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道路整備特別会計における支出が適正かつ効率的に行われるよう意見を表示したもの


(7) 道路整備特別会計における支出が適正かつ効率的に行われるよう意見を表示したもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)地方整備局 (項)地方整備局等
  道路整備特別会計(平成20年度以降は社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定))
      (項)道路事業費等
  治水特別会計(治水勘定)(平成20年度以降は社会資本整備事業特別会計(治水勘定))
      (項)河川事業費等
部局等 国土交通本省、10地方整備局等
地方整備局等における支出及び道路関係公益法人に対する支出の概要 道路整備事業を実施するために、連絡用車両の車両管理業務、広報広聴業務、調査研究業務において支出するもの及び調査研究業務等を行わせている道路関係公益法人に対して支出するもの
(1)地方整備局等における連絡用車両の車両管理業務、広報広聴業務等の支出額の総額 677億0320万円 (平成15年度〜19年度)
(2)道路関係公益法人に対する調査研究業務等の支出額の総額 53億4310万円 (平成18、19両年度)
(1)及び(2)の純計 728億9095万円 (背景金額)

【意見を表示したものの全文】

道路整備特別会計における支出の状況について

(平成20年10月31日付け 国土交通大臣あて)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 検査の背景

(1) 道路整備特別会計を取り巻く状況

 貴省は、道路法(昭和27年法律第180号)、道路整備費の財源等の特例に関する法律(昭和33年法律第34号。平成20年4月以降は道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律)等に基づいて、直轄事業及び国庫補助事業として道路整備事業を実施している。
 そして、第169回国会において、道路整備特別会計(20年度以降は社会資本整備事業特別会計)における支出の状況について、特に、道路の整備に関連して行われているイベント等の広報広聴業務の内容、道路整備事業を遂行するための経費等、及び貴省所管の公益法人との契約に係る業務の内容、契約方式等の適否、公益法人の財務状況等について、様々な議論がなされたところである。

(2) 道路関係業務の執行のあり方改革本部による最終報告書

 前記のように、国会において、道路関係業務の執行に関する支出に対して様々な議論がなされて、20年2月には貴省に道路関係業務の執行のあり方改革本部(以下「改革本部」という。)が設置されて、同年4月に改革の方針が決定されて、これに基づく最終報告書が公表されており、その主な内容は次のとおりである。

ア 地方整備局等における支出の改革について

(ア) 広報広聴の費用については、支出の基準を作成して、必要性を十分精査した上で支出を大幅に削減して、具体的内容等をホームページで公表する。
(イ) 連絡用車両の購入及び車両管理業務については、3年間で約300台削減して、仕様を排気量2,000cc以下の自動車とする。また、車両台数の削減、仕様の小型化により、車両管理業務委託費を削減する。
(ウ) 広報広聴関係を含む役務に係る契約等については、事務所長等の決裁権限の上限額を設定して、連絡用車両の購入及び車両管理業務(法定点検等における修繕を除く。)に係る契約等については、地方整備局等の承認を得ることとして、決算と併せて契約名、支出の具体的内容等についてホームページで公表する。

イ 道路関係公益法人の改革について

(ア) これまで道路関係公益法人と随意契約を行ってきた業務については、原則として競争性の高い契約方式を実施することとして、民間参入を一層促進するための環境を整備する。
(イ) 道路関係公益法人に対する支出については、業務の見直しによる支出の取りやめ、業務の民間移行の促進等により、大幅に支出を削減する。

2 本院の検査結果

(検査の観点及び着眼点)

 道路整備特別会計における支出の状況については、国会において様々な議論がなされたことも踏まえて、本院は、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、次のような点等に着眼して実地検査を行った。
ア 道路整備事業の実施に必要な連絡用車両の管理業務の契約方式等は適切か
イ 道路の整備に関連して行われているパンフレット等の作成、イベントの開催等の広報広聴業務の効果は発現しているか
ウ 地方整備局等が公益法人等に発注している調査研究業務等の契約内容等は適切か、成果は契約において求められているものとなっているか、また、成果がホームページに公表されるなど有効に活用されているか

(検査の対象及び方法)

 検査に当たっては、15年度から19年度に係る道路整備特別会計からの支出を対象として、貴省、10地方整備局等(注1) 及び管内の115国道事務所等(注2) から契約書、設計書等の資料の提出を求めるとともに、貴省、10地方整備局等及び33国道事務所等において会計実地検査を行った。このほか、貴省が所管する8公益法人においても、会計検査院法第23条第1項第3号及び第7号の規定により検査することに決定して、決算書、契約書等の書類により会計実地検査を行った。

