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独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構鉱工業承継勘定における産業投資特別会計からの出資金の額を適切な規模にするなどの検討をするよう意見を表示したもの


(1) 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構鉱工業承継勘定における産業投資特別会計からの出資金の額を適切な規模にするなどの検討をするよう意見を表示したもの

部局等 経済産業本省
検査の対象 経済産業本省
  独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構本部
設置根拠法 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法(平成14年法律第145号)
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構鉱工業承継勘定において平成19年度末に保有する資金の額 現金及び預金 5億2437万余円  
有価証券 16億9853万余円  
投資有価証券 155億9078万余円  
合計 178億1369万余円  
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構鉱工業承継勘定における政府出資金の全体額   183億1236万円 (背景金額)(平成15年度〜19年度)

【意見を表示したものの全文】

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構鉱工業承継勘定における産業投資特別会計からの出資金の規模等について

(平成20年10月31日付け 経済産業大臣あて)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 基盤技術研究促進センター及び鉱工業承継勘定の概要

(1) 基盤技術研究促進センターからの承継の状況

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(平成15年10月以降は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構。以下「機構」という。)は、15年4月1日に基盤技術研究促進センター(以下「基盤センター」という。)から、資産283億9373万余円、負債99億8032万余円及び資本として産業投資特別会計等からの出資金188億6688万余円(産業投資特別会計からの出資金183億1236万余円、民間等からの出資金5億5452万余円)を承継している。
 基盤センターは、基盤技術研究円滑化法(昭和60年法律第65号)に基づき、民間が行う基盤技術に関する研究開発支援のための推進機関として昭和60年10月に設立されて、産業投資特別会計からの出資を受けて、主として複数の民間企業と共同で設立する研究開発会社に出資を行い、民間の共同研究による基盤技術研究を支援していた。また、基盤技術研究に対する支援の一部は融資による方法で実施していた。
 その後、貴省及び総務省は、基盤技術研究の促進に一定の成果はあったものの、次のような理由により、基盤センターによる基盤技術研究の促進を図るための制度の見直しを行った。
〔1〕  競合する企業間で実用化の最終段階まで共同研究を継続することは難しいなどの要因により、出資金の回収が困難であることが明らかになってきたこと
〔2〕  基盤センターの会計処理上、出資による研究開発費の支出を資産として計上することとされていたが、この種の支出は費用化すべきであるとする近年の企業会計基準にそぐわなくなったこと
 見直しの結果、基盤技術研究円滑化法の一部を改正する法律(平成13年法律第60号。以下「改正円滑化法」という。)により、新しい枠組みによる民間の基盤技術研究に対する支援制度、基盤センターの解散等が規定されることとなった。
 基盤センターの解散は、改正円滑化法公布の日から2年以内と規定されて、それまでの間は、既存事業を廃止して事業の清算を実施することとされた上、基盤センターは平成15年4月1日に解散した。解散に当たっては、改正円滑化法附則第3条第2項の規定に基づいて、解散時の資本金3148億4425万円から、出資事業により取得した株式の取得に要した費用総額2856億7015万円とこれを処分したことにより得られた収入総額91億3048万余円との差引額である2765億3966万余円を出資がなかったものとして償却して、383億0458万余円が承継する資本金とされた。承継する資本金については、機構に188億6688万余円、通信・放送機構(16年4月1日以降は独立行政法人通信総合研究所と統合して独立行政法人情報通信研究機構)に194億3769万余円がそれぞれ承継された。そして、基盤センターは、一切の権利及び義務を機構及び通信・放送機構に承継して、事業の清算を完了した。

(2) 鉱工業承継勘定の状況

機構に承継された資産等は表1の開始貸借対照表のとおりとなっている。

表1 承継時(平成15年4月1日)の開始貸借対照表
(単位:百万円)

借方科目 金額 貸方科目 金額
(資産の部)
A 流動資産
    現金及び預金
    仮払金
    前払費用
    未収収益
    未収金
    その他の流動資産
    貸倒引当金
B 固定資産
  1 事業資産
    出資金
    貸付金
    貸倒引当金
  2 有形固定資産
    器具・備品
  3 無形固定資産
    電話加入権
  4 投資その他の資産
    長期性預金
    投資有価証券
    敷金・保証金
 
