科目
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受託経費
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部局等
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独立行政法人農業生物資源研究所
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契約名
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農林水産生物ゲノム情報統合データベースシステム運用支援業務等2件
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契約の概要
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統合データベースシステム等の円滑な運用支援を行わせるとともに、技術の進展に合わせてシステムの機能向上、セキュリティの確保及びシステムの最適化に関する運用支援を行わせるもの
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契約金額
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3億0840万余円
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(平成18、19両事業年度)
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契約の相手方
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三菱スペース・ソフトウエア株式会社
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契約
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平成18年3月、19年3月 随意契約
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SEの労務費の積算額
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2億5693万余円
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(平成18、19両事業年度)
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低減できた労務費の積算額
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2093万円
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(平成18、19両事業年度)
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(平成20年10月20日付け 独立行政法人農業生物資源研究所理事長あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
記
貴研究所は、イネ、カイコ、家畜等のゲノム解析研究を進めており、これまでの試験研究の推進により得られたゲノム配列情報や関連情報を、平成17事業年度末現在、イネ関連については19種類、カイコ関連については6種類、家畜等関連については5種類、計30種類のデータベースとして農林水産生物ゲノム情報解析システム等(以下「従来システム」という。)に保存、管理している。そして、貴研究所は、研究開発の効率的な推進を図る観点から、幅広い利用者が利用しやすいデータベースを構築するため、農林水産省の委託事業により、18事業年度から22事業年度までの5か年計画で、上記のデータベースに格納されているゲノム関連情報を有機的に結合して、国内外のユーザーに提供することとしており、18年12月には、農林水産生物ゲノム情報統合データベースシステム(以下「統合システム」という。)を導入して、従来システムからの移行を図っている。これまで、ゲノム配列情報や関連情報のうち、イネ関連のデータについては18事業年度に、カイコ関連のデータ及び家畜等関連の大部分のデータについては19事業年度に統合システムへの移替えが完了している。
貴研究所は、この統合システムに係る運用支援業務等を次のとおり実施している。
〔1〕 18事業年度は、従来システムの構築を行った三菱スペース・ソフトウエア株式会社でなければ従来システムから統合システムへの安全、確実かつ効率的な移行を行うことができないなどとして、随意契約により、農林水産生物ゲノム情報解析システム等保守・運用管理業務(統合システムへ移行前の従来システムに係る運用・管理業務等を含む。以下、これに係る契約を「18年度契約」という。)を1億8984万円で同社に請け負わせている。
〔2〕 19事業年度は、競争性の拡大等を図るために一般競争入札を実施したが、三菱スペース・ソフトウエア株式会社のみの入札となり、予定価格の範囲内の入札とならなかったため、随意契約によることとして、価格交渉を行った結果、農林水産生物ゲノム情報統合データベースシステム運用支援業務(以下、これに係る契約を「19年度契約」という。)を予定価格の範囲内の1億1856万余円で同社に請け負わせている。
