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自動車保有関係手続のワンストップサービスの利用が低調となっているため、サービスの運用方法等の改善を図るよう意見を表示したもの


(8) 自動車保有関係手続のワンストップサービスの利用が低調となっているため、サービスの運用方法等の改善を図るよう意見を表示したもの

会計名及び科目 自動車検査登録特別会計(平成20年度以降は自動車安全特別会計(自動車検査登録勘定))
(項)業務取扱費
部局等 国土交通本省
ワンストップサービスの概要 パソコンを用いて、インターネット上で一括して自動車保有関係手続を行うことにより、新車の新規登録手続に係る利用者等の負担を軽減させるとともに行政事務の効率化を図るもの
ワンストップサービスの開発費の合計額 26億7720万円 (平成14年度〜17年度)
上記のうち国土交通省負担額 14億2988万円
ワンストップサービスの維持関係費用の国土交通省負担額 38億4246万円 (平成17年度〜19年度)
国土交通省負担額の合計 52億7235万円 (背景金額)(平成14年度〜19年度)
上記のうち全く使用されていない検査標章印刷用プリンター計122台の設置に係るリース費用相当額 4073万円 (平成16年度〜19年度)

【意見を表示したものの全文】

自動車保有関係手続のワンストップサービスの実施状況等について

(平成20年10月31日付け 国土交通大臣あて)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 事業の概要

(1) 自動車保有関係手続の概要

 自動車を公道等で運行するためには、自動車の所有権の公証、安全の確保、社会秩序の維持等様々な目的から、法令等に基づき、自動車の検査・登録、自動車保管場所証明、自動車税の納付等各種の行政手続(以下「自動車保有関係手続」という。)が必要とされている。
 このうち、自動車の登録手続は、道路運送車両法(昭和26年法律第185号)の規定に基づき、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除く自動車(以下「自動車」という。)を運行の用に供する場合に必要とされていて、以下の手続がある。
ア 登録を受けていない自動車の登録を行う新規登録
イ 所有者の変更があった場合に行う移転登録
ウ 氏名、住所、使用の本拠の位置等を変更する場合に行う変更登録
エ 自動車の使用をやめたり、解体等をしたり、輸出をしたりする場合に行う抹消登録
 そして、上記アの新規登録には、新車の新規登録と登録を抹消した自動車を再び使用する場合の登録とがあるが、新車の新規登録を行う場合の自動車保有関係手続は、次のとおりである。
〔1〕  申請者等は、市町村、警察署等に図1に掲げる各証明書等の交付申請を行い、交付を受けたこれらの証明書、検査・登録の申請書等を運輸支局、自動車検査登録事務所、陸運事務所、運輸事務所(以下「運輸支局等」という。)に提出して(検査・登録の申請書は書面によるほか、フレキシブルディスク(注1) に入力して提出することも可能である。)審査を受ける(以下、これらの書面等による申請を「書面申請」という。)。

図1  自動車保有関係手続(書面申請)書類等(新規登録の場合)

図1自動車保有関係手続(書面申請)書類等(新規登録の場合)

〔2〕  運輸支局等は、これらの書面の提出を受けて申請内容の審査を行い、新規登録の基準に適合する場合には、車名、型式、車台番号、所有者の氏名又は名称、住所、使用の本拠の位置等を自動車登録ファイルに登録し、また、申請者等に対して、登録事項等通知書、自動車検査証及び検査標章を交付する。申請者等は、自動車登録番号標(以下「ナンバープレート」という。)の交付を交付代行者(注2) から受けて自動車に取り付けて、封印取付受託者(注3) による封印の取付けを受ける。
〔3〕  上記に加えて、申請者等は、都道府県税事務所において自動車取得税及び自動車税を申告・納付する。

 フレキシブルディスク  磁気によりデータを記録する媒体の日本工業規格における名称であり、一般にフロッピーディスクと呼ばれる。

 交付代行者  国土交通大臣がナンバープレートの交付を代行させている者で、自動車関連の公益法人が代行者となっている。

 封印取付受託者  国土交通大臣が封印の取付けを委託した者で、自動車関連の公益法人、自動車整備事業者、自動車販売事業者、行政書士等が受託者となっている。

 新車の新規登録手続は、自動車の購入者等が申請者となって自ら行うこともできるが、そのほとんどが自動車販売事業者や行政書士に依頼して行われているのが現状である。
 自動車販売事業者が構成会員となっている社団法人日本自動車販売協会連合会(以下「自販連」という。)によると、平成19年の新車の新規登録件数(3,453,672件)のうちの約83%(2,890,871件)については、自販連の各都道府県支部が、管内の自動車販売事業者からの申請書類を取りまとめて、運輸支局等に一括して代理申請を行い、自動車検査証、検査標章、ナンバープレート等の交付を受けて、自動車販売事業者に配布している。また、自動車保管場所証明関係手続の代行については、自動車販売事業者又は行政書士が行っているが、自動車販売事業者が代行する場合には、自販連都道府県支部によらず各自動車販売事業者自らが手続を行っている。

