会計名及び科目
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一般会計 (組織)環境本省
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(項)廃棄物処理施設整備費
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(項)離島振興事業費
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(項)地域再生推進費
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部局等
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環境本省
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補助の根拠
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水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律(平成6年法律第8号)、地域再生法(平成17年法律第24号)、予算補助
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補助事業者
(事業主体)
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市126、町45、村6、計177市町村
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補助事業
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浄化槽設置整備
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浄化槽市町村整備推進
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補助事業の概要
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浄化槽の設置又は改築を行う者に対してこれらに要する費用を市町村が助成する事業又は市町村自らが浄化槽を整備する事業を行った場合に、その費用の一部を国が補助するもの
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国庫補助基本額
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668億3405万余円
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(平成15年度〜19年度)
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上記に対する国庫補助金等交付額
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227億4254万余円
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使用されておらずその効果が発現していない浄化槽に係る国庫補助金等相当額
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1億2387万円
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(平成15年度〜18年度)
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事業実施年度の前年度以前に設置が済んでいる浄化槽に係る国庫補助金等相当額
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8532万円
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(平成15年度〜19年度)
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7条検査を受けていない浄化槽に係る国庫補助金等相当額
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8億1465万円
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(平成15年度〜18年度)
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11条検査を受けていない浄化槽に係る国庫補助金等相当額
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28億2344万円
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(平成15年度〜17年度)
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(平成20年10月20日付け 環境大臣あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。
記
貴省は、中山間地域など地形や集落形成の特性から公共下水道等の集合処理施設による集合処理が適さない地域において、快適な住環境の形成及び公共用水域の水質保全を図り、生活環境の保全及び公衆衛生の向上に寄与することを目的として、し尿と台所、ふろなどからの雑排水とを併せて処理する浄化槽の計画的な整備を実施する市町村(一部事務組合を含む。以下同じ。)に対して助成を行っている。
浄化槽の整備事業には、「浄化槽設置整備事業実施要綱」(平成6年衛浄第65号厚生省生活衛生局水道環境部長通知)に基づき、浄化槽の設置又は改築を行う者に対して、その設置又は改築に要する費用を市町村が助成する浄化槽設置整備事業及び「浄化槽市町村整備推進事業実施要綱」(平成6年衛浄第67号厚生省生活衛生局水道環境部長通知)に基づき、市町村自らが浄化槽を整備する浄化槽市町村整備推進事業(以下、浄化槽設置整備事業と合わせて「浄化槽整備事業」といい、両要綱を合わせて「実施要綱」という。)がある。そして、これらの事業を実施する市町村に対して、貴省は平成16年度(注1)
