所管、会計名及び科目 | 内閣府所管 | 一般会計 | (組織)内閣本府 |
(項)沖縄開発事業費 | |||
平成13年1月5日以前は、 | |||
総理府所管 | 一般会計 | (組織)沖縄開発庁 | |
(項)沖縄開発事業費 | |||
国土交通省所管 | 一般会計 | (組織)国土交通本省 | |
(項)住宅建設等事業費 | |||
(項)揮発油税等財源都市環境整備事業費 | |||
(項)都市環境整備事業費 | |||
(項)北海道住宅建設等事業費 | |||
平成13年1月5日以前は、 | |||
総理府所管 | 一般会計 | (組織)北海道開発庁 | |
(項)北海道住宅建設等事業費 | |||
建設省所管 | 一般会計 | (組織)建設本省 | |
(項)住宅建設等事業費 | |||
部局等 | 国土交通本省(平成13年1月5日以前は建設本省及び総理府北海道開発庁) | ||
沖縄総合事務局(平成13年1月5日以前は総理府沖縄開発庁沖縄総合事務局) | |||
補助の根拠 | 公営住宅法(昭和26年法律第193号) | ||
補助事業者 (事業主体) |
都、道、府1、県9、市40、特別区7、町9、村1、計69事業主体 | ||
補助事業 | シルバーハウジング・プロジェクトによる公営住宅整備 | ||
補助事業の概要 | 高齢者の生活特性に配慮した住宅及び附帯施設の供給並びに福祉サービスの提供を行う公営住宅を整備する事業 | ||
利活用が十分でない高齢者生活相談所等 | 高齢者生活相談所 | 221か所 | |
LSA専用住戸 | 14戸 | ||
上記に係る事業費 | 11億0067万円 | (平成元年度〜18年度) | |
上記に対する国庫補助金相当額 | 5億0504万円 |
(平成20年10月31日付け 国土交通大臣あて)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。
記
貴省は、公営住宅法(昭和26年法律第193号)等に基づき、シルバーハウジング・プロジェクトによる公営住宅整備事業を実施する事業主体である都道府県又は市区町村に対して、その整備に要する費用について公営住宅建設費等補助金等を交付している。
シルバーハウジング・プロジェクトは、高齢者の世帯が地域社会の中で自立して安全かつ快適な生活を営むことができるよう、その在宅生活を支援するため、福祉施策と住宅施策の密接な連携の下に、高齢者の生活特性に配慮した公営住宅(以下「シルバーハウジング」という。)及び附帯施設の整備・管理(以下「供給」という。)を行うとともに、ライフサポートアドバイザー(以下「LSA」という。)により、シルバーハウジングに入居している高齢者(以下「入居者」という。)に対して生活指導・相談、安否の確認、一時的な家事援助、緊急時の対応等の福祉サービスの提供を行う事業である。
シルバーハウジング・プロジェクトの実施に当たっては、事業主体は、「シルバーハウジング・プロジェクトの実施について」(平成13年3月国住備発第51号、厚生労働省老発第114号 国土交通省住宅局長及び厚生労働省老健局長通知。平成13年3月27日以前は昭和63年建設省住建発第8号、厚生省社老発第7号 建設省住宅局長及び厚生省社会局長通達。以下「実施通知」という。)等に基づき、以下の基準を満たす事業計画を策定して、地方整備局長、北海道開発局長又は沖縄総合事務局長及び厚生労働大臣に届け出なければならない(13年3月の実施通知改正以前は承認を得なければならない。)こととされている。
〔1〕 シルバーハウジング・プロジェクトは、シルバーハウジング及び附帯施設が所在する市区町村の総合的な高齢者住宅施策の下に当該市区町村の福祉施策との密接な連携の下で実施されるものであること
〔2〕 シルバーハウジングの入居要件は、高齢者(60歳以上)の単身世帯、高齢者のみからなる世帯等であること
〔3〕 LSAが夜間における緊急時に対応するなどのため、当該団地に居住する場合には、LSAが居住するための住宅(以下「LSA専用住戸」という。)について配慮されていること
〔4〕 福祉サービスは、入居者に対して、LSAが必要に応じて生活指導・相談、安否の確認等のサービスを行うものであること
事業主体は、上記の基準により策定された事業計画に従って事業を実施するとともに、事業主体のうちシルバーハウジング及び附帯施設の供給を行う者(以下「住宅供給者」という。)と福祉サービスを提供する者(以下「福祉提供者」という。)とが異なる場合には、事業実施に当たり十分協議して調整を図るものとされている。
高齢者生活相談所及びLSA専用住戸は、住宅供給者である都道府県又は市区町村の公営住宅整備部局が上記の事業計画に従って附帯施設として次のように整備している。
ア 高齢者生活相談所
