ページトップ
  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第1 国民生活金融公庫、第2 農林漁業金融公庫、第3 中小企業金融公庫|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

統合して株式会社日本政策金融公庫となる3公庫における職員住宅の管理運営に当たり、空室の情報を共有するなどして所有住宅の有効活用を図ることにより、借上住宅の賃借に係る費用を節減する措置を講ずるよう適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたもの


統合して株式会社日本政策金融公庫となる3公庫における職員住宅の管理運営に当たり、空室の情報を共有するなどして所有住宅の有効活用を図ることにより、借上住宅の賃借に係る費用を節減する措置を講ずるよう適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたもの

公庫名
(1)
国民生活金融公庫(平成20年10月1日以降は株式会社日本政策金融公庫)
 
(2)
農林漁業金融公庫(同)
 
(3)
中小企業金融公庫(同)
科目
(1)
業務諸費
 
(2)
業務諸費
 
(3)
業務諸費
部局等
(1)
国民生活金融公庫本店
 
(2)
農林漁業金融公庫本店
 
(3)
中小企業金融公庫本店
3公庫における職員住宅の概要
3公庫が、自ら所有する住宅又は民間業者から借り上げた住宅を職員住宅として貸与などしているもの
検査した職員住宅戸数
2,769戸
上記のうち民間業者から借り上げた職員住宅戸数
474戸
上記に係る賃借料
3億8617万余円
(平成19年度)
平成19年度に支払われた賃借料のうち、不要になる借上住宅に係る賃借料
5668万円
 

【適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたものの全文】

統合して株式会社日本政策金融公庫となる3公庫における職員住宅の管理運営について

 
平成20年9月29日付け
国民生活金融公庫総裁
農林漁業金融公庫総裁
中小企業金融公庫総裁
あて

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。

1 新政策金融機関への統合及び職員住宅の概要

(1) 新政策金融機関への統合の概要

 国民生活金融公庫(以下「国民公庫」という。)、農林漁業金融公庫(以下「農林公庫」という。)、中小企業金融公庫(以下「中小公庫」という。)、沖縄振興開発金融公庫及び国際協力銀行(国際金融等業務)の5機関(以下、沖縄振興開発金融公庫を除く4機関を「国民公庫等」という。)は、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(平成18年法律第47号)に基づき、平成20年度において設立される新政策金融機関に統合されることとなった(沖縄振興開発金融公庫は24年度以降に統合)。
 さらに、同法の成立を受けて、18年6月、新政策金融機関についてのより具体的な制度設計の内容が示された「政策金融改革に係る制度設計」(平成18年6月27日政策金融改革推進本部決定、行政改革推進本部決定。以下「制度設計」という。)が決定された。制度設計によると、国民公庫等は、新政策金融機関への統合に際して、管理部門等の共通する業務の一元化や同一地域に複数の支店が存在する場合に統合するなどにより、役職員数の縮減、経費の節減を図ることとされている。そして、制度設計に基づき、19年5月に株式会社日本政策金融公庫法(平成19年法律第57号)が成立したことから、20年10月1日に国民公庫等は株式会社日本政策金融公庫(以下「新公庫」という。)に業務を引き継ぐこととなった。
 また、同法によると、新公庫の成立の際、現に国民公庫等が保有する権利のうち、新公庫が将来にわたり業務を円滑に遂行する上で必要がないと認められる資産は、新公庫の成立時において国が承継することとされている。

(2) 支店の統合状況

 上記の経緯を踏まえて、国民公庫等は18年4月までにそれぞれ統合準備室を発足させて、統合に関する種々の調整等を行っている。その中で、国民公庫、農林公庫及び中小公庫(以下、これらを合わせて「3公庫」という。)の支店については、同一地域に3公庫の複数の支店が存在する場合に統合するとの方針で、20年10月の新公庫発足を待たずに、18年度中に高松支店等一部の支店について移転方針を定めて、順次3公庫の支店を同一建物に開設するなどして19年度から営業を行っている。なお、3公庫は、3公庫の233支店(国民公庫152支店、農林公庫22支店、中小公庫59支店(注1) )を国民公庫の支店数である152支店に集約して、個々の案件の受付窓口を国民公庫から引き継ぐ業務及び中小公庫から引き継ぐ業務については全支店に、農林公庫から引き継ぐ業務については48支店に設置することとしている。

