | 82,006 | 66,515 | 10,648 | 92,654 | 2,633,492 | 3.5% | 80,746 | 3.0% |
広島県 | 5,256,047 | 1,750,903 | 1,250,900 | − | 18,987 | 1,269,887 | 24.1% | 4,936 | − | 1,476,200 | 1,152,410 | 5,056 | 1,481,256 | 5,241,996 | 28.2% | 1,574,690 | 30.0% |
愛媛県 | 3,061,409 | 1,019,007 | 293,324 | − | 25,023 | 318,347 | 10.3% | 731,936 | 242,707 | 1,215,203 | 177,668 | 61,190 | 1,276,393 | 3,768,322 | 33.8% | 1,330,859 | 35.3% |
福岡県 | 8,499,258 | 2,828,116 | 5,314,413 | − | 81,712 | 5,396,125 | 63.4% | 2,218,863 | 730,769 | 4,601,962 | 2,214,064 | 708,521 | 5,310,483 | 10,636,410 | 49.9% | 7,702,310 | 72.4% |
佐賀県 | 1,742,914 | 579,494 | 505,466 | − | − | 505,466 | 29.0% | 440,570 | 144,617 | 321,000 | 367,966 | − | 321,000 | 2,183,485 | 14.7% | 458,500 | 20.9% |
長崎県 | 3,129,129 | 1,041,638 | 1,411,574 | − | 36,498 | 1,448,073 | 46.2% | 755,697 | 250,384 | 2,842,139 | 989,651 | 107,833 | 2,949,972 | 3,848,329 | 76.6% | 3,264,062 | 84.8% |
宮崎県 | 2,425,387 | 808,056 | 793,996 | − | 4,145 | 798,141 | 32.9% | 590,066 | 195,810 | 97,897 | 704,881 | 6,502 | 104,399 | 3,011,307 | 3.4% | 187,012 | 6.2% |
沖縄県 | 6,301,600 | 2,100,473 | 5,383,836 | − | 166,686 | 5,550,522 | 88.0% | 59 | − | 94,563 | 2,930,378 | 30,796 | 125,359 | 6,134,973 | 2.0% | 2,548,020 | 41.5% |
24都道府県計 | 135,997,674 | 45,273,480 | 23,962,114 | − | 832,129 | 24,794,243 | 18.2% | 29,269,522 | 9,643,400 | 30,154,196 | 15,223,742 | 3,331,069 | 33,485,266 | 164,435,067 | 20.3% | 38,892,568 | 23.6% |
47都道府県計 | 203,752,153 | 67,823,473 | 40,256,917 | 4,700 | 1,212,288 | 41,469,206 | 20.3% | 45,174,567 | 14,887,841 | 39,182,762 | 26,366,927 | 4,029,830 | 43,212,592 | 247,714,432 | 17.4% | 53,068,052 | 21.4% |
注(2) | 造成額には、運用による利益792,778千円(第1期281,734千円、第2期511,043千円)を含む。 |
注(3) | 円単位で集計したのち、千円単位で表記しているため、合計額が一致しない。 |
24都道府県における計画期間ごとの貸付等割合についてみると、相当のばらつきがあり、第1期の最高は沖縄県の88.0%、最低は埼玉県の0.0%、第2期の最高は長崎県の76.6%、最低は福井県の0.0%となっている。
図3 24都道府県における造成額、貸付等額及び貸付等割合
貴省では、次のような算定の考え方により標準拠出率を設定していた。