(2) 自動車保有関係手続のワンストップサービス

 新車の新規登録を行う場合、申請者等は、警察署、運輸支局等、都道府県税事務所等複数の機関に赴かなければならないことから、申請者等の負担を軽減して、行政事務の効率化を図るために、申請者等がパソコンを用いてインターネット上で一括して自動車保有関係手続を行うことのできるワンストップサービス(以下「ワンストップサービス」という。)が17年12月から開始されている。

ア ワンストップサービス実施の経緯

 ワンストップサービス実施の経緯は次のとおりである。
〔1〕  10年12月に、内閣総理大臣直轄の省庁連携タスクフォースとして設置されたバーチャル・エージェンシーの検討プロジェクトの一つとして自動車保有関係手続のワンストップサービスが取り上げられ、国民の負担を軽減して、行政事務を効率化するために、その推進を図る必要があるなどとする最終報告が11年12月になされた。
〔2〕  上記の報告を受けて、高度情報通信社会推進本部(本部長内閣総理大臣)は、おおむね17年を目標としてワンストップサービスの実現を図るべく、その稼働開始を目指すこととして、段階的に対象手続及び地域を拡大することとした。
〔3〕  13年1月に、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号)に基づき、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(本部長内閣総理大臣。以下「IT戦略本部」という。)が決定した「e−Japan戦略」において、我が国が5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指すこととされて、同年3月に「e−Japan重点計画」を決定して、おおむね17年を目標に自動車保有関係手続のワンストップサービスの開始を目指すこととした。
〔4〕  14年8月に、「自動車保有関係手続のワンストップサービス推進関係省庁連絡会議」(内閣官房、警察庁、総務省、法務省、国税庁、経済産業省、国土交通省で構成。)は、ワンストップサービスについての検討結果を中間的にとりまとめた「自動車保有関係手続のワンストップサービスのグランドデザイン」を決定した。
〔5〕  15年4月に、警察庁、総務省、国税庁及び国土交通省(以下「4省庁」という。)は、システム設計に必要な要件を定義するとともに、その実施のための枠組みを「自動車保有関係手続のワンストップサービス・システム要件定義」として策定した。
〔6〕  16年7月に、4省庁は、ワンストップサービスの開始時期を17年12月として、まず型式指定車(注4) の新車の新規登録手続を対象とすることにした。
〔7〕  17年2月に、IT戦略本部により決定された「IT政策パッケージ2005」において、19年中を目標に全国において新車の新規登録手続のオンライン申請を開始できるようワンストップサービス化を推進すること及び中古車の新規登録、移転登録、変更登録、抹消登録及び継続検査(注5) については、20年末までのできるだけ早期を目標に全国にサービスを拡大することとした。
〔8〕  17年12月に、東京都、神奈川県、愛知県及び大阪府の4都府県でワンストップサービスを開始して、現在の実施都府県は表1のとおりである。
 なお、4省庁及びすべての都道府県(都道府県警察を含む。)からなるOSS管理運営委員会(以下「管理運営委員会」という。)を設置して、ワンストップサービスの管理運営方針の決定に当たっている。

 型式指定車  国土交通大臣が、自動車の安全性の増進及び自動車による公害の防止その他の環境の保全を図るために、自動車製造業者等の申請により、自動車の構造、装置及び性能が保安基準に適合して、かつ、当該自動車が均一性を有すると判定して、その型式について指定した自動車をいう。

 継続検査  自動車検査証の有効期間の満了後に当該自動車を使用しようとするときに、自動車の安全性の確保及び公害の防止を図るために受ける検査

表1  ワンストップサービスの実施都府県
稼働開始時期 平成17年12月26日〜 18年4月24日〜 19年1月29日〜
都府県名
 
 
 