これらの業務は、統合システム等の円滑な運用支援を行うとともに、技術の進展に合わせたシステムの機能向上、セキュリティの確保及びシステムの最適化に関する運用支援を行うことを目的とするものであり、その業務の実施は、システムエンジニア(以下「SE」という。)が貴研究所に常駐して行うことを前提としている。このため、18年度契約のうち従来システムの保守(保守料はメーカーの価格証明書等により積算している。)等を除いた運用管理業務及び19年度契約の運用支援業務の予定価格は、そのすべてがSEの労務費になっている。
貴研究所は、18年度契約の予定価格の積算に当たって、統合システムの導入時期であり、従来システムとの調整業務や統合システムへの移行業務が必要であったことから、業務を〔1〕 18年4月1日から11月30日までの従来システムに係る運用管理業務、〔2〕 同年12月1日から19年3月31日までの統合システムに係る運用管理業務、〔3〕 18年9月1日から19年1月31日までの移行支援・廃棄支援等業務の三つに区分していた。また、SEについては、業務を担当する「一般SE」、これを統括する「上級SE」、上級SEや一般SEを統括する「特殊SE」の3種類に区分していた。そして、貴研究所は、上記の期間ごとに必要なSEの人数(例えば、〔2〕 については、特殊SE1名、上級SE2名、一般SE5名)、1日当たり所定労働時間、月平均業務日数、月数等から積算工数を算出して、これにSEの種類ごとの諸経費込み時間単価(以下「時間単価」という。)を乗ずることにより、1億4228万余円と積算していた。
また、貴研究所は、19年度契約の予定価格の積算に当たっては、18年度契約の運用状況や19年度契約の入札参加予定者の提案等を踏まえて、上級SEが1名、一般SEが4名必要であるとして、18年度契約と同様の方法により、1億1464万余円と積算していた。
本院は、貴研究所において、統合システムの運用支援業務に係る契約が今後も引き続き行われていくことが予定されているなどのため、経済性等の観点から、予定価格の積算が適切に行われているかなどに着眼して検査した。
18年度契約及び19年度契約に係る予定価格の積算額についてみると、18年度契約はその大半を運用管理業務に係る労務費が占めており、また、19年度契約はそのすべてが運用支援業務に係る労務費であることから、本院は、これらの業務に係る労務費の積算額(18、19両事業年度計2億5693万余円)を対象として、貴研究所において、仕様書、積算書、積算根拠資料等を確認する方法により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。
貴研究所は、労務費の積算に当たり使用している各SEの時間単価について、すべてのSEの業務が生命情報科学の高度な専門性を必要とする業務内容となっているため、市販の積算参考資料に掲載されている高度な専門性を必要としない業務を対象とした時間単価(18年3月及び19年2月時点の東京地区におけるシステム管理技術者(注)
1は5,306円、システム管理技術者(注)
2は4,525円等)を使用することは妥当でないとして、次のとおりとしていた。
すなわち、貴研究所は、18年度契約については18年1月時点で、19年度契約については19年1月時点で、日本電子計算機株式会社が取りまとめている大手メーカー6社の技術者サービス料金のうち、システムの分析、技術支援等を行うエンジニアのランク別料金の6社平均の単価を算定することにより、特殊SEの時間単価を19,217円、上級SEの時間単価を16,000円、一般SEの時間単価を12,217円として、運用支援業務等に係る労務費を積算していた。
しかし、本件業務に係る仕様書の内容を精査すると、一般SEが担当する業務(積算工数は18年度契約で9,072時間、19年度契約で8,064時間)の中には、統合システムの構築に係る開発支援業務、同システムのソフトウェア運用管理業務等のように、生命情報科学の高度な専門性を必要とする業務内容のものがある一方、システムの定期点検(日ごと、週ごと及び月ごと)業務、メール管理業務等のように、高度な専門性を必要としない業務内容のものであると本院が確認できたものが、18年度契約で1,482時間、19年度契約で1,240時間含まれていた。このため、この時間に係る一般SEの時間単価は、積算参考資料の時間単価を適用して算定すべきであると認められた。
上記のことから、一般SEの労務費のうち、高度な専門性を必要としない業務に相当すると考えられるものについては積算参考資料に掲載されている時間単価を使用することとして、18年度契約の運用管理業務及び19年度契約の運用支援業務に係る労務費を修正計算すると、計2億3599万余円となり、前記の積算額2億5693万余円を2093万余円低減できたと認められる。
前記のように、統合システムの運用支援業務等に係る労務費の積算に当たり、仕様書の業務内容を十分に精査することなく積算していることは適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴研究所において、統合システムの運用支援業務等の労務費の積算に当たり、仕様書の業務内容に応じたSEの時間単価の適用についての検討が十分でないことなどによると認められる。
貴研究所は、今後も統合システムの運用支援業務に係る契約を締結していくものと見込まれる。ついては、貴研究所において、当該業務の労務費の積算に当たっては、仕様書の業務内容について十分に精査、検討した上で、業務の内容に適合した経済的な積算を行うよう是正改善の処置を求める。