 中小公庫59支店  本店の営業一部、営業二部及び営業三部は1支店として計上している。

(3) 職員住宅の管理運営状況

 3公庫は、それぞれの住宅に関する規則等に基づき、各公庫が自ら所有する住宅(以下「所有住宅」という。)又は民間業者から借り上げた住宅(以下「借上住宅」という。)を職員住宅として本店及び各支店で管理運営しており、転勤により勤務地の移動を伴う職員等であって業務上住宅を貸与することが必要と認められる職員に対して、職員住宅を貸与している。そして、貸与に当たって、3公庫は、通勤可能な地域に所在する職員住宅を選定することとしている。
 また、3公庫の19年度末現在における職員住宅の保有状況は、次表のとおりとなっている。

表 3公庫の平成19年度末現在における職員住宅の保有状況
公庫名\区分
所有住宅
借上住宅
国民公庫
1,949
1,138
3,087
農林公庫
562
37
599
中小公庫
901
185
1,086
3公庫合計
3,412
1,360
4,772

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 3公庫は、制度設計に基づき、新公庫への統合に際して、同一地域に複数の支店が存在する場合に統合することなどによって経費の節減等を図り、統合の効果を上げることが求められている。そして、3公庫は、既に19年度から各公庫の支店が同一市町村に所在する場合等には、支店を同一建物に集めて、会議室の共用等を行うなど経費の節減を図ってきている。
 そこで、本院は、経済性、有効性等の観点から、3公庫が管理運営している施設のうち、特に職員住宅について、その管理運営が制度設計の趣旨に沿って適切に行われているかに着眼して、3公庫が管理運営している職員住宅のうち、3公庫の本店及び農林公庫の全22支店(注2) が所在する22地域(以下「22地域」という。)の職員住宅(所有住宅2,295戸、借上住宅474戸(19年度賃借料計3億8617万余円)、計2,769戸)を対象に、賃貸借契約書、入退去の実績等に係る書類を確認するなどの方法により検査した。そして、3公庫の本店及び5支店(注3) において会計実地検査を行った。

 22支店  北海道、青森、秋田、盛岡、仙台、関東、長野、東京、新潟、北陸、東海、近畿、大阪、岡山、松江、高松、松山、福岡、長崎、熊本、宮崎、鹿児島各支店
 5支店  国民公庫金沢支店、農林公庫北陸支店及び中小公庫盛岡、金沢、神戸各支店

(検査の結果)

 検査したところ、職員住宅の管理運営について次のような事態が見受けられた。

(1) 公庫ごとにみた職員住宅の管理運営状況

 公庫ごとに、19年度末現在の22地域における職員住宅の管理運営状況についてみると、国民公庫は、職員住宅への入居に際して、所有住宅への入居を事実上義務付けていることから、所有住宅1,048戸は、老朽化等の理由で使用する見込みのないものを除いてすべて入居済みとなっていた。そして、所有住宅だけでは不足することとなる337戸は借上住宅を職員に貸与していた(19年度賃借料計2億5367万余円)。しかし、農林公庫及び中小公庫については次のような状況となっていた。

ア 農林公庫

 農林公庫が管理運営している所有住宅562戸のうち、1年以上空室となっているものが35戸見受けられた。
 一方、農林公庫は、37戸の借上住宅を支店長等に貸与している(19年度賃借料計3943万余円)。このうち、7戸については、同一地域の所有住宅に1年以上の空室があるにもかかわらず、支店長に対しては借上住宅を貸与することとしていたため、別途民間マンションなどを賃借した上で貸与していた。