 10地方整備局等  東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州各地方整備局、北海道開発局、内閣府沖縄総合事務局

 115国道事務所等  青森河川国道、岩手河川国道、三陸国道、仙台河川国道、東北幹線道路調査、秋田河川国道、湯沢河川国道、能代河川国道、山形河川国道、酒田河川国道、福島河川国道、郡山国道、磐城国道、東北技術、東京国道、相武国道、首都国道、川崎国道、横浜国道、大宮国道、北首都国道、千葉国道、常総国道、宇都宮国道、長野国道、東京外かく環状道路調査、東京湾岸道路調査、常陸河川国道、高崎河川国道、甲府河川国道、関東技術、高田河川国道、羽越河川国道、長岡国道、新潟国道、富山河川国道、金沢河川国道、北陸技術、岐阜国道、高山国道、静岡国道、名古屋国道、愛知国道、名四国道、東海幹線道路調査、紀勢国道、北勢国道、飯田国道、多治見砂防国道、沼津河川国道、浜松河川国道、三重河川国道、中部技術、福井河川国道、滋賀国道、京都国道、福知山河川国道、大阪国道、浪速国道、阪神国道、兵庫国道、姫路河川国道、豊岡河川国道、奈良国道、和歌山河川国道、紀南河川国道、近畿幹線道路調査、近畿技術、鳥取河川国道、倉吉河川国道、浜田河川国道、松江国道、岡山国道、福山河川国道、三次河川国道、広島国道、山口河川国道、中国幹線道路調査、中国技術、香川河川国道、四国技術、松山河川国道、大洲河川国道、徳島河川国道、高知河川国道、中村河川国道、土佐国道、福岡国道、北九州国道、九州幹線道路調査、佐賀国道、長崎河川国道、雲仙復興、熊本河川国道、八代河川国道、大分河川国道、佐伯河川国道、宮崎河川国道、延岡河川国道、大隅河川国道、鹿児島国道、九州技術各事務所、札幌、函館、小樽、旭川、室蘭、釧路、帯広、網走、留萌、稚内各開発建設部、防災・技術センター、南部、北部両国道事務所

(検査の結果)

 貴省は、国土交通省設置法(平成11年法律第100号)に基づき、国土の総合的かつ体系的な利用、開発及び保全、そのための社会資本の整備等を図ることを任務として、これらに関する総合的かつ基本的な政策の企画及び立案並びに推進に関する事務、道路の整備、利用、保全その他の管理に関する事務等を行っている。
 そして、貴省は、上記の業務を遂行するため、工事の監督補助等の補助業務、業務に関するデータの収集、管理業務及び調査研究業務等を、貴省が所管する公益法人に行わせており、道路整備特別会計から1件500万円以上の支出があった道路関係公益法人に対する18年度の支出総額(1件500万円以上)は673億余円と多額に上っており、これらの支出が、道路予算の使途として適切かどうか様々な議論がなされたところである。
 本院は、我が国の道路整備を取り巻く状況や国会での議論を踏まえて、道路整備特別会計における支出の状況について、多角的に検査を実施することとした。
 また、本院は、20年6月9日に、参議院から国会法(昭和22年法律第79号)第105条の規定に基づき国土交通省の地方整備局等における庁費等の予算執行について、〔1〕 契約方法、契約手続などの状況、〔2〕 契約内容、契約金額などの状況、〔3〕 契約相手方の状況、〔4〕 一般会計と特別会計における計上区分及び執行の状況の各事項について、会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対して同月10日に検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。
 このような状況の下、連絡用車両の購入及び車両管理業務、広報広聴業務等の地方整備局等における支出の状況について、また、道路関係公益法人のうち、道路整備特別会計からの支出が多いなどの8公益法人に対する支出及び契約の状況について検査を行った結果、次のとおりとなっていた。

(1) 地方整備局等における支出

 地方整備局等における、15年度から19年度までの連絡用車両の購入及び車両管理業務、広報広聴業務、調査研究業務に係る支出額は677億0320万余円となっている。

ア 連絡用車両の購入及び車両管理業務

 地方整備局等及び国道事務所等は、道路整備事業の実施に必要とされる車両を多数購入しており、毎年度、保有管理している車両のうち、工事現場等で使用する車両を除いた連絡用車両の運転、点検等の車両管理業務について業者と契約して実施している。