4,491
4,038
1
4
422
5
36
 17
23,901
10,343
958
10,004
 619
 
1
 
1
13,555
1,000
12,134
420
(負債の部)
A 流動負債
  未払金
  未払費用
  預り金
B 固定負債
  長期借入金
  退職給付引当金
    負債合計
(資本の部)
A 資本金
  政府出資金
  日本政策投資銀行出資金
  民間出資金
B 剰余金(△欠損金)
  融資事業資産損失
  その他の損失
    資本合計
   
   
   
   
 
611
3
605
2
9,369
9,322
46
9,980
 
18,866
18,312
251
302
 453
 439
 14
18,413
 
 
 
 
資産合計 28,393 負債・資本合計 28,393

 資産の主なものは、出資事業の出資金4社9億5883万余円、融資事業における貸付金の元本残高70社100億0465万余円が事業資産として計上されたほか、現金及び預金40億3868万余円、投資有価証券121億3478万余円が計上された。負債の主なものは、貸付金の原資としての長期借入金93億2245万余円が計上されて、また、資本金として、政府出資金183億1236万余円を含む188億6688万余円が計上された。
 基盤センターから承継した政府出資金等は、改正円滑化法附則第3条第1項の規定により、承継した株式処分業務及び債権管理回収業務(以下、両業務を合わせて「承継業務」という。)に必要な資金に充てるものとされて、機構は承継業務について、鉱工業承継勘定を設けて区分経理している。
 機構は、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)に基づき、中期目標期間の5年間(第1期15年度下期から19年度、第2期20年度から24年度)に係る中期計画を作成して、独立行政法人評価委員会の意見を聴いた貴省の認可を受けて、同計画に沿った業務運営を行っている。
 そして、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法(平成14年法律第145号。以下「機構法」という。)附則第10条は、承継業務を終えたときは、これらを区分経理している鉱工業承継勘定を廃止して、また、その際、債務を弁済してなお残余財産があるときは、出資額を限度として出資者に分配することと規定しており、分配した後に残余財産があるときは、国庫に納付することとしている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 政府は、「経済財政改革の基本方針2007」(平成19年6月19日閣議決定)において、現行の独立行政法人が制度本来の目的にかなっているか、制度創設後の様々な改革と整合的なものとなっているかなどについて、原点に立ち返って見直すこととして、同方針に基づき、「独立行政法人整理合理化計画の策定に係る基本方針」(平成19年8月10日閣議決定)を定めて、事務・事業の見直し、随意契約の見直し、保有資産の見直しなどを掲げた「独立行政法人整理合理化計画」(平成19年12月24日閣議決定)を策定した。
 同計画は、保有資産の見直しとして、不要となった金融資産の売却やそれに伴う積立金の国庫返納を行うとともに、既存貸付金の売却、証券化の検討及び促進、不良化している貸付けの早期処分等により金融債権について圧縮の方向で見直しを行うこととしている。
 また、政府は、20年4月に、独立行政法人通則法改正法案を第169回国会に提出しており、同法案には、独立行政法人は、業務の見直し、社会経済情勢の変化などにより、その保有する重要な財産であって主務省令で定めるものが将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる場合には、当該財産(以下「不要財産」という。)で政府からの出資に係るものについては、主務大臣の認可を受けてこれを国庫に納付するものとするなどと規定されており、さらに、国庫返納に伴う減資等についても所要の規定が設けられている。
 そこで、経済性、有効性等の観点から、機構が基盤センターから承継した出資金の額が承継業務の規模に比べて適切なものとなっているかなどに着眼して、貴省及び機構において、機構が基盤センターから承継した資産等を対象に、関係書類の提出を受けるとともに、鉱工業承継勘定の業務の実施状況及び業務に関する指導・監督状況等の説明を聴取するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 承継業務の状況