東京都
神奈川県
愛知県
大阪府
埼玉県
静岡県
 
 
岩手県
茨城県
群馬県
兵庫県

イ ワンストップサービスのシステム構成

 ワンストップサービスは、図2のとおり、〔1〕 申請者等の認証、申請の受付等を行う「全国ポータルサブシステム」、〔2〕 各機関への申請の振り分け及び手続の流れの管理等を行う「地方ポータルサブシステム」、〔3〕 各都道府県警察に設置されて自動車保管場所証明書の申請等に係る処理を行う「警察接続サブシステム」、〔4〕 各運輸支局等に設置されて自動車の登録申請等に係る処理を行う「運輸支局等接続サブシステム」及び〔5〕 各都道府県に設置されて自動車税、自動車取得税の申告に係る処理を行う「都道府県接続サブシステム」から構成されている。

図2  ワンストップサービスのシステム構成図

図2ワンストップサービスのシステム構成図

(注)
 検査・登録の申請書の内容は、ワンストップサービスを利用した場合、書面申請の場合とも、自動車登録検査業務電子情報処理システムに登録される。

ウ ワンストップサービスの申請手順

 ワンストップサービスは、申請者等がワンストップサービスのサブシステムの一つである全国ポータルサブシステムに接続して、必要な申請事項を入力するなどして送信して、手数料や自動車関係諸税をインターネットバンキング又はATMにより支払うなどして、申請者等がそれぞれの機関の窓口に赴くことなく新車の新規登録に必要な手続を行うことができるようにしたものである。ただし、ナンバープレート、登録事項等通知書、自動車検査証、検査標章及び保管場所標章の受取りについては、別途関係機関に赴く必要があり、また、ナンバープレートの取付け後の封印については、封印取付受託者に依頼して封印の取付けを受ける必要がある。また、自動車損害賠償責任保険への加入等の事前準備が必要とされている。申請者等がワンストップサービスを利用して新規登録の申請を行う場合の手続は、次のとおりである(図3 参照)。
(ア) 申請者等は、ワンストップサービスを利用するための事前の準備として、以下の手続を行う。
〔1〕  自動車損害賠償責任保険への加入
〔2〕  手数料等の納付をインターネットバンキングで行う場合は、インターネットで納付を行う環境の準備
〔3〕  ワンストップサービスを利用するためのソフトウェアのパソコンへのインストール
〔4〕  個人の場合は、住民基本台帳カードに格納された電子証明書を利用した電子申請を行うために必要なソフトウェアのパソコンへのインストール
〔5〕  申請者等とワンストップサービスとの間の安全な通信を行うために必要な政府共用認証局の自己署名証明書(注6) の設定等
(イ) 申請者等は、パソコンを用いて以下の手順により申請書及び添付書類の作成を行う。
〔6〕  申請者、使用者、代理申請の場合は代理人に関する情報(住所、氏名(法人名)及び生年月日)の入力
〔7〕  自動車の用途及び登録に関する申請内容(メーカー名、自動車の色、車台番号等)の入力
〔8〕  自動車の保管場所に関する情報(保管場所を示す所在図、配置図、使用権原疎明書面等の添付等)の入力
〔9〕  自動車税及び自動車取得税に関する情報(自動車の用途と種別、納税義務者、自動車の所有形態、課税標準額又は車両本体及び付加物の取得価額)の入力等
(ウ) 申請者等は、(イ)により入力を行った各画面ごとの入力情報を確認の後、ワンストップサービスへデータの送付を行う。データ送付後の手続は以下のとおりである。
〔10〕  インターネットバンキング又はATMを使用して保管場所証明申請手数料及び検査登録手数料を納付
〔11〕  運輸支局等、都道府県税事務所及び警察署の審査機関による申請内容の審査
〔12〕  新規登録の基準に適合する場合には保管場所標章交付手数料、自動車重量税、自動車税及び自動車取得税について〔10〕 と同様の方法による納付
〔13〕  運輸支局等での登録事項等通知書、自動車検査証及び検査標章の受取り、交付代行者からのナンバープレートの受取り、自動車への取付け及び封印取付受託者による封印の取付け
〔14〕  警察署で保管場所標章の交付を受けて自動車に表示

  政府共用認証局の自己署名証明書  申請者等とワンストップサービスとの間の通信を暗号化し、申請者側には安全な通信を行うための証明書、ワンストップサービス側にはサーバ証明書が必要となり、これらの証明書(自己署名証明書)を政府共用認証局が発行する。