(ア) 購入状況

 50国道事務所等において、18年度に購入した連絡用車両は109台、購入金額2億7078万余円となっている。これらを含めて、114国道事務所等が道路整備特別会計からの支出により購入して、保有管理している連絡用車両は、18年度末現在で1,412台である。
 国等が購入する連絡用車両については、環境物品等の調達の推進に関する基本方針(平成13年2月2日閣議決定)等に基づき、低燃費かつ低排出認定を受けたガソリン車や天然ガス自動車、ハイブリッド自動車等(以下、これらを「低公害車」という。)であることとされており、貴省においても、上記の施策に沿い、低公害車を購入しているところである。
 そして、地方整備局等及び国道事務所等は、購入車両の選定に当たって、車種、排気量、定員等の仕様等について、地方整備局等及び国道事務所等ごとに仕様等を定めているが、これらの仕様等についての統一的な基準は定められておらず、また、貴省は、地方整備局等及び国道事務所等が計画する連絡用車両の購入台数や仕様等について把握することとしていなかった。
 このような状況下で18年度に購入した連絡用車両は、表1のとおり、109台となっており、購入金額別には200万円未満が24台(22.0%)、200万円以上300万円未満が63台(57.8%)、300万円以上400万円未満が19台(17.4%)、400万円以上は3台(2.8%)となっていた。車種別では、道路整備事業の実施に必要であるとして、購入台数109台のうち107台がステーションワゴンとなっていた。この中でも、乗車定員8名以上で200万円未満の車両が3台購入されている一方、300万円以上の連絡用車両が22台購入されているなど、1台当たりの購入金額に開差が見受けられた。

表1 連絡用車両の購入内訳(平成18年度)
(単位:台、円)

車種 乗車定員 購入金額 台数計 購入金額計
200万円未満 200万円以上 300万円未満 300万円以上 400万円未満 400万円以上
セダン 5名以下 1 1 0 0 2 4,093,690
ステーションワゴン 5名以下 15 25 0 0 40 80,390,712
7名 5 15 0 0 20 46,473,584
8名以上 3 22 19 3 47 139,828,132
23 62 19 3 107 266,692,428
合計 24 63 19 3 109 270,786,118
割合(%) 22.0 57.8 17.4 2.8 100.0  

(イ) 連絡用車両の車両管理業務

 8地方整備局及び112国道事務所等は、15年度から19年度までに、車両管理業務の契約を、表2のとおり、計852件締結しており、これに係る支出額は561億3165万余円となっている。
 そして、これら852件の契約を契約方式別にみると、一般競争契約が14件、12億5623万余円、指名競争契約が661件、482億4567万余円、随意契約が177件、66億2975万余円となっている。随意契約の見直しにより指名競争契約の全体に占める割合が増加して、19年度には、契約件数で94.8%、支出額で93.8%を占めている。

表2 車両管理業務契約の状況
(単位:件、%、万円)

年度 一般競争契約 指名競争契約 随意契約
件数 割合 支出額 割合 件数 割合 支出額 割合 件数 割合 支出額 割合 件数 割合 支出額 割合
平成
15
0 0.0 0 0.0 107 58.5 880,887 73.7 76 41.5 314,423 26.3 183 21.5 1,195,310 21.3
16 0 0.0 0 0.0 122 68.5 961,946 83.5 56 31.5 190,606 16.5 178 20.9 1,152,552 20.5
17 0 0.0 0 0.0 128 74.9 959,803 86.0 43 25.2 155,777 14.0 171 20.1 1,115,580 19.9
18 7 4.2 61,211 5.6 157 95.2 1,024,403 94.3 1 0.6 1,095 0.1 165 19.3 1,086,709 19.4
19 7 4.5 64,412 6.1 147 94.8 997,528 93.8 1 0.7 1,074 0.1 155 18.2 1,063,014 18.9
14 1.6 125,623 2.2 661 77.6 4,824,567 86.0 177 20.8 662,975 11.8 852 100.0 5,613,165 100.0

a 指名競争契約の実施状況

 上記の指名競争契約661件における指名業者数についてみたところ、表3のとおり、指名された業者の数は2者から8者となっており、競争参加者は、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)第97条の規定によると、なるべく10人以上指名しなければならないとされているが、10者以上指名している国道事務所等は見受けられなかった。また、2者しか指名していない契約は350件となっており、指名競争契約件数の53.0%と過半数を占めていた。

表3 車両管理業務契約における指名業者数及び指名件数の比率
(単位:件、%)

