科目
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土地貸付料
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部局等
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成田国際空港株式会社本社
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契約名
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土地使用貸借契約等
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契約の概要
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空港施設用地及び航空保安施設用地の一部を無償で貸し付けるもの
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契約の相手方
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関東総合通信局等8官署
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検査の対象とした契約件数
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18件
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社内規程に適合していない契約件数
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18件
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有償とした場合の上記土地に係る貸付料相当額
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9966万円
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(平成19事業年度)
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(平成20年10月31日付け 成田国際空港株式会社代表取締役社長あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求する。
記
貴会社は、成田国際空港株式会社法(平成15年法律第124号)に基づき、平成16年4月1日に、同法の規定により解散した新東京国際空港公団(以下「空港公団」という。)の一切の権利及び義務を承継して、全額政府出資の特殊会社として設立された。
貴会社は、株式上場による完全民営化の早期実現を目標として掲げており、18事業年度から22事業年度までの5か年の中期経営計画「Newステージ2010」を策定して、経営基盤の強化に向けての収益拡大等の一方策として、着陸料収入等の航空収入はもとより、構内営業料収入、土地貸付料収入等の非航空収入の増大を図ることとしており、また、社会に評価される企業グループを目指して、法規範、社内規範等の法令遵守を徹底することとしている。
貴会社は、空港施設用地及び航空保安施設用地のほか、空港周辺における航空機の騒音等により生ずる障害を防止するために取得した土地(以下「騒音対策用地」という。)等を所有しており、これらの土地及びその土地に建設した建物の一部を、土地使用貸借契約、土地賃貸借契約等(以下、これらを合わせて「貸付契約」という。)を締結した上で、国、地方公共団体等に貸し付けている。貸付契約は、貸付期間が満了する一定期日前までに文書による意思表示がない限り、同一条件で継続されるものとする自動更新条項により継続されている。また、貸付契約に定めのない事項又は疑義が生じた事項は、その都度、双方が協議の上、決定するものとされている。
空港公団は、新東京国際空港公団会計規程(昭和42年規程第4号。以下「公団規程」という。)を定めて、財産等の貸付けなどについては、適正な対価によることとする一方で、公共施設の用に供する財産等を、国、地方公共団体等が、当該施設の目的に従って管理しようとする場合には、無償で貸し付けることができる旨を規定していた。また、新東京国際空港公団騒音対策用地貸付規程(平成2年規程第7号)等においては、騒音対策用地を地方公共団体等に対して貸し付ける場合で、その貸付けが当該用地について空港公団が負担する費用の軽減となる場合等には、無償で貸し付けることができる旨を規定していた。
上記に対して、貴会社は、固定資産管理事務細則(平成16年細則第5号。以下「管理事務細則」という。)を定めて、固定資産の貸付けなどについては、適正な対価によることとする一方で、公団規程のような国、地方公共団体等に対して、無償で貸し付けることができる旨の規定は設けていない。ただし、騒音対策用地を地方公共団体等に貸し付ける場合は、騒音対策用地貸付要領(平成16年地共業第11号)等を定めて、空港公団当時の場合と同様に無償で貸し付けることができるとする例外的な規定を設けている。
また、貴会社は、騒音対策用地以外の用地であっても、空港警備等の必要性に基づき地方公共団体に貸し付けている土地等については、成田空港建設の歴史的経緯等の特殊事情及び空港の安全確保の点から、経営上の判断により、空港公団当時の場合と同様に無償で貸し付けることができるとしている。
前記のとおり、空港公団及び貴会社が土地の貸付けを行うに当たり、公団規程には、公共施設の用に供する財産を、国、地方公共団体等が当該施設の目的に従って管理しようとする場合は、無償で貸し付けることができる規定が設けられていたが、管理事務細則には、このような規定が設けられておらず、適正な対価によることとしている。
そこで、合規性等の観点から、貸付契約が管理事務細則に適合したものとなっているかなどに着眼して、貴会社の本社において、空港公団が公団規程に基づき国又は地方公共団体に無償で貸し付け、19事業年度末現在において、引き続き貴会社が貸し付けている土地等の貸付契約のうち、騒音対策用地等に係るものを除いた18件(貸付土地面積計57,313.3m2
)を対象として、契約関係書類等により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
すなわち、前記18件の貸付契約のうち16件(貸付土地面積計57,205.3m2
)は、空港公団が公団規程における公共施設の用に供する土地を当該施設の目的に従って管理しようとする場合に該当するとして、国の8官署(注1)
と無償の貸付契約を締結していたものを、貴会社が引き続き無償で貸し付けているものであった。また、残りの2件(貸付土地面積計108.0m2
)は、貴会社が、16事業年度以降に新規に国の2官署(注2)
と無償の貸付契約を締結しているものであった。
しかし、管理事務細則によると、土地の貸付けは、適正な対価によるものとされていることから、上記の18件の貸付契約については、貸付料を有償とすべきであったと認められる。
空港公団は、昭和46年11月に、動物検疫所長との間で、動物検疫施設用地(貸付面積21,283.0m2
)について、貸借期間30年、貸付料は無償として、自動更新条項を付加した貸付契約を締結していた。その後、貴会社は、平成16年12月に、動物検疫施設の増設に伴い、貸付面積を増加する変更契約を締結したが、貸付料については、自動更新条項により無償のままとしていた。
前記の18貸付契約について、当該土地の19事業年度の貸付料を、当該土地の不動産鑑定評価額を基にするなどして算定すると9966万余円となる。
上記のとおり、本件土地の貸付けについて、貴会社が、空港公団から承継した土地の貸付契約を継続するなどして無償で貸し付けていて、管理事務細則に適合したものとはなっていない事態は適切とは認められず、是正を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴会社において、土地の貸付契約に係る事務の執行に当たり、貴会社が空港公団の一切の権利及び義務を承継して設立された経緯等を考慮したために、社内規程に対する合規性の確保を図るための検討が十分でなかったことなどによると認められる。
貴会社は、株式上場による完全民営化の早期実現を目標として掲げており、また、前記の中期経営計画において、社会に評価される企業グループを目指して、法規範、社内規範等の法令遵守を徹底することなどとしている。
ついては、貴会社において、本件貸付契約の有償化に向けて、借受者である国の8官署と速やかに協議を行うなどして、本件貸付契約を管理事務細則に適合したものとするよう是正の処置を要求する。
国の8官署 関東総合通信局、東京税関、成田空港検疫所、動物検疫所、東京航空局、東京航空局成田空港事務所、東京管区気象台、成田航空地方気象台
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国の2官署 東京管区気象台、成田航空地方気象台
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