図3  ワンストップサービスによる手続概要

図3ワンストップサービスによる手続概要

(3) ワンストップサービスに係る経費

 4省庁は、14年度からワンストップサービスのシステム開発を行っており、19年度末までにワンストップサービスに要した費用は、表2のとおり、4省庁合計で65億1967万余円となっている。このうち、設計、開発費は、警察庁が5億2160万余円、総務省が5億2843万余円、国税庁が1億9727万余円、国土交通省が14億2988万余円をそれぞれ負担していて、4省庁合計で26億7720万余円となる。また、運用、保守等のための維持関係費用は国費で17年度5億5872万余円、18年度16億0328万余円、19年度16億8045万余円となっている。
 なお、上記の開発費については、それぞれのサブシステムの開発内容に応じて4省庁が負担割合を定めて支出しており、サービス開始後の維持関係費用については、「全国ポータルサブシステム」及び「地方ポータルサブシステム」は、国土交通省がその2分の1を負担して、残額の2分の1について都道府県税部局及び都道府県警察がそれぞれ負担割合を定めて支出している。また、上記以外の維持関係費用については、国土交通省が全額を負担している。

表2  省庁別ワンストップサービス関係費用
(単位:円)

年度 契約金額
  うち警察庁分 うち総務省分 うち国税庁分 うち国土交通省分
平成14 169,994,790 42,498,645 42,498,645 42,498,645 42,498,855
15 929,898,264 233,030,400 235,111,300 101,250,000 360,506,564
16 1,092,515,032 246,079,600 250,825,000 53,529,600 542,080,832
17 484,797,784 484,797,784
開発費計 2,677,205,870 521,608,645 528,434,945 197,278,245 1,429,884,035
17 558,729,056 558,729,056
18 1,603,281,840 1,603,281,840
19 1,680,456,840 1,680,456,840
維持関係費用計 3,842,467,736 3,842,467,736
6,519,673,606 521,608,645 528,434,945 197,278,245 5,272,351,771
注(1)
 平成14〜17年度(17年度は上段)は開発費、17〜19年度(17年度は下段)は維持関係費用であり、すべて国費である。

注(2)
 警察庁は自動車保管場所証明書の審査等に、総務省は自動車二税の徴収に、国税庁は自動車重量税の徴収に関連しているため、それぞれに係る開発費を負担している。

2 本院の検査結果

(検査の観点及び着眼点)

 政府は、世界一便利で効率的な電子行政サービスの提供を目指して、国・地方公共団体の行政手続に関して、オンライン利用を飛躍的に拡大させるために、ワンストップ化等を図り、利便性・サービスの向上が実感できる電子行政を実現することなどを目標としている。そして、10年12月に設置されたバーチャルエージェンシーによる検討に始まり推進されているワンストップサービスは、多数の行政機関、民間事業者等が連携して行政サービスのワンストップ化を実現するもので、行政サービスのワンストップ化の先駆的な取組として、電子政府を推進するに当たり、重点的に取り組むこととしているものである。
 また、本院は、国会からの検査要請に基づき、18年10月に、「各府省等におけるコンピュータシステムに関する会計検査の結果について」として、その検査結果を報告している。そして、同報告において、電子申請等関係システムの電子申請率は、全体では低くなっていることから、各省庁において、手続のオンライン化について、事務・事業の見直しも含めて、その必要性、経済性を十分検討するとともに、利便性に対する国民の意見、要望も広く聴取して、そのニーズを的確に把握するなどしてシステムの利用の拡大を図り、もって国民の利便性の向上に努めることが必要であり、本院としては、今後とも多角的な観点から検査を実施していくこととしたところである。
 そこで、ワンストップサービスについて、経済性、効率性、有効性等の観点から、サービスのワンストップ化やシステムの利用により利用者の利便性の向上が図られるものとなっているか、システムの規模と利用状況等との整合性が図られているかなどに着眼して検査を行った。

(検査の対象及び方法)

 検査に当たっては、14年度から19年度までの間のワンストップサービスに係る設計、開発、運用、保守等に要した費用65億1967万余円を対象として、4省庁において会計実地検査を行った。そして、ワンストップサービスの導入に至る検討状況及び実施状況、現在までの運用の状況等について関係資料に基づき検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) ワンストップサービスの利用率

 ワンストップサービス実施都府県における17年12月の運用開始から20年6月までの型式指定車の新車の新規登録件数3,568,810件のうちワンストップサービスを利用した件数は、表3のとおり23,916件(利用率0.67%)であり、このうち、個人の利用件数は計59件となっている。