までは浄化槽整備事業費国庫補助金を、17年度からは循環型社会形成推進交付金又は汚水処理施設整備交付金(以下、これらを合わせて「国庫補助金等」という。)を交付している。
国庫補助金等は、水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律(平成6年法律第8号)等に基づき、又は予算の範囲内で交付されることとなっており、その額は、浄化槽整備事業費国庫補助金については「浄化槽整備事業費国庫補助金交付要綱」(平成6年厚生省生衛第902号厚生事務次官通知)等により、循環型社会形成推進交付金については「循環型社会形成推進交付金交付要綱」(平成17年環廃対発第050411001号環境事務次官通知)等により、また、汚水処理施設整備交付金については「汚水処理施設整備交付金交付要綱」(平成17年17農振第167号、国都下事第18号、環廃対発第050422003号、農林水産、国土交通及び環境各事務次官通知)等(以下、前記の実施要綱とこれらを合わせて「要綱等」という。)により算定することとなっている。そして、浄化槽整備事業においては、流入、放流に係る管きょ及びますの設置等に係る費用は補助の対象から除外されていることから、浄化槽利用者(浄化槽を設置する住宅等を所有する個人等)が、便所、台所、ふろなどと浄化槽との間及び浄化槽と放流先との間を接続する配管工事を自己の負担において実施することとされている。
浄化槽の所有者、占有者その他の者で当該浄化槽の管理について権限を有するもの(以下「浄化槽管理者」という。)は、浄化槽法(昭和58年法律第43号)第7条第1項の規定に基づき、浄化槽の使用開始後3月を経過した日から5月間(平成18年1月以前は6月を経過した日から2月間)に、浄化槽の設置工事等が適正に行われたかなどを判断するための水質等の検査(以下「7条検査」という。)と、浄化槽法第11条第1項の規定に基づき、浄化槽が適正な維持管理により所期の処理機能が確保されているかなどを判断する毎年1回の定期検査(以下「11条検査」といい、7条検査と合わせて「法定検査」という。)とを受検しなければならないこととされている。
そして、法定検査は、都道府県知事の指定する検査機関(以下「指定検査機関」という。)が実施することとされていて、17年度以降、指定検査機関は、すべての検査結果を都道府県知事へ報告することとされている。また、17年度以降、都道府県知事は、法定検査を受検しない浄化槽管理者に対して、法定検査を受けることを確保するために必要な指導及び助言や、法定検査を受けるべき旨の勧告等を行うことができることとされている。
浄化槽は公共下水道のような管きょを必要とせず、地形の影響を受けることが少なくどこにでも設置できることから、特に、個々の家屋が離れている人口散在型の地域において積極的な整備が行われている。 そこで、本院は、25都府県(注2) の190市町村において、合規性、有効性等の観点から、補助事業が法令、要綱等に基づき適切に実施されているか、浄化槽の維持管理状況は適切か、設置された浄化槽が効果を発現しているかなどに着眼して、会計実地検査を行った。そして、15年度から19年度までに国庫補助金等を受けて整備された浄化槽138,719基、国庫補助基本額(注3) 計668億3405万余円、国庫補助金等計227億4254万余円について、事業実績報告書等の書類により検査を行った。
25都府県 東京都、京都、大阪両府、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、栃木、千葉、神奈川、富山、岐阜、静岡、滋賀、和歌山、岡山、山口、徳島、香川、福岡、熊本、大分、鹿児島各県
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国庫補助基本額 浄化槽の種類及び規模ごとに定められた基準額と対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額を選定して、その選定した額と総事業費から寄付金等の収入額を控除した額とを比較して少ない方の額
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検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
浄化槽は、設置後、速やかに便所、台所、ふろなどとの間及び放流先との間を接続する配管工事を実施して、使用することによりその効果が発現されることになる。そこで、配管工事が速やかに実施されて浄化槽が使用されているかについて検査したところ、20年3月末現在で浄化槽設置後1年以上経過しているのに、浄化槽利用者が便所、台所、ふろなどの排水管等と浄化槽とを接続する配管工事を実施していないなどのため、浄化槽が使用されておらず、設置した浄化槽の効果が発現していないものが23都府県(注4) の73市町において、434基、国庫補助基本額計3億5279万余円、国庫補助金等相当額計1億2387万余円見受けられた。
上記の事態について事例を示すと次のとおりである。
A県B市は、平成15年度から18年度までの間に国庫補助金等計6788万余円の交付を受けて浄化槽205基を整備している。このうち、同市が浄化槽市町村整備推進事業により17年12月に市内居住者Cの住宅に設置した浄化槽について、同市は、要綱等で接続の期限が定められていないことから、Cに対して接続の期限を3年以内と説明していた。そのため、20年3月末時点においても、Cは便所、台所、ふろなどの排水管等と浄化槽とを接続する配管工事を実施しておらず、設置した浄化槽は使用されていなかった。その結果、Cが居住する住宅から排出される生活雑排水は処理されないまま側溝等に放流されており、設置した浄化槽の効果が発現していなかった。そして、これを含めて前記205基のうち22基(国庫補助金等相当額計907万余円)が同様の理由等により20年3月末現在で設置後1年以上、長いもので4年経過しているのに宅内の排水管等との接続が行われていないため、設置した浄化槽が使用されておらず、その効果が発現していなかった。
