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有料駐車場の運営に当たり、駐車場用地等を随意契約により関連公益法人に貸し付けることを改めて、関連公益法人が収入としている駐車場利用料金等を勘案して、貸付料を見直したり、委託により自ら実施したりすることにより、契約の競争性及び透明性を確保して、増収を図るよう是正改善の処置を求めたもの


有料駐車場の運営に当たり、駐車場用地等を随意契約により関連公益法人に貸し付けることを改めて、関連公益法人が収入としている駐車場利用料金等を勘案して、貸付料を見直したり、委託により自ら実施したりすることにより、契約の競争性及び透明性を確保して、増収を図るよう是正改善の処置を求めたもの

科目
一般勘定 (項)事業外収入
部局等
日本中央競馬会本部、9競馬場
契約
賃貸借契約 11件
契約の相手方
財団法人日本中央競馬会弘済会
契約の概要
競馬開催日に有料駐車場として使用するために駐車場用地等を貸し付けて、有料駐車場を運営させるとともに、その貸付料を徴収するもの
検査対象とした財団法人日本中央競馬会弘済会に貸し付けている有料駐車場の箇所数
9競馬場及び3場外発売所の計38か所
日本中央競馬会が徴収している貸付料
 
4億6978万余円
(平成18事業年度)
 
4億2143万余円
(平成19事業年度)
8億9121万余円
 
財団法人日本中央競馬会弘済会が収入としている駐車場利用料金
 
13億5250万余円
(平成18事業年度)
 
13億1260万余円
(平成19事業年度)
26億6511万余円
 
日本中央競馬会が増収を図ることができた額
 
3億8881万円
(平成18事業年度)
 
4億0281万円
(平成19事業年度)
7億9163万円
 

【是正改善の処置を求めたものの全文】

有料駐車場の運営について

(平成20年10月22日付け 日本中央競馬会理事長あて)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 業務の概要

(1) 有料駐車場の概要

 貴会は、日本中央競馬会法(昭和29年法律第205号)に基づき、競馬法(昭和23年法律第158号)に規定するところにより、中央競馬の開催等の業務を行っており、10競馬場(注1) において年間36回(288日以内)の競馬を開催して、競走ごとの勝馬投票券を上記の10競馬場で発売するほか、41か所の場外勝馬投票券発売所等(注2) (以下「場外発売所」という。)でも発売している。
 貴会は、競馬開催に伴う来場者の便宜を図る立場から、10競馬場及び13場外発売所(注3) に、貴会が所有するなどしている土地に舗装を行って立体駐車場等の施設を整備したり、土地、建物等を賃借したりすることなどによって、駐車場施設を計84か所設置している。
 このうち、4競馬場及び9場外発売所(注4) の計45か所(敷地面積計約69万4000m )は来場者から利用料金を収受していない駐車場施設(以下「無料駐車場」という。)であるが、9競馬場及び4場外発売所(注5) の計39か所(敷地面積計約46万5000m )は来場者から利用料金を収受している駐車場施設(以下「有料駐車場」という。)である。
 貴会は、昭和43年から、従来無料駐車場としていたものを有料化することなどにより有料駐車場を順次設置してきている。これらの有料駐車場を設置してきた理由については、来場車両の抑制を図り、来場車両の急増に伴う競馬場及び場外発売所周辺の交通渋滞等により交通環境が悪化することを未然に防止するためであるとしている。
 平成19事業年度における有料駐車場の年間利用台数は約148万台に上っている。

 10競馬場  札幌、函館、福島、新潟、中山、東京、中京、京都、阪神、小倉各競馬場
 41か所の場外勝馬投票券発売所等  貴会の場外勝馬投票券発売所33か所及び地方競馬の施設を利用した場外勝馬投票券発売所8か所
 13場外発売所  釧路、室蘭、津軽、横手、新白河、高崎、立川、石和、名古屋、米子、高松、小郡、八幡各場外発売所
 4競馬場及び9場外発売所  札幌、新潟、福島、小倉各競馬場及び釧路、室蘭、津軽、横手、高崎、石和、米子、高松、小郡各場外発売所
 9競馬場及び4場外発売所  札幌、函館、福島、中山、東京、中京、京都、阪神、小倉各競馬場及び新白河、立川、名古屋、八幡各場外発売所。なお、札幌、福島及び小倉競馬場は、無料駐車場と有料駐車場の両方を併設