第1期は、実績のない中で算定することから、すべての市町村で、普通徴収が見込まれる第1号保険料の2%に相当する収納不足が生じ、かつ、介護給付費増により全国の2割の市町村で介護給付費の2割、3割の市町村で介護給付費の1割に相当する財政不足が生ずる場合などでも対応可能な水準として標準拠出率を0.5%と設定した。
第2期は、第1期中途までの実績に基づく第1期の貸付等見込額に、第2期の介護給付費見込額の伸び率(30.8%)を乗じて貸付等見込額を算出し、この額から控除すべき貸付金の償還見込額について、第1期に貸付けを受けた全市町村が9年間の償還延長措置をとった場合を考慮するなどして標準拠出率を0.1%と設定した。
第3期は、第2期の次年度である16年度時点の貸付状況が、第1期の同時期を上回っており、その後も貸付額が増加すると見込まれたこと、第3期においても第1期の貸付金の一部が償還されないこと、安定化基金に積み立てた額の大部分を貸付等している都道府県があり、積立金に不足を生じるおそれがあることから、第2期と同じく標準拠出率を0.1%と設定した。
そして、24都道府県における第1期から第3期(18年度)までの拠出率は、表2のとおり、第1期は、制度開設当初で介護給付の実績もないことから、24都道府県のすべてが標準拠出率と同じ率の拠出率としていたが、第2期以降の拠出率は異なっている。
24都道府県の拠出率(%) | 都道府県名 | 箇所数 | ||
第1期 | 第2期 | 第3期 (平成18年度) |
||
0.5 | 0 | 0 | 茨城、広島両県 | 2 |
0.5 (1.5) |
0 | 0 | 沖縄県 | 1 |
0.5 | 0.1 | 0 | 埼玉、神奈川、新潟、愛媛、佐賀各県 | 5 |
0.5 | 0.02 | 0.02 | 宮城県 | 1 |
0.5 | 0.1 | 0.03 | 東京都 | 1 |
0.5 | 0.1 | 0.1 | 北海道、京都、大阪両府、群馬、福井、山梨、長野、愛知、三重、兵庫、奈良、福岡、長崎、宮崎各県 | 14 |
標準拠出率 | ||||
0.5 | 0.1 | 0.1 |
そして、3県では第2期以降新たな拠出を行っていないが、このうち広島県では、第1期の中途における貸付等の見込額の割合が比較的低かったこと、第2期は第1期の実績を踏まえ介護給付費等をより正確に見込むことが可能であり、第2期中に見込まれる貸付等の額は第1期の額よりも低くなる可能性が高いことなどをその理由としている。
一方、14道府県では、次のようなことから、第2期及び第3期に標準拠出率と同じ0.1%で拠出していた。
〔1〕 2府3県では、第1期、第2期の貸付等割合が高かったことなどから、第2期及び第3期において、これらの貸付実績を考慮した貸付見込額等に対応するためには、0.1%の拠出率で造成を新たに行う必要があるとした。
〔2〕 2県では、第2期及び第3期に保有する基金は、第1期と同水準の規模が必要であるとして、給付見込総額に0.5%を乗じるなどして必要な基金の額を算出し、この額からそれぞれ前期末基金残高と当期の償還見込額を控除するなどして、拠出率を0.1%とした。
〔3〕 1道6県では、貸付見込額等を正しく見込むことが困難であると考えたり、標準拠出率以外の拠出率を用いて算出することの方が適当であるという根拠が見当たらないとしたりなどして、第2期及び第3期の拠出率を標準拠出率と同じ0.1%とした。
24都道府県において第2期から第3期(18年度)までに貸付等を受けた市町村数(合併前の旧市町村を含む。)は、表3のとおりであり、第2期では延べ3,753市町村のうち貸付けは延べ425市町村、交付は107市町村となっていた。
そして、貸付けを受けた市町村の中には第2期において3年度連続して貸付けを受けている市町村が12道府県で25市町村(延べ75市町村)見受けられた。
区分 | 第2期 | 第3期 | |||
平成15年度 | 16年度 | 17年度 | 計 | 18年度 | |
全市町村数(各年度末現在の数) | 1,502 | 1,273 | 978 | 3,753 | 973 |
うち貸付市町村 | 91 | 151 | 183 | 425 | 10 |
うち交付市町村 | \ | 107 | 107 | \ | |
うち貸付等を受けなかった市町村 | 1,411 | 1,122 | 779 | 3,312 | 963 |
上記のうち検査市町村 | 591 | 519 | 337 | 1,447 | 506 |
注(1) | 全市町村数計は3箇年度の単純な合計で延べ数である。 |
注(2) | 第2期の交付市町村のうち、平成17年度に交付のみの市町村は16市町である。 |
ア 貸付等を受けた市町村
