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  • 第4 政府開発援助の無償資金協力及び技術協力における契約入札手続等について

<参考:報告書はこちら>

第4 政府開発援助の無償資金協力及び技術協力における契約入札手続等について


第4 政府開発援助の無償資金協力及び技術協力における契約入札手続等について

要請を受諾した年月日
平成18年6月8日
検査の対象
内閣府本府、警察庁、金融庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、独立行政法人国際協力機構、各府省が所管する公益法人
検査の内容
我が国政府開発援助における技術協力において被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約についての検査要請事項
報告を行った年月日
平成20年10月8日

1 検査の背景及び実施状況

(1) 検査の要請の内容

 会計検査院は、平成18年6月7日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月8日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。

一、会計検査及びその結果の報告を求める事項
 (一) 検査の対象
 内閣府本府、警察庁、金融庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、独立行政法人国際協力機構、各府省が所管する公益法人
 (二) 検査の内容
 我が国政府開発援助における無償資金協力及び技術協力において被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約についての次の各事項
〔1〕  契約の競争性・透明性の向上に向けた我が国援助実施機関の取組の状況
〔2〕  落札率の状況
(予定価格、入札、落札、不落随契等契約の状況)

 また、18年6月15日の参議院決算委員会理事会で、「国会法第105条に基づく会計検査院に対する検査要請(18.6.7)について」として、
〔1〕  技術協力については、我が国援助実施機関が実施する、海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約
〔2〕  ベトナムにおける、ベトナム交通運輸局第18事業管理局(PMU18)が関係する我が国の政府開発援助の両事項が含まれることが確認されて、報告については、19年次及び20年次に行うよう求めることとされた。
 本院は、これを受けて、19年次は、無償資金協力において被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約及びベトナム交通運輸局第18事業管理局(PMU18)が関係する我が国の政府開発援助について検査を実施して、報告することにした。また、20年次は、技術協力において被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約及び我が国援助実施機関が実施する海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約についてそれぞれ検査を実施して、報告することにした。

(2) 前回の会計検査の実施状況

 上記の要請等により実施した19年次の会計検査の結果 については、19年10月17日に、会計検査院長から参議院議長に対して報告した(以下、この報告を「19年報告」という。)。
 そして、19年報告の検査の結果に対する所見において、本院としては、20年次は、技術協力を中心に、内閣府本府、警察庁、金融庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省の各府省庁(以下「13府省庁」という。)、独立行政法人国際協力機構(Japan International Cooperation Agency。以下「JICA」という。)及び各府省が所管する公益法人を対象として引き続き検査を実施して、その検査の結果については、取りまとめが出来次第報告することとした。

(3) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

ア 検査の観点、着眼点及び対象

 本院は、20年次は、13府省庁、JICA及び各府省が所管する公益法人を検査の対象として、前記のとおり、我が国政府開発援助における技術協力において被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約及び我が国援助実施機関が実施する海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等に係る契約について検査した。
 そして、契約の競争性・透明性の向上に向けた我が国援助実施機関の取組の状況については、合規性、経済性、効率性等の観点から、我が国援助実施機関は契約の競争性・透明性を向上させるためにどのような取組を行っているかなどに着眼して検査した。
 また、落札率の状況(予定価格、入札、落札、不落随契等契約の状況)については、合規性、経済性、効率性等の観点から、我が国援助実施機関は契約に当たり会計法令等を遵守して予定価格を設定しているかなどに着眼して検査した。

イ 検査の方法

 本院は、13府省庁及びJICAに対して、技術協力を実施する根拠法令、政府開発援助のうち技術協力に係る15年度から19年度までの予算額及び決算額、該当する契約の有無等について報告を求めた。また、13府省庁に対して、所管する公益法人が補助金、委託費の交付を受けて技術協力を実施した15年度から19年度までの実績等について報告を求めた。一方、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき13府省庁及びJICAから提出された証拠書類等により、上記の契約の状況等について報告内容を確認した。
 そして、本院は、13府省庁、JICA及び各府省が所管する公益法人が15年度から19年度まで(JICAについては独立行政法人化された15年度下半期から19年度まで)に、海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等を行うために締結した契約2,510件を分析した。その内訳は、JICAが締結していた契約2,343件と農林水産省が所管する公益法人である財団法人海外漁業協力財団が締結していた契約167件である。
 上記の契約について、JICA及び財団法人海外漁業協力財団から契約内容に関する調書を徴して、基礎資料の提出を受けるなどして検査した。
 本院は、本件事案の検査において、在庁して関係書類の分析等の検査を行ったほか、84.2人日を要して、外務本省、JICAの本部及び12在外事務所並びに財団法人海外漁業協力財団に対する会計実地検査を行った。

2 検査の結果

(1) 技術協力の実施状況

ア 13府省庁による技術協力

 被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約や13府省庁が実施する海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約は見受けられなかった。

イ JICAによる技術協力

 JICAは、技術協力プロジェクト等において、海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等を実施する契約を締結していた。一方、JICAの予算により被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等に係る契約は見受けられなかった。

ウ 各府省が所管する公益法人による技術協力

 各府省が所管する公益法人のうち、海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約を締結している公益法人は農林水産省が所管する財団法人海外漁業協力財団のみであり、同財団は水産庁から毎年度補助金の交付を受けて、補助事業として技術協力を実施している。一方、同財団の予算により被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約は見受けられなかった。

(2) 契約の競争性・透明性の向上に向けたJICAの取組の状況

ア JICAによる技術協力プロジェクトの実施手順等

 JICAによる技術協力プロジェクトの実施手順は、次図のとおりである。

図 JICAによる技術協力プロジェクトの実施手順

図JICAによる技術協力プロジェクトの実施手順

 JICAは、開発途上国等に供与する目的で、JICA自らの予算により海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等を実施する契約を多数締結している。一方、JICAによる技術協力においては、JICAの予算により被援助国が契約の主体となって施設の建設や資機材の調達等を実施する仕組みになっていないため、被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等に係る契約はないことになる。そして、15年度下半期から19年度までについて検査したところ、そのような契約は見受けられなかった。

イ JICAにおける契約入札手続等

 JICAは、独立行政法人国際協力機構会計規程(平成18年規程(経)第3号。以下「会計規程」という。)により、会計機関の設置、契約の方法、予定価格の設定方法等を定めている。
 JICAにおいて契約を締結する場合は、指名競争契約又は随意契約をする場合を除き、すべて公告して一般競争に付さなければならないとされている。そして、契約の性質又は目的が一般競争に付するに適さないときなどの場合は指名競争入札に付することができるとされており、外国で契約するときなど一定の要件を満たした場合は、随意契約によることができるとされている。
 また、契約を締結しようとするときは、あらかじめ当該契約に係る予定価格を、当該契約事項に関する仕様書、図面、設計書その他の事項に基づき、契約価格の総額について設定しなければならないとされている。そして、随意契約の場合で予定価格が500万円を超えない工事、製造、加工、修理又は物件の購入のときなどは、予定価格の設定を省略することができるとされており、競争入札に付する場合を除き、理事長が予定価格の設定を要しないと認めたものについても、予定価格の設定を省略することができるとされている。
 さらに、特例として、海外の会計機関において、所在国の法令、慣習等により会計規程により難い事情がある場合は、理事長の指定により、又は理事長の承認を受けて会計規程と異なる処理をすることができるとされている。
 なお、JICAは、会計規程等を改正して、20年1月1日から、随意契約の場合で予定価格の設定を省略できる契約を、250万円を超えない工事又は製造をさせるとき、160万円を超えない財産を買い入れるときなどに改めた。

ウ 契約の競争性・透明性の向上に向けた取組の状況

(ア) 見積競争方式の導入

 現地調達においては、在外事務所長が当該国の現地法人と契約を締結することになる。しかし、JICAによると、国によっては入札の方法が異なっていたり、入札という考え方自体が商慣習として存在していなかったりするなどの事情があり、開発途上国における調達環境等は我が国と大きく異なっているとしている。そのため、すべての在外事務所で一律に一般競争入札等を行うことが困難なことから、随意契約にせざるを得ない場合が多いが、そのような場合でも可能な限り価格競争性を高めた方法を採用するように努めることとしている。そして、16年1月に、見積競争方式が導入された。見積競争方式とは、見積依頼書において価格競争であることを明示するとともに、見積書提出期限を提示して、見積書提出期限後に見積書を一斉開封する方式であると定義している。見積競争方式には見積提出者の選定方法の違いにより、後記の契約競争参加有資格者を対象に、ホームページ、掲示等の方法により公告して見積提出者を募集する一般見積競争と、JICAにおいて複数者を見積提出者として指名する指名見積競争の二つの方法がある。このうち、指名見積競争の適用範囲は、在外事務所における機材調達に係る随意契約案件で、指名見積競争を行うことが可能なときなどとしている。
 JICAは、指名見積競争が入札会を省略するものであることから随意契約に分類しているが、実質的には競争入札と同等の効果があると説明している。