イ 中小公庫

 中小公庫が管理運営している所有住宅685戸のうち、老朽化等の理由で使用する見込みのないものを除いて1年以上空室となっているものが20戸見受けられた。
 一方、中小公庫は、100戸の借上住宅を貸与している(19年度賃借料計9306万余円)。このうち、15戸については、同一地域の所有住宅に1年以上の空室があるにもかかわらず、入居希望者の意向に配慮するなどしていたため、別途民間マンションなどを賃借した上で貸与していた。

(2) 3公庫全体でみた職員住宅の管理運営状況

 農林公庫及び中小公庫の所有住宅のうち1年以上空室となっている55戸について、両公庫がそれぞれの公庫で、地域ごとに借上住宅の入居者を所有住宅の空室に入居させて所有住宅22戸の有効利用を図ったとしても、農林公庫7地域における所有住宅28戸、中小公庫3地域における所有住宅5戸、計33戸の空室は解消されない状況である。
 一方、3公庫全体で貸与している借上住宅の合計戸数は、地域ごとにみると一部の地域を除き、農林公庫及び中小公庫の空室となっている所有住宅を上回っている。このため、これらの所有住宅の空室を取りまとめて全体で有効活用することとすれば、上記33戸のうち27戸の空室は解消できると認められた。
 3公庫は、職員住宅について、所有住宅の相互利用を前提として協議を実施してきている。しかし、将来にわたり業務を円滑に遂行する上で必要がないとして新公庫成立時に国へ承継する資産を検討するに当たって、新公庫としての資産の必要性を判断すべきであるにもかかわらず、各公庫それぞれで判断するとして、各公庫が現在保有する所有住宅を3公庫で有効活用するということを前提に資産の必要性を検討してこなかった。このため、3公庫は、他公庫の個別の職員住宅の入居状況等の情報を共有してこなかった。

(3) 不要になる借上住宅に係る賃借料

 前記(1)及び(2)の農林公庫及び中小公庫で1年以上空室となっている所有住宅のうちそれぞれの公庫で有効活用できるものが22戸、全体で有効活用できるものが27戸あるため、計49戸の借上住宅が不要になることとして、賃借している借上住宅の地域ごとの19年度の平均賃借料を基に借上住宅49戸の賃借料を計算すると、計5668万余円となり、これらは支払う必要がなくなると認められる。

(是正及び是正改善を必要とする事態)

 上記のように、職員住宅の管理運営及びその必要性の検討が各公庫によりそれぞれ別に行われていることなどのため、通勤可能な地域内の既存の所有住宅に空室があるにもかかわらず、別途、民間マンションなどを賃借して職員に貸与しているという事態が生じていることは適切とは認められない。そして、今回の検査の対象としていない他の支店においても、同様の事態が生じていると思料されることから、早急に是正及び是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、農林公庫及び中小公庫において、空室となっている所有住宅の有効活用を図るという認識が十分でなかったこと、また、3公庫において、入居状況に関する連絡調整が十分行われていなかったことなどによると認められる。

3 本院が求める是正及び是正改善の処置

 3公庫は、新公庫への統合に際し、制度設計において、管理部門等の共通する業務の一元化や同一地域に複数の支店が存在する場合に統合するなどにより、経費の節減等を図ることとされている。そして、3公庫は、新公庫発足を待たずに、所有の建物に別法人である他公庫が移転するなどして支店の統合を順次進めてきている。
 ついては、次のとおり、空室となっている所有住宅の有効活用を早急に図ることにより、借上住宅の賃借に係る費用を節減する措置を講ずるよう是正及び是正改善の処置を求める。
ア 農林公庫及び中小公庫において、所有住宅に空室がある場合は、当該所有住宅への入居を最優先することとして、借上住宅の速やかな削減を図ること
イ 各公庫における職員住宅の入居状況等の情報を共有するなどして、各公庫が現在保有する所有住宅を全体で有効活用することを検討して、統合の効果の発現を期すること