高齢者生活相談所はLSAによる入居者に対する福祉サービスの提供の場所及び入居者の交流の場所として整備されている。そして、高齢者生活相談所内には、用途に応じて、LSAが執務を行う部屋(以下「LSA執務室」という。)、LSAが入居者に生活指導・相談を行う部屋(以下「生活相談室」という。)、入居者相互の団らんを図ることを目的とした部屋(以下「団らん室」という。)等が設置されている。高齢者生活相談所の整備に係る公営住宅建設費等補助金の額は、公営住宅法等に基づき、整備に要する費用に2分の1を乗ずるなどして算定することとなっている。
イ LSA専用住戸
LSA専用住戸は、実施通知に基づき、LSAが当該団地の敷地内に居住して福祉サービスの提供を行う場合に必要な住宅であり、中堅所得者等の居住を目的とする特定公共賃貸住宅(注1) 等として整備されている。LSA専用住戸の整備に係る補助金の額は、特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成5年法律第52号)等に基づき、整備に要する費用に3分の1を乗ずるなどして算定することとなっている。
LSAによる福祉サービスは、福祉提供者である市区町村の福祉部局が担当しており、一般的に、介護老人福祉施設等を運営する社会福祉法人等に委託して実施しており、これに要する費用については、厚生労働省の助成の対象とされている。
福祉サービスの提供を行うLSAは、昭和62年度の事業開始当初は原則としてLSA専用住戸に住み込みにより勤務することとされていたが、平成12年度からはLSAが高齢者生活相談所へ通所して勤務することも認められた。
シルバーハウジング・プロジェクトにより入居者に対する福祉サービスを提供するなどのため、住宅供給者による高齢者生活相談所及びLSA専用住戸の整備が現在までに多数実施されている。
一方、福祉提供者による福祉サービスの提供状況についてみると、上記のようにLSAの勤務形態に高齢者生活相談所への通所が認められるなど、その提供方法は多様化してきている。
そこで、有効性等の観点から、住宅供給者と福祉提供者との連携の下に計画して供給することとされている高齢者生活相談所及びLSA専用住戸の利用状況に着眼して検査した。
本院は、24都道府県(注2)
及び管内の市区町村において会計実地検査を行った。そして、19都道府県(注3)
及び23都道府県(注4)
管内の120市区町村、139住宅供給者が昭和63年度から平成19年度までの間に整備した高齢者生活相談所(501団地、532か所)内に設置された936部屋(事業費36億7258万余円、国庫補助金相当額17億8750万余円)、並びに8都府県(注5)
及び12都道府県(注6)
管内の32市区村、40住宅供給者が昭和63年度から平成17年度までの間に整備したLSA専用住戸289戸(216団地、事業費19億4544万余円、国庫補助金相当額5億9581万余円)、これらに係る事業費計56億1802万余円、国庫補助金相当額計23億8332万余円(保存期限経過等により書類が保存されていないため、事業費及び国庫補助金相当額が不明のものがあり、その額は含めていない。以下同じ。)を対象として検査した。
検査に当たっては、整備された高齢者生活相談所及びLSA専用住戸の利用状況について検査を行うとともに、福祉サービスの提供状況等について社会福祉法人等との間で締結された契約書等を基に福祉提供者から説明を受けるなどして調査を行った。
検査したところ、12都道府県(注7) 及び19都道府県(注8) 管内の57市区町村、69住宅供給者が整備した高齢者生活相談所(206団地、221か所)内に設置された277部屋(事業費9億2946万余円、国庫補助金相当額4億5549万余円)、並びに東京都、山梨県及び神奈川県管内の1市、3住宅供給者が整備したLSA専用住戸14戸(12団地、事業費1億7120万余円、国庫補助金相当額4955万余円)、これらに係る事業費計11億0067万余円、国庫補助金相当額計5億0504万余円において、次のような事態が見受けられた((1)及び(2)には、住宅供給者が重複しているものがある。)。
高齢者生活相談所内のLSA執務室、生活相談室、団らん室の設置状況は、各部屋がそれぞれ独立して設置されていたり、一部屋が複数の用途を兼ねていたりしていた。
検査の対象とした高齢者生活相談所532か所内に設置された936部屋を用途別に示すと、表1のとおりである。
区分 | 用途 | 部屋数 |
LSA執務室として設置されている部屋 | LSA執務室として独立 | 155 |
生活相談室又は団らん室兼用 | 254 | |
小計 | 409 | |
生活相談室、団らん室として設置されている部屋 | 生活相談室として独立 | 181 |
団らん室として独立 | 284 | |
生活相談室及び団らん室兼用 | 62 | |