(イ) 調達研修会等の実施

 JICA本部は、18年12月に、調達業務の更なる強化とコンプライアンスの保持やサービスの向上を目指して、在外事務所からの入札等に関する質問に答えられる体制を調達部内に整えた。そして、本部は、メキシコとケニアに設置された地域支援事務所と共催で域内の在外事務所の職員や現地採用職員を対象にした調達研修会を開催して、調達情報の共有化を図るなどしている。

(ウ) 業者登録簿の整備

 JICAが15年10月から19年3月までの中期目標を達成するために定めた独立行政法人国際協力機構中期計画によると、調達業務に関して、一般競争入札を既に導入済みの国内に加えて、現地商慣習の異なる在外事務所においても、複数業者から見積りを徴して、価格競争を原則とすることなどにより、機材の調達業務の透明化・適正化に努めること、引き続きホームページを通じて公示、入札結果等の調達関連情報を迅速に公表して、透明性の確保を図ることなどが記述されている。
 JICA本部は、本邦で資機材の調達等を行う際に、予定価格が500万円を超える場合は、原則として一般競争入札を行っており、その入札に参加を希望する者は、JICAに契約競争参加者資格登録を行わなければならないとしている。
 また、JICA本部は、16年10月に、在外事務所が資機材の調達等を行う際は、随意契約を行う場合であっても、より競争的な方法を採用するように内規を定めて、これに基づき契約を行わせることとしたため、在外事務所は「機材調達に係る内規」を定めている。
 しかし、同内規に基づき、業者登録制度を設けることとしているのに、業者登録簿を整備して業者登録を行っていた在外事務所は、全55在外事務所のうち約3割に相当する17在外事務所となっていた。

(エ) 入札関連情報等の公表

 JICAは、本邦調達による海外向けの資機材の調達等については、一般競争入札を実施する案件の入札説明書を機材仕様明細書とともに公示しており、同じ情報をホームページでも公表している。さらに、18年度からは、競争性を高める観点から、半期ごとに「海外向け資機材本邦調達(一般競争入札案件)」の実施予定案件を公表している。
 一方、現地調達については、13年9月から、予定価格1000万円以上の資機材を価格競争により調達しようとする場合は、競争性の確保等の観点から、調達案件の概要を事前に公表している。
 また、JICAは、他の契約の予定価格が類推されるおそれがあるとして、予定価格を公表してこなかったが、随意契約の見直し計画の一環として、20年4月から、本邦調達のうち競争に付した案件及び一部の随意契約案件について、他の契約の予定価格が類推されるおそれがある場合等を除き、同年1月分までさかのぼり、契約締結後72日以内に予定価格を公表している。また、現地調達のうち競争に付した案件及び一部の随意契約案件について、同様に同年同月分までさかのぼり、各四半期ごとに取りまとめて、各四半期後72日以内に予定価格を公表している。

(3) JICAにおける落札率の状況(予定価格、入札、落札、不落随契等契約の状況)

 JICAは、会計規程により、200万円を超えない契約をするときなどを除き、契約書を作成しなければならないとしている。JICAが海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等のために締結した契約のうち、200万円を超える契約件数及び契約金額は、表1のとおりとなっている。

表1 海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約件数、契約金額等
(単位:件、円)
年度
(平成)
施設の建設(現地調達)
資機材の調達等(本邦調達+現地調達)
件数
(A)
件数
割合
(A)/(E)
金額
(B)
金額
割合
(B)/(F)
件数
(C)
件数
割合
(C)/(E)
金額
(D)
金額
割合
(D)/(F)
件数
(E)
金額
(F)
15
22
5.1%
260,384,303
6.3%
405
94.8%
3,841,566,308
93.6%
427
4,101,950,611
16
30
6.3%
192,059,717
3.7%
446
93.6%
4,922,283,183
96.2%
476
5,114,342,900
17
11
2.3%
133,936,388
2.7%
467
97.6%
4,658,293,268
97.2%
478
4,792,229,656
18
20
3.2%
198,164,957
4.0%
604
96.7%
4,731,565,176
95.9%
624
4,929,730,133
19
16
4.7%
342,431,030
11.1%
322
95.2%
2,728,383,347
88.8%
338
3,070,814,377
99
4.2%
1,126,976,395
5.1%
2,244
95.7%
20,882,091,282
94.8%
2,343
22,009,067,677

 19年度における施設の建設と資機材の調達等の契約金額の合計額は30億7081万余円であるが、契約件数、契約金額ともに資機材の調達等が大部分を占めている。
 表1の海外向けの資機材の調達等の契約2,244件を現地調達と本邦調達に分けると、表2のとおりとなっている。

表2 現地調達、本邦調達別の海外向けの資機材の調達等の契約件数、契約金額等
(単位:件、円)
年度
(平成)
本邦調達
現地調達
件数
(A)
件数
割合
(A)/(E)
金額
(B)
金額
割合
(B)/(F)
件数
(C)
件数
割合
(C)/(E)
金額
(D)
金額
割合
(D)/(F)
件数
(E)
金額
(F)
15
100
24.6%
1,680,141,311
43.7%
305
75.3%
2,161,424,997
56.2%
405
3,841,566,308
16
103
23.0%
2,252,930,233
45.7%
343
76.9%
2,669,352,950
54.2%
446
4,922,283,183
17
82
17.5%
1,777,047,242
38.1%
385
82.4%
2,881,246,026
61.8%
467
4,658,293,268
18
63
10.4%
801,076,950
16.9%
541
89.5%
3,930,488,226
83.0%
604
4,731,565,176
19
49
15.2%
786,936,650
28.8%
273
84.7%
1,941,446,697
71.1%
322
2,728,383,347
397
17.6%
7,298,132,386
34.9%
1,847
82.3%
13,583,958,896
65.0%
2,244
20,882,091,282

ア 予定価格

 JICAが15年度下半期から19年度までの間に締結した海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約計2,343件について、予定価格を設定していたかどうか検査したところ、表3のとおりとなっていた。

表3 予定価格の設定状況
(単位:件)
予定価格の設定
施設の建設
資機材の調達等
現地調達
本邦調達
現地調達
件数
割合
件数
割合
件数
割合
件数
割合
78
78.7%
318
80.1%
1,039
56.2%
1,435
61.2%
20
20.2%
75
18.8%
783
42.3%
878
37.4%
 
省略可
20
20.2%
75
18.8%
751
40.6%
846
36.1%
未設定
0
0
32
1.7%
32
1.3%
設定状況不明
0
4
1.0%
18
0.9%
22
0.9%
書類所在不明
1
1.0%
0
7
0.3%
8
0.3%
99
100.0%
397
100.0%
1,847
100.0%
2,343
100.0%

 現地調達による資機材の調達等に係る契約は1,847件のうち、1,039件(56.2%)は予定価格が設定されており、751件は予定価格の設定が省略できるものであったが、32件は現地の商慣習等の理由により予定価格が設定されておらず、25件は予定価格の設定状況が確認できないものなどであった。そして、予定価格が設定されていなかった32件の中には、会計規程に基づく事務手続をとることなく予定価格の設定を省略しているものが見受けられた。これは、在外事務所の特殊事情を考慮しても適切とは認められない。
 JICAは、前記のとおり、会計規程において、理事長の承認を受けるなどの事務手続をとることにより予定価格を省略したり、会計規程と異なる処理をしたりすることが可能であるので、会計規程の特例等を機動的、弾力的に運用するなどして事務処理を適切に行う必要があると認められる。

(ア) 施設の建設の契約に係る予定価格

 施設の建設の契約に係る予定価格の算定方法が在外事務所によって区々となっており、被援助国の事業実施機関に相当程度の能力があっても、コンサルタントと契約して設計、積算を行わせる在外事務所がある一方、コンサルタントと契約することなく、自らが予定価格を算定している在外事務所があった。
 在外事務所の調達に携わる職員や現地採用職員の多くは、技術的な知識を有していないため、設計や積算の妥当性を確認したり、適正な予定価格を作成したりする在外事務所の体制は、必ずしも十分でないと思料された。

(イ) 資機材の調達等の契約に係る予定価格

 JICA本部で海外向けの資機材の調達等を行う場合は、JICA調達部が予定価格を設定している。一方、在外事務所で資機材の調達等を行う場合は、在外事務所の担当者が予定価格を設定している場合が多い。
 海外向けの資機材の調達等の契約に係る予定価格の設定は、おおむね適正に行われていると思料されるが、会計規程に基づかず予定価格を省略していたことのほか、在外事務所の中には、会計規程等に基づき予定価格の範囲内で契約を締結することとされているにもかかわらず、予定価格に対する認識が十分でなかったため、予定価格を上回る金額で契約を締結していた事態が見受けられた。