指名業者数 平成15年度 16年度 17年度 18年度 19年度
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
2者 73 68.2 57 46.7 58 45.3 87 55.4 75 51.0 350 53.0
3〜8者 34 31.8 65 53.3 70 54.7 70 44.6 72 49.0 311 47.0
9者以上 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0
107 100.0 122 100.0 128 100.0 157 100.0 147 100.0 661 100.0

 指名業者数が2者のみであった上記350件の契約についてみたところ、表4のとおり、北海道開発局の96件を除く254件のうち250件についての指名業者は、すべて日本道路興運株式会社(以下「道路興運」という。)及び日本総合サービス株式会社(以下「日本総合」という。)に限られていた。前記の指名競争契約661件における道路興運及び日本総合の指名回数をみると、道路興運が603回、日本総合が559回指名されており、このうち、北海道開発局と沖縄総合事務局を除いた8地方整備局の契約524件における指名回数は、道路興運が511回、日本総合が517回である。
 また、北海道開発局においては、指名競争契約131件すべてに北協連絡車管理株式会社(以下「北協管理」という。)が指名されていた。

表4 平成15年度から19年度の道路興運、日本総合及び北協管理の指名回数等
(単位:件、回、%)

地方整備局等 契約件数 指名者数別契約件数 指名回数 指名された割合
  指名競争   3者 4者 5者以上 道路興運 日本総合 北協管理 道路興運 日本総合 北協管理
2者 うち道路興運と日本総合を指名
8地方整備局 547 524 254 250 100 80 90 511 517 0 97.5 98.7 0
北海道 295 131 96 0 17 18 0 92 42 131 70.2 32.1 100
沖縄 10 6 0 0 3 3 0 0 0 0 0 0 0
852 661 350 250 120 101 90 603 559 131 91.2 84.6 19.8

 そして、特定の2者のみ指名した契約が多かった5地方整備局及び管内の国道事務所等における道路興運及び日本総合2者の落札回数の割合は、19年度の東北、北陸両地方整備局を除いた契約では、他の入札参加者の有無にかかわらず、毎年度同じ割合であり、15年度から19年度の両者の落札回数及びその割合は表5のとおりである。

表5 5地方整備局及び管内国道事務所等における指名及び落札状況
(単位:件、回、%)

地方整備局 年度 指名競争契約件数〔1〕 指名者数別契約件数 指名された回数 落札した回数
2者 3者 4者以上 道路興運〔2〕 〔1〕 に対して道路興運が指名された割合 日本総合〔3〕 〔1〕 に対して日本総合が指名された割合 道路興運 〔2〕 に対して道路興運が落札した割合 日本総合 〔3〕 に対して日本総合が落札した割合
5地方整備局 平成
15
59 58 1 0 58 98.3 59 100.0 40 69.0 18 30.5
16 59 50 9 0 58 59 40 18
17 59 47 12 0 58 59 40 18
18 59 46 13 0 58 59 40 18
19 59 41 14 4 59 100.0 59 39 66.1 18
295 242 49 4 291 98.6 295 100.0 199 68.4 90 30.5
(注)
 5地方整備局  東北、北陸、中国、四国及び九州各地方整備局

 このような2者指名の契約について、指名業者の選定方法についてみたところ、地方整備局及び国道事務所等における過去の業務実績により選定している事例が多数見受けられた。

<事例>

 四国地方整備局徳島河川国道事務所は、毎年度、指名業者の選定に当たって、同局管内において車両管理業務の実績がある業者を選定事由として指名していた。しかし、同局管内において同様の業務の実績を有する業者は、過去に指名した道路興運及び日本総合の2者のみであるため、上記の選定事由では過年度と同一の2者のみが指名されることになり、この結果、15年度から19年度における指名業者は、道路興運及び日本総合の2者のみとなっていた。

b 落札の状況

 8地方整備局及び112国道事務所等において、15年度から19年度までに車両管理業務契約を締結した業者は全部で11者となっている。この11者との契約件数及び支出額は表6のとおりである。これによると、契約件数では上位の道路興運、日本総合及び北協管理で758件、89.0%を占め、その支出額は計489億7692万余円に上っており、支出額全体の87.3%を占めている。

表6 車両管理業務契約の業者別契約件数及び支出額
(単位:件、万円、%)