小計 | 527 | |
合計 | 936 |
上記各部屋の19年度における利用状況について、用途別に検査した結果は、次のとおりである。
ア LSA執務室の利用状況について
LSA執務室(生活相談室又は団らん室と用途を兼ねているものを含む。)として設置された409部屋は、LSAの勤務の拠点として利用することを目的として設置されており、大半のLSA執務室は、設置の目的どおりに利用されていた。
しかし、LSAが、近隣の福祉施設等を勤務の拠点とするなどしていて、入居者の生活指導・相談、安否の確認等を入居者の住戸等へ直接赴いて実施するなどしていたため、19年度におけるLSA執務室の利用実績が月に3日以下のものが12部屋(8住宅供給者、12団地、12か所、事業費2358万余円、国庫補助金相当額1422万余円)見受けられた。これらは、近隣の福祉施設の状況等も踏まえてLSA執務室の設置の必要性について事業計画策定時に十分検討する必要があったと認められた。
住宅供給者であるA県は、平成16年3月に、B町において、C団地(シルバーハウジング24戸)の整備に併せて、LSA執務室(14.5m2 )を含む高齢者生活相談所(69.6m2 )を整備している。そして、福祉提供者であるB町は、LSAの派遣を社会福祉法人に委託している。事業計画によると、LSAはLSA執務室を利用して業務を行うこととしていたが、LSAによる福祉サービスは、入居者の住戸へ直接赴き、入居者の安否の確認等を行っており、業務日誌の作成等の業務は上記法人の事務室で行っていて、設置されたLSA執務室は利用されていなかった。
イ 生活相談室及び団らん室の利用状況について
生活相談室及び団らん室として設置されている527部屋の中で、利用状況を把握できた506部屋の利用実績は、表2のとおりである。
区分 | 利用状況を把握できた部屋 | 利用状況 | |||
ほぼ毎日 | 週1〜2日程度 | 月3日以下 | |||
うち利用なし | |||||
生活相談室 | 176部屋 | 43部屋 | 32部屋 | 101部屋 | 21部屋 |
100.0% | 24.4% | 18.2% | 57.4% | 11.9% | |
団らん室 | 273部屋 | 68部屋 | 70部屋 | 135部屋 | 18部屋 |
100.0% | 24.9% | 25.6% | 49.5% | 6.6% | |
両室を兼用 | 57部屋 | 17部屋 | 11部屋 | 29部屋 | 0部屋 |
100.0% | 29.8% | 19.3% | 50.9% | 0.0% | |
合計 | 506部屋 | 128部屋 | 113部屋 | 265部屋 | 39部屋 |
100.0% | 25.3% | 22.3% | 52.4% | 7.7% |
生活相談室及び団らん室の19年度における利用実績は、ほぼ毎日利用されているものが128部屋(25.3%)ある一方で、月に3日以下のものが265部屋(52.4%、69住宅供給者、203団地、218か所、事業費9億0588万余円、国庫補助金相当額4億4126万余円)あり、この中には利用されていない部屋も39部屋(7.7%)見受けられた。
そこで、生活相談室及び団らん室の利用状況が月に3日以下のもの265部屋について、利用が少ない理由を調査した。
生活相談室としての利用が少ない理由は、表3−1のとおり、入居者からの相談が少ないためとしているものが37.3%、生活相談室以外の入居者の各住戸等で相談を受けているためとしているものも33.3%を占めていて、入居者の多くはLSAが各住戸を訪問して安否の確認を行う際に、相談を受けているとしていた。
また、団らん室としての利用が少ない理由は、表3−2のとおり、入居者同士の付き合いが希薄なためとしているものが43.2%、利用の要望が少ないためとしているものが20.5%となっているなど、入居者の事情によるものであるとしている回答が多く見受けられた。
回答内容 | 構成比 |
入居者からの相談が少ないため | 37.3% |
各住戸等で相談を受けているため | 33.3% |
高齢化により生活相談室への移動が困難なため | 3.9% |
電話で相談を受けているため | 3.9% |
利用する意識が低いため | 2.9% |
その他 | 18.6% |
合計 | 100.0% |
回答内容 | 構成比 |
入居者同士の付き合いが希薄なため | 43.2% |
利用の要望が少ないため | 20.5% |
高齢化により団らん室への移動が困難なため | 4.8% |
他の施設を利用するため | 2.7% |
定期的な利用に限定されているため | 2.7% |
利用する意識が低いため | 2.7% |
常に団らん室でコミュニティ活動を行う状況にないため | 2.1% |
その他 | 21.2% |
合計 | 100.0% |