表3  ワンストップサービスによる利用件数等(平成17年12月〜20年6月)
(単位:件)

都府県名 岩手県 茨城県 群馬県 埼玉県 東京都 神奈川県 静岡県 愛知県 大阪府 兵庫県 合計
17年度登録件数 新規登録件数A 93,250 78,014 99,890 69,387 340,541
ワンストップサービス利用件数B 79 23 127 187 416
B/A(%) 0.08 0.02 0.12 0.26 0.12
18年度登録件数 新規登録件数C 6,773 21,710 18,125 178,068 278,542 225,815 113,250 289,880 198,758 32,623 1,363,544
ワンストップサービス利用件数D 13 10 114 714 2,666 876 1,573 1,720 371 52 8,109
D/C(%) 0.19 0.04 0.62 0.4 0.95 0.38 1.38 0.59 0.18 0.15 0.59
19年度登録件数 新規登録件数E 25,541 79,462 66,317 178,447 268,235 219,308 111,823 276,742 187,808 122,637 1,536,320
ワンストップサービス利用件数F 178 14 315 1,137 3,151 516 2,128 2,410 801 525 11,175
F/E(%) 0.69 0.01 0.47 0.63 1.17 0.23 1.9 0.87 0.42 0.42 0.72
20年度登録件数 新規登録件数G 5,438 17,493 13,932 37,783 55,891 47,026 23,311 60,153 40,788 26,590 328,405
ワンストップサービス利用件数H 54 6 36 202 1,870 119 231 898 699 101 4,216
H/G(%) 0.99 0.03 0.25 0.53 3.34 0.25 0.99 1.49 1.71 0.37 1.28
合計 新規登録件数I 37,752 118,665 98,374 394,298 695,918 570,163 248,384 726,665 496,741 181,850 3,568,810
ワンストップサービス利用件数J 245 30 465 2,053 7,766 1,534 3,932 5,155 2,058 678 23,916
J/I(%) 0.64 0.02 0.47 0.52 1.11 0.26 1.58 0.7 0.41 0.37 0.67
上記合計のうち個人利用件数 1 3 1 3 17 8 1 11 13 1 59
注(1)
 ワンストップサービスの運用開始時期が都府県により異なるため、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府は平成17年12月から、埼玉県、静岡県は18年4月から、岩手県、茨城県、群馬県、兵庫県は19年1月からの利用件数をそれぞれ計上している。

注(2)
 個人利用件数についてはワンストップサービスが運用稼働を開始した平成17年12月から20年5月までの累計件数である。

 ワンストップサービスを利用できる地域は10都府県と限られており、これらの都府県におけるワンストップサービスの利用率は上記のとおり著しく低率となっていて、17年度のワンストップサービスの運用開始以降の利用1件当たりに要した維持関係費用(国の負担分)についてみると、17年度(17年12月〜18年3月)134万余円、18年度19万余円、19年度15万余円となっている。そして、今後とも利用率の改善が見られない場合は、毎年度、1件当たりの維持関係費用として同程度の金額を要することが見込まれる。