会社名 平成15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 割合
件数 支出額 件数 支出額 件数 支出額 件数 支出額 件数 支出額 件数 支出額 件数 支出額
道路興運 71 610,665 69 584,417 69 570,110 72 573,015 71 557,998 352 2,896,205 41.3 51.6
日本総合 26 193,489 26 181,907 26 181,362 29 189,544 29 184,158 136 930,460 16.0 16.6
北協管理 69 251,491 66 251,671 59 231,181 42 173,363 34 163,321 270 1,071,027 31.7 19.1
166 1,055,645 161 1,017,995 154 982,653 143 935,922 134 905,477 758 4,897,692 89.0 87.3
上記3者以外の8者計 17 139,665 17 134,557 17 132,927 22 150,787 21 157,537 94 715,473 11.0 12.7
合計 183 1,195,310 178 1,152,552 171 1,115,580 165 1,086,709 155 1,063,014 852 5,613,165 100.0 100.0

 上記3者のうち、北海道で業務を実施している北協管理の10開発建設部における落札状況は、表7のとおり、北協管理は、15年度から17年度までの198件のうち、随意契約の164件すべてを契約しており、指名競争契約に移行した18、19両年度の97件のうち、18年度42件、19年度34件、計76件についても北協管理が落札していた。

表7 10開発建設部における北協管理の落札状況
(単位:件)

契約方式 平成15年度 16年度 17年度 18年度 19年度
随意契約 65 56 43 0 0 164
指名竸争契約 6 11 17 53 44 131
71 67 60 53 44 295
うち北協管理の契約件数 69 66 59 42 34 270
(注)
 平成15年度から17年度までの契約198件は、網掛部分の契約件数の合計である。

 前記の指名競争契約661件における落札率についてみると、図1のとおり、99%以上の契約が180件となっており、661件のうち落札率が95%以上であった契約は583件となっていた。そして、661件の契約のうち624件(94.4%)の契約が1回目の入札で落札業者を決定していた。

図1 指名競争契約における落札率の状況

図1指名競争契約における落札率の状況

 以上のように、長期にわたって、特定の業者に指名が偏っている契約状況は適切ではなく、このような場合、履行可能な一定以上の業者を指名して契約の競争性を確保しようとしている指名競争契約の趣旨を損なうこととなる。
 貴省においては、車両管理業務の契約に当たって、20年7月に通知を発して、20年度後半から原則として一般競争契約としているところであるが、入札公告等による競争参加資格等の制限は必要最小限のものにとどめ、多数の業者が参加できるようにすることにより、同通知の趣旨を徹底することが必要である。

イ 道路整備事業のための広報広聴業務の実施

 貴省は、道路整備事業の目的、内容等を分かりやすく紹介するため、パンフレット等の作成、ミュージカル等のイベントの開催、マスメディアの活用等多岐にわたる方法で、広報広聴業務を毎年度多数実施している。
 そして、貴省、10地方整備局等及び31国道事務所等における18、19両年度の広報広聴業務に関する契約は1,183件、92億8821万余円となっている。

(ア) 広報広聴業務の実施

 上記の契約1,183件について、目的別に広報広聴業務の実施状況を示すと図2のとおりである。

図2 目的別実施状況

図2目的別実施状況

 前記の契約1,183件のうち、具体的な整備箇所の事業の推進を目的とする広報広聴業務は、より一層の効果の発現が期待できると考えられるが、道路整備事業全般の広報を目的とする広報広聴業務510件(43.1%)に対して、139件(11.7%)にとどまっていた。
 また、これらに係る経費は、事業費、調査費、工事諸費等複数の費目から支出されているなど地方整備局等及び国道事務所等で区々となっていた。

(イ) 広報広聴業務における応札(応募)者数

 貴省は、随意契約の理由等の点検、見直しを行い、18年6月に「随意契約見直し計画」を策定して、19年1月に改訂している。同計画によると、随意契約が真にやむを得ないものを除き、遅くとも19年度からすべて〔1〕 一般競争契約、〔2〕 提案書等を評価して契約の相手方を特定する企画競争による随意契約、〔3〕 発注者が事前に特定した公益法人等以外の参加者の有無を公募により確認する随意契約のいずれかに移行することとしている。
 そして、19年度に実施した広報広聴業務500件のうち、随意契約見直し計画の方針に沿って上記〔1〕 、〔2〕 、〔3〕 の契約方式により締結された広報広聴業務は196件、35億7434万余円となっている。この196件について、多数の業者による競争が行われていたか応札(応募)者数についてみたところ、2者以上応札(応募)の契約が196件のうち129件ある一方、1者応札(応募)の契約が67件見受けられて、これに係る支出額は18億9492万余円となっていた。そこで、1者応札(応募)の契約の競争参加資格等についてみたところ、必要とする過去の業務実績として、発注者が所在する地方整備局等及び管内の国道事務所等からの受注実績や、道路行政に関する住民参加活動の企画、運営のような道路整備事業特有の専門的な業務実績を求めるなどしたため、多数の業者が当該業務に応札(応募)することを困難にしている契約が見受けられた。
 上記のことを踏まえて、契約方式見直しの効果を確保するためには、発注に当たって、一定数以上の業者が入札等に参加できるような競争参加資格等となっているか確認するなど、十分に検討する必要がある。

