ページトップ
  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第54 東日本電信電話株式会社、第55 西日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1)(2) ADSLモデムのレンタルに当たり、回収したADSLモデムの再利用数を拡大し、購入費等の節減を図るよう改善させたもの


(1)(2) ADSLモデムのレンタルに当たり、回収したADSLモデムの再利用数を拡大し、購入費等の節減を図るよう改善させたもの

会社名
(1)
東日本電信電話株式会社
 
(2)
西日本電信電話株式会社
科目
(1)
営業費用
 
(2)
営業費用
部局等
(1)
東日本電信電話株式会社本社
 
(2)
西日本電信電話株式会社本社
ADSLモデムのレンタルの概要
通信サービスの提供に当たり、加入者宅内に接続する必要のあるADSLモデムをレンタルするもの
ADSLモデムの購入費等
(1)
購入費
207,500個
17億2982万余円
(平成19年度)
 
処分費
120,548個
808万余円
(平成19年度)
 
 
17億3790万余円
(平成19年度)
(2)
購入費
254,320個
22億3900万余円
(平成19年度)
 
処分費
76,630個
565万余円
(平成19年度)
 
 
22億4466万余円
(平成19年度)
節減できたADSLモデムの購入費等
(1)
 
81,566個
2億2609万円
(平成19年度)
(2)
 
50,194個
2億1469万円
(平成19年度)
節減できたADSLモデムの購入費等(推計)
(1)
 
71,000個
2億3700万円
(平成16年度〜18年度)
(2)
 
45,000個
1億8400万円
(平成17、18両年度)

1 ADSLの概要

(1) ADSLモデムの概要

 東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」という。)及び西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。)は、アナログ電話回線を使用したブロードバンド通信として、平成12年12月からフレッツADSLを提供しており、20年3月末の加入者契約件数はNTT東日本で約241万件、NTT西日本で約225万件となっている。
 加入者は、フレッツADSLを利用する場合には電話回線を通じてデータを送受信するために、加入者宅内にディジタル信号を変復調する装置(以下「ADSLモデム」という。)を接続しなければならず、そのために加入者はADSLモデムを家電販売店等で購入するか、両会社から購入する又はレンタルを受ける必要がある。
 両会社が加入者に販売又はレンタルしているADSLモデムは、電子回路基板と合成樹脂製の外装部品を組み合わせた構造となっている。そして、両会社は、それぞれ提供するすべての通信速度に対応できる現行機種を19年度に、NTT東日本は207,500個、17億2982万余円、NTT西日本は254,320個、22億3900万余円でメーカーから購入している。

(2) ADSLモデムの再利用

 一方、両会社は、加入者の光サービスへの変更等で不要になったADSLモデムのうち、両会社がレンタルしているADSLモデムを回収して、再利用品であることを表示した上で新規契約者にレンタルしたり、故障交換用として使用したりしている。
 このため、両会社は、回収したADSLモデムを再利用できるか否かを判断するための利活用判断基準や、再利用できる場合に行うクリーニング作業等の業務仕様書を定めており、それに基づいて、変色、汚れ、傷の目視確認、機能確認等を行う利活用認定作業や、利活用が可能であると認定したADSLモデムを加入者が満足できる程度までの清掃を行う機器再生作業等をNTT東日本は16年7月から、NTT西日本は17年9月から外部の会社に委託している。そして、両会社は、19年度に、これらの作業を受託した会社(以下「受託会社」という。)に対してNTT東日本は238,594個、3億9751万余円、NTT西日本は214,425個、3億9324万余円の作業委託費を支払っている。
 また、両会社は、廃棄決定となったADSLモデムの処分を産業廃棄物処理業者に委託しており、19年度にNTT東日本は120,548個、808万余円、NTT西日本は76,630個、565万余円の処分費を支払っている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 次世代ネットワーク等光サービスの普及、拡大とともに、フレッツADSLの加入者総数は減少してきているが、フレッツADSLは、光サービスに比べて安価なサービスでもあり、光サービス未提供エリアを中心に需要があることから、両会社は、引き続きADSLモデムを前記のとおり大量に購入している。
 一方、両会社は、経費の節減など経営の効率化に努めるとともに、環境基本法(平成5年法律第91号)の基本理念にのっとり策定された循環型社会形成推進基本計画(平成15年3月閣議決定)等に沿って、従来から行っていた撤去ケーブル等の再資源化、回収した通信機器の再利用、廃棄物の発生抑制など環境負荷の低減にも取り組んでいる。
 そこで、本院は、NTT東日本の13支店(注1) 及びNTT西日本の17支店(注2) において、経済性等に加え環境保全の観点から、両会社が、経費節減とともに、環境負荷の低減を考慮して、ADSLモデムの回収、再利用を適切に行っているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、受託会社が作成した実績報告書に基づき、19年度に回収したADSLモデムの利活用判断結果を確認するとともに、ADSLモデムが回収、集積される受託会社の作業現場で、廃棄決定となったADSLモデムの現況を調査するなどの方法により検査した。