D市は、E団地(シルバーハウジング38戸)を平成7年12月から管理開始しており、LSAの派遣を社会福祉法人に委託している。D市が策定した事業計画によると、団らん室は、〔1〕 サロン的交流の場、〔2〕 文化、学習、創作活動等の拠点、〔3〕 入居者以外の地域住民も含めた交流の場等として利用することとしていた。
そして、団らん室は、入居者を中心に近隣の居住者も参加してカラオケ、書道等のクラブ活動やコミュニティ活動等に利用されており、19年度における実績は約260回となっていた。
管理開始当初はLSAが住み込みにより福祉サービスを提供していたが、その後住み込みにより勤務するLSAが確保できず、通所による勤務に変更するなどした結果、LSA専用住戸としての利用の見込みがないまま、19年度末時点において、1年以上空き家となっているものが14戸(3住宅供給者、12団地、事業費1億7120万余円、国庫補助金相当額4955万余円)見受けられた。
住宅供給者であるF県は、G市において、H団地(シルバーハウジング30戸)を平成8年4月から管理開始している。そして、福祉提供者であるG市は、LSAの派遣を社会福祉法人に委託しており、LSAは、管理開始以降、LSA専用住戸(87.9m2
)に住み込んで福祉サービスの提供を行っていた。その後、LSAが転居して、高齢者生活相談所への通所により福祉サービスの提供を行っていたため、当該住宅は13年8月から利用されていなかった。
そして、F県は、LSA専用住戸内に設置された緊急時の通報を受ける監視装置の移設等が必要なことなどから、一般用の特定公共賃貸住宅として居住者を公募するなどしていなかった。この結果、当該住宅は長期にわたり空き家となっており、その利活用が図られていない状況となっていた。
一方、住宅供給者の中には、福祉サービスの提供方法を住み込みから通所に変更した団地において、特定公共賃貸住宅として整備したLSA専用住戸の利用が見込めなくなったことから、これを一般用の特定公共賃貸住宅として利用しているものが見受けられた。
上記(1)及び(2)のとおり、高齢者生活相談所が入居者等に十分に利用されていなかったり、LSA専用住戸が空き家となっていたりしている事態は、整備された高齢者生活相談所及びLSA専用住戸の有効な利活用が図られておらず、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、シルバーハウジングの管理開始後の入居者及びLSAの状況の変化等にもよるが、次のことなどによると認められる。
ア 事業主体において、住宅供給者と福祉提供者との連携が十分でなく、事業計画の策定時における高齢者生活相談所の利用方法及びLSAの福祉サービスの提供方法に関しての検討が十分でなかったり、管理開始後の状況の変化等に対応した高齢者生活相談所及びLSA専用住戸の利活用方法の検討が十分でなかったりしたこと
イ 貴省において、事業主体に対して、事業計画の策定時及び管理開始後に参考となる高齢者生活相談所及びLSA専用住戸の具体的な利活用方法、事例等を示すなどの情報提供が十分でなかったこと
高齢者人口・世帯数は、今後ますます増加することが予想されることから、貴省においては、高齢者の住宅施策について様々な取組がなされている。
そして、貴省においては、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成19年法律第112号)に基づき「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する基本的な方針」(平成19年国土交通省告示第1165号)を定めており、この基本方針においては、高齢者等の住宅確保要配慮者の居住の安定を図る上で、シルバーハウジングの供給を推進することが有効であるとされている。また、政府が20年7月に取りまとめた「社会保障の機能強化のための緊急対策〜5つの安心プラン〜」においても、低所得の高齢者が適切な負担で入居可能な公的賃貸住宅等の供給を促進するとされたところである。
ついては、今後も引き続きシルバーハウジング・プロジェクトを推進していくのであるから、貴省において、厚生労働省と連携して、事業主体に対して次の処置を講ずることにより、高齢者生活相談所及びLSA専用住戸を有効に利活用するよう意見を表示する。
ア 事業計画を策定するに当たっては、住宅供給者と福祉提供者が連携して各部屋の必要性、利用方法等について十分協議を行い、策定した事業計画に従って高齢者生活相談所の供給を行うよう周知徹底を図ること
イ 高齢者生活相談所については、具体的な利活用方法、事例等の情報提供を積極的に行うなどすること
ウ 利用が見込めなくなったLSA専用住戸については、特定公共賃貸住宅、福祉関係施設等として利活用するための方策を示すなどすること