第2期に貸付けを受けた延べ425市町村のうち延べ343市町村(80.7%)では、貸付けを受けた理由として、居宅サービスの利用が計画を上回ったことを挙げており、そのサービスの種類別では、多い順に通所介護、認知症対応型共同生活介護、訪問介護などを挙げている。
そこで、この上位3サービスにおける介護給付費見込みと実績とのかい離率についてみると、表4のとおり、通所介護25.4%、認知症対応型共同生活介護56.9%、訪問介護8.6%となっていた。また、介護給付費実績額が見込額を上回った額(以下「開差額」という。)についてみると、3サービスの開差額計は1586億余円で居宅サービスの開差額1975億余円の80.3%を占めていた。このことから、これら3サービスの介護給付費の実績額が見込額を大きく上回ったことが、これら市町村が貸付けを受ける大きな要因となったと認められる。
表4 | 貸付けを受けた延べ425市町村の介護給付費見込みと実績とのかい離率 | (単位:千円、%) |
項目 | 第2期合計 | |||||
事業計画給付見込額(A) | 給付実績額(B) | 開差額 (B−A) |
かい離率 (B−A)/A |
|||
居宅サービス | 1,534,987,657 | 1,732,565,284 | 197,577,627 | 12.8 | ||
訪問通所サービス | 1,103,569,918 | 1,214,968,095 | 111,398,177 | 10.0 | ||
訪問介護 | 393,104,194 | 426,917,032 | 33,812,838 | 8.6 | ||
通所介護 | 307,115,355 | 385,302,832 | 78,187,476 | 25.4 | ||
その他 | 403,350,367 | 402,748,230 | −602,137 | −0.1 | ||
短期入所サービス | 134,651,499 | 140,720,920 | 6,069,420 | 4.5 | ||
単品サービス | 257,631,443 | 341,427,315 | 83,795,872 | 32.5 | ||
認知症対応型共同生活介護 | 81,976,782 | 128,633,817 | 46,657,035 | 56.9 | ||
その他 | 175,654,661 | 212,793,497 | 37,138,836 | 21.1 | ||
その他 | 39,134,796 | 35,448,953 | −3,685,842 | −9.4 | ||
施設サービス | 1,838,440,293 | 1,731,501,718 | −106,938,574 | −5.8 | ||
介護老人福祉施設 | 759,725,443 | 697,288,194 | −62,437,248 | −8.2 | ||
介護老人保健施設 | 605,417,727 | 580,948,105 | −24,469,622 | −4.0 | ||
介護療養型医療施設 | 473,297,122 | 453,265,419 | −20,031,703 | −4.2 | ||
その他 | 31,411,680 | 52,603,088 | 21,191,407 | − | ||
合計 | 3,404,839,630 | 3,516,670,091 | 111,830,460 | 3.2 |
居宅サービス(C) | \ | \ | 197,577,627 | |
うち訪問介護 | \ | \ | 33,812,838 | |
通所介護 | \ | \ | 78,187,476 | |
認知症対応型共同生活介護 | \ | \ | 46,657,035 | |
3サービス計(D) | \ | \ | 158,657,349 | 構成割合 (D/C)80.3% |
注(1) | 円単位で集計したのち、千円単位で表記しているため、合計額が一致しない。 |
注(2) | 事業計画給付見込額等の把握が出来なかった市町村は除外している。 |
また、第2期に3年度連続して貸付けを受けた25市町村に対する貸付額は計110億余円で、同時期に貸付けを受けた延べ425市町村に対する貸付額計301億余円の36.5%を占めており、このような市町村の安定化基金に対する影響は大きいものとなっている。そして、今後、このような市町村に対する対応等について、引き続き安定化基金で対応すべきであるとしたところが9道県、第1号保険料を見直すべきであるとしたところが8府県、その他が7都府県となっていた。
3年度連続して貸付けを受けた市町村の事例を示すと次のとおりである。
A府B市では、第2期に平成15年度2億3061万余円、16年度11億円、17年度13億6938万余円、計27億円の貸付けと、5288万余円の交付をそれぞれ受けていた。
