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宿舎、庁舎分室等の建物及びこれらに係る用地について、利用状況を考慮するなどして保有の必要性を検討するとともに、不要な資産の確実な国庫返納に備えるよう改善の処置を要求したもの


宿舎、庁舎分室等の建物及びこれらに係る用地について、利用状況を考慮するなどして保有の必要性を検討するとともに、不要な資産の確実な国庫返納に備えるよう改善の処置を要求したもの

部局等
独立行政法人造幣局本局、2支局
設置根拠法
独立行政法人造幣局法(平成14年法律第40号)
宿舎、庁舎分室等の概要
独立行政法人造幣局に勤務する役職員に貸与される宿舎及び当該役職員の出張、宿泊等の用に供される庁舎分室等で、これらが設置されている用地とともに造幣局特別会計から承継したもの
事業用資産として承継した資産のうち宿舎、庁舎分室等及びこれらに係る用地の平成18年3月31日現在の帳簿価額の全体額
宿舎、庁舎分室等
46億2607万円
 
上記に係る用地
129億2177万円
 
175億4784万円
(背景金額)
上記のうち利用状況等が著しく低い宿舎、庁舎分室等に係る帳簿価額
(1) 宿舎建物
7352万円
 
(2) 庁舎分室建物
1億3034万円
 
(3) 分室建物
2359万円
 
2億2746万円
 
上記に係る用地の帳簿価額
(4) 宿舎用地
6億1582万円
 
(5) 庁舎分室用地
3億3702万円
 
(6) 分室用地
6365万円
 
10億1650万円
 
(1)から(6)の合計額
 
12億4397万円
 

【改善の処置を要求したものの全文】

宿舎、庁舎分室等の建物及びこれらに係る用地の保有状況について

(平成20年10月31日付け 独立行政法人造幣局理事長あて)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 造幣局が保有する資産等の概要

(1) 事業用資産の概要

 貴局は、財務省の特別の機関として造幣局特別会計によって運営されていた機関から、独立行政法人造幣局法(平成14年法律第40号)に基づき、平成15年4月、通貨制度の安定に寄与することなどを目的として、貨幣や勲章等の製造等を行うとともに、貨幣に対する国民の信頼を維持するために必要な情報の提供を行う独立行政法人に移行して設置された。
 貴局は、独立行政法人への移行時に、造幣局特別会計で保有していたすべての資産計963億7532万余円を承継しており、このうち、事業用の庁舎、工場、宿舎等の建物が203億8717万円、これらの敷地として用いている土地が459億5410万余円となっている。
 このうち、宿舎、庁舎分室、集会所及び分室(以下、宿舎以外を「庁舎分室等」という。)の建物並びにこれらに係る用地についてみると、18年3月31日現在で、宿舎建物が13か所(延床面積50,427m 、帳簿価額42億5628万余円)、これらに係る用地が15か所(敷地面積71,575m 、帳簿価額112億9529万余円)、また、庁舎分室等建物が7か所(延床面積5,127m 、帳簿価額3億6979万余円)、これらに係る用地が7か所(敷地面積14,322m 、帳簿価額16億2647万余円)となっており、建物計20か所(延床面積55,554m 、帳簿価額46億2607万余円)、これらに係る用地計22か所(敷地面積85,897m 、帳簿価額129億2177万余円)となっている。

(2) 貴局の役職員数の状況

 貴局における役職員数の推移をみると、15年4月に独立行政法人に移行した時には役職員数は1,230人であったが、総員の抑制を図るため、新規の採用を抑制して、貨幣自動検査装置の実用化、勲章製造工程の機械化等により省力化を行った結果、20年4月には1,050人(対15年度比14.6%減)にまで減少している。そして、貴局では、17年度末における1,112人を基準として、18年度からの5年間で役職員数を10%以上削減するよう取り組むこととしている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、貴局が事業用資産として承継した資産のうち、宿舎、庁舎分室等の建物及びこれらに係る用地を対象に、経済性、有効性等の観点から、保有すべき規模の適正性が検討されているか、また、有効に活用されているかなどに着眼して、貴局本局及び東京、広島両支局において、宿舎現況記録等の書類の提出を受けるなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 前記の宿舎、庁舎分室等の建物の帳簿価額46億2607万余円、これらに係る用地の帳簿価額129億2177万余円、計175億4784万余円について検査したところ、次のような状況となっていた。