ア 株式処分業務の状況

 株式の保有及び処分の状況の推移は、図1のとおり、出資先会社4社の株式について、15年4月の承継時の開始貸借対照表における計上価額は9億5883万余円であったが、15年10月の機構の独立行政法人化に伴い、出資先会社の純資産額を基にした評価換えを行ったことにより、評価額は3億3897万余円となり、評価損6億1985万余円が発生している。また、その処分については、19年6月までに4社の株式を合計3億0087万余円で売却して業務を終了しており、売却損は3809万余円となっている。

図1 株式の保有及び処分の状況の年度別推移

図1株式の保有及び処分の状況の年度別推移

イ 債権管理回収業務の状況

 債権管理回収業務の年度別実績及び見込みは、中期計画等によれば図2のとおりとなっている。

図2 貸付先会社数、貸付金元本残高、借入金元本残高の実績及び見込み

図2貸付先会社数、貸付金元本残高、借入金元本残高の実績及び見込み

(注)
 平成19年度までは回収実績、20年度以降は回収見込み
 19年度末現在で貸倒懸念債権、破産更生債権等に分類されている4社の貸付債権は、20年度以降の回収見込額を計上していないため、25年度に貸付先会社数4社、貸付金元本残高が1億3357万余円計上されている。
  なお、当該貸倒懸念債権は、連帯債務者による少額弁済が行われているもの及び一時返済が延滞し現在は延滞が解消しているものの、今後の債務の弁済に問題が生じる可能性があるものであり、当該破産更生債権等は、担保売却や代位弁済により一部回収されているものの延滞が続いているものである。

 貸付金の貸付先及び元本残高は、15年4月の承継時に70社100億0465万余円であったが、19年度末時点で27社17億0085万余円(一般債権23社15億6728万余円、貸倒懸念債権3社1億2328万余円、破産更生債権等1社1029万円)となっており、承継時と比較して会社数で61.4%、貸付額で83.0%減少している。
 貸付金元本は、20年度から23年度までの各年度におおむね3億円から5億円の回収が見込まれており、第2期中期計画の最終年度である24年度に4社から2270万余円を、25年度に1社から229万余円を回収して業務を終了することにしている。
 また、貸付金の原資である産業投資特別会計からの借入金は、第2期中期計画期間中の23年度上期に償還を終了することにしており、年々業務規模が縮小していくことは明確である。

(2) 鉱工業承継勘定の損益の状況

 15年度から19年度までの業務運営の実績は表2のとおりとなっている。

表2 業務運営実績内訳の年度別推移
(単位:百万円)

区分 平成15 16 17 18 19
上期
(15.4.1〜15.9.30)
下期
(15.10.1〜16.3.31)
合計
(経常費用) 906 271 1,178 453 326 261 183
業務費
一般管理費
財務費用
 支払利息
引当金繰入
雑損
33
95
 
217
560
88
 
180
2
33
183
 
397
560
2
32
135
 
285
0
127
 
199
0
127
 
133
0
99
 
83
0
(経常収益) 852 198 1,050 369 311 295 279
業務収益
 貸付金利息収入
 その他の業務収入
財務収益
 受取利息
 受取配当金
 有価証券利息
引当金戻入
雑益
104
92
11
99
0
99
637
10
92
86
5
103
11
0
92
2
196
178
17
203
11
0
192
637
12
158
141
17
207
22
1
183
3
98
73
25
209
23
2
183
4
73
49
23
218
13
0
204
3
44
34
9
233
12
220
2
経常利益(△経常損失)
54

73

127

83

14

34 96
(臨時損失) 68 68 28 41 0 0
(臨時利益) 36 36 143 34 60 21
当期純利益(△当期純損失)
122

36

159

30
21

94 117
△次期繰越欠損金
762

732

754

659

542

(注)
 平成15年度の機構の財務書類は、15年10月1日に独立行政法人に移行したこと、新しい会計基準を採用したことなどにより、上期(15.4.1〜15.9.30)と下期(15.10.1〜16.3.31)に分割されている。  15年度の合計欄は、年度別に比較するために、上期の計上科目及び金額を下期の科目に合わせて合算したものである。