(ウ) 広報広聴業務の検証等の実施

 広報広聴業務は、効果を測定することは困難な面もあるが、毎年度継続的に実施されている業務も多いことなどから、効率的、効果的に実施するために、業務の目標等を明確にして、既に実施した広報広聴業務の効果測定及び検証(以下、単に「検証」という。)が重要である。
 そこで、前記(ア)の1,183件の広報広聴業務のうち、月刊広報誌等の継続して実施されているものを除いた442件の広報広聴業務について、〔1〕 業務計画書の作成、〔2〕 業務報告書の提出、〔3〕 業務の検証の状況を手段別にみたところ、表8のとおりとなっていた。
 これによると、業務計画書を作成した割合は各々の手段ごとに50%から100%と区々となっているものの、どの手段においても、業務計画書の作成よりも業務報告書の割合が低くなっており、業務の検証を行ったものの割合は更に低い傾向となっていた。
 また、パンフレットや雑誌等の紙媒体による広報広聴業務を行った場合の検証の実施状況は、221件中24件にとどまっており、視聴率等により把握できるテレビやラジオ、アクセス件数等により把握できるホームページ、直接アンケートを配布、回収できるイベント等においても、検証している業務の割合は50%以下となっていた。
 広報広聴業務の検証は困難な面もあるが、業務の計画、実施に当たって、目標等を明確にするとともに、手段に応じた検証方法を工夫して実効性を高めていくことが必要である。

表8 広報広聴業務の検証等の実施状況
手段
件数
(件)
左のうち業務計画書を作成したもの 左のうち業務報告書を提出させたもの 左のうち業務の検証を実施したもの
件数
(件)
割合
(%)
件数
(件)
割合
(%)
件数
(件)
割合
(%)
パンフレットの作成等 103 56 54.4 31 30.1 16 15.5
雑誌への掲載等 118 59 50.0 47 39.8 8 6.8
イベントの開催等 119 97 81.5 75 63.0 35 29.4
ホームページの作成等 56 45 80.4 43 76.8 20 35.7
テレビ、ラジオによる放送等 35 33 94.3 26 74.3 16 45.7
調査業務等 11 11 100.0 10 90.9 4 36.4
442 301 68.1 232 52.5 99 22.4

ウ 調査研究業務

 貴省は、道路整備事業における行政施策の企画、立案を進め、また、的確な基礎データの構築及び創造的なデータの解析を行うために種々の情報収集や分析が必要であることから、様々な調査、研究等に係る調査研究業務を外部に発注して実施している。そして、地方整備局等における調査研究業務の発注額は多額に上っており、業務内容は、道路整備のための地形の基礎データの収集や地域人口の動態調査業務から、道路整備に伴う地域活性化研究業務、管内地域の観光・物流調査検討業務等まで広範囲なものとなっている。
 一方、北海道開発局及び沖縄総合事務局は、それぞれの地域が持つ歴史的な経緯や地域特性から設置された総合行政機関であり、国、地方公共団体、地域住民等が一体となって取り組む方針を示している北海道総合開発計画及び沖縄振興計画に基づき、種々の施策を一体的に推進しており、このことから、他の地方整備局等に比べて地域活性化に関する業務を多数実施している。
 そこで、道路整備事業に係る調査研究業務のうち、北海道開発局、沖縄総合事務局及び12開発建設部等において、特に地域固有の景観、自然、文化等を活用した観光振興や地域振興等の推進に係る調査研究業務についてみることとした。
 18年度の49件、契約額10億1345万余円、19年度の38件、契約額9億9909万余円、計87件、契約額20億1255万余円の調査研究業務の成果が、地域の財産として広く共有されるなどして、施策の推進等に効果的に利活用されているかについてみたところ、図3のとおり、成果を取りまとめた報告書(以下「成果物」という。)等について、69件は、調査研究業務に関係する地域の団体に配布等されていた。一方、成果物等をホームページ上で公表しているものは、図4のとおり、9件にとどまっており、成果物等の公表の基準等がないことなどから、78件(契約額18億6991万余円)については、成果物等がホームページ上に公表されていなかった。このうち、調査研究業務の内容がより地域に密着していると考えられる地域の観光資源の活用等観光振興に関連するものは、30件(契約額4億2528万余円)となっていた。