(2) 有料駐車場の運営

 貴会は、有料駐車場については、新白河場外発売所1か所を除いて、各競馬場が、貴会の関連公益法人である財団法人日本中央競馬会弘済会(以下「弘済会」という。)と競馬場又は場外発売所ごとに随意契約により、競馬開催日に有料駐車場として使用するために駐車場用地等を貸し付けることを内容とする賃貸借契約を締結して弘済会から貸付料を徴収している。そして、駐車場用地等の貸付けを受けた弘済会は、駐車場利用料金を収受してこれを自らの収入としている(以下、このような有料駐車場の運営形態を「賃貸方式」という。)。賃貸方式を採用する有料駐車場は、9競馬場及び3場外発売所(注6) の計38か所となっていて、これに係る賃貸借契約の件数は11件となっている。
 なお、新白河場外発売所の有料駐車場については、貴会は、駐車場内の車両整理等の業務を外部に委託することなどにより、自ら運営を行っている(以下、このような有料駐車場の運営形態を「委託方式」という。)。

 9競馬場及び3場外発売所  札幌、函館、福島、中山、東京、中京、京都、阪神、小倉各競馬場及び立川、名古屋、八幡各場外発売所

(3) 駐車場用地等の貸付料

 貴会は、貴会の不動産の貸付けの基準として、「日本中央競馬会不動産貸付基準」(昭和50年理事長達第9号。以下「貸付基準」という。)を定めている。貸付基準によれば、貴会の所有している不動産の貸付料については、当該不動産の固定資産課税台帳登録価格等に、土地については100分の2.8の料率を、土地以外の不動産については100分の12の料率を、それぞれ乗じた額に消費税を加えた額を貸付料の年額とするとされている。また、貴会が賃借している不動産を貸し付ける場合の貸付料の年額は、貴会が支払うべき賃借料相当額とするとされている。
 前記の賃貸方式を採用している駐車場用地等の年間貸付料は、上記の貸付基準の料率により算定した貸付料の年額を365で除した額に開催日数を乗じた額となっている。
 そして、貴会は、前記11件の賃貸借契約に係る駐車場用地等の貸付料として、弘済会から18事業年度に4億6978万余円、19事業年度に4億2143万余円、計8億9121万余円を徴収している。
 また、貸付基準では、料率の特例として、貸付物件の使用形態又は利用効率その他のやむを得ない事情により貴会理事長が上記の料率によることが実情に沿わないと認めた場合は、その料率を増減することがある旨規定されている(以下、この規定を「弾力条項」という。)。

(4) 貴会の契約制度

 貴会の契約制度については、日本中央競馬会会計規程(昭和29年規約第2号)において競争契約によることが原則となっているが、事業経営上競争に付することが不利又は困難であると認める場合、契約の性質又は目的が競争を許さないときなど貴会理事長が定める場合においては、指名競争に付し、又は随意契約をすることができるとされており、国の場合とほぼ同様の内容となっている。

(5) 閣議決定により要請されている事業運営の効率化・透明化等への取組

 13年12月に閣議決定された「特殊法人等整理合理化計画」では、中央競馬関係事業について、貴会が講ずべき措置として、「管理経費・競走事業費の削減など更なる事業の効率化を図る。その一環として、公正確保と両立させつつ、一般競争入札等の範囲を大幅に拡大するとともに、関係会社等に対する委託費等を削減する」こととされている。また、17年12月に閣議決定された「行政改革の重要方針」では、「競争性のある契約のうち競馬の公正・中立性の確保上支障のない契約については、そのすべての契約を、平成22年までのできる限り早い時期に競争入札に移行させる」などとされている。