イ 入札

 JICAが15年度下半期から19年度までに締結した海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約について、競争契約、随意契約等の契約方式別に件数を区分して整理すると、表4のとおりとなっている。

表4 契約方式別の海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約件数等
(単位:件)
契約方式
施設の建設
資機材の調達等
合計
現地調達
本邦調達
現地調達
本邦調達
現地調達
件数
割合
件数
割合
件数
割合
件数
割合
件数
割合
件数
割合
件数
割合
競争契約
一般競争
26
26.2%
145
36.5%
66
3.5%
211
9.4%
145
36.5%
92
4.7%
237
10.1%
指名競争
26
26.2%
0
123
6.6%
123
5.4%
0
149
7.6%
149
6.3%
計(A)
52
52.5%
145
36.5%
189
10.2%
334
14.8%
145
36.5%
241
12.3%
386
16.4%
随意契約
競争性あり
一般見積競争
0
53
13.3%
0
53
2.3%
53
13.3%
0
53
2.2%
指名見積競争
13
13.1%
0
548
29.6%
548
24.4%
0
561
28.8%
561
23.9%
計(B)
13
13.1%
53
13.3%
548
29.6%
601
26.7%
53
13.3%
561
28.8%
614
26.2%
競争性なし
見積合わせ 注(1)
19
19.1%
0
786
42.5%
786
35.0%
0
805
41.3%
805
34.3%
特命随契 注(2)
15
15.1%
199
50.1%
324
17.5%
523
23.3%
199
50.1%
339
17.4%
538
22.9%
34
34.3%
199
50.1%
1,110
60.0%
1,309
58.3%
199
50.1%
1,144
58.7%
1,343
57.3%
合計
99
100.0%
397
100.0%
1,847
100.0%
2,244
100.0%
397
100.0%
1,946
100.0%
2,343
100.0%
 
うち競争性あり(A)+(B)
65
65.6%
198
49.8%
737
39.9%
935
41.6%
198
49.8%
802
41.2%
1,000
42.6%
注(1)
 2者以上から見積書を徴して、その内容を比較した上で契約の相手方を決定する調達方法
注(2)
 特定の者と契約しない限り契約の目的を達することができないなどの理由で、その特定の者と契約をする調達方法

 本邦調達においては397件のうち198件(49.8%)が、現地調達においては1,946件中802件(41.2%)が競争性があるとされる契約であった。しかし、一般競争入札が実施されたのは、本邦調達においては397件中145件(36.5%)であったが、現地調達においては92件(4.7%)と極めて少なかった。
 本邦調達における資機材の調達等397件のうち、上記の198件を除く199件(50.1%)はすべて特命随契であった。また、現地調達における施設の建設99件のうち見積合わせによるものは19件(19.1%)、特命随契によるものは15件(15.1%)であり、資機材の調達等1,847件のうち見積合わせによるものは786件(42.5%)、特命随契によるものは324件(17.5%)であって、本邦で資機材を調達する場合に特命随契の比率が高くなっている。これについて、JICAは、本邦調達においては、特注品や代用品がない資機材を調達する場合が多いためであるとしている。
 入札から契約に至るまでの状況は、表5のとおりとなっている。

入札・契約区分
年度(平成)
契約割合
15
16
17
18
19
第1回入札会
110
95
70
65
57
397
 
落札
当初〔1〕
93
81
50
41
38
303
12.9%
再度〔2〕
2
3
5
5
3
18
0.7%
再々度〔3〕
2
1
3
1
0
7
0.2%
4回目〔4〕
2
0
0
0
0
2
0.0%
不調
11
10
12
18
16
67
 
不落随契〔5〕
10
9
5
13
10
47
2.0%
キャンセル
1
0
0
0
2
3
随意契約へ
0
0
3
4
1
8
第2回入札会
0
1
4
1
3
9
 
落札
当初〔6〕
0
1
4
1
3
9
0.3%
落札契約 計(〔1〕 +〔2〕 +〔3〕 +〔4〕 +〔6〕 )
99
86
62
48
44
339
14.4%
随意契約〔7〕
318
381
411
563
284
1,957
83.5%
契約 合計(〔1〕 +〔2〕 +〔3〕 +〔4〕 +〔5〕 +〔6〕 +〔7〕 )
427
476
478
624
338
2,343
100.0%

ウ 落札

 JICAが15年度下半期から19年度までに入札により落札者を決定した海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約339件(表5 参照)のうち、予定価格を設定していた323件の契約額の予定価格に対する割合である落札率は、表6のとおりとなっている。

表6 落札率等の状況
(単位:件)
調達区分
年度(平成)
施設の建設
資機材の調達等
入札件数
落札件数
左のうち予定価格あり
落札率
入札件数
落札件数
左のうち予定価格あり
落札率
入札件数
落札件数
左のうち予定価格あり
平均落札率
最低
平均
最高
最低
平均
最高
本邦調達
15
51
45
45
44.24%
77.89%
98.35%
51
45
45
77.89%
16
31
27
27
57.36%
84.86%
99.60%
31
27
27
84.86%
17
31
28
28
62.37%
90.45%
99.90%
31
28
28
90.45%
18
16
13
13
47.51%
83.85%
99.99%
16
13
13
83.85%
19
20
17
17
53.15%
86.23%
99.99%
20
17
17
86.23%
149
130
130
44.24%
83.73%
99.99%
149
130
130
83.73%
現地調達
15
12
11
10
12.23%
86.59%
105.11%
47
43
41
69.49%
91.99%
100.00%
59
54
51
90.93%
16
17
16
16
67.63%
94.41%
100.00%
48
43
30
61.37%
85.17%
100.00%
65
59
46
88.38%
17
7
5
5
56.01%
85.44%
97.40%
36
29
29
53.98%
92.88%
100.00%
43
34
34
91.78%
18
13
6
6
91.57%
95.70%
99.93%
37
29
29
68.51%
91.00%
100.00%
50
35
35
91.81%
19
4
1
1
99.86%
99.86%
99.86%
36
26
26
27.10%
89.73%
100.00%
40
27
27
90.11%
53
39
38
12.23%
91.52%
105.11%
204
170
155
27.10%
90.27%
100.00%
257
209
193
90.52%
合計
15
12
11
10
12.23%
86.59%
105.11%
98
88
86
44.24%
84.61%
100.00%
110
99
96
84.82%
16
17
16
16
67.63%
94.41%
100.00%
79
70
57
57.36%
85.02%
100.00%
96
86
73
87.08%
17
7
5
5
56.01%
85.44%
97.40%
67
57
57
53.98%
91.69%
100.00%
74
62
62
91.18%
18
13
6
6
91.57%
95.70%
99.93%
53
42
42
47.51%
88.79%
100.00%
66
48
48
89.65%
19
4
1
1
99.86%
99.86%
99.86%
56
43
43
27.10%
88.35%
100.00%
60
44
44
88.61%
53
39
38
12.23%
91.52%
105.11%
353
300
285
27.10%
87.29%
100.00%
406
339
323
87.79%

 本邦調達における資機材の調達等の契約(落札件数130件)の平均落札率83.73%は、現地調達における資機材の調達等の契約(落札件数170件のうち予定価格を設定していた155件)の平均落札率90.27%と比べると約6ポイント低くなっており、また、19年報告の無償資金協力のうちの一般プロジェクト無償における資機材の調達等の契約の平均落札率85.83%と大きな差はなかった。
 また、現地調達における施設の建設の契約(落札件数39件のうち予定価格を設定していた38件)の平均落札率91.52%は、現地調達における資機材の調達等の平均落札率90.27%と比べると1ポイント程度の差となっていた。これは、19年報告の無償資金協力のうちの一般プロジェクト無償において、施設の建設の契約の平均落札率が96.81%、資機材の調達等の契約の平均落札率が85.83%で、両者の間に10ポイント以上の開きがあったこととは異なっている。
 落札率別の落札件数は、表7のとおりである。

