会計名及び科目 | 港湾整備特別会計(平成20年度以降は社会資本整備事業特別会計(港湾勘定)) | ||
(港湾整備勘定) | (項)港湾事業費 | ||
(項)北海道港湾事業費 | |||
(項)沖縄港湾事業費 | |||
(項)港湾事業工事諸費 | |||
(特定港湾施設工事勘定) | |||
(項)エネルギー港湾施設工事費 | |||
(項)鉄鋼港湾施設工事費 | |||
部局等 | 国土交通本省 | ||
監督測量船及び用船の概要 | 直轄港湾工事の監督業務等を行うために、国土交通省が所有する船舶及び民間会社等と契約して借り上げる船舶 | ||
監督測量船の隻数及び国有財産台帳価格 | 53隻 | 10億9403万円 | (背景金額)(平成19年度末現在) |
年間運航日数が75日未満と特に少なくなっていた監督測量船の隻数及び国有財産台帳価格 | 2隻 | 1億1376万円 | (平成19年度末現在) |
(平成20年10月31日付け 国土交通大臣あて)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
貴省は、港湾法(昭和25年法律第218号)の規定に基づき、港湾整備事業等の一環として、港湾工事及び開発保全航路(注1)
の開発、保全等に係る国の直轄工事を毎年度多数実施しており、これらの工事の監督等の業務(以下「監督業務等」という。)を行うために、国有財産としての船舶(以下「監督測量船」という。)を平成19年度末現在で53隻(国有財産台帳価格計10億9403万余円)所有している。これらの監督測量船は、昭和48年度から平成8年度までの間に建造されたもので、19年度においては、8地方整備局、北海道開発局及び内閣府沖縄総合事務局(以下「地方整備局等」という。)管内の計42港湾事務所等(注2)
に配置されており、改造工事が行われていた1隻を除く52隻の運航管理が行われている。
監督測量船の運航形態は、図1のとおり、港湾事務所等の職員である船員が操船及び管理を行う直営と、港湾事務所等が民間会社等と運航委託契約を締結して、その委託先の船員に操船及び管理を行わせる運航委託とがあり、その運航目的は、上記の監督業務等のほか、震災等の災害発生時における港湾施設の緊急点検、緊急輸送活動の支援等となっている。
また、監督測量船が配置されていなかったり、配置されていても更に船舶が必要となっていたりする港湾事務所等は、船舶を船員とともに借り上げる(以下「用船」という。)契約(以下「用船契約」という。)を民間会社等と締結して、必要な日に限り用船をして業務を行っている。そして、19年度におおむね1年を契約期間として用船を行っている港湾事務所等は24事務所、契約件数は30件となっている。
図1 監督測量船及び用船の運航形態
監督測量船の運航に係る費用(以下「運航管理費」という。)は、船員の人件費、燃料費、修理費等で構成されており、用船に係る費用(以下「用船費」という。)は、船員の人件費、燃料費、船舶の損料等で構成されている。
本院は、効率性等の観点から、監督測量船及び用船の運用が運航実績等からみて効率的に行われているかなどに着眼して、監督測量船を運航管理し又は用船契約を締結している54港湾事務所等のうち51港湾事務所等において、運航日数等に関する書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行うとともに、残りの3港湾事務所等については、同様の書類の提出を求めて検査を行った。
このほか、船舶を所有している民間会社等を対象として、用船契約の実現可能性についてのアンケート調査を外部の調査機関に委託して行った。
前記の監督測量船53隻(国有財産台帳価格計10億9403万余円)及び用船契約30件について検査したところ、次のような状況が見受けられた。
19年度に運用された監督測量船52隻についてみると、1隻当たりの年間運航日数は39日から230日(平均147.2日)、年間運航管理費は1222万余円から4981万余円、計14億2163万余円となっており、用船契約30件についてみると、1件当たりの年間運航日数は13日から279日(平均101.7日)、年間用船費は68万余円から3691万余円、計2億2734万余円となっていた。 そして、監督測量船の年間運航日数と年間運航管理費との関係は図2のとおりとなり、年間運航管理費の大部分を占める人件費及び修理費が、業務日に船員を常時待機させる必要があること、定期修理を年1回行っていることなどから固定費的な経費となるために、年間運航日数と年間運航管理費との間に相関関係はほとんど認められない。
