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  • 平成19年度|
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交通機関等を利用する職員の通勤手当について、経済的な6か月定期券の価額に基づいて支給するよう是正改善の処置を求めたもの


交通機関等を利用する職員の通勤手当について、経済的な6か月定期券の価額に基づいて支給するよう是正改善の処置を求めたもの

科目
(本部勘定)
(項)
役職員給与
 
 
(項)
業務諸費
 
(病院勘定)
(項)
役職員給与
 
 
(項)
業務諸費
部局等
独立行政法人労働者健康福祉機構
交通機関等に係る通勤手当の概要
職員給与規程等に基づき、交通機関等を利用する職員に通勤手当を支給するもの
交通機関等を利用する職員に支給した通勤手当の額
9億4616万余円
(平成18、19両年度)
上記のうち節減できた通勤手当の額
3856万円
 

【是正改善の処置を求めたものの全文】

交通機関等を利用する職員の通勤手当の支給について

(平成20年10月22日付け 独立行政法人労働者健康福祉機構理事長あて)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 通勤手当の概要

(1) 貴機構における通勤手当の概要

 貴機構は、職員給与規程(平成16年規程第6号)、通勤手当の支給に関する達(平成16年達第19号)等(以下、これらを合わせて「給与規程等」という。)に基づき、職員に給与として基本給及び諸手当を支給している。諸手当のうち通勤手当は、通勤のため交通機関又は有料の道路(以下、これらを合わせて「交通機関等」という。)を利用して運賃又は料金(以下、これらを合わせて「運賃等」という。)を負担することを常例とする職員に支給するなどとしており、通勤手当の月額は、1か月の通勤に要する運賃等の額に相当する額(以下「運賃等相当額」という。)等となっている。
 そして、運賃等相当額の算定は次のようにすることとされている。
〔1〕  定期券を使用することが最も経済的かつ合理的であると認められる交通機関等を利用する区間については、通用期間1か月の定期券の価額
〔2〕  〔1〕 に掲げる区間以外の交通機関等を利用する区間については、その使用が最も経済的かつ合理的であると認められる回数乗車券等の通勤21回分(交替勤務に従事する職員にあっては、平均1か月当たりの通勤所要回数分)の運賃等の額(以下、〔1〕 の定期券の価額と〔2〕 の運賃等の額を合わせて「1か月定期券の価額等」という。)
 また、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)によれば、独立行政法人は適正かつ効率的にその業務を運営するよう努めなければならないこととされており、給与の支給の基準は社会一般の情勢に適合したものとなるように定めなければならないことなどとされている。

(2) 国における通勤手当に関する人事院規則等改定の経緯

 人事院は、平成15年8月に、国会及び内閣に対して、従来、1か月定期券の価額を基礎として決められていた国家公務員の通勤手当について、民間の過半の事業所が6か月定期券等の最も割安な定期券の価額を基礎として通勤手当を支給している実態を踏まえて、公務においても、低廉な定期券の価額により一括支給するよう改めることとする旨の給与改定に関する勧告等を行った。国は、これを踏まえて、同年10月及び12月に、一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号。以下「給与法」という。)及び人事院規則9−24(通勤手当)についてそれぞれ所要の改正を行っている。
 そして、16年4月から、定期券を使用することが最も経済的かつ合理的であると認められる交通機関等を利用する区間について、1か月定期券の価額から当該交通機関等で発行されている定期券の通用期間のうち6か月を超えない範囲内で最も長いものに相当する期間の定期券(以下「6か月定期券」という。)の価額を基にすることに改めて通勤手当を支給している。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、経済性等の観点から、運賃等相当額が最も経済的かつ合理的であると認められるものとなっているかなどに着眼して、貴機構において会計実地検査を行った。そして、18、19両年度に交通機関等を利用する職員(以下「交通機関等利用職員」という。)に支給した通勤手当9億4616万余円を対象として、通勤届等の書類により検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、貴機構は、交通機関等利用職員について、6か月定期券の価額を基にして通勤手当を支給した場合に、年度途中の採用、退職、転勤等による返納措置等が発生するなど事務手続が煩雑になるなどの理由から、1か月定期券の価額等を運賃等相当額として通勤手当を支給していた。
 しかし、国は、経済的な定期券である6か月定期券の価額を基に通勤手当を支給しており、他の独立行政法人も、国の給与法等の改正に倣って通勤手当に係る関係規程等について所要の改正を行った上で、同様に6か月定期券の価額を基に通勤手当を支給している。
 そして、6か月定期券の価額を基に支給する場合の方が経済的であるのに、1か月定期券の価額を基に支給していた事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 貴機構は、職員Aの通勤手当を、1か月定期券の価額を基に月額19,250円として、平成18、19両年度に計462,000円を支給していた。
 しかし、通勤手当の支給額を1か月定期券の価額ではなく、6か月定期券の価額93,750円を基に支給したとすれば、支給額の計は375,000円となり、実際の支給額に比べて87,000円節減できたと認められる。

 そして、18、19両年度で通勤経路等に変更がなかった交通機関等利用職員1,537人に支給した通勤手当5億1853万余円について、6か月定期券の価額を基に通勤手当を支給したとすれば、開差額を生じた1,180人に係る通勤手当は、18、19両年度計4億4910万余円が計4億1054万余円となり、計3856万余円が節減できたと認められる。

(是正改善を必要とする事態)

 上記のように、国及び他の独立行政法人において経済的な6か月定期券の価額に基づいて通勤手当を支給しているのに、機構において事務手続が煩雑となるなどの理由で、1か月定期券の価額等を基に通勤手当を支給している事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、機構において、通則法の規定や16年4月以降の国及び他の独立行政法人における通勤手当の支給の動向に対する認識が十分でなく、事務手続が煩雑になるなどの理由により給与規程等を見直していないことなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置

 貴機構においては、今後も引き続き多額の通勤手当を支給することが見込まれることから、その支給に当たっては、国及び他の独立行政法人における通勤手当の支給の動向を把握するとともに、給与の支給基準は社会一般の情勢に適合したものとなるように定めなければならないとしている通則法の趣旨を踏まえる必要があると認められる。
 貴機構は、本院の指摘に基づき、6か月定期券の価額を基に通勤手当を支給するため20年9月に給与規程等を改正したところであるが、実施に当たっては、給与システムの改修等の所要の準備を的確に進める必要がある。
 ついては、定期券を使用することが最も経済的かつ合理的であると認められる交通機関等を利用する区間については、経済的な6か月定期券の価額に基づく通勤手当を支給することを確実に行うよう是正改善の処置を求める。