表7 落札率別の落札件数
〔1〕 現地調達(施設の建設)
(単位:件)
年度
(平成)
100%超
100%
99%以上100%未満
98%以上99%未満
97%以上98%未満
96%以上97%未満
95%以上96%未満
90%以上95%未満
80%以上90%未満
70%以上80%未満
60%以上70%未満
60%未満
15
1
0
3
0
0
0
0
3
2
0
0
1
10
16
0
8
0
1
0
0
1
4
1
0
1
0
16
17
0
0
0
0
1
1
0
1
1
0
0
1
5
18
0
0
1
1
0
0
1
3
0
0
0
0
6
19
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
8
5
2
1
1
2
11
4
0
1
2
38
割合
2.6%
21.0%
13.1%
5.2%
2.6%
2.6%
5.2%
28.9%
10.5%
2.6%
5.2%
100.0%
累計
1
9
14
16
17
18
20
31
35
35
36
38
累計割合
2.6%
23.6%
36.8%
42.1%
44.7%
47.3%
52.6%
81.5%
92.1%
92.1%
94.7%
100.0%
〔2〕 本邦調達(資機材の調達等)
(単位:件)
年度
(平成)
100%超
100%
99%以上100%未満
98%以上99%未満
97%以上98%未満
96%以上97%未満
95%以上96%未満
90%以上95%未満
80%以上90%未満
70%以上80%未満
60%以上70%未満
60%未満
15
0
0
0
1
1
0
3
7
7
15
6
5
45
16
0
0
5
2
0
0
1
4
5
6
3
1
27
17
0
0
6
2
2
3
0
5
6
2
2
0
28
18
0
0
3
1
1
1
0
0
2
3
0
2
13
19
0
0
4
0
0
0
0
4
4
3
1
1
17
0
0
18
6
4
4
4
20
24
29
12
9
130
割合
13.8%
4.6%
3.0%
3.0%
3.0%
15.3%
18.4%
22.3%
9.2%
6.9%
100.0%
累計
0
0
18
24
28
32
36
56
80
109
121
130
累計割合
13.8%
18.4%
21.5%
24.6%
27.6%
43.0%
61.5%
83.8%
93.0%
100.0%
〔3〕 現地調達(資機材の調達等)
(単位:件)
年度
(平成)
100%超
100%
99%以上100%未満
98%以上99%未満
97%以上98%未満
96%以上97%未満
95%以上96%未満
90%以上95%未満
80%以上90%未満
70%以上80%未満
60%以上70%未満
60%未満
15
0
4
3
5
3
0
4
10
9
2
1
0
41
16
0
2
2
3
0
3
0
3
7
4
6
0
30
17
0
8
3
3
0
1
0
8
4
0
1
1
29
18
0
2
4
4
0
3
2
2
8
3
1
0
29
19
0
2
3
1
7
0
0
4
6
2
0
1
26
0
18
15
16
10
7
6
27
34
11
9
2
155
割合
11.6%
9.6%
10.3%
6.4%
4.5%
3.8%
17.4%
21.9%
7.0%
5.8%
1.2%
100.0%
累計
0
18
33
49
59
66
72
99
133
144
153
155
累計割合
11.6%
21.2%
31.6%
38.0%
42.5%
46.4%
63.8%
85.8%
92.9%
98.7%
100.0%

 現地調達における施設の建設や資機材の調達等の落札率は、表6のとおり、本邦調達における資機材の調達等と比べて高くなっている。特に、予定価格を下回る入札がなく価格交渉も不調で契約額が予定価格を上回っている契約は、表7のとおり、現地調達の施設の建設において38件中1件(2.6%)、また、予定価格と落札価格が同額である落札率100%の契約は、現地調達の施設の建設において38件中8件(21.0%)、資機材の調達等において155件中18件(11.6%)あり、1件もなかった本邦調達における資機材の調達等とは対照的である。
 落札に至った入札における入札参加者数別の落札率について、施設の建設と資機材の調達等に分けて整理すると、表8のとおりとなっている。

表8 落札に至った入札における入札参加者数別の落札率
〔1〕 全体
(単位:件、者)
調達区分
年度
(平成)
落札件数
(予定価格あり)
1者
2者
3者
4者
5者
6者
7〜10者
平均
本邦調達
15
45
2
3
7
8
9
7
9
5.0
16
27
6
2
5
1
3
3
7
4.1
17
28
8
6
7
5
0
1
1
2.6
18
13
5
2
1
1
3
1
0
2.8
19
17
2
4
5
3
1
1
1
3.2
130
23
17
25
18
16
13
18
3.8
割合
100.0%
17.6%
13.0%
19.2%
13.8%
12.3%
10.0%
13.8%
累計
23
40
65
83
99
112
130
累計割合
17.6%
30.7%
50.0%
63.8%
76.1%
86.1%
100.0%
平均落札率
94.25%
84.97%
86.36%
83.35%
84.22%
72.60%
73.45%
現地調達
15
51
6
19
10
8
5
0
3
3.0
16
46
2
11
13
15
3
1
1
3.2
17
34
1
11
15
3
4
0
0
2.9
18
35
8
12
5
5
3
1
1
2.7
19
27
6
6
2
7
4
1
1
3.1
193
23
59
45
38
19
3
6
3.0
割合
100.0%
11.9%
30.5%
23.3%
19.6%
9.8%
1.5%
3.1%
累計
23
82
127
165
184
187
193
累計割合
11.9%
42.4%
65.8%
85.4%
95.3%
96.8%
100.0%
平均落札率
94.93%
91.51%
90.38%
90.33%
85.24%
88.92%
83.59%
合計
15
96
8
22
17
16
14
7
12
3.9
16
73
8
13
18
16
6
4
8
3.6
17
62
9
17
22
8
4
1
1
2.8
18
48
13
14
6
6
6
2
1
2.7
19
44
8
10
7
10
5
2
2
3.1
323
46
76
70
56
35
16
24
3.3
割合
100.0%
14.2%
23.5%
21.6%
17.3%
10.8%
4.9%
7.4%
累計
46
122
192
248
283
299
323
累計割合
14.2%
37.7%
59.4%
76.7%
87.6%
92.5%
100.0%
平均落札率
94.59%
90.05%
88.94%
88.09%
84.78%
75.66%
75.99%
〔2〕 現地調達(施設の建設)
(単位:件、者)
調達区分
年度
(平成)
落札件数
(予定価格あり)
1者
2者
3者
4者
5者
6者
7〜10者
平均
現地調達
15
10
1
1
1
2
4
0
1
4.3
16
16
0
1
7
6
2
0
0
3.5
17
5
0
0
3
2
0
0
0
3.4
18
6
0
3
1
2
0
0
0
2.8
19
1
1
0
0
0
0
0
0
1.0
38
2
5
12
12
6
0
1
3.5
割合
100.0%
5.2%
13.1%
31.5%
31.5%
15.7%
2.6%
累計
2
7
19
31
37
37
38
累計割合
5.2%
18.4%
50.0%
81.5%
97.3%
97.3%
100.0%
平均落札率
99.87%
95.40%
92.55%
94.79%
75.48%
99.97%
〔3〕 資機材の調達等
(単位:件、者)
調達区分
年度
(平成)
落札件数
(予定価格あり)
1者
2者
3者
4者
5者
6者
7〜10者
平均
本邦調達
15
45
2
3
7
8
9
7
9
5.0
16
27
6
2
5
1
3
3
7
4.1
17
28
8
6
7
5
0
1
1
2.6
18
13
5
2
1
1
3
1
0
2.8
19
17
2
4
5
3
1
1
1
3.2
130
23
17
25
18
16
13
18
3.8
割合
100.0%
17.6%
13.0%
19.2%
13.8%
12.3%
10.0%
13.8%
累計
23
40
65
83
99
112
130
累計割合
17.6%
30.7%
50.0%
63.8%
76.1%
86.1%
100.0%
平均落札率
94.25%
84.97%
86.36%
83.35%
84.22%
72.60%
73.45%
現地調達
15
41
5
18
9
6
1
0
2
2.7
16
30
2
10
6
9
1
1
1
3.1
17
29
1
11
12
1
4
0
0
2.8
18
29
8
9
4
3
3
1
1
2.6
19
26
5
6
2
7
4
1
1
3.2
155
21
54
33
26
13
3
5
2.9
割合
100.0%
13.5%
34.8%
21.2%
16.7%
8.3%
1.9%
3.2%
累計
21
75
108
134
147
150
155
累計割合
13.5%
48.3%
69.6%
86.4%
94.8%
96.7%
100.0%
平均落札率
94.46%
91.15%
89.59%
88.28%
89.75%
88.92%
80.31%
合計
15
86
7
21
16
14
10
7
11
3.9
16
57
8
12
11
10
4
4
8
3.6
17
57
9
17
19
6
4
1
1
2.7
18
42
13
11
5
4
6
2
1
2.7
19
43
7
10
7
10
5
2
2
3.2
285
44
71
58
44
29
16
23
3.3
割合
100.0%
15.4%
24.9%
20.3%
15.4%
10.1%
5.6%
8.0%
累計
44
115
173
217
246
262
285
累計割合
15.4%
40.3%
60.7%
76.1%
86.3%
91.9%
100.0%
平均落札率
94.35%
89.67%
88.20%
86.26%
86.70%
75.66%
74.94%