図2 監督測量船の年間運航日数と年間運航管理費の関係
一方、用船契約の年間運航日数と年間用船費との関係は図3のとおりとなり、港湾事務所等の業務量や業務内容等に応じて必要な日に限り用船をして運航させていること、運航実績に応じて支払を行う単価契約であることから、年間用船費は年間運航日数に応じて変動するものとなっていて相関関係が認められる。
図3 用船契約の年間運航日数及び年間用船費
また、監督測量船の隻数及び用船契約の件数を年間運航日数別にみると、次表のとおりとなり、年間運航日数が75日未満となっていた監督測量船が2隻(国有財産台帳価格1億1376万余円)あるなど年間運航日数の少ない監督測量船がある一方、用船契約の中には、年間運航日数の多いものもある状況となっていた。
区分 | 75日未満 | 75日以上100日未満 | 100日以上125日未満 | 125日以上150日未満 | 150日以上175日未満 | 175日以上200日未満 | 200日以上225日未満 | 225日以上 | 計 | 平均運航日数(日) |
監督測量船 | 2 | 1 | 11 | 12 | 14 | 9 | 2 | 1 | 52 | 147.2 |
用船 | 14 | 3 | 2 | 2 | 2 | 4 | 2 | 1 | 30 | 101.7 |
前記のとおり、監督測量船の運航管理費は運航日数に対して固定費的な傾向を示しており、用船費は変動費的な傾向を示していることから、より効率的な運用を行うためには、参考図のとおり、年間運航日数が少ない監督測量船を用船の年間運航日数が多い港湾事務所等へ切り替えて配置することが考えられる。例えば、年間運航日数の増加による監督測量船の燃料費等の増加額よりも、年間運航日数の減少による用船費の減少額の方が大きくなれば、運航管理費と用船費の合計費用が配置の切替前に比べて減少する場合がある。
(参考図) 効率的な運用についての概念図
したがって、監督測量船の配置に当たっては、港湾事務所等ごとの業務量の多寡、災害発生時の必要性等の行政上の判断に加えて、より効率的な運用を実現していくための検討が必要である。
なお、監督測量船に代えて用船を行うことの可能性について、本院が外部の調査機関に委託して、船舶を所有している民間会社等に対するアンケート調査を実施した結果、過去の監督測量船の運航日数が少ないことなどの条件に基づき選定した16港湾(注3)
のすべてにおいて、用船契約を可能とする民間会社等が存在することが確認された。
監督測量船は、8年度に2隻が建造されて港湾事務所に配置されたものが最後となっている。その後、10年以上を経過して、各港湾事務所等の業務量、業務内容等は当時とは変化しているものと思料される。
貴省において、監督測量船の配置については、災害発生時の対応等を十分に認識して、総合的に判断して適切に対応していくとしているものの、配置の考え方等を含む監督測量船の運用方法を示す基本的な方針はこれまで定められていない。
したがって、今後は、災害発生時に緊急輸送活動の支援を行うなどの港湾事務所等の社会的役割等を考慮するとともに、監督測量船をより効率的に運用するために、その運用についての基本的な考え方を示す方針を策定する必要がある。
監督測量船をより効率的に運用するために、その配置を計画的に見直すことなどが十分に行われていない事態は適切とは認められず、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、監督測量船の運用を効率的に行うよう、各港湾事務所等の業務量、業務内容等に応ずるなどして、全国的な配置の見直しを計画的に行うことなどを定めた監督測量船の運用についての基本的な方針を策定していないことなどによると認められる。
監督測量船の配置を含めた運用の在り方については、港湾事務所等の社会的役割等に加えて、効率性も踏まえて、中長期的な視点から計画的に検討を行う必要がある。
ついては、貴省において、監督測量船の運用をより効率的に行うために、その全国的な配置を計画的に検討して見直すことを含めた運用等に関する基本的な方針を策定して、地方整備局等及び港湾事務所等への指示・指導を行うなどするよう改善の処置を要求する。