 一般管理費が年々減少していて、支払利息も貸付金の原資である長期借入金の縮小に伴って減少しているために、経常費用の総額は年々減少傾向にある。
 また、有価証券利息が16年度及び17年度に1億8000万円程度で推移して、18年度で2億0451万余円、19年度2億2093万余円に増加しているものの、貸付金利息収入が貸付金の元本残高の縮小に伴って減少しているために、経常収益の総額は年々減少傾向にある。
 そして、経常費用の減少額より経常収益の減少額が少ないために、経常損失が年々減少して、18年度は3417万余円、19年度は9669万余円の経常利益が計上されるに至っている。
 臨時損益を加味して純利益が計上されているのは16年度、18年度及び19年度であるが、各年度の利益は、承継前に基盤センターが貸付金の元本を減免したことなどにより生じた欠損金や承継後の株式評価損等から生じた欠損金の処理に充てられており、19年度は1億1786万余円が充てられて、繰越欠損金を5億4202万余円計上している。

(3) 保有資金の運用の状況

 鉱工業承継勘定の現金及び預金、預託金、投資有価証券等(注) の残高の状況は、図3のとおりである。

図3 資金の保有内訳の年度別推移

図3資金の保有内訳の年度別推移

 18年度において、財政融資資金の預託金が満期を迎えたために10億円減少しており、また、現金及び預金が前年度から3億2849万余円減少する一方、投資有価証券等が前年度から19億3427万余円増加して152億7545万余円となっている。さらに、19年度においても現金及び預金が前年度から17億8742万余円減少する一方、投資有価証券等が前年度から20億1386万余円増加して、172億8931万余円となっている。
 18、19両年度において、現金及び預金の計上額が減少する一方、投資有価証券等が増加しているのは、株式処分業務が終了したり、債権管理回収業務の規模が大幅に縮小したりしたために、当面の運営資金である現金等の需要が低くなり、これらを投資有価証券等で運用したことなどによると認められる。

 投資有価証券等には、固定資産に計上される満期保有を目的とした有価証券のほかに、残存償還期間が1年未満となり流動資産に計上されることとなった当該有価証券が含まれる。保有している投資有価証券等の種類は、社債(電力債等)、政府保証債、公団公庫債等である。
 そして、投資有価証券等の計上額が増加したことによる収益への影響は、図4のとおりである。

図4 財務収益と経常費用の年度別推移

図4財務収益と経常費用の年度別推移

 経常収益の総額は年々減少傾向にあるものの財務収益が増加しているのは、投資有価証券等の計上額が毎年増加していることに伴い有価証券利息が増加しているためである。また、経常費用との関係を見ると、経常費用の総額は年々減少傾向にあり、19年度には財務収益が経常費用を上回る結果となっている。

(改善を必要とする事態)

 承継業務の規模が大幅に縮小していることなどから、承継業務に充てるべきものとされた政府出資金183億1236万余円の大部分を投資有価証券等の形で保有し続けている事態は、現下の財政状況等にかんがみると、国の資産の有効活用の面から適切とは認められず、出資金の額を適切な規模にする検討を行うなどの改善の要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴省及び機構において、機構法では、勘定の廃止時に残余財産は出資額を限度として出資者に分配するなどの規定となっており、出資金の規模を適切なものとする相応の減資を行い、国からの出資金を国庫に返納するという規定がない現状において、業務規模の縮小に応じて、承継業務に充てるための出資金を適切な規模とするなどの検討を行っていなかったことによると認められる。

3 本院が表示する意見

 株式処分業務は19年6月で終了しており、また、債権管理回収業務は、承継時に100億0465万余円計上されていた貸付金元本残高が19年度末時点において17億0085万余円まで減少している。そして、貸付金の原資である産業投資特別会計からの借入金の償還は23年度中に終了することになっている。
 このように、承継業務の規模が年々縮小していくことが明らかであるにもかかわらず、機構は、機構法に基づき、貸付債権の最終償還時である25年度を目途として、政府出資金183億1236万余円を全額保有し続けることになる。
 ついては、貴省において、独立行政法人整理合理化計画に従った保有資産の見直しの中で、機構の鉱工業承継勘定における保有資金について、不要財産かどうかの見極めを行うなどして、出資金の額の適切な規模を検討して、関係機関と調整の上で、出資金の減資を行うことにより生ずる資金の国庫返納を可能とする検討を行うよう意見を表示する。