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調査等業務における交通船等の借上費に係る船員数の積算基準を作業の実態に合わせて改めるよう是正改善の処置を求めたもの


(3) 調査等業務における交通船等の借上費に係る船員数の積算基準を作業の実態に合わせて改めるよう是正改善の処置を求めたもの

所管、会計名及び科目 内閣府所管 一般会計 (組織)内閣本府
        (項)地域再生推進費
  国土交通省所管 一般会計 (組織)国土交通本省
  港湾整備特別会計(港湾整備勘定)(平成20年度以降は社会資本整備事業特別会計(港湾勘定))
        (項)港湾事業費等
部局等 直轄事業 8地方整備局等    
  補助事業 10地方整備局等    
事業及び補助の根拠 地域再生法(平成17年法律第24号)、海岸法(昭和31年法律第101号)、港湾法(昭和25年法律第218号)等
事業主体 直轄事業 8地方整備局等    
  補助事業 都、府1、県18、市13、町3、村3、管理組合3、港務局、大阪湾広域臨海環境整備センター
  52事業主体    
調査等業務の概要 港湾整備事業における港湾施設の設計等に先立ち、地質、海底状況、周辺海域の潮流等を把握するために、交通船等を使用して土質調査、測量、水質環境調査等を実施するもの
事業費
直轄事業 29億5929万余円 (平成18、19両年度)
補助事業 27億1844万余円 (平成18、19両年度)
(国庫補助金交付額  14億0007万余円)  
交通船等の借上費の積算額
直轄事業 2億4099万余円 (平成18、19両年度)
補助事業 1億4221万余円 (平成18、19両年度)
低減できた積算額
直轄事業 8700万円 (平成18、19両年度)
補助事業 2640万円 (平成18、19両年度)
(国庫補助金相当額 1210万円)  

【是正改善の処置を求めたものの全文】

調査等業務における交通船等の借上費に係る船員数の積算について

(平成20年10月20日付け 国土交通大臣あて)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 調査等業務の概要

(1) 調査等業務の概要

 貴省は、港湾整備事業における港湾施設の設計等に先立って、地質、海底状況、周辺海域の潮流、生息する微生物等を把握するため、国の直轄事業又は地方公共団体等の港湾管理者等が行う補助事業として、土質調査、測量、水域環境調査、環境生物調査等の業務(以下、これらを合わせて「調査等業務」という。)を毎年度多数実施している。
 上記の調査等業務においては、交通船、測量船、観測船及び調査船(以下、これらの船舶を「交通船等」という。)を借り上げ、主任技師、技師、技師補等(以下、これらの技師等を「調査技師」という。)が乗船するなどして、当該業務に従事している。そして、これらの交通船等の種類及び主な業務は、表1のとおりである。

表1 交通船等の種類及び主な業務
船舶の種類 主な業務
交通船 土質調査業務において、海上の所定の箇所で土質試料の採取等を行うために岸壁と海上の現場との間を往復する。
測量船 測量業務において、海底状況を調査するための深浅測量等を行う。
観測船 水域環境調査業務において、流況調査等を行う。
調査船 環境生物調査業務において、プランクトン調査等を行う。

(2) 積算基準及び交通船等の借上費の積算

 調査等業務において使用される交通船等の借上費(以下「交通船等の借上費」という。)の積算に当たっては、直轄事業においては貴省港湾局が港湾工事等で実施される各種作業の実態調査の結果を基に制定した「港湾請負工事積算基準」を、また、補助事業においては同基準を参考にして港湾管理者等が制定した積算基準(以下、これらを合わせて「積算基準」という。)を、それぞれ適用することとしている。そして、交通船等の船員数等の実態調査については、平成11年度及び13年度に港湾工事及び調査等業務で使用された船舶を対象として貴省が実施しており、その結果が積算基準に反映されている。
 積算基準においては、交通船等の借上費の構成は次図のとおりとなっており、また、交通船等の借上費は、次の〔1〕 から〔3〕 のとおり算定することとされている。

図 交通船等の借上費の構成

図交通船等の借上費の構成

〔1〕  直接経費については、高級船員1名と普通船員1名、計2名の船員労務費、燃料費及び交通船等(総トン数3.0t型)の船舶損料の合計額を算出する。
〔2〕  借上原価については、直接経費に現場管理費を加算して算出する。
〔3〕  交通船等の借上費については、借上原価に一般管理費等を加算して1日当たりの交通船等の借上費を算出し、これに調査日数を乗ずるなどして算定する。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 交通船等の使用状況は、工事用船舶等が輻輳(ふくそう)する港湾工事において使用される場合と、静穏な海域で実施される本件調査等業務において使用される場合とでは異なると考えられるが、貴省の実施した前記の実態調査ではそれらを区分していなかった。そこで、本院は、経済性等の観点から、積算基準が調査等業務において使用される交通船等の作業等の実態を反映したものとなっているかに着眼して、船員数、船員の作業内容等の実態について会計実地検査を行った。
 そして、18、19両年度に、直轄事業として8地方整備局等(注1) が実施した調査等業務241件、29億5929万余円及び補助事業として44港湾管理者等(注2) が実施した調査等業務307件、27億1844万余円(国庫補助金14億0007万余円)の計548件、計56億7774万余円(国庫補助金計14億0007万余円)を対象として検査した。検査に当たっては、直轄事業及び補助事業を実施している142事務所等において、調査等業務に使用した交通船等の作業等の実態を船舶検査証書等の書類により検査した。

