科目
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(都市再生勘定)(項)賃貸住宅業務費
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部局等
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独立行政法人都市再生機構本社、7支社
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契約名
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緊急連絡員業務、管理連絡員業務
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契約の概要
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団地の居住者の中から連絡員を採用して、緊急事故の発生時に報告を行わせたり、居住者に対する機構からの文書の配布を行わせたりするなどの業務
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契約の相手方
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財団法人住宅管理協会
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契約
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平成18年4月、19年4月 随意契約
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委託費支払額
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10億5240万余円
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(平成18、19両年度)
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上記のうち協会経費の支払額
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1億3255万余円
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節減できた支払額
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2792万円
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(平成18、19両年度)
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(平成20年10月22日付け 独立行政法人都市再生機構理事長あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
記
貴機構は、昭和30年代から大都市地域その他の都市地域において健康で文化的な生活を営むに足りる良好な居住環境等を有する賃貸住宅等を平成19年度末現在で1,811団地、約77万戸供給して管理している。これらのうち、県の住宅供給公社等に管理委託しているものを除いた1,692団地、約74万戸の管理について、貴機構の7支社(注) (以下「7支社」という。)は、全国に26か所の住宅管理センターを設置して、現地管理の拠点としての業務を行わせている。そして、戸数規模が200戸以上の団地には、管理サービス事務所を設置しているが、事務所が閉鎖している夜間、休日等の業務時間外の対応をするため居住者である緊急連絡員を配置している。また、管理サービス事務所が設置されない小規模な団地については、居住者に対して貴機構からの文書の配布等を行うため居住者である管理連絡員を配置している(以下、両者を合わせて「連絡員」という。)。
7支社は、緊急連絡員業務及び管理連絡員業務(以下、両者を合わせて「連絡員委託業務」という。)を、それぞれ随意契約により、財団法人住宅管理協会(以下「協会」という。)に委託して実施している。そして、連絡員委託業務は、連絡員が行う業務とは別に協会職員が自ら行う連絡員の募集、採用や、採用後の連絡員に対する研修、指導監督等の業務(以下「協会職員業務」という。)が含まれている。
連絡員委託業務の委託費は、「緊急連絡員業務委託料算定基準(平成16年7月住宅経営部長通知)」及び「管理連絡員業務委託料算定基準(平成16年7月住宅経営部長通知)」(以下、両者を合わせて「算定基準」という。)に基づいて算定することとなっている。この算定基準によれば、委託費の額は、連絡員へ支払われる報酬額と協会職員が協会職員業務を行うために必要な経費(以下「協会経費」という。)との合計額とすることとなっている。そして、協会経費は、連絡員の報酬額に所定の経費率を乗ずるなどの方法により算出することとなっている。
貴機構における連絡員委託業務の支払額は、18年度5億2770万余円、19年度5億2470万余円、計10億5240万余円となっており、このうち協会経費に係る支払額は、18年度6661万余円、19年度6593万余円、計1億3255万余円となっている。
本院は、7支社において、経済性等の観点から、連絡員委託業務の契約における協会経費の算定は業務の実態を反映したものとなっているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、7支社が18、19両年度に実施している緊急連絡員業務の契約45件、管理連絡員業務の契約45件、計90件を対象として、契約書、仕様書等の書類、協会職員業務の実施状況等を検査した。
検査したところ、協会職員業務について、次のような事態が見受けられた。
協会職員業務の実態は、次のとおりであった。
ア 募集、採用業務は、連絡員(定数18年度1,484人、19年度1,496人)に欠員が生じた場合にその補充をするもので、募集対象は欠員が生じた団地の居住者に限定されていて、年間における採用者数は、18年度108人、19年度97人で、1住宅管理センター当たりの平均採用者数は18年度4.1人、19年度3.7人であった。そして、その業務内容は、応募者の面接をしたり、新規の採用者に連絡員の業務に係るハンドブックを手渡すなどして連絡員の業務内容を説明したりするもので、採用者1人当たりに要する時間は3時間程度であった。
イ 研修業務は、各住宅管理センターが、連絡員を集めて集合研修を行うなどするもので、これに要する日数は、研修の企画、準備を含めて1住宅管理センター当たり年間4日間程度であった。
ウ 指導監督業務は、ほとんどの連絡員が交代することなく継続して業務を実施していることなどから、頻繁に行われるものではなく、業務の制度変更、連絡員からの相談等があった場合に必要に応じて行っている。そのため緊急連絡員に対しては3か月に1回程度、管理連絡員に対しては1か月に1回程度の頻度で実施している状況であった。
エ 物件費に相当するものとして、集合研修に出席した連絡員の交通費等に要する費用があった。
このように、協会職員業務については、その業務の実態から業務量が把握でき人件費及び物件費からなる直接経費の算出が可能であると認められる。
貴機構は、連絡員委託業務の契約に当たり、連絡員の報酬額に16パーセントの経費率を乗ずるなどの方法で協会経費を算定して、この額を協会職員の人件費及び物件費からなる直接経費並びに諸経費に充てることとしていた。
しかし、貴機構は連絡員委託業務以外にも協会に業務を委託していて、これらに係る委託費の算定方法をみると、当該委託業務を実施するために必要な直接経費を算出した上で、この直接経費に16パーセントの経費率を乗じて算出した諸経費を加算するなどしていた。このため、本件連絡員委託業務の契約においても、協会経費の算定に当たっては、協会職員業務の実態から直接経費を把握して、同様の算定方法によるべきであると認められる。
上記の(1)及び(2)により、協会職員業務の実態を踏まえて直接経費を算出した上で、この直接経費に16パーセントの経費率を乗じて算出した諸経費を加算して委託費を算定する方法により修正計算すると、協会経費は、18年度5270万余円、19年度5192万余円、計1億0463万余円となり、前記の支払額との差額18年度1390万余円、19年度1401万余円、計2792万余円を節減できたと認められる。
上記のように、連絡員委託業務の契約に当たり、協会職員業務に係る人件費及び物件費の実態を調査して直接経費を算出することなく、連絡員の報酬額に経費率を乗じて得られた額を協会経費として算定しているのは適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴機構において、連絡員の募集、採用、連絡員への研修、指導監督の協会職員業務の実態を十分把握していなかったこと、また、適切な協会経費の算定に関する認識が十分でなかったことなどによると認められる。
現在、貴機構は、19年12月24日に閣議決定された独立行政法人整理合理化計画において、「関係会社等との随意契約について、原則すべて競争性のある契約方式への移行を図る。」とされたことを受けて、現地管理業務全般について抜本的な見直しを行い、原則すべての業務の競争化を検討していて、21年度から段階的に実施することとしている。
さらに、貴機構は、賃貸住宅等の管理の一環として今後も引き続き、居住者の利便性向上、安全・安心の確保、団地の付加価値向上等を目的として、連絡員を配置する管理体制を継続して、中期計画を踏まえた経営改善に向けた取組の中で、賃貸住宅の管理コストの削減等を実施することとしている。
ついては、貴機構において、連絡員委託業務の契約に係る協会経費については、その業務の実態等を十分調査して、これらの結果に基づいた算定方法に改めるなどの所要の措置を講ずるよう、是正改善の処置を求める。