 資機材の調達等に係る落札に至った入札における入札参加者数をみると、本邦調達にあっては平均3.8者であり、現地調達にあっては平均2.9者であった。

エ 不落随契

 JICAは、会計規程において、再度の入札に付しても落札者がいないときなどの場合に価格交渉によって契約相手を決定するいわゆる不落随契を認めている。
 落札契約の件数と不落随契の件数は、表9のとおり、資機材の調達等に係る契約で一般競争入札又は指名競争入札により契約を締結した334件のうち、不落随契になったものが本邦調達においては15件、現地調達においては19件、計34件あり、全体の10.1%を占めていた。また、現地調達における施設の建設で一般競争入札又は指名競争入札により契約を締結した52件のうち、不落随契になったものが13件あり、全体の25.0%を占めていた。

表9 落札契約と不落随契の件数及び割合
(単位:件)
調達・契約区分
施設の建設
資機材の調達等
合計
割合
年度(平成)
割合
年度(平成)
割合
15
16
17
18
19
15
16
17
18
19
本邦調達
落札契約
45
27
28
13
17
130
89.6%
130
89.6%
不落随契
5
3
2
2
3
15
10.3%
15
10.3%
50
30
30
15
20
145
100.0%
145
100.0%
現地調達
落札契約
11
16
5
6
1
39
75.0%
43
43
29
29
26
170
89.9%
209
86.7%
不落随契
1
1
2
7
2
13
25.0%
4
5
1
4
5
19
10.0%
32
13.2%
12
17
7
13
3
52
100.0%
47
48
30
33
31
189
100.0%
241
100.0%
合計
落札契約
11
16
5
6
1
39
75.0%
88
70
57
42
43
300
89.8%
339
87.8%
不落随契
1
1
2
7
2
13
25.0%
9
8
3
6
8
34
10.1%
47
12.1%
12
17
7
13
3
52
100.0%
97
78
60
48
51
334
100.0%
386
100.0%

オ 随意契約

(ア) 随意契約の状況

 分析の対象とした2,343契約のうち、83.5%に当たる1,957件は随意契約によるものであり、これらを契約区分別にみると、表10のとおりとなっている。

表10 契約区分別の状況
(単位:件)
契約区分
施設の建設
資機材の調達等
現地調達
本邦調達
現地調達
件数
割合
件数
割合
件数
割合
件数
割合
見積競争
一般見積競争
53
13.3%
53
2.2%
指名見積競争
13
13.1%
548
29.6%
561
23.9%
13
13.1%
53
13.3%
548
29.6%
614
26.2%
見積合わせ
19
19.1%
0
786
42.5%
805
34.3%
特命随契
15
15.1%
199
50.1%
324
17.5%
538
22.9%
合計
47
47.4%
252
63.4%
1,658
89.7%
1,957
83.5%
(参考)契約数
99
100.0%
397
100.0%
1,847
100.0%
2,343
100.0%

(イ) 見積競争の状況

 JICAは、可能な限り価格競争性を高めた方法を採用するよう努めているとしている。その結果、表10のとおり、分析の対象とした2,343契約のうち614件(26.2%)が見積競争によるものであった。
 施設の建設に係る契約及び資機材の調達等に係る契約について、本邦調達(資機材の調達等)と現地調達(施設の建設及び資機材の調達等)に分けて見積競争における落札率をみると、表11のとおりとなっている。

調達区分
年度(平成)
施設の建設
資機材の調達等
見積依頼件数
契約件数
左のうち予定価格あり
落札率
見積依頼件数
契約件数
左のうち予定価格あり
落札率
見積依頼件数
契約件数
左のうち予定価格あり
平均落札率
最低
平均
最高
最低
平均
最高
本邦調達(一般見積競争)
15
2
2
0
2
2
0
16
16
14
0
16
14
0
17
7
7
0
7
7
0
18
21
21
0
21
21
0
19
9
9
1
99.97%
99.97%
99.97%
9
9
1
99.97%
55
53
1
99.97%
99.97%
99.97%
55
53
1
99.97%
現地調達(指名見積競争)
15
2
2
2
98.84%
99.42%
100.00%
33
33
23
83.03%
96.60%
111.23%
35
35
25
96.83%
16
2
2
1
99.96%
99.96%
99.96%
67
67
42
64.67%
91.44%
100.00%
69
69
43
91.64%
17
2
2
2
86.80%
93.40%
100.00%
149
148
101
39.63%
91.94%
102.77%
151
150
103
91.97%
18
1
1
0
187
180
117
50.07%
90.51%
120.85%
188
181
117
90.51%
19
6
6
5
97.80%
98.35%
99.21%
121
120
93
59.63%
91.93%
100.00%
127
126
98
92.26%
13
13
10
86.80%
97.73%
100.00%
557
548
376
39.63%
91.72%
120.85%
570
561
386
91.88%
合計
15
2
2
2
98.84%
99.42%
100.00%
35
35
23
83.03%
96.60%
111.23%
37
37
25
96.83%
16
2
2
1
99.96%
99.96%
99.96%
83
81
42
64.67%
91.44%
100.00%
85
83
43
91.64%
17
2
2
2
86.80%
93.40%
100.00%
156
155
101
39.63%
91.94%
102.77%
158
157
103
91.97%
18
1
1
0
208
201
117
50.07%
90.51%
120.85%
209
202
117
90.51%
19
6
6
5
97.80%
98.35%
99.21%
130
129
94
59.63%
92.02%
100.00%
136
135
99
92.34%
13
13
10
86.80%
97.73%
100.00%
612
601
377
39.63%
91.74%
120.85%
625
614
387
91.90%

 施設の建設に係る契約において、指名見積競争は件数が少なく単純な比較は困難であるが、予定価格が設定されていた10件の平均落札率97.73%は、入札が行われた場合の平均落札率(前掲表6 参照)91.52%を6ポイント以上上回っていた。一方、資機材の調達等に係る契約のうち現地調達に係るものにおいて、指名見積競争が行われて予定価格が設定されていた376件の平均落札率91.72%は、入札が行われた場合の平均落札率90.27%を若干上回っていたが、大きな差は見受けられなかった。

(ウ) 見積合わせ

 見積合わせは、表4のとおり、分析の対象とした契約2,343件のうち805件(34.3%)あり、このうち、予定価格を設定していた326件の落札率をみたところ、表12のとおり、見積合わせの平均落札率は96.27%で、前記の入札が行われた場合の平均落札率87.79%(表6 参照)や見積競争の平均落札率91.90%(表11 参照)に比べて高くなっていた。

表12 見積合わせの落札率の状況
(単位:件)
調達区分
年度(平成)
施設の建設
資機材の調達等
契約件数
左のうち予定価格あり
落札率
契約件数
左のうち予定価格あり
落札率
契約件数
左のうち予定価格あり
平均落札率
最低
平均
最高
最低
平均
最高
本邦調達
15
0
0
0
0
16
0
0
0
0
17
0
0
0
0
18
0
0
0
0
19
0
0
0
0
0
0
0
0
現地調達
15
5
2
77.87%
88.93%
100.00%
172
62
40.59%
96.19%
100.00%
177
64
95.96%
16
5
2
100.00%
100.00%
100.00%
162
49
80.00%
97.63%
100.00%
167
51
97.73%
17
1
0
145
59
34.62%
95.03%
100.00%
146
59
95.03%
18
4
1
82.55%
82.55%
82.55%
230
107
66.62%
97.24%
100.00%
234
108
97.10%
19
4
3
97.76%
98.59%
99.12%
77
41
69.49%
94.36%
100.00%
81
44
94.65%
19
8
77.87%
94.52%
100.00%
786
318
34.62%
96.31%
100.00%
805
326
96.27%
合計
15
5
2
77.87%
88.93%
100.00%
172
62
40.59%
96.19%
100.00%
177
64
95.96%
16
5
2
100.00%
100.00%
100.00%
162
49
80.00%
97.63%
100.00%
167
51
97.73%
17
1
0
145
59
34.62%
95.03%
100.00%
146
59
95.03%
18
4
1
82.55%
82.55%
82.55%
230
107
66.62%
97.24%
100.00%
234
108
97.10%
19
4
3
97.76%
98.59%
99.12%
77
41
69.49%
94.36%
100.00%
81
44
94.65%
19
8
77.87%
94.52%
100.00%
786
318
34.62%
96.31%
100.00%
805
326
96.27%

(エ) 特命随契

 特命随契は、表4のとおり、分析の対象とした契約2,343件のうち538件(22.9%)あり、このうち、予定価格を設定していた354件の落札率をみたところ、表13のとおり、平均落札率は98.72%で、上記の見積合わせの平均落札率より2ポイント程度高くなっていた。また、本邦調達(資機材の調達等)199件は、調達先が特定の国際機関に限定されていたり、過去の無償資金協力事業等により調達された機材のフォローアップとして部品等を調達するものであって調達先が限定されていたりするものであった。