 NTT東日本の13支店  東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、長野、新潟、宮城、福島、岩手、山形、秋田各支店
 NTT西日本の17支店  大阪、大阪東、京都、滋賀、名古屋、静岡、岐阜、金沢、福井、広島、山口、愛媛、高知、福岡、北九州、熊本、鹿児島各支店

(検査の結果)

 検査したところ、19年度に回収したADSLモデムの個数は331,676個(NTT東日本193,991個、NTT西日本137,685個)で、そのうち再利用した個数は180,428個(同94,863個、同85,565個)、汚損、破損、機能不全などの理由で廃棄した個数は151,248個(同99,128個、同52,120個)となっていたが、廃棄されたものには、電子回路基板の機能に問題がないものの、外装部品が汚損、破損しているため再利用できないと判断されたものが含まれていた。
 しかし、外装部品が汚損、破損しているADSLモデムは、外装部品を新しいものに交換(以下「部品交換」という。)すれば、加入者が満足できる程度まで再生でき、再びレンタル用として使用可能であると認められた。
 したがって、廃棄された151,248個のうち、機能不全であったり、構造が複雑で部品交換が困難であったりして、再生が難しいと判断されたものを除く131,760個(NTT東日本81,566個、NTT西日本50,194個)は、部品交換により再利用できたと認められた。
 なお、受託会社において、廃棄決定された後、作業現場に保管されていた1,999個(同599個、同1,400個)のADSLモデムを調査したところ、中には部品交換を行うまでもなく再利用が可能であると認められるものも見受けられた。
 このように、両会社が経営の効率化に努めて、環境負荷の低減にも取り組んでいる中で、再利用できるADSLモデムを廃棄して、新規購入している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(節減できた購入費等)

 上記のことから、廃棄されたADSLモデム151,248個(NTT東日本99,128個、NTT西日本52,120個)のうち、前記のとおり部品交換により再利用できたと認められた131,760個(同81,566個、同50,194個)について、すべてを再利用していたとすれば、部品交換に要する費用を考慮しても、購入費等をNTT東日本で2億2609万余円、NTT西日本で2億1469万余円節減することができたと認められた。
 なお、前記の事態は、両会社において、18年度以前にも見受けられ、本院がフレッツADSL解約数等を用いて、18年度以前に廃棄された個数のうち再利用できた個数及び節減できた購入費等を推計したところ、廃棄された約201,000個(NTT東日本は16年度から18年度で約121,000個、NTT西日本は17、18両年度で約80,000個)のうち、再利用できた個数は約116,000個(同約71,000個、同約45,000個)、節減できた購入費等は、NTT東日本約2億3700万円、NTT西日本約1億8400万円となる。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、ADSLモデムを再利用できるか否かを判断するための利活用判断基準が明確でなく、受託会社の担当者により異なる判断を下していたこと、クリーニング作業等の業務仕様書において部品交換による再利用が明確になっていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき両会社の本社は、NTT東日本は20年10月から、NTT西日本は同年7月からそれぞれすべての作業現場で部品交換の作業を順次開始させるとともに、同年9月に利活用認定作業における利活用判断基準を明確にする文書を各支店や受託会社に発するなど、判断の均一化を図る体制を整備して、回収したADSLモデムの再利用数を拡大する処置を講じた。