(2) 利用率の向上に向けた取組

 政府は、18年1月に決定された「IT新改革戦略」において、国民、企業等による電子政府の利用は進んでいないとの認識のもと、オンライン利用促進対象手続におけるオンライン利用率を22年度(2010年度)までに50%以上とする目標を掲げた。また、18年7月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」において、オンライン利用促進対象手続については、処理時間の短縮、手数料の引下げ等のインセンティブ措置、電子署名の簡略化等の担当府省の努力がなされるものに限り予算措置することとして、22年度(2010年度)までにオンライン利用率50%以上の目標達成が困難であると認められる電子申請システムについては、当該システムの必要性等の再検討を行うこととした。
 これを踏まえて、管理運営委員会は、オンライン利用促進対象手続のひとつである自動車の新規登録手続を行うためのワンストップサービスの利用率が低率となっている原因は、サービスを利用する際必要となる個人認証に使用する住民基本台帳カードの取得率が低いことによるとして、利用者が、住民基本台帳カードを用いて行う申請方法に加えて、住民基本台帳カードを用いることなく従前と同様の紙による委任状及び印鑑登録証明書等を自動車販売事業者に提出することにより、ワンストップサービスを利用した代理申請(以下、自動車の購入者が印鑑登録証明書等の書面を代理申請者に提出して、代理申請者がワンストップサービスを利用して申請を行う方法を「書面併用方式」という。)を行うことができるようシステムの改良等を行い、19年11月から開始した。
 これは、前記のとおり新車の新規登録手続の約8割が自動車販売事業者を通じた自販連による代理申請により行われていることから、管理運営委員会は、自動車販売事業者を通じた書面併用方式の導入により、新車の新規登録手続に係るオンライン利用率50%の達成を図ることとしたものである。
 また、自販連は、ワンストップサービスによる登録業務の効率化を図るため自動車販売事業者のシステムから申請に必要なデータを取り込む機能を有する管理システムを構築している。そして、管理運営委員会は、書面併用方式の開始に当たり、自販連からの大量申請に対応するために、自販連の運用する管理システムから送信される申請の情報をワンストップサービスが一括して受け取れるようシステムの見直しを行っている。
 しかし、書面併用方式によるワンストップサービス利用件数は19年11月26日のワンストップサービス開始から20年6月末までの合計で2,484件、ワンストップサービス全体としての19年12月から20年6月までの利用率は0.89%となっていて、期待される大幅な利用率の向上の効果はいまだ見られない状況となっている。
 なお、政府は、国のオンライン利用促進の取組を抜本的に見直すなどのため、20年9月に決定した「オンライン利用拡大行動計画」において、オンライン利用拡大の新たな目標について、これまでのような各手続一律50%の目標設定は適当でないとして、重点手続分野ごとに目標を定めることとした。そして、パソコンやブロードバンド利用環境、各種認証基盤等が国民の間に十分普及して、定着するまでの間は、窓口でのオンライン入力補助・代行サービス等の充実を図ることとして、行政内部において申請を受けた後の事務処理過程が電子的に遂行される場合には、窓口等でデータ形式により提出される申請についても、オンライン申請等件数に含めることとした。これにより、自販連等の申請者が自ら検査・登録申請書をフレキシブルディスクに入力し、運輸支局等に持参して申請するという従前から行われている申請方法についてもオンライン申請等件数に含めることとした。その結果、19年度のオンライン利用率の実績値は54%となり、政府は、25年度末における目標値を60%と設定している。
 ただし、このオンライン利用率は、フレキシブルディスクを運輸支局等の窓口に持参して行う申請件数を含んだ利用率となっており、パソコンを用いてインターネット上で一括して手続を行う申請方法とは異なる方法による申請件数を含めていることから、ワンストップサービスを用いた利用率とは異なるものである。

(3) ワンストップサービスの利用による利便性等の状況

 ワンストップサービスの利用による利便性等について利用者別にみたところ、次のような状況が見受けられた。

ア 個人の申請に係る状況

 ワンストップサービスは、申請者等が24時間365日自宅等から申請を行うことができるものであるが、個人の利用件数については、前記の表3のとおり、ワンストップサービスの運用開始から20年5月までの2年6か月間で59件にとどまっている状況である。これは、個人にとっては、複雑な自動車保有関係手続がワンストップサービスによっても基本的には解消されていないこと、ナンバープレートの封印といった個人には認められていない手続があること、新車の新規登録手続は自動車の購入者(以下「購入者」という。)に代わり自動車販売事業者を通じた代理申請により行うことが新車販売における商慣習として定着していることなどによると思料される。

イ 代理申請に係る状況

 新車の新規登録手続に係る代理申請のほとんどが自動車販売事業者を通じて行われていることから、国土交通省は、ワンストップサービスの利用率の向上を図るために、その主要な利用者である自動車販売事業者を対象として意見聴取を行っており、その結果等に基づき、購入者や自動車販売事業者等の利便性が向上しているかなどについてみたところ、以下のような状況が見受けられた。

(ア) 購入者の利便性等の状況

〔1〕  購入者が自動車販売事業者に新車の新規登録手続の代理申請を依頼する際に必要となる手数料は、国土交通省の18年度の調査(自動車販売事業者18社)によると、自動車販売事業者によって差異はあるものの、書面申請の場合は平均で3万円程度となっているが、購入者がワンストップサービスの申請を選択して自動車販売事業者に依頼する場合はこれよりも平均で7千円程度減額されている。
〔2〕  書面併用方式の場合は、購入者が委任状を作成して印鑑登録証明書を自動車販売事業者に提出する必要があるが、これは、購入者にとっての負担の面において書面申請による手続と全く異なるところがないものとなっている。
 上記のとおり、購入者にとっては、ワンストップサービスの申請を選択することにより、代理申請手数料の減額というメリットが得られる場合があることから、ワンストップサービスの利用について管理運営委員会及び自動車販売事業者等において有効な方策を検討して、購入者に十分周知することにより、利用率の向上が期待できると思料される。