表13 特命随契の落札率の状況
(単位:件)
調達区分
年度(平成)
施設の建設
資機材の調達等
契約件数
左のうち予定価格あり
落札率
契約件数
左のうち予定価格あり
落札率
契約件数
左のうち予定価格あり
平均落札率
最低
平均
最高
最低
平均
最高
本邦調達
15
48
44
91.63%
99.13%
100.00%
48
44
99.13%
16
59
55
96.51%
99.90%
100.00%
59
55
99.90%
17
45
37
93.66%
99.82%
100.00%
45
37
99.82%
18
27
20
96.51%
99.50%
100.00%
27
20
99.50%
19
20
16
98.56%
99.91%
100.00%
20
16
99.91%
199
172
91.63%
99.64%
100.00%
199
172
99.64%
現地調達
15
3
2
100.00%
100.00%
100.00%
53
23
92.40%
100.40%
120.68%
56
25
100.37%
16
6
2
100.00%
100.00%
100.00%
66
33
90.38%
98.93%
100.00%
72
35
98.99%
17
1
0
62
30
83.34%
97.10%
100.00%
63
30
97.10%
18
2
2
93.22%
96.61%
100.00%
98
61
63.27%
97.16%
100.00%
100
63
97.15%
19
3
3
98.17%
99.39%
100.00%
45
26
78.66%
96.25%
100.00%
48
29
96.57%
15
9
93.22%
99.04%
100.00%
324
173
63.27%
97.78%
120.68%
339
182
97.84%
合計
15
3
2
100.00%
100.00%
100.00%
101
67
91.63%
99.56%
120.68%
104
69
99.58%
16
6
2
100.00%
100.00%
100.00%
125
88
90.38%
99.53%
100.00%
131
90
99.54%
17
1
0
107
67
83.34%
98.60%
100.00%
108
67
98.60%
18
2
2
93.22%
96.61%
100.00%
125
81
63.27%
97.74%
100.00%
127
83
97.71%
19
3
3
98.17%
99.39%
100.00%
65
42
78.66%
97.64%
100.00%
68
45
97.76%
15
9
93.22%
99.04%
100.00%
523
345
63.27%
98.71%
120.68%
538
354
98.72%

 落札率の状況についての分析は、以上のとおりである。資機材の調達等に係る四つの契約方式の中で平均落札率が最も高いものは特命随契であり、次に、見積合わせ、見積競争、競争契約の順になっている。

(4) 契約の競争性・透明性の向上に向けた財団法人海外漁業協力財団の取組の状況

 15年度から19年度までに国から補助金や委託費の交付を受けて技術協力を実施している公益法人について検査したところ、海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約を締結しているのは、水産庁から補助金の交付を受けて技術協力を実施している農林水産省所管の財団法人海外漁業協力財団(以下「財団」という。)のみであった。一方、財団の予算により被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約は見受けられなかった。
 財団は、海外漁場の確保を図るために、入漁協定を締結するなど我が国との関係が深い国に対して、水産業の開発振興に寄与することを目的として海外漁業協力事業によるプロジェクトタイプの技術協力を実施しており、それらの国に水産技術専門家を派遣するとともに必要に応じて資機材を供与している。

ア 財団法人海外漁業協力財団における契約入札手続等

 財団は、財団法人海外漁業協力財団会計規程(昭和48年6月2日適用)及び財団法人海外漁業協力財団会計規程細則(昭和48年6月2日適用。以下、これらを「財団会計規程等」という。)を定めている。契約の方式については、原則一般競争入札によることとして、契約の性質又は目的が一般競争入札に付することに適さないときなどは指名競争入札又は随意契約とすることができるとしている。そして、随意契約によることができる場合として、国の基準に合わせて予定価格が250万円を超えない工事若しくは製造又は予定価格が160万円を超えない加工、修正若しくは物件の購入をする場合のほか、外国で契約をする場合等の要件を挙げている。
 財団が15年度から19年度までに締結した海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約のうち、財団会計規程等で契約書を作成しなければならないとされている150万円(外国で契約するときは200万円)を超える契約件数及び契約金額は、表14のとおりとなっている。

表14 海外での施設の建設及び海外向けの資機材の調達等に係る契約件数、契約金額等
(単位:件、円)
年度
(平成)
施設の建設(現地調達)
資機材の調達等(本邦調達+現地調達)
件数
(A)
件数
割合
(A)/(E)
金額
(B)
金額
割合
(B)/(F)
件数
(C)
件数
割合
(C)/(E)
金額
(D)
金額
割合
(D)/(F)
件数
(E)
金額
(F)
15
4
11.7%
66,706,514
18.2%
30
88.2%
299,376,625
81.7%
34
366,083,139
16
1
3.3%
7,147,428
2.2%
29
96.6%
311,403,018
97.7%
30
318,550,446
17
2
6.0%
7,588,689
2.2%
31
93.9%
329,031,735
97.7%
33
336,620,424
18
1
2.8%
6,644,220
1.4%
34
97.1%
462,029,524
98.5%
35
468,673,744
19
1
2.8%
14,668,933
3.6%
34
97.1%
389,060,717
96.3%
35
403,729,650
9
5.3%
102,755,784
5.4%
158
94.6%
1,790,901,619
94.5%
167
1,893,657,403

 調査の対象とした契約167件の約95%が資機材の調達等に係る契約であり、施設の建設に係る契約はすべて現地調達であった。これらのうち資機材の調達等に係る契約を本邦調達と現地調達に分けると、表15のとおり、件数で約64%、契約金額で約85%が本邦調達であった。

表15 資機材の調達等に係る契約件数、契約金額等
(単位:件、円)
年度
(平成)
本邦調達
現地調達
件数
(A)
件数
割合
(A)/(E)
金額
(B)
金額
割合
(B)/(F)
件数
(C)
件数
割合
(C)/(E)
金額
(D)
金額
割合
(D)/(F)
件数
(E)
金額
(F)
15
19
63.3%
255,957,267
85.4%
11
36.6%
43,419,358
14.5%
30
299,376,625
16
21
72.4%
278,267,512
89.3%
8
27.5%
33,135,506
10.6%
29
311,403,018
17
16
51.6%
252,489,790
76.7%
15
48.3%
76,541,945
23.2%
31
329,031,735
18
22
64.7%
418,284,795
90.5%
12
35.2%
43,744,729
9.4%
34
462,029,524
19
23
67.6%
322,552,777
82.9%
11
32.3%
66,507,940
17.0%
34
389,060,717
101
63.9%
1,527,552,141
85.2%
57
36.0%
263,349,478
14.7%
158
1,790,901,619

イ 契約の競争性・透明性の向上に向けた取組の状況

 財団は、本邦調達における一般競争入札の実施に当たっては、より多くの入札参加者を確保するために、我が国で広く発行されている業界紙に競争入札の公告を行うとともに、20年7月から財団のホームページにおいてすべての競争入札について公告を行うことにして、より多くの企業へ情報の提供を行っている。
 財団は、海外駐在員事務所等による現地調達の場合は、信頼できる業者との随意契約によらざるを得ないとしている。これらの事情に加えて、海外で施設の建設を行う場合は、設計図書の作成、予定価格の設定、信頼できる業者の選定等の作業が生ずるため、海外駐在員や専門家しか配置していない海外駐在員事務所等においては入札会が実施できる体制にないことも、随意契約によらざるを得ない理由であるとしている。
 しかし、財団は、施設の建設に当たり、過去に相手国政府等の協力を得て指名競争入札を実施したことがあり、今後も比較的大規模な施設の建設を行う場合には、条件が整えば同様の手法により指名競争入札を導入するなどして、契約の競争性・透明性を高めていきたいとしている。

(5) 財団法人海外漁業協力財団における落札率の状況(予定価格、入札、落札、不落随契等契約の状況)

ア 予定価格

 財団は、財団会計規程等において予定価格の設定を義務付けており、その作成方法については、積算参考資料、原則3者から徴する見積書又はコンサルタントによる見積書によることとしている。しかし、随意契約の場合は、契約の性質上予定価格の設定を要しないと認めるときは、これを省略できるとしている。
 財団が15年度から19年度までに締結した海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等に係る契約167件について、契約方式別の予定価格の設定状況を示すと、表16のとおりとなっている。