(1) 宿舎用地及び宿舎の利用状況

ア 宿舎用地の利用状況

 貴局が保有する宿舎用地は、18年3月31日現在、都市計画法(昭和43年法律第100号)に基づいて、第1種及び第2種住居地域、第1種及び第2種中高層住居専用地域等に指定されており、当該用地の建物の法定容積率は200%から400%となっている。しかし、これらの宿舎の実際の容積率は35.3%から174.9%となっていて、宿舎用地の高度利用の面から土地の有効な利用が十分に図られていない状況となっていた。
 そして、これらの用地の中には、地方公共団体により建築物に対する規制が加わったり、都市計画上の用途地域の変更により建築物の建設が困難になったりするなどして、宿舎用地として有効な利用が困難になっている土地が見受けられた。
 これらについて事例を示すと、次のとおりである。

<事例1>

 東京支局管内に所在する新座宿舎用地(敷地面積4,201m 、帳簿価額1億9342万余円)は、宿舎を2棟建設するために昭和44年に取得したものであるが、45年に当該土地が市街化調整区域に指定されたため、46年の段階では宿舎1棟を建設したものの、2棟目の建設ができない状況となっていた。

 また、宿舎が老朽化等のため用途廃止されて、これに伴い、宿舎用地として使用されていた土地を更地にした後、宿舎用地と異なる用途に使用している、又はする予定の土地が見受けられた。
 これらについて事例を示すと、次のとおりである。

<事例2>

 広島支局管内に所在する観音宿舎用地(敷地面積14,515m 、帳簿価額10億1824万余円)のうち1番宿舎用地には、昭和37年3月に広島支局長の居住用宿舎(木造平屋建)が建設された。同宿舎には歴代の広島支局長が居住していたが、老朽化したことにより平成20年6月に用途廃止された。
 広島支局は、今後、同宿舎を解体してその跡地を、例年4月に行われている「花のまわりみち」のための桜樹の養成地として使用する予定にしているが、当該支局の敷地内には従来から桜樹の養成地が設置されており、桜樹の供給に支障を来すような状況にはない。

 なお、宿舎建物が老朽化等のために用途廃止された後、これらに係る用地が更地になるなどして売却されているものは3件(敷地面積1,197m 、帳簿価額3億5461万余円、売却価額5億4380万余円)にとどまっている。これらの土地の売却収入のうち、売却益については、その2分の1相当額が独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)の規定に基づく中期目標の期間終了後に国庫に納付される見込みであるが、帳簿価額相当額については、政府出資金を減額して国に納付する規定がない現状では、貴局が資金として保有している状況である。

イ 宿舎の利用状況

 貴局は、昭和36年度から平成14年度までの間に宿舎を順次設置しており、貴局全体では、20年3月1日現在、表1のとおり、計31棟、設置戸数計761戸となっている。このうち、昭和40年度までに設置されて、設置後、耐用年数40年を経過しているものは、四条畷(しじようなわて)宿舎3号棟(24戸)等計8棟(156戸)である。
 そして、貴局が保有する宿舎の利用状況をみると、宿舎ごとにばらつきはあるものの、貴局全体で平成15年度には設置戸数計737戸に対する入居戸数は582戸(入居率78.9%)であったが、19年度には設置戸数計761戸に対する入居戸数は528戸(入居率69.3%)となっていて、入居率は低下傾向にある。このうち入居率が50%を切っている宿舎は4宿舎あり、特に北宿舎独身寮(建物の帳簿価額7352万余円、用地の帳簿価額6億1582万余円)は、15年度と比べて入居戸数が半分以下になっており、利用状況が著しく低いものとなっている。

表1 宿舎の設置状況及び利用状況
宿舎名
設置戸数
(戸)
平成15年度
入居戸数
15年度
入居率
19年度
入居戸数
19年度
入居率
a
b
(本局)
北宿舎
5棟
114
114
78
68.4
92
80.7
北宿舎
独身寮
40
40
27
67.5
13
32.5
南宿舎
4棟
185
185
168
90.8
154
83.2
四条畷宿舎
2棟
47
47
21
44.6
20
42.5
枚方宿舎
2棟
32
32
19
59.3
13
40.6
(東京支局)
北宿舎
1棟
16
16
13
81.2
12
75.0
南宿舎
3棟
72
72
58
80.5
48
66.6
西巣鴨宿舎
1棟
20
20
16
80.0
15
75.0
千早宿舎
独身寮
20
20
14
70.0
9
45.0
新座宿舎
1棟
24
24
16
66.6
13
54.1
(広島支局)
五日市宿舎
4棟
87
87
81
93.1
50
57.4
観音宿舎
5棟
65
88
58
89.2
80
90.9
西山宿舎
男子寮
15
16
13
86.6
9
56.2
 