2 本院の検査結果

(検査の観点及び着眼点)

 有料駐車場は、競馬場及び場外発売所への車両による来場を可能にするなど、来場者に対する利便性を向上させる施設であり、その存在は来場者にも十分に認知されており、競馬場周辺の交通環境が悪化しないように車両の抑制を行いつつ、今後も引き続き運営を行っていくことが見込まれる。
 有料駐車場の利用料金については、収益性を目的としたものではないとしているものの、数度の見直しにより値上げが行われてきている。また、貴会は、前記38か所の有料駐車場の運営について弘済会との随意契約による賃貸方式を採用してこれを継続してきている。
 そこで、合規性、効率性等の観点から、有料駐車場用地等の貸付料が、弘済会が収入としている駐車場利用料金や有料駐車場の運営に要する経費の実情を勘案した適切なものになっているか、有料駐車場の運営を随意契約による賃貸方式で行っていることは適切かなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

 本院は、貴会本部、8競馬場及び29場外発売所(注7) において会計実地検査を行った。そして、駐車場用地等の賃貸借契約書等の書類により検査するとともに、駐車場を設置している9競馬場及び3場外発売所を対象として、貴会に駐車場の運営に係る人員の配置数、駐車場利用料金、利用台数等について報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

 8競馬場及び29場外発売所  札幌、福島、中山、東京、中京、京都、阪神、小倉各競馬場及び札幌、室蘭、静内、津軽、横手、新白河、銀座、新宿、後楽園、浅草、錦糸町、渋谷、立川、田無、横浜、石和、名古屋、京都、難波、梅田、道頓堀、神戸、姫路、米子、小郡、高松、八幡、佐世保、博多各場外発売所

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 弘済会が収入としている駐車場利用料金

 貴会は、弘済会と協議の上、駐車場利用料金について、乗用車、バスなどの車種ごとに1日1台当たり500円から6,000円までと定めている。そして、弘済会は、必要な人員を駐車場に配置する一方、これらの駐車場利用料金として、18事業年度に13億5250万余円、19事業年度に13億1260万余円、計26億6511万余円を収受している。このように、弘済会は、貴会に支払っている前記の貸付料18事業年度4億6978万余円、19事業年度4億2143万余円、計8億9121万余円に比べて多額の駐車場利用料金を収受して自らの収入としている。

(2) 弘済会との随意契約

 貴会は、有料駐車場の運営を賃貸方式で行う際に弘済会と随意契約により有料駐車場用地等の賃貸借契約を締結しているが、弘済会と随意契約を締結している理由について、駐車場の管理、運営には、貴会の業務、施設に精通していること、競馬開催に係る専門的知識が必要であり、この点で弘済会は実績、経験があって信頼できるためとしている。
 しかし、弘済会が行っている業務内容は、駐車場利用料金の収受以外には駐車場内の交通整理、清掃程度であって、特別な専門的知識を必要とするものではなく、また、この種の業務を行うことができる業者は多数存在していることから、「契約の性質又は目的が競争を許さないとき」に該当するとは認められず、有料駐車場の運営に係る駐車場用地等の賃貸借契約の締結に当たって、弘済会と随意契約を締結している事態は適切とは認められない。
 したがって、賃貸方式による有料駐車場の運営を継続する場合であっても、競争入札を行って貸付基準の料率による算定額にとらわれずに弾力条項を適用するなどして貸付料の設定を行い、競争性及び透明性を確保するべきであると認められる。

(3) 賃貸方式から委託方式への移行

 前記のとおり、新白河場外発売所は、貴会が駐車場内の車両整理等を外部に委託することなどにより、委託方式で自ら有料駐車場の運営を行っている。そして、新白河場外発売所と同様に、有料駐車場の運営を賃貸方式から委託方式として競争入札を行い、競争性及び透明性を確保することも可能であることから、委託方式の導入について検討することも考えられる。
 そして、仮に有料駐車場の運営を貴会自らが行う委託方式とした場合には、貴会は、有料駐車場用地等に係る貸付料を弘済会から徴収できなくなり、運営に要する経費を委託費として自ら負担することとなる一方で、駐車場利用料金は貴会の収入とすることができると認められる。