表16 契約方式別の予定価格の設定状況
(単位:件)
契約方式
予定価格の設定
施設の建設
資機材の調達等
現地調達
本邦調達
現地調達
件数
割合
件数
割合
件数
割合
件数
割合
一般競争契約
0
17
100.0%
2
100.0%
19
100.0%
0
0
0
0
0
17
100.0%
2
100.0%
19
100.0%
指名競争契約
1
100.0%
56
100.0%
0
57
100.0%
0
0
0
0
1
100.0%
56
100.0%
0
57
100.0%
随意契約
0
0
0
0
8
100.0%
28
100.0%
55
100.0%
91
100.0%
8
100.0%
28
100.0%
55
100.0%
91
100.0%
合計
1
11.1%
73
72.2%
2
3.5%
76
45.5%
8
88.8%
28
27.7%
55
96.4%
91
54.4%
9
100.0%
101
100.0%
57
100.0%
167
100.0%

 財団は、一般競争契約(19件)や指名競争契約(57件)においては、すべて予定価格を設定していたが、随意契約(91件)においては、財団会計規程等に基づき、契約の性質上予定価格の設定を要しないとして、すべて予定価格の設定を省略していた。このことについて、財団は、随意契約の大半を実施している海外駐在員事務所等においては、調達環境の違いなどにより、通常現地業者は受注を前提として見積書を提出することなどから、事前に徴した見積書を基に予定価格を設定することは困難であると説明している。また、本邦調達における随意契約においても、緊急を要するなどの理由から予定価格の設定は困難であるとしている。

イ 入札

 財団が15年度から19年度までに締結した海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約について、契約方式別に件数を分けると、表17のとおり、一般競争入札や指名競争入札に付した契約(それぞれ不落随契になったものを含む。)は、本邦調達においては101件のうち73件(72.2%)であったが、現地調達においては66件のうち3件(4.5%)にすぎなかった。

表17 契約方式別の海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約件数等
(単位:件)
契約方式
施設の建設
資機材の調達等
合計
現地調達
本邦調達
現地調達
本邦調達
現地調達
件数
割合
件数
割合
件数
割合
件数
割合
件数
割合
件数
割合
競争契約
一般競争
0
17
16.8%
2
3.5%
17
16.8%
2
3.0%
19
11.3%
指名競争
1
11.1%
56
55.4%
0
56
55.4%
1
1.5%
57
34.1%
1
11.1%
73
72.2%
2
3.5%
73
72.2%
3
4.5%
76
45.5%
随意契約
8
88.8%
28
27.7%
55
96.4%
28
27.7%
63
95.4%
91
54.4%
合計
9
100.0%
101
100.0%
57
100.0%
101
100.0%
66
100.0%
167
100.0%

 契約に至るまでの状況は、表18のとおり、契約件数167件のうち、入札会において落札されたものが55件(32.9%)、落札に至らず不落随契となったものが21件(12.5%)、当初から随意契約を行ったものが91件(54.4%)となっていた。

表18 入札から契約に至るまでの状況
(単位:件)
入札・契約区分
施設の建設
資機材の調達等
合計
契約割合
年度(平成)
契約割合
年度(平成)
契約割合
15
16
17
18
19
15
16
17
18
19
第1回入札会
1
0
0
0
0
1
13
10
14
21
17
75
76
 
落札
当初〔1〕
0
0
0
0
0
0
8
9
9
12
8
46
29.1%
46
27.5%
再度〔2〕
1
0
0
0
0
1
11.1%
1
1
1
0
1
4
2.5%
5
2.9%
再々度〔3〕
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
2
4
2.5%
4
2.3%
不調
0
0
0
0
0
0
3
0
4
8
6
21
21
 
不落随契〔4〕
0
0
0
0
0
0
3
0
4
8
6
21
13.2%
21
12.5%
落札契約 計(〔1〕 +〔2〕 +〔3〕 )
1
0
0
0
0
1
11.1%
10
10
10
13
11
54
34.1%
55
32.9%
随意契約〔5〕
3
1
2
1
1
8
88.8%
17
19
17
13
17
83
52.5%
91
54.4%
契約 合計(〔1〕 +〔2〕 +〔3〕 +〔4〕 +〔5〕 )
4
1
2
1
1
9
100.0%
30
29
31
34
34
158
100.0%
167
100.0%

ウ 落札

 入札により落札者が決定した契約55件を海外での施設の建設に係るものと海外向けの資機材の調達等に係るものに分けて、その落札率をみると、表19のとおりとなっている。

表19 落札率の状況
(単位:件)
年度(平成)
施設の建設
資機材の調達等
入札件数
落札件数
落札率
入札件数
落札件数
落札率
入札件数
落札件数
平均落札率
最低
平均
最高
最低
平均
最高
15
1
1
92.61%
92.61%
92.61%
13
10
70.41%
88.37%
99.81%
14
11
88.76%
16
0
0
10
10
67.50%
84.30%
97.13%
10
10
84.30%
17
0
0
14
10
72.34%
86.55%
97.10%
14
10
86.55%
18
0
0
21
13
64.14%
89.99%
99.87%
21
13
89.99%
19
0
0
17
11
89.47%
95.95%
99.94%
17
11
95.95%
1
1
92.61%
92.61%
92.61%
75
54
64.14%
89.21%
99.94%
76
55
89.27%

 落札に至った入札における入札参加者数別の落札率について、調達区分別にみると、表20のとおりとなっている。

表20 落札に至った入札における入札参加者数別の落札率
(単位:件、者)
調達区分
年度
(平成)
落札件数
1者
2者
3者
4者
5者
6者
7者
8者
平均
本邦調達
15
10
0
2
5
1
2
0
0
0
3.3
16
10
0
1
2
0
2
3
0
2
5.2
17
10
0
1
5
3
0
1
0
0
3.5
18
12
1
5
4
1
1
0
0
0
2.6
19
10
3
6
1
0
0
0
0
0
1.8
合計
52
4
15
17
5
5
4
0
2
3.2
割合
100.0%
7.6%
28.8%
32.6%
9.6%
9.6%
7.6%
3.8%
累計
4
19
36
41
46
50
50
52
累計割合
7.6%
36.5%
69.2%
78.8%
88.4%
96.1%
96.1%
100.0%
平均落札率
97.28%
90.85%
91.89%
87.26%
79.00%
86.21%
67.55%
現地調達
15
1
0
0
1
0
0
0
0
0
3.0
16
0
0
0
0
0
0
0
0
0
17
0
0
0
0
0
0
0
0
0
18
1
0
0
1
0
0
0
0
0
3.0
19
1
0
0
0
1
0
0
0
0
4.0
合計
3
0
0
2
1
0
0
0
0
3.3
割合
100.0%
66.6%
33.3%
累計
0
0
2
3
3
3
3
3
累計割合
66.6%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
平均落札率
96.04%
92.85%
合計
15
11
0
2
6
1
2
0
0
0
3.2
16
10
0
1
2
0
2
3
0
2
5.2
17
10
0
1
5
3
0
1
0
0
3.5
18
13
1
5
5
1
1
0
0
0
2.6
19
11
3
6
1
1
0
0
0
0
2.0
合計
55
4
15
19
6
5
4
0
2
3.2
割合
100.0%
7.2%
27.2%
34.5%
10.9%
9.0%
7.2%
3.6%
累計
4
19
38
44
49
53
53
55
累計割合
7.2%
34.5%
69.0%
80.0%
89.0%
96.3%
96.3%
100.0%
平均落札率
97.28%
90.85%
92.33%
88.19%
79.00%
86.21%
67.55%

 財団が締結した契約においては、表19のとおり、平均落札率が年々高くなる傾向にあり、19年度には95.95%になっている。このことについて、財団は、事業予算が年々縮小傾向にあり、1件当たりの契約金額が少額となり受注業者にとって魅力がなくなってきたこと、納入先が島しょ国等で交通の利便性が悪く経費がかさむことなどから、表20のとおり、入札に参加する業者数が年々減少しているためであると説明している。

エ 不落随契

 財団が締結した海外向けの資機材の調達等に係る契約で一般競争入札及び指名競争入札を実施したもの75件のうち、不落随契になったものが、本邦調達において21件あった。

オ 随意契約

 財団が締結した海外での施設の建設に係る契約9件のうち8件(88.8%)、海外向け資機材の調達等に係る契約158件のうち83件(52.5%)、計91件(54.4%)は当初から随意契約を行っていた。そして、これらの大部分を占める63件は、現地調達であった。このことについて、財団は、前記のとおり、現地調達は随意契約によらざるを得ないとしており、また、本邦調達の28件については、緊急を要する契約であること、財団会計規程等に定める少額随契であることなどを理由としている。