同市では、これらの貸付等を受けた理由として、計画策定の過程で必要とされる4,200円を500円下回る3,700円で第2期の第1号保険料の基準額を設定したこと、第1期の第1号保険料の収納率(97.6%)を1%改善すると見込んだもののその改善ができなかったこと、また、介護給付費について、第1号保険料の基準額の設定に合わせて本来必要な計画値より低く見込んだこと、第2期におけるほぼすべての介護サービスについての急激な伸びを見込めなかったことなどによるとしている。その結果、第2期において、第1号保険料については収納実績が見込みを2億2011万余円(見込額に対して1.1%)下回り、介護給付費実績額が見込額を111億4107万余円(同11.0%)上回るなどしたため、毎年度連続して貸付等を受けることになった。
イ 貸付等を受けなかった市町村
貸付等を受けなかった延べ3,312市町村のうち、今回検査対象とした1,447市町村では、施設サービスの利用が計画を下回ったことや第1号被保険者数が増加したことなどから貸付等を受けなかったとしている。
そして、貸付けを受けなかった市町村について介護給付費見込みと実績とのかい離率をみたところ、居宅サービスが2.1%と若干実績が見込みを上回っているが、施設サービスは実績が見込みを11.0%下回っていた。
ア 第3期の造成見込額と貸付見込額
24都道府県の第3期の造成見込額合計は、表5のとおり、235億余円、第1期から第3期までの造成見込額合計(第1期、第2期の交付額を除く。)は1846億余円となっている。そして、このうち国庫負担金見込額は第3期77億余円、第1期から第3期までの合計は626億余円となっている。
また、24都道府県のうち17都道府県では第3期の貸付等見込額を算出しているが、その見込額は合計433億余円で、第2期の貸付等実績額合計306億余円の約1.4倍となっている。
表5 | 24都道府県の第3期における造成見込額 | (単位:千円、%) |
都道府県 | 第3期 | ||||||||||
平成18年度造成額 | 造成見込額 | 償還額 | 貸付等見込額 注(1) |
17都道府県の第2期貸付等実績額 | 造成見込額合計 注(2) |
貸付等割合 (見込) |
|||||
うち国庫負担金 | うち国庫負担金 (見込) |
うち18年度貸付額 | うち国庫負担金 (見込) |
||||||||
北海道 | 917,740 | 287,168 | 2,640,751 | 861,505 | 743,415 | 1,529,462 | 127,464 | 518,261 | 14,615,189 | 4,979,368 | 10.4 |
宮城県 | 70,446 | 21,707 | 200,692 | 65,122 | 79,137 | − | 0 | − | 3,767,699 | 1,248,535 | − |
茨城県 | 11,363 | − | 11,363 | − | 244,900 | 127,200 | 0 | 242,935 | 3,731,477 | 1,239,564 | 3.4 |
群馬県 | 327,538 | 107,705 | 973,654 | 323,116 | 109,018 | − | 0 | − | 4,962,641 | 1,650,489 | − |
埼玉県 | 33,555 | − | 33,555 | − | 395,016 | 0 | 0 | 419,231 | 8,619,327 | 2,861,637 | 0.0 |
東京都 | 561,334 | 167,061 | 1,563,705 | 501,185 | 1,605,170 | 4,078,810 | 0 | 1,792,973 | 23,518,442 | 7,875,409 | 17.3 |
神奈川県 | 32,533 | − | 32,533 | − | 280,624 | 5,676,049 | 17,931 | 317,125 | 12,900,596 | 4,294,537 | 43.9 |
新潟県 | 5,005 | − | 5,005 | − | 1,176,591 | 1,423,111 | 260,000 | 1,218,045 | 5,849,473 | 1,957,457 | 24.3 |
福井県 | 163,309 | 51,144 | 470,177 | 153,433 | − | 0 | 0 | 0 | 2,571,604 | 847,399 | 0.0 |