(イ) 自動車販売事業者の利便性等の状況

〔1〕  書面申請による場合は、通常は自動車保管場所証明書の申請時に受取予定日が示されて、その後、必要書面がそろった時点で運輸支局等に登録申請を行うことにより同日中に登録手続が完了することから、自動車販売事業者において登録日が比較的容易に想定できるために、顧客に納車日をあらかじめ示すことが可能となっている。これに対して、ワンストップサービスによる場合は、システム上登録予定日が示されないこと、申請内容に不備があるなどして登録に必要な証明書類情報をシステムが取得できない場合には申請から数日経過した時点で差し戻される場合もあることなどから、登録日を想定しづらいものとなっており、顧客に納車日を示すことが困難となっている。
〔2〕  ワンストップサービスによる場合は、自動車保管場所証明書の取得に際して申請のために警察署に赴く手間が1回軽減されるものの、自販連や自動車販売事業者の管理システム等との連携が十分確立していないなどのために、相当数の申請事項についてパソコンへの入力事務の負担が生じている。
〔3〕  購入者がワンストップサービスを選択する場合は、自動車販売事業者は、前記のとおり一般的に書面申請の場合よりも手数料を減額していることから、手数料収入がその分減少することになる。
 上記のとおり、自動車販売事業者は、警察署へ赴く回数の減少というメリットに対して、登録予定日が想定しづらくなるため顧客に納車日を示すことが困難になること、新たなパソコン入力事務の負担が生ずること、手数料収入の減少等のデメリットを総合的に勘案した上で、現状では、ワンストップサービスの利用のメリットが十分得られないと判断していることが、利用率の低迷の一因と思料される。

ウ 自動車販売事業者による自社名義登録

 自動車販売事業者は、試乗車等として自社の名義で自動車を保有することがあるが、このような場合には、上記のようなデメリットは比較的少ないことからワンストップサービスによる登録申請がより行われやすいものと思料される。そこで、20年1月から3月までの間にワンストップサービスにより登録された3,163台の自動車についてみたところ、所有者氏名及び使用者氏名とも同一の自動車販売事業者となっているなどしていて、自社名義登録と思料される自動車が、2,604台、約82%となっていて、一般顧客向けに販売する自動車の登録申請にワンストップサービスが利用されている件数はわずかとなっている状況が見受けられた。

(4) ワンストップサービスに接続していない道府県の状況

 ワンストップサービスに接続している都府県は19年度末現在、10都府県にとどまっており、総務省等によると現在新たに接続を決定している道府県はない状況である。その理由については、都道府県接続サブシステムの構築や自動車税等の収受に必要なマルチペイメントネットワーク(注7) への加入等に費用負担を要することなどの財政上の負担及びサービス対象手続の移転登録、継続検査等への拡大の見通しが示されないことなどによるとしている。

 マルチペイメントネットワーク  官公庁、地方公共団体等と金融機関を通信回線で結び、税金や手数料等の公共料金等をパソコン上のインターネットバンキングやATMから納付することができるサービス

(5) 運輸支局等におけるワンストップサービス用審査端末等の設置状況

 国土交通省は、「IT政策パッケージ2005」において、全国でサービスを実施することが決定されたことを踏まえて、全国の運輸支局等に運輸支局等接続サブシステムを操作するための審査端末等を設置している。
 このうち、ワンストップサービスに接続している前記表1の10都府県に所在する29運輸支局等(注8) には、ワンストップサービス用の審査端末、レーザープリンター及び検査標章印刷用プリンターが2台ずつ設置されている。これに対して、ワンストップサービスに接続していない37道府県(注9) 内に所在する42運輸支局(注10) 、22自動車検査登録事務所等(注11) に、22年11月までをリース期間として設置されている審査端末計122台及びレーザープリンター計122台は、書面申請における完成検査終了証及び譲渡証明書の電子化されたデータの確認のために利用されているが、ワンストップサービスの申請には全く使用されておらず、また、検査標章印刷用プリンター計122台についても全く使用されていない状況である。そして、これらの検査標章印刷用プリンター計122台の設置に係るリース費用相当額(注12) は、16年度から19年度までの間で4073万余円となっている。

