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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成23年10月

資金の受入、保管等の状況


2 資金の受入、保管等の状況

(1) 在外公館で取り扱う資金の概要

ア 公金として取り扱う資金

 在外公館で取り扱う公金としての資金は、収入金、前渡資金及び報償費の三つがある。
 収入金は、領事手数料、前渡資金の使用残額の受入れとしての返納金、不用物品売払収入等、在外公館において収納した資金であり、このうち最も多いものは領事手数料である。
 前渡資金は、職員諸手当、現地補助員給与、諸謝金、庁費、事務所等の借料等、在外公館が所在国において各種経費の支払を行うための資金である。外国で支払う経費は、予決令により、その性質を問わず一律に資金の前渡が認められているため、外務省は在外公館における支払の全てを前渡資金により行っている。
 報償費は、国が、国の事務又は事業を円滑かつ効果的に遂行するため、当面の任務と状況に応じてその都度の判断で最も適当と認められる方法により機動的に使用するための資金である。外務省は、これを「情報収集及び諸外国との外交交渉ないし外交関係を有利に展開するため」に使用する経費としている。

イ 公金以外の資金

 在外公館は、在外公館の運営及び外交・文化活動を円滑に行うため又は行政サービスの向上等を図るため、公金以外の資金を取り扱っている。これらの資金には、現地で困窮する邦人に対して、日本国内の家族等から送金された資金等がある。

(2) 資金の交付、受入れ及び保管

ア 収入金

 外務省は、収入金のうちの領事手数料については、出納員補助者に指名されている領事業務に関する事務処理を行う査証・領事担当者(以下「領事担当者」という。)が収納して出納員である会計担当者に引き渡し、会計担当者がこれを直ちに収入官吏に払い込むこととしている。そして、収入官吏が、収納した領事手数料を一旦手許の金庫に保管しておき、一定額に達したときなどに、在外公館が開設した収入金を取り扱う銀行口座(以下「歳入金口座」という。)へ入金して、ここから定期的に国庫(日本銀行)に払い込むこととしている。

イ 前渡資金

 前渡資金については、外務本省の官署支出官の支出の決定に基づき財務省のセンター支出官が日本銀行に対して支払指図を行い、この支払指図に基づき日本銀行が日本国内の市中金融機関を通じて在外公館が開設した前渡資金口座に外国送金することにより、各在外公館の資金前渡官吏に交付されている。そして、在外公館は、交付された前渡資金を前渡資金口座で保管するとともに、必要に応じて手許に現金で保管することとしている。

ウ 報償費

 報償費については、外務本省の官署支出官から取扱責任者(館長)に対して交付することとしている。報償費の交付は、報償費口座へ前渡資金と同様に外国送金することにより行われている。会計法令上は、この送金で支出事務は終了したことになるが、取扱責任者が交付を受けた報償費は依然として公金であり、取扱責任者が報償費口座で保管している。

エ 公金以外の資金

 在外公館によっては、上記の各銀行口座のほかに、必要に応じて公金以外の資金を取り扱うための銀行口座を開設している。

オ 前渡資金及び報償費に係る送金通貨から現地通貨への交換

 外務省は、在外公館への資金の交付に当たり、現地通貨による外国送金ができないため米ドル等の外国送金が可能な通貨で所在国に開設した銀行口座に送金したり、所在国の金融機関の信頼性が低いなどとして、アメリカやヨーロッパ諸国等の第三国に開設した銀行口座に送金したりしている場合がある(以下、これらを「送金受入口座」という。)。そして、送金を受けた在外公館は、業務に必要な都度、適時に送金通貨から現地通貨に交換して、所在国に開設した現地通貨建ての前渡資金口座等に移し替えるなどして各種経費の支払に充てている。

 以上の在外公館で取り扱う主な資金の交付、受入れ及び保管の流れは、図表2-1 のとおりである。

図表2-1 主な資金の交付、受入れ及び保管の流れ

図表2-1主な資金の交付、受入れ及び保管の流れ

(注)
 在外公館が収納した収入金は、日本銀行を受取人とする小切手を振り出して、これを外務本省が取りまとめた後、日本銀行に払い込まれる。

(3) フォローアップ検査

 22年次の検査の結果及び所見並びに23年次のフォローアップ検査の結果は、以下のとおりである。

ア 22年次の検査の結果

(ア) 在外公館の前渡資金は、日本銀行から市中金融機関を通じて定期又は臨時に外国送金されている。この送金手続に係る送金手数料は日本銀行が負担しているが、1件当たりの送金額、資金の残額等が考慮されずに臨時配賦が行われており、それらの中には少額のものがあった。

(イ) 出納官吏事務規程(昭和22年大蔵省令第95号)により、出納官吏及び出納員はその取扱いに係る現金を私金と混同してはならないとされている。公金と職員の私金等公金以外の現金とが混同すると、公金として管理すべき現金の範囲が明確にならず帳簿金庫検査の際に現金の残高確認が行えなくなるなど、公金の適正な管理に支障を来すおそれがある。しかし、領事手数料に係る釣銭を私金で用意して、一時的ではあるものの私金と公金を混同している在外公館が4公館あった。また、携帯電話料金の私費負担分について、公金負担分と合わせて支払う必要があるとして、料金が決済されるまでの間、前渡資金口座に私金が混同している在外公館が22公館あった。