図3 成果物等の配布状況

図3成果物等の配布状況

図4 成果物等のホームページ上への公表状況

図4成果物等のホームページ上への公表状況

 インターネットの普及率は急速に伸びており、公表可能な成果物等については広く容易に利用できるよう公表することが重要である。また、このことは事業の透明性の向上にも寄与すると考えられる。特に、観光資源の活用等地域に密着した調査研究業務においては、公表により業務の成果が他の行政機関のみならず広く地域で活用できるようにすることが重要である。

(2) 道路関係公益法人に対する支出及び契約の状況

ア 8公益法人との契約状況等

 貴省が、18、19両年度に、8公益法人に発注した調査研究業務等の契約は113件、契約額53億4310万余円となっている。
 8公益法人が受注した調査研究業務等の契約のうち、当該業務に関して外部のコンサルタント等の外部業者へ業務の一部を外注している場合の経費(以下「外注費」という。)等は、会計帳簿等により把握できるものがあるものの、契約ごとに区分経理していないため、貴省と契約している当該業務ごとに実際に要した経費が事業終了後でも正確に把握できない状況となっていた。これらの契約の大部分が調査研究業務等において成果を求められている請負契約となっているため、受注した公益法人においては、契約上業務が完了した際は成果を報告すれば足りることとなり、業務内容に変更がなければ特段の精算手続が必要とされていない。このことから、調査研究業務等の契約に当たって、精算手続が確保できる契約方式を検討することも今後の重要な課題の一つである。
 そして、18、19両年度に8公益法人が受注した113件、契約額53億4310万余円についてみると、業務の一部を外注している契約が、92件(契約額48億2606万余円)あり、このうち契約額に占める外注費(注3) の割合が50%を超えている契約が31件(契約額16億6819万余円)となっていた。

 外注費  複数の契約をまとめて外注している場合等当該契約ごとに明確に要した外注費が把握できないものについては、契約額の割合によるあん分等の方法で算出している。

イ 再委託承認申請

 公益法人へ随意契約により発注した契約について、契約の全部又は一部を更に第三者に再委託(下請を含む。以下同じ。)する場合、契約上、発注者の承認を要することとされているが、一方で軽微な業務については、再委託の承認申請は省略できることとされている。
 契約額に占める外注費の割合が50%以上を占めている前記の契約31件について再委託承認申請書の提出状況をみると、再委託承認申請書を提出したのは2件にとどまっており、29件(契約額15億4103万余円)については提出されていなかった。これは、外注した情報収集等の業務が軽微な業務であると公益法人が判断して、再委託の承認申請を行っていなかったものである。
 調査研究業務等においては、一般的な情報収集のほかに、困難を伴う専門的な知見に基づく情報の収集や収集した情報の分析、研究が業務の主要な部分を占める場合があるが、このような場合でも、公益法人からの再委託の承認申請がないと外注した業務内容が軽微なものかどうか把握できないこととなる。貴省では、20年8月に「設計業務共通仕様書(案)」(昭和62年建設省制定)を一部改正して、再委託の承認申請を要しない軽微な部分を明示しているところであるが、同仕様書改正の趣旨を徹底して、外注費を含む調査研究業務等の透明性を十分確保することが必要である。

ウ 社団法人国際建設技術協会と締結している契約状況等

 社団法人国際建設技術協会(以下「国建協」という。)は、海外における国土開発に対し協力することを目的として設立された公益法人で、国、政府関係機関、その他の者より委託を受けた建設技術に関する調査及び研究等の事業を行っており、貴省から調査研究業務等を、18年度5億6588万余円、19年度6億0273万余円、計11億6861万余円受注している。
 そして、国建協は、18年度に、「平成18年度海外の道路関係情報等に関する調査」を契約額91,875,000円で貴省と締結している。
 上記の契約は、世界の道路の技術、制度、プロジェクト等に関する最新情報を企画立案者に適時的確に情報提供することを目的として、海外の道路整備に関する調査等の情報収集、整理等を行うものである。
 上記の契約に基づき、貴省に提出された成果物についてみたところ、海外支部のスタッフが外国文献の翻訳を十分に行わなかったため日本語として意味の通じない部分が5ページにわたって散見され、また、インターネット上の辞書機能を安易にそのまま引用している部分が6か所で見受けられた。そして、特記仕様書において業務内容の責任者である主任技術者についての定めはあるものの、成果物の提出に当たって内容の照査を行う照査技術者について定めがないことから、国建協では、成果物の提出に当たって、特段、照査技術者を指名しないまま成果物を提出していた。
 道路整備事業における土木設計業務に係る契約では、受注者は成果物の内容について技術的な照査を行う照査技術者を定めることとされており、同様に道路整備事業における調査研究業務等においても、専門性の高い業務等は、必要に応じて、成果物の提出に当たって、受注者においても成果物の内容を十分照査することが必要である。