737
761
582
78.9
528
69.3
注(1)
 設置戸数のa欄は平成16年3月1日現在、b欄は20年3月1日現在の数値である。また、入居戸数及び入居率は当該年度の3月1日現在の数値である。
注(2)
 設置戸数計が、平成15年度737戸、19年度761戸と異なっているのは、改修工事によるものである。

 19年度末における宿舎の入居状況を、本局、支局別にみると、次のようになっている。  貴局本局では、入居率が80%を超える宿舎もあるが、北宿舎独身寮の32.5%など入居率が低い宿舎も見受けられる。そして、比較的規模の大きい北宿舎(設置戸数114戸)及び南宿舎(同185戸)のそれぞれの入居戸数は92戸及び154戸、空き戸数は22戸及び31戸(空き戸数計53戸)となっている。一方、比較的規模の小さい四条畷宿舎(設置戸数47戸)、枚方宿舎(同32戸)、北宿舎独身寮(同40戸)のそれぞれの入居戸数は20戸、13戸、13戸(入居戸数計46戸)となっている。
 このように、四条畷宿舎、枚方宿舎及び北宿舎独身寮の入居戸数計46戸は、北宿舎と南宿舎の空き戸数計53戸に入居者を集約できる程度に減少している。
 東京支局では、北宿舎及び西巣鴨宿舎の入居率が75.0%となっているが、千早宿舎独身寮の45.0%など入居率が低い宿舎も見受けられる。そして、北宿舎(設置戸数16戸)、南宿舎(同72戸)のそれぞれの入居戸数は12戸及び48戸、空き戸数は4戸及び24戸(空き戸数計28戸)となっている。一方、西巣鴨宿舎(設置戸数20戸)、新座宿舎(同24戸)のそれぞれの入居戸数は15戸及び13戸(入居戸数計28戸)となっている。
 このように、西巣鴨宿舎、新座宿舎の入居戸数計28戸は、北宿舎と南宿舎の空き戸数計28戸に入居者を集約できる程度に減少している。
 広島支局では、観音宿舎の入居率が90.9%となっているが、その他の宿舎の入居率はいずれも6割未満となっている。そして、五日市宿舎の中に所在する男子寮(以下「五日市宿舎男子寮」という。設置戸数15戸)及び西山宿舎男子寮(同16戸)は、新規職員の採用が抑えられている中で独身者の入居戸数が減少していることなどから、それぞれの入居戸数は7戸及び9戸、空き戸数は8戸及び7戸(空き戸数計15戸)となっている。
 このように、五日市宿舎男子寮の入居戸数7戸は、西山宿舎男子寮の空き戸数7戸に入居者を集約できる程度に減少している。

 以上のとおり、宿舎用地については、一部に売却されたものも見受けられたが、大部分は保有している状況であり、その中には宿舎用地としての有効な利用が困難な状況となっていたり、他の用途に転用されたりしているものも見受けられる。また、宿舎については、独立行政法人移行後の人員削減や宿舎の老朽化等により入居戸数が減少しているのに、集約化を図るなどの具体的な対策が執られていないままとなっている。

(2) 庁舎分室等の利用状況

 貴局が保有する庁舎分室等の利用状況をみると、表2のとおり、独立行政法人移行後、利用者数が大幅に減少している施設が多くなっている。

表2 庁舎分室等の利用状況
(単位:人)
施設名
利用者数
b/a
(%)
平成15年度a
16年度
17年度
18年度
19年度b
本局
庁舎分室(宿泊)
1,507
1,421
1,531
742
400
26.5
(集会)
3,675
3,233
2,120
1,143
896
24.3
東京支局
庁舎分室(宿泊)
953
1,140
1,523
1,080
540
56.6
(集会)
560
894
723
497
376
67.1
広島支局
庁舎分室(宿泊)
830
754
802
573
495
59.6
(集会)
815
784
640
475
357
43.8
広島支局
集会所(集会)
315
310
253
250
343
108.8
本局
白浜分室(宿泊)
1,463
1,322
1,139
619
490
33.4
(休憩)
1
13
11
0
0
0
東京支局
伊東分室(宿泊)
581
604
588
591
484
83.3
(休憩)
13
19
64
33
12
92.3
広島支局
宮島分室(宿泊)
576
462
275
296
356
61.8
(休憩)
128
90
53
25
20
15.6
宿泊
5,910
5,703
5,858
3,901
2,765
46.7
集会
5,365
5,221
3,736
2,365
1,972
36.7
休憩
142
122
128
58
32
22.5