(ウ) 予決令により、検査員は毎年3月31日及び出納官吏の交替時に帳簿金庫検査を実施することとされている。この帳簿金庫検査は、出納官吏の保管現金の状況を実地に確認するとともに、出納保管が適正に行われているか調査することなどを目的とするものであるが、検査員自らが手許保管現金を確認していなかった在外公館が2公館あった。

イ 22年次の検査の結果に対する所見

(ア) 在外公館の前渡資金に係る外国送金について、業務に支障が生じない範囲でまとめて行うなど、会計実地検査時の指摘により執ることとした措置を確実に実施する。

(イ) 領事手数料に係る釣銭の用意の仕方や携帯電話料金の私費負担分の支払方法について、公金と私金が混同することにならないような方策を検討する。

(ウ) 帳簿金庫検査を予決令等に基づき適切に実施する。

 以上のようにして、前渡資金等の受入れ、保管等を適正かつ適切に行うとともに、外国送金をまとめて行うなど経済性に十分配慮する。

ウ 23年次のフォローアップ検査の結果

 上記の所見について、外務省の改善の状況を検査した結果は、以下のとおりである。

(ア) 外務省は、送金回数の縮減について、22年8月に通知を発し、それまで週2回であった送金日の設定を緊急の場合を除き原則として週1回にするなどして送金手数料が経済的になるよう処置を講じた。その結果、図表2-2 のとおり、全在外公館に対する22年10月から23年6月までの送金回数が対前年比及び対前々年比で1割から2割程度減少していた(注2-1) 。これにより、日本銀行が負担している送金手数料は、会計検査院の試算によると、対前年比で約400万円、対前々年比で約600万円節減できたと認められる。

 予算の項別に分けて各在外公館に送金がなされるため、送金日の設定を週2回から週1回にしても、予算の項が同じ送金が、同一の在外公館に対して短期間に複数回ある場合にのみまとめて行われるに過ぎず、送金回数は単純に半分にはならない。


図表2-2
 送金回数等の状況

期間 平成22年10月〜23年6月 21年10月〜22年6月 20年10月〜21年6月
送金回数 13,769回 15,555回 16,510回
会計検査院が試算した送金手数料 約3300万円
(対前年比△400万円)
対前々年比△600万円)
約3700万円 約3900万円

(イ) 外務省は、領事手数料の釣銭について、23年6月に通知を発し、申請者の手許に高額紙幣しかないなどの場合、この高額紙幣を過日に収受した収入金を用いて両替することも可能とするなどとし、公金と私金が混同することにならないよう処置を講じた。
 また、携帯電話料金の私費負担分の支払方法については、公金と私金が混同することにならないような方策を検討している。

(ウ) 外務省は、帳簿金庫検査について、22年11月及び23年3月に通知を発し、帳簿金庫検査の徹底を図るよう処置を講じた。

(4) 23年次の検査の結果

 資金の受入、保管等の状況については、以下の事態があった。

ア 送金通貨から現地通貨への交換について

 一部の在外公館は、前記のとおり、外務本省から前渡資金等を米ドル等の送金通貨で受け入れた後、現地通貨に交換して各種経費の支払に充てている。そして、通貨交換の際の外国為替レートには、市中金融機関の外国為替取引手数料(以下「両替手数料」という。)が上乗せされている(注2-2)
 しかし、検査した40公館のうち4公館(注2-3) は、前渡資金等の使用残額や送金通貨による支払が多額に上ると見込まれていたのに、必要以上に現地通貨に交換したため、前渡資金等の使用残額の返納や送金通貨による支払の際に、現地通貨から送金通貨に再度交換していた(節減できた両替手数料21年度約18万円、22年度約25万円、計約43万円)。

<事例2-1>

 南アフリカ共和国大使館は、送金通貨である米ドルで支払うことになっている閉館時電話代行サービス契約について、米ドルから通貨交換したランドを再度米ドルに交換して支払っていたため、これに係る両替手数料が、約10万円(平成22年度)生じていた。

(注2-2)  例えば、邦貨を米ドルに交換するときは、1米ドル当たり通常1円の両替手数料が上乗せされている。
(注2-3)
 4公館  マレーシア、バーレーン、南アフリカ共和国各大使館、瀋陽総領事館

イ 外務本省から在外公館への送金について

 外務本省から在外公館への送金は、前記のとおり、日本銀行により市中金融機関を通じて在外公館の銀行口座に米ドル等の送金通貨で外国送金されている。
 20、21両年度における全在外公館への外国送金の状況についてみたところ、在外公館に十分な資金の残額があるのに送金がなされた結果、送金された資金が使用されずに、外務本省に返納されているものが、両年度で計88件あった。
 しかし、在外公館への送金や使用残額の返納の際には、原則として邦貨と送金通貨との交換に係る両替手数料が発生(注2-4) しており、上記の88件に係る両替手数料は、会計検査院の試算によると、計約90万円となっていた。

 日本銀行が資金を外貨で在外公館に送金したり、使用残額を外貨で在外公館から受け入れたりする場合、外務省の決算上は、財務省告示により定められている支出官レート又は出納官吏レートで邦貨換算した額が計上されるため、両替手数料の多寡は外務省の決算に影響しない。ただし、通貨交換の際に実際に適用された両替手数料を含む外国為替レートと、支出官レート又は出納官吏レートとのかい離により生じた邦貨の差額については、財務省が日本銀行に対して支払を行い又は日本銀行から納付を受けることとされているので、両替手数料は国が間接的に負担するものである。