一般に、国庫補助金等の交付対象となる事業は、財政法(昭和22年法律第34号)等の趣旨を踏まえて事業実施年度に採択されたものとされているが、浄化槽整備事業については、この点に関して要綱等に明記されていない。そこで、浄化槽の設置時期について検査したところ、事業実施年度の前年度以前に設置が済んでいる浄化槽に対して助成を行い、この助成実績に基づき国庫補助金等の交付を受けていた事態が6都県(注5) の15市町において648基、国庫補助基本額計2億5707万余円、国庫補助金等相当額計8532万余円見受けられた。
上記の事態について事例を示すと次のとおりである。
D県E市は、平成15年度から19年度までの間に国庫補助金等計1億6200万円の交付を受けて浄化槽1,158基を整備している。このうち、同市が17年度に市の補助金を交付した市内居住者Fが設置した浄化槽は、16年度に既に設置が済んでいて使用が開始されていたものであった。しかし、同市は、要綱等において前年度に既に設置が済んでいるものは国庫補助金等の補助対象外であるということが明記されていないことから、Fからの申請を補助の対象外とせずに市の補助金を交付した。そして、これを含めて国庫補助金等の事業実績報告書を提出して、国庫補助金等の交付を受けていた。E市において、このように前年度に設置が済んでいるものに対して同市の補助金を交付して、それを国庫補助金等の補助対象に含めていたのは、15年度から19年度までの間で計49基(国庫補助金等相当額計708万余円)となっていた。
前記のとおり、浄化槽管理者は、浄化槽が適正に設置等がされているか、また、浄化槽の所期の処理機能が確保されているかを確認するため、法定検査を受検しなければならないこととされている。そこで、設置された浄化槽の7条検査の受検状況について検査したところ、23都府県(注6) の141市町村において、15年度から18年度までの間に設置された浄化槽111,279基のうち5,138基(国庫補助基本額計23億0328万余円、国庫補助金等相当額計8億1465万余円)については、20年3月末時点で7条検査が行われておらず、適正な設置等の確認ができていない状況となっていた。また、11条検査の受検状況について検査したところ、25都府県の175市町村において、15年度から17年度までの間に設置された浄化槽88,529基のうち21,742基(国庫補助基本額計84億7138万余円、国庫補助金等相当額計28億2344万余円)については、20年3月末時点で11条検査が設置後一度も行われておらず、適正に維持管理されているか確認ができていない状況となっていた。
上記の事態について事例を示すと次のとおりである。
G県H市は、平成15年度から18年度までの間に国庫補助金等計4918万余円の交付を受けて浄化槽381基を整備している。同市は、浄化槽設置に係る市の補助金の交付に当たり、事業実績報告書に7条検査の依頼書を添付させて、その依頼書を市で取りまとめて指定検査機関へ提出していた。しかし、上記381基のうち、136基(国庫補助金等相当額計1728万余円)については、同市において7条検査の受検状況の把握及び未受検者に対する指導等が十分でなかったことなどから、7条検査を受検しておらず浄化槽の設置工事等が適正に行われたか確認できていなかった。また、11条検査についても、受検状況の把握及び未受検者に対する指導等が十分でなかったことなどから、15年度から17年度までの間に整備した281基のうち163基(国庫補助金等相当額計2069万余円)は設置後一度も11条検査が行われておらず、適正な維持管理が行われているか確認できていなかった。
上記のように、設置された浄化槽が使用されておらずその効果が発現していない事態、事業実施年度の前年度以前に既に設置が済んでいる浄化槽を補助対象としている事態、設置された浄化槽が法定検査を受検しておらず、適正な設置及び維持管理について確認ができていない事態は適切でなく、早急に是正及び是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。
ア 貴省において
(ア) 要綱等で、補助事業により設置した浄化槽と宅内の排水管等との接続期限及び使用開始期限を定めていないこと並びに使用されていない事態が発生した際の対応について定めていないこと
(イ) 事業実施年度の前年度以前に既に設置が済んでいる浄化槽は国庫補助金等の交付対象とならないことを要綱等において明確にしていないこと
イ 都道府県において、指定検査機関から送付される法定検査の結果報告等の活用が十分でなく、法定検査の未受検者に対する指導等が適切に行われていないこと、また、事業を実施する市町村との連携及び情報の共有が適切に行われていないこと
ウ 市町村において
(ア) 浄化槽設置後、宅内の排水管等との接続及び使用開始を速やかに行わせて、その効果を発現させるべきことについての認識が十分でないこと
(イ) 国庫補助金等の交付対象となる浄化槽は国庫補助金等の交付年度に設置されたものに限られることについて認識が十分でないこと
(ウ) 補助事業により設置した浄化槽が法定検査を受検しているかを確認する体制が整備されていないこと
浄化槽は公共用水域等の水質の保全のために重要な役割を果たしており、し尿及び生活雑排水処理施設として安定的に機能を発揮することが求められている。
ついては、貴省において、浄化槽整備事業により設置された浄化槽の効果を早急に発現させるとともに、適正に維持管理されているか確認し、併せて浄化槽整備事業の適正な執行が確保されるよう、次のとおり是正及び是正改善の処置を求める。
(ア) 浄化槽が使用されていない事態及び適正に維持管理されているか確認ができていない事態が、早急に解消されるよう都道府県及び市町村に対して技術的助言等を行うこと
(イ) 浄化槽と宅内の排水管等との接続期限及び使用開始期限を要綱等に明記するとともに、使用されていない事態が発生した際の対応を定めて市町村に周知すること
(ウ) 事業実施年度の前年度以前に既に設置されている浄化槽は、国庫補助金等の交付対象とならないことについて要綱等に明記するとともに、事業を実施する市町村に周知すること
(エ) 都道府県に対して、指定検査機関から提出される法定検査の結果報告書等の情報をもとに、未受検者に対して浄化槽法に基づき指導及び助言、勧告等を適切に行うとともに、これらの情報を、事業を実施する市町村が共有できるよう協力を求めること、また、市町村に対して、都道府県から必要な情報を入手して、補助事業により設置した浄化槽が法定検査を受検しているか確認する体制を整備するよう指導すること