山梨県 | 144,883 | 47,045 | 427,104 | 141,135 | 298,219 | − | 0 | − | 2,125,992 | 711,705 | − |
長野県 | 421,288 | 139,048 | 1,255,577 | 417,144 | 1,477,235 | − | 4,000 | − | 5,952,150 | 1,992,422 | − |
愛知県 | 933,679 | 302,978 | 2,751,552 | 908,936 | 1,737,219 | 0 | 0 | 2,463,214 | 12,560,693 | 4,411,314 | 0.0 |
三重県 | 321,474 | 104,646 | 949,356 | 313,940 | 851,612 | − | 0 | − | 4,721,734 | 1,572,360 | − |
京都府 | 447,122 | 146,484 | 1,326,027 | 439,452 | 1,872,374 | 2,500,000 | 0 | 1,532,503 | 6,187,697 | 2,184,457 | 40.4 |
大阪府 | 1,379,350 | 449,663 | 4,077,332 | 1,348,990 | 6,887,910 | 7,200,000 | 96,450 | 7,253,381 | 19,287,357 | 6,551,222 | 37.3 |
兵庫県 | 847,667 | 270,401 | 2,470,075 | 811,204 | 3,000,033 | 5,004,159 | 0 | 3,439,973 | 12,392,614 | 4,260,139 | 40.3 |
奈良県 | 210,379 | 67,883 | 617,681 | 203,650 | 80,746 | 0 | 0 | 92,654 | 3,240,526 | 1,075,701 | 0.0 |
広島県 | 12,669 | − | 12,669 | − | 1,535,270 | 2,179,481 | 0 | 1,481,256 | 5,249,609 | 1,750,903 | 41.5 |
愛媛県 | 7,439 | − | 7,439 | − | 1,279,355 | 1,511,000 | 0 | 1,276,393 | 3,714,572 | 1,261,715 | 40.6 |
福岡県 | 883,759 | 286,198 | 2,600,928 | 858,594 | 6,040,797 | 6,588,829 | 0 | 5,310,483 | 12,528,817 | 4,417,479 | 52.5 |
佐賀県 | 5,160 | − | 5,160 | − | 458,500 | 1,500,000 | 0 | 321,000 | 2,188,646 | 724,112 | 68.5 |
長崎県 | 310,144 | 102,127 | 922,909 | 306,382 | 3,221,178 | 4,027,191 | 0 | 2,949,972 | 4,663,404 | 1,598,405 | 86.3 |
宮崎県 | 221,037 | 72,538 | 221,037 | 72,538 | 146,767 | − | 2,300 | − | 3,225,842 | 1,076,404 | − |
沖縄県 | − | − | − | − | 2,294,131 | − | 0 | − | 6,104,177 | 2,100,473 | − |
合計 | 8,268,886 | 2,623,804 | 23,576,294 | 7,726,335 | 35,815,220 | 43,345,293 | 508,145 | 30,629,404 | 184,680,291 | 62,643,217 | 23.4 |
注(1) | 第3期に貸付等を見込んでいなかった都道府県については「−」とした。 |
注(2) | 造成見込額合計=(第1、2期造成額+第3期造成見込額)−(第1、2期交付額) |
注(3) | 円単位で集計したのち、千円単位で表記しているため、合計額が一致しない。 |
イ 第3期の18年度の介護給付費見込みと実績とのかい離
今回、検査の対象とした516市町村の18年度の介護給付費見込みと実績とのかい離率は、表6のとおり、居宅サービスが−4.6%、地域密着型サービスが−21.6%、施設サービスが−7.1%となっており、サービス全体では−6.4%となっていた。特に制度改正により開始された地域密着型の各サービスのうち第2期に貸付等の主な理由として挙げられた認知症対応型共同生活介護のかい離率は1.5%で、実績とのかい離がほとんどなくなっている。
