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(4) 会計業務システムの運用に当たり、システムを使用して行う会計業務を明確にするなどして、システムの有効利用を図るよう是正改善の処置を求めたもの


(4) 会計業務システムの運用に当たり、システムを使用して行う会計業務を明確にするなどして、システムの有効利用を図るよう是正改善の処置を求めたもの

会計名及び科目
一般会計 (組織)防衛本省 (項)装備品等整備諸費
部局等
陸上幕僚監部、35会計隊
会計業務システムの概要
会計業務の効率化及び合理化を図るために、駐屯地に所在する会計隊において、会計業務データを入力、蓄積して、会計業務書類を作成するシステム
上記のシステムに係る借上の支払金額相当額
1億1400万円
(平成18、19両年度)

【是正改善の処置を求めたものの全文】

陸上自衛隊の会計業務システムの運用について

(平成20年10月20日付け 防衛省陸上幕僚長あて)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 会計業務システムの概要

(1) 会計業務システムの概要

 貴自衛隊は、駐屯地における会計業務の効率化及び合理化を図る目的で、平成16年3月から会計システムを導入している。この会計システムは、給与計算システムと会計業務システムから構成されており、中央会計隊が各駐屯地に所在する会計隊に設置された端末等を制御できるようにするために、中央会計隊及び各会計隊の端末等がネットワークで結ばれている。このうち会計業務システムは、駐屯地に所在する会計隊が、契約、支払等のデータ(以下「会計業務データ」という。)を端末から入力して、機器に蓄積された会計業務データから、関連する契約簿、前渡資金整理簿等の関係帳簿及び帳票(以下「会計業務書類」という。)を作成するものである。

(2) 会計業務システムを構成する機器の概要等

 会計業務システムの機器は、同システムに使用するソフトウェアを開発するための開発端末、会計業務データを入力して会計業務書類を作成するための業務端末及び入力された会計業務データを蓄積するための業務サーバ等から構成されている。そして、会計業務システムは、開発端末により開発したソフトウェアを業務端末にインストールすることによって、会計業務データの入力、会計業務書類の作成ができることになっている。
 開発端末は、6駐屯地(注1) に所在する中央会計隊及び5方面会計隊本部に13台が設置されている。業務端末及び業務サーバは、中央会計隊及び4方面会計隊本部並びに各師団等の司令部が所在する大規模な駐屯地の会計隊等34駐屯地(注2) の会計隊に、業務端末59台及び業務サーバ34台がそれぞれ設置されている。このため、開発端末、業務端末及び業務サーバのいずれかを設置して、会計業務システムを導入している会計隊は計35駐屯地の会計隊となっている。
 また、会計業務システムを構成するこれらの機器を借り上げるための支払金額相当額は、18年度5358万余円、19年度6042万余円、計1億1400万余円となっている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、有効性等の観点から、会計業務システムが有効に利用されているかなどに着眼して、前記35駐屯地の会計隊のうち17駐屯地(注3) の会計隊において、ソフトウェアの開発状況、各端末等の利用状況、会計業務データの蓄積状況等を、設置されている各端末等を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。そして、残りの18駐屯地(注4) の会計隊においては、陸上幕僚監部に対して各端末等の利用状況の報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

ア 会計システムの運用及び管理

 陸上幕僚監部は、会計システムの運用及び管理のために、会計システムの運用及び管理要領(平成16年陸幕会第81号。以下「要領」という。)を制定しているが、要領において会計業務システムを使用して行うべき会計業務について規定しておらず、また、会計業務システムの運用について5方面会計隊本部及び各会計隊の裁量に任せて、自ら指導を行っていなかった。

イ ソフトウェアの開発状況

 開発端末を使用して会計業務システムのソフトウェアを開発していたのは中央会計隊のみであり(以下、同隊が自ら開発したソフトウェアを「会計業務ソフト」という。)、5方面会計隊本部は開発端末を使用してソフトウェアを開発していなかった。