 29運輸支局等  岩手、茨城、群馬、埼玉、東京、神奈川、静岡、愛知、大阪各運輸支局、兵庫陸運部、土浦、所沢、熊谷、春日部、練馬、足立、八王子、多摩、川崎、湘南、相模、浜松、沼津、豊橋、西三河、小牧、なにわ、和泉、姫路各自動車検査登録事務所

 37道府県  北海道、京都府、青森、宮城、秋田、山形、福島、栃木、千葉、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、三重、滋賀、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県

 42運輸支局  札幌、函館、旭川、室蘭、釧路、帯広、北見、青森、宮城、秋田、山形、福島、栃木、千葉、山梨、新潟、富山、石川、長野、福井、岐阜、三重、滋賀、京都、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島各運輸支局

 22自動車検査登録事務所等  八戸、庄内、いわき、佐野、習志野、袖ヶ浦、野田、長岡、松本、飛騨、福山、北九州、久留米、筑豊、佐世保、厳原、大島各自動車検査登録事務所、沖縄陸運事務所、宮古及び八重山両運輸事務所、京都南及び四日市両自動車検査場

 リース費用相当額  リース費用全体額を台数の比率により案分するなどして算出

(6) ワンストップサービスの構成機器等の性能設計及び稼働、運用の状況

 ワンストップサービスの構成機器等の仕様の前提となる性能設計に当たっては、システムが正常に動作する業務量の限界として、政府の電子申請システムの中で最も普及したシステムの事例を参考として運用開始後3年経過時点における全国ベースでの利用率を90%と設定し、この値を用いて性能設計を行っている。しかし、現状では、ワンストップサービスの実施都府県が限定されていて利用率が1%に満たない状況となっていること、移転登録、継続検査等いまだワンストップサービスの対象手続とされていない業務に係る要処理業務量についてもシステムの性能決定の要素として反映されていることから、導入された構成機器等はその有する本来の性能を十分に発揮していない状況である。
 ワンストップサービスの運用に当たっては、運用保守契約(契約金額4億9264万余円(19年度))に基づき年間を通じて24時間システムを稼働させるとともに動作状況の監視等を行わせている。しかし、個人によるワンストップサービスの利用実績が著しく少ない現状において、深夜時間帯における利用がほとんどないことなどを踏まえれば、深夜におけるシステム稼働の必要性について、費用対効果の見地から検討する必要があると認められる。

(改善を必要とする事態)

 ワンストップサービスの開発費及び維持関係費用が多額に上っているにもかかわらず、ワンストップサービスの利用率が低迷していてワンストップサービスの効果が十分発現していない事態は、改善の要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、主たる利用者である自動車販売事業者等においてワンストップサービスの利用の体制がいまだ十分整っていないことなどの要因もあると思料されるが、ワンストップサービスを利用することによって代理申請手数料が減額されることなどが購入者に十分周知されていなかったり、利用者である自動車販売事業者等にとって登録予定日を想定しづらくなるなど利便性等が十分向上していなかったりなどしていること、また、利用状況を踏まえたシステムの維持管理費用の節減のための検討が十分でないことなどによると認められる。

3 本院が表示する意見

 国民の利便性の向上、国民負担の軽減、行政事務の効率化等を図るというワンストップサービスの目的を踏まえて、4省庁において管理運営委員会による協議を通じるなどして、ワンストップサービスに要する費用に対してその効果が十分得られるよう次のとおり意見を表示する。
ア 都道府県及び自動車販売事業者等の協力を得るなどして、ワンストップサービスが購入者に十分周知されるよう必要な措置を講ずるとともに、利用者の意見等を的確に捉えた方策を講じ、また、システムの改善を図るなどして、利用者の利便性に資するワンストップサービスとなるよう改善を図ること
イ システム機器の更新等を行う場合には、ワンストップサービスの利用状況や都道府県の今後の意向等を十分勘案の上、機器等が的確な性能及び構成となるようにしたり、深夜の時間帯等についてはシステムの利用状況を踏まえながら運用休止時間を適切に設定したりするなどして、費用の節減を図ること
 また、今後、ワンストップサービスの対象手続とすることとしている移転登録、継続検査等への拡大の検討、現行のサービスの継続の可否等の検討を行う場合は、サービスの利用動向の的確な把握、利用者からの意見の聴取とそのサービス内容への的確な反映等に十分留意するとともに、その費用対効果を十分念頭に置く要がある。