(改善を必要とする事態)

 我が国の道路整備を取り巻く状況や国会での議論を踏まえて、道路整備特別会計における支出の状況について、多角的に検査を実施した結果、次のような事態について、改善を図る要があると認められる。
(ア) 連絡用車両の車両管理業務について、業務の発注に当たり、長期にわたって指名業者が特定の少数の業者に占められているなどの事態が見受けられた。
(イ) 広報広聴業務について、業務の発注に当たり、応札(応募)者数が限られることとなるなど契約方式見直しの効果が十分現われていなかったり、業務の検証が十分行われていなかったりするなどの事態が見受けられた。
(ウ) 観光資源の活用等地域に密着した調査研究業務において、成果物等について、ホームページ等により地域に周知するなど、より効果的な取扱いとなっていない事態が見受けられた。
(エ) 公益法人に発注する調査研究業務等について、公益法人が外部業者に業務の一部を外注している契約があるが、これらの中には再委託の承認申請を行っていない契約が見受けられた。
(オ) 公益法人に発注する契約について、成果物の照査が十分でない事態が見受けられた。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴省において、主として次のようなことなどによると認められる。
(ア) 連絡用車両の車両管理業務について、業務の発注に当たり、指名競争契約を導入しているものの、指名される業者が特定の少数の業者に限られるような競争参加資格等となっていること
(イ) 広報広聴業務について、業務の発注に当たり、契約方式の見直しを進めているものの、応札(応募)者数が限られるような競争参加資格等を設定していたり、業務の検証に当たり、手段に応じた検証方法の工夫が十分でなかったりしていること
(ウ) 観光資源の活用等地域に密着した調査研究業務において、成果物等の公表の基準等がないこと
(エ) 公益法人に発注する調査研究業務等について、軽微なものについては再委託の承認申請を要しないとしているものの、その範囲が具体的に示されていなかったこと
(オ) 公益法人に発注する契約について、成果物の提出に当たって、専門性の高い業務等であっても照査技術者の必要性を特記仕様書等において明確にしていなかったこと

3 本院が表示する意見

 貴省においては、道路整備特別会計の予算執行状況について様々な議論がなされ、道路整備行政に対する信頼を損ねたことについて、早急に国民の信頼を回復するために、最終報告書に沿った改革を確実に実施するとともに、道路整備事業の実施に当たっては、より一層の適正かつ効率的な予算の執行を行うことが重要である。
 ついては、前記のような検査結果を踏まえて、道路関係業務の適正かつ効率的な予算の執行が図られるよう、次のとおり意見を表示する。
(ア) 連絡用車両の車両管理業務については、20年7月に通知を発して、年度後半から原則として一般競争契約としているが、真に競争性のある契約とするため、同通知の趣旨を徹底すること
(イ) 広報広聴業務については、契約に当たって、契約方式見直しの効果が十分発現されて、応札(応募)者数が複数確保されるよう競争参加資格等を十分検討するとともに、実効性の向上を図る点から業務の検証方法を工夫するよう努めること
(ウ) 観光資源の活用等地域に密着した調査研究業務については、業務の成果が最大限地域で利活用されるよう、業務の成果の内容等を広く地域に周知するため、ホームページ等で可能な限り公表すること
(エ) 公益法人に発注する調査研究業務等については、20年8月に「設計業務共通仕様書(案)」を一部改正して、再委託の承認申請を要しない軽微な部分を明示しているところであるが、再委託の承認申請が適切に行われるよう、同仕様書改正の趣旨を徹底すること
(オ) 公益法人に発注する契約について、専門性の高い業務の発注に当たっては、必要に応じて特記仕様書等において照査技術者を明確にするなどして、成果物の内容の照査が適時的確に行われるようにすること

 本院は、20年次の検査を踏まえつつ、国会からの検査要請について引き続き検査を実施して、取りまとめが出来次第報告することとする。