また、第2期に貸付等を受けた主な理由に挙げられている3サービスの介護給付費について、17年度と18年度の実績額を比較すると、表7のとおり、認知症対応型共同生活介護では23.4%増、通所介護では0.6%増、訪問介護では4.5%減となっており、第2期の15年度から17年度までの伸び率に比べていずれも低減している。
表6 | 平成18年度における介護給付費見込みと実績とのかい離率 | (単位:千円、%) |
項目 | 事業計画給付見込額(A) | 給付実績額(B) | 開差額(B−A) | かい離率(B−A)/A | |
居宅サービス | 1,807,059,355 | 1,722,542,570 | −84,516,784 | −4.6 | |
訪問介護 | 485,715,975 | 429,820,572 | −55,895,403 | −11.5 | |
通所介護 | 405,913,231 | 423,260,391 | 17,347,159 | 4.2 | |
その他 | 915,430,147 | 869,461,606 | −45,968,541 | −5.0 | |
地域密着型サービス | 278,050,874 | 217,793,408 | −60,257,466 | −21.6 | |
夜間対応型訪問介護 | 17,202,176 | 45,674 | −17,156,502 | −99.7 | |
小規模多機能型居宅介護 | 39,498,272 | 2,330,283 | −37,167,989 | −94.1 | |
認知症対応型共同生活介護 | 186,468,017 | 189,335,786 | 2,867,769 | 1.5 | |
その他 | 34,882,408 | 26,081,664 | −8,800,743 | −25.2 | |
施設サービス | 1,560,574,606 | 1,448,455,376 | −112,119,229 | −7.1 | |
介護老人福祉施設 | 680,475,907 | 639,773,898 | −40,702,009 | −5.9 | |
介護老人保健施設 | 537,668,645 | 507,978,192 | −29,690,452 | −5.5 | |
介護療養型医療施設 | 342,430,053 | 300,703,285 | −41,726,767 | −12.1 | |
その他 | 172,797,495 | 184,087,317 | 11,289,821 | − | |
小計 | 3,818,482,330 | 3,572,878,672 | −245,603,658 | −6.4 |
表7 | 3サービスの第2期以降の介護給付実績額及び対前年度伸び率の推移 | (単位:千円、%) |
項目 | 平成15年度 | 16年度 | 17年度 | 18年度 | |||
対前年度伸び率 | 対前年度伸び率 | 対前年度伸び率 | |||||
訪問介護 | 399,020,199 | 439,728,827 | 10.2 | 450,543,453 | 2.4 | 429,820,572 | −4.5 |
通所介護 | 309,726,944 | 372,607,160 | 20.3 | 420,349,658 | 12.8 | 423,260,391 | 0.6 |
認知症対応型共同生活介護 | 68,354,157 | 112,365,708 | 64.3 | 153,323,745 | 36.4 | 189,335,786 | 23.4 |
ウ 第3期(19、20両年度)の貸付等見込み
検査の対象とした516市町村の第3期(19、20両年度)における貸付等を受ける予定の有無を調査したところ、貸付等を受ける予定はないとしたのは443市町村、貸付等を受ける予定であるとしたのは34市町村となっている。
また、第3期の初年度である18年度に貸付けを受けた10市町村のうち、引き続き19、20両年度に貸付等を受ける予定があるとしているのは9市町村となっており、第2期の24市町村に比べ3年度連続して貸付けを受ける可能性のある市町村は減少する見込みとなっている。さらに、介護保険の事業規模から安定化基金の貸付等に大きな影響を与える可能性がある特別区、政令指定都市のほとんどが第3期に貸付等を受ける予定はないとしている。
これらのことなどから、第3期における貸付等額は、第2期の実績を大きく上回ることはないと思料される。
