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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成24年10月

消費税の簡易課税制度について


2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

 消費税は本則課税が原則となっていて、元年4月に導入されてから20年以上が経過しており、簡易課税制度の適用対象となる基準期間における課税売上高の上限額の引下げによる適用範囲の見直しやみなし仕入率の事業区分の細分化によるみなし仕入率の水準の見直しが行われてきているが、前記のとおり、17年度から22年度までの間における簡易課税制度適用者の割合は個人事業者が60%強、法人が30%弱とほぼ横ばいで推移している。また、みなし仕入率が課税仕入率(課税仕入高の課税売上高に対する割合)を上回ってかい離している場合には、価格を通じて消費者が負担している消費税相当額のうち国庫に納付されない部分が事業者に残ることとなり、いわゆる益税(注3) が発生すると言われている。そして、このような益税の発生は、消費税に対する国民の信頼性を損ねることとなる。
 会計検査院は、消費税に関する国民の関心が高い中で、上記のような状況を踏まえて、中小事業者の事務負担に配慮して設けられた簡易課税制度について、有効性等の観点から、有効かつ公平に機能しているかなどに着眼して、〔1〕 みなし仕入率と課税仕入率の状況はどのようになっているか、〔2〕 過去に本則課税を適用してその後簡易課税制度を適用している事業者の状況はどのようになっているか、〔3〕 多額の課税売上高を有する事業者の簡易課税制度の適用状況はどのようになっているか検査した。

 益税  本報告においては、税抜経理方式を採っていて益金に計上している消費税差額又は推計納付消費税額から簡易課税制度を適用して計算した納付消費税額を控除した金額を益税としている

(2) 検査の対象及び方法

 検査に当たっては、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき会計検査院に提出された証拠書類等により書面検査を行うとともに、23年12月から24年5月までの間に東京国税局(注4) 及び44税務署(注5) において、上記の〔1〕 から〔3〕 までの検査項目に応じて、簡易課税制度を適用している3,075法人、1,624個人事業者、計4,699事業者を抽出して、消費税の確定申告書等によりその内容を分析するなどして会計実地検査を行った(表3 参照)。また、財務省において、みなし仕入率に関する実態調査の内容を聴取するなどして会計実地検査を行った。

(注4)
 東京国税局  国税局は、大規模納税者等について、自ら賦課徴収を行っていることから、多額の課税売上高を有する法人を抽出するに当たって検査対象とした。
(注5)
 44税務署  村山、桐生、川口、西川口、浦和、春日部、新潟、千葉東、千葉南、市川、成田、麹町、神田、日本橋、芝、目黒、北沢、渋谷中野、杉並、豊島、板橋、葛飾、江戸川北、武蔵野、横浜中、保土ケ谷、横浜南、緑、川崎北、藤沢、小田原、相模原、大月、昭和、中川、豊橋、東、豊能、八尾、東大阪、尼崎、松山、博多各税務署

表3  検査の対象とした事業者
事業者の態様 法人 個人事業者
〔1〕 全体の課税売上高のうち、一つの事業の課税売上高の割合が90%超となっている事業者 1,040 991 2,031
〔2〕 過去4年以内(法人)又は過去2年以内(個人事業者)に本則課税を適用したことがある事業者 2,023 633 2,656
〔3〕 第1期課税期間又は第2期課税期間に多額の課税売上高(5億円超)を有する事業者 12 - 12
3,075 1,624 4,699