(検査の結果)

 前記の調査等業務548件の積算においては、交通船等の借上費を直轄事業で2億4099万余円、補助事業で1億4221万余円と算定していた。
 そして、これらの調査等業務において使用された交通船等の作業等の実態は、次のとおりとなっていた。 ア 交通船等に実際に乗船している船員数についてみると、表2のとおり、直轄事業241件の契約で使用された交通船等1,095隻のうちの874隻(79.8%)、補助事業307件の契約で使用された交通船等683隻のうちの635隻(93.0%)、計1,778隻のうちの1,509隻(84.9%)において、船員数が1名となっていた。

表2 調査等業務において使用された船員1名の交通船等の隻数
直轄・補助の別\調査項目
契約件数
(件)
使用された交通船等の隻数
(隻)
 
うち、船員1名の交通船等の隻数(隻、(%))
直轄事業 241 1,095 874
(79.8)
補助事業 307 683 635
(93.0)
548 1,778 1,509
(84.9)

イ 上記アで船員数が1名となっている理由についてみると、表3のとおり、直轄事業221件及び補助事業278件、計499件の調査等業務で使用され、船員等の作業内容が確認できた交通船等延べ1,152隻のうち、調査技師が資機材等の積卸しを行うためとしているものが486隻(42.2%)、調査技師が離着岸等の補助を行うためとしているものが419隻(36.4%)、もともと交通船等に船員が1名しか配置されていなかったためとしているものが212隻(18.4%)となっていた。

表3 調査等業務における交通船等の船員の作業内容
直轄・補助の別\契約件数、隻数\調査項目 検査対象の全数  
左のうち船員等の作業内容が確認できたもの  
船員を1名としている理由(隻、(%))
調査技師が資機材等の積卸しを行うため 調査技師が離着岸等の補助を行うため もともと交通船等に船員が1名しか配置されていなかったため その他
直轄事業 契約件数 241 221 274
(39.9)
251
(36.6)
136
(19.8)
25
(3.6)
686
(100.0)
隻数 1,095 686
補助事業 契約件数 307 278 212
(45.5)
168
(36.1)
76
(16.3)
10
(2.1)
466
(100.0)
隻数 683 466
契約件数 548 499 486
(42.2)
419
(36.4)
212
(18.4)
35
(3.0)
1,152
(100.0)
隻数 1,778 1,152

ウ 実際に交通船等に乗船している船員1名が行っている作業内容についてみると、当該船員は、専ら調査技師の指示に従って岸壁と海上の調査現場の間を移動するための操船作業を行っていた。
 また、交通船等の操船については、「船舶職員及び小型船舶操縦者法」(昭和26年法律第149号)等に基づき、船員が小型船舶操縦士の資格を保有することにより、当該船員1名で総トン数20t未満の船舶を操船できることとなっている。
 このように、実際に交通船等に乗船している船員は1名であること、また、交通船等の規格は前記のとおり総トン数が20t未満であることから、船員が1名であっても作業上及び法律上問題はないと認められる。
 この船員の職種については、港湾工事の積算に適用する「公共工事設計労務単価」によれば、高級船員と普通船員に区分されており、このうち高級船員は主たる作業を行う作業船の船長であるとされている。そして、調査等業務においては船員1名が船長として乗船して操船を主な作業として行っているのが実態である。
 したがって、調査等業務における交通船等の借上費の積算については、前記の作業の実態を反映させるなどして、高級船員を1名として積算すべきであると認められる。
 調査等業務の交通船等の借上費の積算について、船員の職種及び船員数を高級船員1名として修正計算すると、補助事業において計上漏れとなっていた諸経費を考慮しても、直轄事業で1億5397万余円、補助事業で1億1578万余円(国庫補助金相当額5258万余円)となり、前記の積算額を直轄事業で約8700万円、補助事業で約2640万円(国庫補助金相当額約1210万円)低減できると認められる。

(是正改善を必要とする事態)

 上記のとおり、調査等業務においては、交通船等に乗船している船員数の実態が1名となっているものが多数を占めており、その主な作業内容が調査技師の指示に従って岸壁と海上の調査現場の間を移動するための操船作業となっていることからみて、積算基準が実態を反映していない事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、調査等業務で使用する交通船等の操船を船員1名で行っている状況が多数見受けられるのに、貴省において、この実態を十分把握しておらず、これを積算基準に反映していなかったことなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置

 貴省は、今後も引き続き調査等業務を多数直轄事業で実施し、又は港湾管理者等に対し補助を行うことが見込まれる。
 ついては、貴省において、調査等業務で使用する交通船等については、作業の実態に合わせて積算基準を改め、もって貴省及び港湾管理者等が積算を適切に行うことができるよう是正改善の処置を求める。

 8地方整備局等  東北、関東、北陸、中部、近畿、四国、九州各地方整備局、北海道開発局

 44港湾管理者等  東京都、大阪府、青森、福島、千葉、神奈川、新潟、福井、愛知、兵庫、和歌山、島根、広島、香川、愛媛、福岡、長崎、宮崎、鹿児島、沖縄各県、小樽、川崎、横須賀、大阪、神戸、福山、呉、丸亀、福岡、北九州、佐世保、鹿児島、奄美各市、上島、長島、瀬戸内各町、三島、大和、宇検各村、苫小牧港、名古屋港、那覇港各管理組合、新居浜港務局、大阪湾広域臨海環境整備センター