前記のとおり、24都道府県の安定化基金の第1期、第2期造成額合計は1644億余円で、この額から、第1期の貸付額から第2期の償還額を除いた第1期の貸付残額87億余円と第2期の貸付等額334億余円を除くと、17年度末現在で貸付等されなかった安定化基金の額(以下「未貸付等基金」という。)は1222億余円となっている。
そして、この未貸付等基金1222億余円のうち3分の1は市町村が拠出した額(以下「未貸付等拠出額」という。)となるが、これをそれぞれ、24都道府県の17年度末現在の第1号被保険者数で除して第1号被保険者1人当たりの未貸付等拠出額を計算すると、図4のとおり、24都道府県の平均で2,339円、最高額は沖縄県の5,408円、最低額は長崎県の451円となる。
図4 平成17年度末現在における第1号被保険者1人当たりの未貸付等拠出額
安定化基金の造成は、第1期においては、各都道府県で標準拠出率等により行われたが、第1期に実際に貸付等を受けたのは延べ4,813市町村のうち11.2%に当たる延べ543市町村で、その貸付等割合は24都道府県のうち17都道府県において30%を下回っていた。そして、第2期においては、第1期における介護給付及び貸付等の実績を踏まえて造成を行うことができたが、貸付等割合が低い都道府県においても、介護給付費の見込等を十分に検討しないまま、標準拠出率を採用するなどして造成が行われ、第2期における貸付等割合は24都道府県のうち19都道府県で30%を下回っていた。
そして、第3期においては、初年度の貸付けが第2期と比較して件数、金額とも大きく減少していること、前記のとおり認知症対応型共同生活介護等のサービスにおける見込みと実績とのかい離がほとんどなくなっていることなどから貸付等は減少すると思料される。
これらのことから、現在、安定化基金の保有額は多くの都道府県で基金需要に対応した規模を大きく上回り、国、都道府県及び市町村が拠出した財政資金が効果を十分発現することなく保有されている事態になっていると認められる。
そして、このような状況において、24都道府県のうち10都府県において、現在保有する基金のうち、各都道府県が貸付等のため当面必要と考える基金規模を上回る部分については、財政資金の有効活用を図るという考え方から、拠出者に返還することが可能となるような制度改正があれば返還等を検討したいなどとしている。また、14道府県において、第1期、第2期の貸付等割合が高率であることや、大規模市の保険財政が悪化した場合における貸付財源を確保しておく必要があり、どの程度の基金規模が適切か不明であることなどから、現時点では返還等は考えていないとしている。
前記のとおり、安定化基金の規模は、現在、基金需要に対応した規模を大きく上回るものとなっている。そして、安定化基金の貸付金は、次期計画期間に必ず償還されることなどから、必要な基金をいったん造成すれば、その後に追加して造成する必要はない。したがって、都道府県においては、それぞれの貸付等の状況等を考慮するなどして、保有する必要のある基金の規模を明確にし、その必要とする規模を上回るなど当面使用する見込みのない基金については、拠出者へ返還するなどして、その財政資金の有効活用を図る必要がある。
しかし、現行制度においては、基金規模に余裕があっても拠出者に返還するなど基金規模を適切な規模に調整する仕組みとなっていないため、このまま推移すると第3期以降も多額の未貸付等基金が継続して生じ、国、都道府県及び市町村が拠出した財政資金が効果を発現することなく保有されることとなり、このような事態は改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。
ア 多額の未貸付等基金が発生し都道府県が基金の規模に余裕があり返還することが適切と判断しても、基金規模を縮小できるような制度となっていないこと
イ 貴省において、都道府県に対し、標準拠出率を参考にして、安定化基金の造成、貸付等状況を十分に勘案して拠出率を決定するように会議等で周知等を行っていたが、標準拠出率の算定の考え方を明確に示していないために、都道府県の一部において、安定化基金の保有状況、貸付状況等を十分に検討していないこと
貴省において、都道府県の安定化基金を適切な規模に保つよう、次のとおり改善の処置を要求する。
ア 多額の未貸付等基金が発生し、都道府県が基金の一部を拠出者に返還することが適切と判断した場合に、基金規模を縮小できるような制度に改めること
イ 標準拠出率の算定の考え方を都道府県に対して明確に示すとともに、各都道府県が拠出率を設定する際に基金の保有状況、貸付状況等を十分に検討するなどして適切な拠出率を定めるよう個々の都道府県の状況に応じて助言すること