3 検査の結果に対する所見

(1) 検査の結果の概要

 本院は、政府開発援助の無償資金協力及び技術協力における契約入札手続等についての検査の要請を受けて、19年次の無償資金協力に引き続き、20年次は、技術協力において被援助国政府が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約の状況、我が国援助実施機関が実施する海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約の状況について検査した。
 検査の結果、表21のとおり、13府省庁が行う技術協力において、被援助国政府が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約は見受けられなかった。また、13府省庁が実施する海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約も見受けられなかった。
 JICAが行う技術協力において、被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約は見受けられなかった。また、JICAが、会計規程により契約書を作成して行う海外での施設の建設に係る契約は99件、海外向けの資機材の調達等に係る契約は本邦調達397件と現地調達1,847件を合わせて2,244件あり、合計は2,343件であった。
 各府省が所管する公益法人のうち、技術協力として海外での施設の建設や海外向け資機材の調達等の契約を締結しているのは、農林水産省所管の財団法人海外漁業協力財団のみであり、同財団が、財団会計規程等により契約書を作成して行う海外での施設の建設に係る契約は9件あり、また、海外向けの資機材の調達等に係る契約は本邦調達101件と現地調達57件を合わせて158件あり、合計は167件であった。一方、財団の予算により被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約は見受けられなかった。

表21 援助実施機関別の施設の建設や資機材の調達等に係る契約の件数
(単位:件)
援助実施機関
施設の建設
資機材の調達等
合計
被援助国が実施
我が国援助実施機関が実施
被援助国が実施
我が国援助実施機関が実施
本邦調達
現地調達
本邦調達
現地調達
13府省庁
JICA
99
397
1,847
2,244
2,343
財団法人海外漁業協力財団
9
101
57
158
167

ア JICA

 本院は、JICAにおける契約の競争性・透明性の向上に向けた取組及び落札率の状況について分析を行った。

(ア) JICAにおける契約の競争性・透明性の向上に向けた取組の状況

 JICAは、本邦調達を行う際は、原則として一般競争入札に付すことにしている。また、現地調達を行う際も、調達業務の透明化・適正化に努めることにしているが、開発途上国における調達環境は我が国と大きく異なり、現地調達の契約の相手方は現地法人であり、国によっては入札の方法が異なったり、入札という考え方自体が商慣習として存在していなかったりするなどの課題も多いため、すべての在外事務所で一律に一般競争入札等を行うことは困難であり、随意契約にせざるを得ない場合が多いとしている。しかし、そのような場合であっても、複数業者から見積りを徴して、価格競争を行う指名見積競争を実施することにより、可能な限り競争性を高めるよう努めることとしている。そのため、在外事務所は、内規により業者登録制度を設けることとしているが、業者登録簿を整備している事務所は全事務所の約3割であった。
 また、JICAは、他の契約の予定価格が類推されるおそれがあるとして予定価格を公表してこなかったが、入札結果等の調達関連情報を迅速に公表して、透明性の確保を図ることとして20年4月から、他の契約の予定価格が類推されるおそれがある場合等を除き、本邦調達及び現地調達のいずれの場合も競争に付した案件及び一部の随意契約案件について同年1月分にさかのぼり、予定価格を公表することにしている。

(イ) JICAにおける落札率の状況(予定価格、入札、落札、不落随契等の状況)

 JICAにおける落札率の状況のうち予定価格については、本邦調達での資機材の調達等に係る契約397件のうち、会計規程に基づき予定価格の設定が省略されていた場合等を除く318件は、予定価格が設定されていた。一方、現地調達の場合、施設の建設に係る契約99件のうち、予定価格の設定が省略されていた場合等を除く78件は予定価格が設定されており、また、資機材の調達等に係る契約1,847件のうち予定価格の設定が省略されていた場合等を除く1,039件は予定価格が設定されていたが、32件は現地の商慣習等の理由により予定価格が設定されておらず、この中には会計規程に基づく事務手続をとることなく予定価格の設定を省略しているものが見受けられた。
 JICAの在外事務所においては、入札や契約の事務に携わったことのない職員や現地採用職員が多いため、調達のための体制は十分ではない。また、現地調達において仕様の決定や予定価格の設定等を行う際の事務は、当該国の法令、慣習等により、我が国で行う場合と異ならざるを得ない場合が多い。
 入札については、競争性があるとされる契約は本邦調達においては397件のうち198件(49.8%)であったが、現地調達においては1,946件中802件(41.2%)であった。そして、一般競争入札が実施されていたのは、本邦調達においては397件中145件(36.5%)であったが、現地調達においては1,946件中92件(4.7%)と極めて少なかった。
 落札については、本邦調達の場合は、すべて資機材の調達等に係るものであり、15年度から19年度までの落札件数130件の平均落札率は83.73%であった。そして、現地調達の場合は、施設の建設に係る契約で予定価格が設定されていた落札件数38件の平均落札率は91.52%、資機材の調達等に係る契約で予定価格が設定されていた落札件数155件の平均落札率は90.27%であった。資機材の調達等に係る落札に至った入札における入札参加者数をみると、本邦調達にあっては平均3.8者、現地調達にあっては平均2.9者であった。不落随契については、本邦調達で15件、現地調達で32件、計47件あった。
 随意契約の状況については、施設の建設に係る現地調達99件中47件、資機材の調達等に係る本邦調達397件中252件及び現地調達1,847件中1,658件、計1,957件が随意契約であった。そして、これらのうち614件は見積競争によるものであった。見積競争が実際に競争性を高めたものとなっていたか分析したところ、競争入札を行った場合と平均落札率に大きな差は見受けられなかった。

イ 財団法人海外漁業協力財団

 本院は、財団における契約の競争性・透明性の向上に向けた取組及び落札率の状況について分析を行った。

(ア) 財団における契約の競争性・透明性の向上に向けた取組の状況

 財団は、原則として一般競争入札により契約することとして、より多くの入札参加者を確保するために、業界紙に競争入札公告を行うことなどにより多くの企業への情報提供を行っているとしている。

(イ) 財団における落札率の状況(予定価格、入札、落札、不落随契等契約の状況)

 財団における落札率の状況のうち予定価格については、財団は、一般競争契約又は指名競争契約においてはすべて予定価格を設定していたが、外国で契約する場合等は随意契約を認めており、現地調達の大部分を占める随意契約においては、開発途上国における調達環境の違いなどにより、事前に見積書を徴することが困難であるとして予定価格の設定を省略していた。
 入札については、一般競争契約又は指名競争契約が本邦調達においては72.2%であったが、現地調達においては4.5%にすぎなかった。
 落札については、平均落札率が年々高くなる傾向にあり、19年度には95.95%になっている。このことについて財団は、事業予算が年々縮小傾向にあり、1件当たりの契約金額が少額となり受注業者にとって魅力がなくなってきたこと、納入先が島しょ国等で交通の利便性が悪く経費がかさむことなどから、入札に参加する業者数が年々減少しているためであると説明している。不落随契については、本邦調達において21件あった。

(2) 所見

ア JICA

 JICAにおいては、現地調達の32件の中には、会計規程に基づく事務手続をとることなく予定価格の設定を省略しているものが見受けられた。これは、在外事務所の特殊事情を考慮しても適切とは認められない。
 現地調達を行う際は、一般競争入札又は指名競争入札に付すことができるものは限定的であるとして、随意契約を締結せざるを得ない場合が多いとしているが、入札に付し難い場合には可能な限り指名見積競争により契約を締結するよう努力して、契約の競争性を高めていくことが望まれる。そのためにも、指名業者の選定がし意的にならないように、在外事務所において、業者の登録制度を確立しておく必要がある。
 JICAは、他の契約の予定価格が類推されるおそれがあるとして、予定価格を公表してこなかったが、20年から他の契約の予定価格が類推されるおそれがあるなどの場合を除き予定価格を公表している。JICAにおいては、契約の競争性・透明性の向上に向けて、落札率の状況(予定価格、入札、落札、不落随契等契約の状況)について引き続き公表するなどの努力を行っていく必要がある。
 JICAの在外事務所においては、現地調達を行う際の事務は、我が国で行う場合と異ならざるを得ない場合が多いことから、そのような場合は、理事長の指定により、又は理事長の承認を受けて会計規程と異なる処理をすることができるとした規定に従い、適正な手続をとるなどして、適切な処理を行う必要があると認められる。

イ 財団法人海外漁業協力財団

 財団においては、入札参加業者数が年々減少しているが、これに歯止めをかけるため、引き続きより多くの企業への情報提供に努めて、入札参加業者の確保を図っていくことなどが望まれる。
 財団は、随意契約の場合には、一定金額以上の調達に当たっては予定価格を設定することなど、契約の競争性・透明性の向上に向けた一層の努力が望まれる。
 以上のとおり報告する。
 そして、本院としては、20年10月に政府開発援助の一元的な実施機関として新JICAが発足することにかんがみ、今後とも無償資金協力及び技術協力において、契約の競争性・透明性の一層の向上に向けた取組が着実に行われ、施設の建設や資機材の調達等の契約が適切に実施されているか多角的な観点から引き続き検査していくこととする。