 庁舎分室及び集会所は、役職員等の出張、研修、休憩及び集会の用に供するための施設であり、役職員等の出張の際の宿泊、サークル等の集会及び親睦(ぼく)会の開催等に利用されている。このうち庁舎分室の宿泊利用者については、従来、役職員、家族等を対象にして、宿泊の目的も特段の制限を設けていなかったが、18年7月より、その範囲を役職員に限ることとして、また、宿泊の目的も出張や研修等に制限したことから、利用者数が大幅に減少している。庁舎分室の19年度の利用者数を15年度と比較してみると、貴局本局庁舎分室(建物の帳簿価額1億3034万余円、用地の帳簿価額3億3702万余円)の宿泊利用者数が最も大きく減少しており、15年度に比べて26.5%となっている。
 また、分室は白浜分室、伊東分室及び宮島分室の3か所あるが、これらは、いわゆる保養所であり、役職員等の福利厚生の一環として、役職員及びその家族の宿泊、休憩等の用に供することを目的としている。そして、いずれの分室も利用者数が減少しており、特に白浜分室(建物の帳簿価額2359万余円、用地の帳簿価額6365万余円)については、19年度の宿泊利用者数が15年度と比べて33.4%となっている。
 以上のとおり、庁舎分室等については利用者数が大幅に減少しているのに、廃止するなどの具体的な対策が採られていないままとなっている。

(改善を必要とする事態)

 貴局においては、国の特別会計から承継した宿舎、庁舎分室等の建物及びこれらに係る用地が有効に利用されておらず、今後においても、宿舎の入居率の低下や庁舎分室等の利用者数の減少が見込まれる状況で、具体的な打開策が示されていない事態は適切とは認められず、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、次のようなことによると認められる。
〔1〕  独立行政法人に移行した後、人員削減等により宿舎の入居率が継続的に低下しているにもかかわらず、事業を実施していく上で必要な戸数を精査して宿舎の建物及びこれらに係る用地の廃止・集約化計画を策定するなどの処置が執られてこなかったこと
〔2〕  ほとんどの庁舎分室等で利用者数が大幅に減少しているにもかかわらず、庁舎分室等の建物及びこれらに係る用地の廃止・処分計画を策定するなどの処置が執られてこなかったこと

3 本院が要求する改善の処置

 各独立行政法人は、独立行政法人整理合理化計画(平成19年12月閣議決定。以下「合理化計画」という。)に基づき、保有資産を見直して、保有する合理的理由が認められない土地・建物等の実物資産については、売却や国庫返納を着実に推進して財政貢献を行うこととされている。そして、20年4月に独立行政法人通則法の一部を改正する法律案が閣議決定されて国会に提出されて、独立行政法人の保有する資産について政府等による出資に係る資産を含めて国庫返納等を行える制度の整備が図られようとしている。
 一方、貴局は、20年3月に、上記の合理化計画を踏まえて、独立行政法人通則法の規定に基づき定められた次期中期目標(目標の期間は20年4月から25年3月までの5年間)を達成するための次期中期計画を策定して、財務大臣の認可を受けている。同中期計画は、組織の見直しの中で保養所の段階的な廃止、職員宿舎の可能なものからの廃止・集約、庁舎分室の有効活用及び東京支局庁舎分室の廃止の可能性の検討について定めている。そして、その取組状況については、財務省評価委員会に説明して評価を受けているとしているが、具体的な廃止・集約化計画等が示されていない。
 したがって、資産の有効活用や合理化計画等の趣旨を早急かつ着実に実現するために、より具体的な打開策を示すよう、次のとおり改善の処置を要求する。
〔1〕  老朽化が進んでいたり、入居率が低くなっていたりしている宿舎の建物及びこれらに係る用地については、具体的な廃止・集約化計画を早急に作成すること
〔2〕  宿泊利用者数が大幅に減少しているなど利用状況が著しく低迷している庁舎分室等の建物及びこれらに係る用地については、具体的な廃止・処分計画を早急に作成すること
〔3〕  上記〔1〕 、〔2〕 により保有の必要のなくなった用地等の資産、事業規模の縮小や合理化計画等の実現に伴い不要となる資産等については、既に資産を売却して得た資金と合わせて、確実に国庫への返納を行えるよう備えること