ウ 業務端末及び開発端末の利用状況

 業務端末に会計業務ソフトをインストールしているのは、前記の34駐屯地の会計隊のうち11会計隊(注5) にすぎず、残りの23会計隊(注6) は、会計業務ソフトをインストールしていないために、会計業務ソフトを使用した会計業務を行えない状況となっていた。
 さらに、会計業務ソフトをインストールしている上記の11会計隊のうち、実際にこれを使用して会計業務を行っていたのは1会計隊のみで、残りの10会計隊は会計業務ソフトをインストールしているものの、実際の会計業務には使用しておらず、試行的に会計業務書類を作成している状況であった。
 また、5方面会計隊本部は開発端末とは別の既存のパソコンにより会計業務を実施するためのソフトウェアを既に開発しており、このソフトウェアを使用しても会計業務が行えることから、上記の1会計隊を除いた33会計隊は、既に開発したソフトウェアを既存のパソコンにインストールして実際の会計業務を行う一方、業務端末を一部の会計業務の文書等を作成する際に補完的に使用していた。
 上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 A会計隊には、業務端末3台及び業務サーバ1台がそれぞれ設置されており、これらの機器を借り上げるための支払金額相当額は、18年度172万余円、19年度193万余円、計365万余円となっていた。
 しかし、同隊は、会計業務ソフトをインストールしていないために、会計業務ソフトを使用した会計業務を行えない状況となっていた。
 そして、同隊は、会計業務については、B方面会計隊本部が開発したソフトウェアを業務端末とは別の既存のパソコンにインストールして、当該パソコンで同ソフトウェアを使用して行う一方、業務端末を一部の会計業務の文書等を作成する際に補完的に使用していた。

エ 業務サーバの会計業務データ蓄積状況

 34駐屯地の会計隊に設置されているすべての業務サーバには、業務端末に会計業務ソフトをインストールして会計業務データを入力すれば、同データが蓄積されて会計業務書類が作成できるように対応したデータベースが設定されていた。しかし、前記のとおり、1会計隊のみが会計業務ソフトを使用して会計業務を行っているために、データベースには会計業務データがほとんど蓄積されておらず、会計業務書類の作成ができない状況となっていた。

 このように、18、19両年度で計1億1400万余円の借り上げ経費をかけた会計業務システムを構成する機器が有効に利用されていなかった。

(是正改善を必要とする事態)

 会計業務システムは会計業務の効率化及び合理化を図る目的で導入されているにもかかわらず、開発端末がソフトウェアの開発に使用されていなかったり、会計業務ソフトがインストールされておらず業務端末が会計業務に使用されていなかったり、業務サーバに会計業務データが蓄積されていなかったりしていて、会計業務システムが利用されていない事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴自衛隊において、各会計隊における会計業務システムの利用状況の把握が十分でないこと、陸上幕僚監部において、要領に会計業務システムを使用して行うべき会計業務を規定していないこと、会計業務ソフトのインストール及び同ソフトの使用について各会計隊に対して指導を行っていないことなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置

 貴自衛隊は、会計業務の効率化及び合理化を図るために、今後も引き続き会計業務システムを会計隊において使用していくこととしている。
 ついては、前記の事態にかんがみ、貴自衛隊において、会計業務システムの機器についてその必要性の再検討を行い、陸上幕僚監部において、要領に会計業務システムを使用して行う会計業務を明確に規定して会計業務ソフトのインストール及びその使用について指導を行い会計業務システムの有効利用を図るよう是正改善の処置を求める。

 6駐屯地  市ヶ谷、札幌、仙台、朝霞、伊丹、健軍各駐屯地
 34駐屯地  市ヶ谷、旭川、帯広、東千歳、真駒内、上富良野、名寄、北千歳、南恵庭、仙台、神町、青森、八戸、岩手、多賀城、郡山、朝霞、練馬、習志野、武山、駒門、板妻、滝ヶ原、霞ヶ浦、伊丹、守山、海田市、大久保、豊川、善通寺、健軍、福岡、北熊本、久留米各駐屯地
 17駐屯地  市ヶ谷、札幌、帯広、東千歳、南恵庭、仙台、岩手、郡山、朝霞、習志野、霞ヶ浦、伊丹、守山、海田市、豊川、健軍、久留米各駐屯地
 18駐屯地  旭川、真駒内、上富良野、名寄、北千歳、神町、青森、八戸、多賀城、練馬、武山、駒門、板妻、滝ヶ原、大久保、善通寺、福岡、北熊本各駐屯地
 11会計隊  市ヶ谷、南恵庭、多賀城、朝霞、武山、伊丹、守山、海田市、大久保、豊川、善通寺各駐屯地の会計隊
 23会計隊  旭川、帯広、東千歳、真駒内、上富良野、名寄、北千歳、仙台、神町、青森、八戸、岩手、郡山、練馬、習志野、駒門、板妻、滝ヶ原、霞ヶ浦、健軍、福岡、北熊本、久留米各駐屯地の会計隊