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  • 平成19年度|
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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

国庫補助事業に係る下水道の管きょ築造工事の工事費の積算に当たり、シールド工法で使用するセグメントの材料単価を製造原価等の調査を行うことにより決定するなどして適切なものとするよう是正改善の処置を求めたもの


(1) 国庫補助事業に係る下水道の管きょ築造工事の工事費の積算に当たり、シールド工法で使用するセグメントの材料単価を製造原価等の調査を行うことにより決定するなどして適切なものとするよう是正改善の処置を求めたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)国土交通本省 (項)都市計画事業費
部局等 7府県    
補助の根拠 下水道法(昭和33年法律第79号)
補助事業者
(事業主体)
7県市
補助事業の概要 シールド工法により、下水道の管きょを築造する工事
工事費 553億0024万余円 (平成18、19両年度)
  (国庫補助金交付額270億0936万余円)
セグメントの材料費の積算額 118億3585万余円 (平成18、19両年度)
  (国庫補助金相当額59億2733万余円)
修正単価が設定できたセグメントの材料費の積算額 39億6386万余円 (平成18、19両年度)
  (国庫補助金相当額19億8193万余円)
低減できたセグメントの材料費の積算額 5億9694万円 (平成18、19両年度)
上記に対する国庫補助金相当額 2億9847万円  
近似する標準セグメントがなかったセグメントの材料費の積算額 78億7198万余円 (平成18、19両年度)
上記に対する国庫補助金相当額 39億4539万円 (背景金額)

【是正改善の処置を求めたものの全文】

下水道の管きょ築造工事におけるセグメントの材料単価の決定について

(平成20年10月31日付け 国土交通大臣あて)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 工事の概要

(1) シールド工法の概要

 貴省は、都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与し、公共用水域の水質の保全に資することなどを目的として、下水道事業を実施する地方公共団体に、毎年度多額の国庫補助金を交付している。
  この下水道事業においては、シールド工法により、下水道の管きょを築造する工事が実施されている。シールド工法は、シールドと呼ばれる鋼鉄製の外筒を推進させて掘削するシールドマシンで地盤を掘削しながら、マシン後部の内側で工場で製造された鋼製又は鉄筋コンクリート製のセグメントをリング状に組み立てて、管きょを築造するものである(参考図参照)
 そして、これらのセグメントは、個別の工事ごとに発注が行われて製造されている。

(2) セグメントの規格

 セグメントの規格については、社団法人土木学会・社団法人日本下水道協会共編の「シールド工事用標準セグメント」において、下水道管きょの品質の標準化、安全性の確保等のために、材料の規格、性能等が定められており、セグメントの幅(0.75m〜1.2m)、リングの外径(1.8m〜6.0m)、分割数(5ピース〜6ピース)等により、鋼製セグメントについては189種類、鉄筋コンクリート製セグメントについては86種類のシールド工事用標準セグメント(以下「標準セグメント」という。)が設定されている。
 また、実際の工事においては、それぞれ管きょの線形、作用する土圧、上載荷重等の現場条件が異なることから、標準セグメントだけでは対応できない箇所があり、線形が急な箇所については標準セグメントの幅を短くしたセグメントを使用したり、土圧等が大きな箇所については標準セグメントより主桁(けた)の数を増やして剛性を高めたセグメントを使用したりなどしている(以下、これら標準セグメント以外のセグメントを「非標準セグメント」という。)。