(4) 貴会が得ることができた増収額

 弘済会は駐車場利用料金として、18事業年度13億5250万余円、19事業年度13億1260万余円、計26億6511万余円を収受していた。そこで、貴会が外部委託に用いている単価及び貴会から提出された弘済会における駐車場の配置要員の実績を基に駐車場の運営に要する経費を試算すると、次表のとおり18事業年度4億9390万余円、19事業年度4億8835万余円、計9億8225万余円となり、その収支差額は、計16億8285万余円となる。
 そして、賃貸方式とした場合には、上記の収支差額等を勘案して実情に沿った適切な貸付料を算定した上で競争入札としたとすると、上記の収支差額計16億8285万余円が貸付料として徴収することができ、貴会が徴収していた貸付料計8億9121万余円に比べて約7億9163万円の増収を図ることができると認められる。
 また、賃貸方式に代えて委託方式とした場合には、新たに駐車場の運営に要する経費計9億8225万余円を負担して、貸付料計8億9121万余円は徴収できなくなる一方、弘済会が収入としていた駐車場利用料金計26億6511万余円は貴会の収入とすることができ、貴会が徴収していた貸付料に比べて、上記の賃貸方式による試算と同様に約7億9163万円の増収を図ることができると認められる。

表 弘済会における駐車場の配置要員の実績を基に本院が試算した駐車場の運営に要する経費及び貴会が得ることができた増収額等
(単位:千円)
事業年度
弘済会が収入とした駐車場利用料金(A)
本院が試算した有料駐車場の運営に要する経費(B)
収支差額
(C=A−B)
駐車場用地等の貸付料(D)
増収を図ることができた額(C−D)
平成
18
1,352,503
493,903
858,599
469,781
388,817
19
1,312,608
488,355
824,252
421,435
402,817
2,665,112
982,259
1,682,852
891,217
791,635
(注)
 金額は千円未満を切り捨てて表示しているため、各項目の数値を合計しても合計欄の数値と一致しない場合がある。

(是正改善を必要とする事態)

 貴会は、有料駐車場の運営について、新白河場外発売所を除き、随意契約による賃貸方式を採用しているが、弘済会は、貴会が徴収している貸付料に比べて多額の駐車場利用料金を収受して収入としているのに、有料駐車場用地等の貸付料を実情に沿って見直したり、委託方式により自ら実施したりすることについて十分な検討を行うことのないまま賃貸方式を続けている事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴会において、有料駐車場用地等の賃貸借契約について、競争契約を行うなどにより、競争性及び透明性を十分に確保することの重要性についての認識が十分でなかったこと、有料駐車場運営業務の実態、弘済会が収入とした駐車場利用料金、運営業務に要する経費を勘案して有料駐車場の貸付料を実情に沿った適切なものとするための検討が十分でなかったこと、委託方式により自ら運営を行うことについての検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 本院が求める是正改善の処置

 貴会は、「特殊法人等整理合理化計画」及び「行政改革の重要方針」において、中央競馬関係事業の効率化の一環として、一般競争入札等の範囲を大幅に拡大するとともに、関連公益法人等に対する委託費等を削減することが求められている。
 ついては、貴会において、有料駐車場運営業務の実態、弘済会が収入としている駐車場利用料金、運営業務に要する経費を勘案して、有料駐車場の運営について、貴会の方針に応じて次のような措置を講ずることにより、契約の競争性及び透明性を確保するとともに増収を図るよう是正改善の処置を求める。
ア 賃貸方式による場合であっても競争入札を行い相手方を選定して、貸付基準の料率による算定額にとらわれずに弾力条項を適用するなどして実情に沿った適切な貸付料を設定すること
イ 賃貸方式に代えて委託方式にする場合には、競争契約により相手方を選定することとし、併せて、駐車場利用料金を貴会の収入とすること