(3) セグメントの単価の決定方法

 各都道府県及び政令指定都市は、通常、土木工事費の積算において材料の単価を決定する場合には、実勢の価格を反映させるために、貴省制定の土木工事標準積算基準書を基に定めているそれぞれの積算基準によることとしている。そして、一般的な材料等について物価調査機関に委託して実施させた調査等を基に毎年度制定している単価表に記載されているものについては、その単価表により、また、単価表に記載されていないものについては、物価資料(刊行物である積算参考資料をいう。以下同じ。)により、単価表及び物価資料に記載されていないものについては、特別調査(注1) により、さらに、単価表及び物価資料に記載がなく、特別調査により難いものについては、見積りによるなどして、それぞれ材料単価を決定している。
 セグメントについても、各都道府県及び政令指定都市は、上記と同様の方法により1リング当たりの単価を決定している。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 下水道のシールド工法において使用されているセグメントは、工事ごとの注文製造品であり、その材料費の工事費に占める割合が大きくなっている。
 そこで、本院は、経済性等の観点から、セグメントの単価が適切なものとなっているかなどに着眼して、20都府県市(注2) が、平成18、19両年度において施行しているシールド工法による管きょ築造工事150工事、工事費総額2561億4496万余円(国庫補助金総額1217億0951万余円)を対象として、積算基準、設計図書、見積書等の書類により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、20都府県市のうち7県市(注3) は、セグメントの単価を複数のセグメント製造会社からの見積りを基に決定しており、33工事、工事費総額553億0024万余円(国庫補助金総額270億0936万余円)で使用している標準セグメント12種類及び非標準セグメント80種類の材料費について、計118億3585万余円と積算していた。
 7県市がセグメントの単価を見積りを基に決定していたのは、単価表及び物価資料に記載がないこと、工事ごとに線形、土圧等の現場条件によりセグメントの規格が異なること、セグメントは注文により製造されるものであることなどから、特別調査により難い場合に当たると判断したことなどによる。
 一方、13都府県市(注4) は、単価表及び物価資料に記載がないセグメントについて、見積りによることなく物価調査機関に特別調査を委託して、その調査価格を基に次の〔1〕 又は〔2〕 の方法で単価を決定していた。
〔1〕  シールド工法による管きょ築造工事の件数が比較的少ない事業主体では、工事費の積算に当たって、当該工事で使用するすべてのセグメントについて特別調査を行い、その調査価格をセグメントの単価として使用する。
〔2〕  シールド工法による管きょ築造工事の件数が比較的多い事業主体では、毎年度、特別調査により標準セグメントの価格を調査するとともに、その見積りも徴して、鋼製及び鉄筋コンクリート製セグメントごとに調査価格を見積価格で除して査定率(19年度では、70%〜90%程度)を設定して、工事費の積算の際に、当該工事で使用するすべてのセグメントの見積価格に査定率を乗ずるなどして単価を決定する。
 このように、13都府県市が特別調査を基にセグメントの単価を決定しているのは、見積りによるよりも特別調査による方が、実勢の価格により近い価格で工事費を積算できると認識しているためである。また、〔2〕 の方法を採用している各事業主体は、非標準セグメント等の特別調査を実施していないセグメントについても同じ査定率を使用している。この理由としては、セグメントの製造方法、製造工程及び使用材料がほとんど同じであるためとしている。この点を確認するため、本院がセグメント製造工場に赴いて調査を行ったところ、セグメントは、作業標準の設定、製造設備の機械化等によって品質管理がなされた工場で、同じ材料を使用して、標準、非標準の区別なく製造されていた。
 以上のように特別調査の価格の方が見積りより安価になるのは、見積りは、製造会社等の販売希望価格となる場合等もあるのに対して、セグメントの特別調査は、製造原価等を調査していることなどから、より実勢の価格に近い価格の把握が可能となることによると認められる。
 そこで、本院は、標準セグメントや標準セグメントに近似した非標準セグメントについて、13都府県市が特別調査を基に決定したセグメントの単価を使用するなどして、これに運搬費を加えて修正単価を設定した。そして、7県市が33工事で使用している92種類のセグメントの材料費計118億3585万余円のうち、近似する標準セグメントがないなどのため修正単価が設定できなかったセグメントを除いた17工事の29種類の材料費計39億6386万余円について、上記の修正単価により計算すると計33億6692万余円となり、計5億9694万余円(国庫補助金相当額計2億9847万余円)低減できたと認められる。また、修正単価を設定できなかった25工事の63種類のセグメントの材料費計78億7198万余円(国庫補助金相当額計39億4539万余円)についても、特別調査を行って単価を決定していれば、更に相当程度材料費を低減できたと認められる。

(是正改善を必要とする事態)

 上記のように、シールド工法で使用するセグメントの単価について、特別調査により製造原価等の調査が可能であり、実勢の価格により近い経済的なものとすることができるのに、セグメント製造会社からの見積りを基に決定している事態は適切とは認められず、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、7県市において、セグメントの単価の決定に当たって、特別調査により製造原価等の調査が可能であることに対する配慮が十分でなかったこと、実勢の価格に近づけるための検討が十分でなかったことなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置

 下水道の管きょ築造工事のシールド工法に使用するセグメントの材料費は、工事費に占める割合が大きく、かつ、シールド工法による下水道工事は、今後も引き続き多数実施され、これに伴うセグメントの材料費も多額に上ることが見込まれる。
 ついては、貴省において、各都道府県等に対して、下水道の管きょ築造工事のシールド工法に使用するセグメントの材料単価の決定に当たっては、特別調査を活用するなどして、より実勢の価格に近づけるための検討を十分に行い、適切な積算を行うよう助言するとともに、この旨が各都道府県等管内の関係各機関等に周知徹底されて、当該機関等において適切な工事費の積算が行われることの是正改善の処置を求める。

 特別調査  材料単価の決定に当たり、物価調査機関に特定の品目を指定して市場価格や製造原価等を調査させるものをいう。

 20都府県市  東京都、大阪府、茨城、群馬、千葉、神奈川、愛知、徳島各県、仙台、さいたま、千葉、横浜、川崎、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡、北九州各政令指定都市

 7県市  愛知県、仙台、京都、大阪、神戸、広島、北九州各政令指定都市

 13都府県市  東京都、大阪府、茨城、群馬、千葉、神奈川、徳島各県、さいたま、千葉、横浜、川崎、名古屋、福岡各政令指定都市

(参考図)

シールド工法概念図、セグメント詳細図