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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第6 法務省 |
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(1) 刑事施設等における防災用移動式炊事機器の整備に当たり、配置する台数を施設の規模等に応じたものとすることにより、災害時に必要とされる施設において有効に活用されるよう適宜の処置を要求したもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)矯正官署(項)矯正管理業務費 (項)矯正収容費  東日本大震災復興特別会計 (組織)矯正官署 (項)矯正管理業務費 (項)矯正収容費
部局等
法務本省、18刑事施設等
契約名
防災機器の調達契約等19契約
契約の概要
災害等により、ガス、電力等の供給が途絶えた際に、灯油等を燃料として、湯沸かし、炊飯等を行うための防災用移動式炊事機器を調達するもの
契約の相手方
15会社
契約
平成23年10月〜25年2月 一般競争契約、随意契約
炊事機器の調達台数及び支払額
47台 3089万余円(平成23、24両年度)
施設の規模等に照らして過大となっていた炊事機器の台数及び支払額
26台  1585万円(平成23、24両年度)
【適宜の処置を要求したものの全文】
刑事施設等における防災用移動式炊事機器の整備について

(平成25年10月24日付け 法務大臣宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求する。

1 刑事施設等における防災用物品の調達の概要等

(1) 刑事施設等における防災用物品の調達の概要

貴省は、東日本大震災(平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による災害等をいう。)における刑務所、少年刑務所及び拘置所の刑事施設、少年院及び少年鑑別所(以下、これらを合わせて「刑事施設等」という。)の被災状況等を踏まえて、災害等が発生した際に、刑事施設等の適正な維持管理及び運営を行うため、被収容者の生活及び刑事施設等の業務継続等に必要な物品等(以下「防災用物品」という。)の整備を行うこととし、各刑事施設等に対して、23年度には一般会計補正予算から、また、24年度には一般会計又は東日本大震災復興特別会計から、それぞれ防災用物品の調達に必要な予算を配賦している。

そして、各刑事施設等は、これにより、適宜、調達する品目、規格、数量等を検討の上、必要な防災用物品を調達している。

(2) 防災用移動式炊事機器の概要

各刑事施設等は、防災用物品の調達の一環として、防災用移動式炊事機器(以下「炊事機器」という。)を調達して、整備箇所(炊事機器が実際に配置される刑事施設等の本庁、管下の刑務支所、拘置支所等の施設をいう。以下同じ。)に配置している。

炊事機器は、災害等により、ガス、電力等の供給が途絶えた際に、灯油、LPガス、まきなどを燃料として、炊飯、汁物の調理等を行うための機器であり、釜、かまど、バーナー等のほか、移動のためのキャスター、台車等を備えるなどしている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、29刑事施設等(注1)における炊事機器の調達台数が適切なものとなっているかなどに着眼して、29刑事施設等が23、24両年度に締結した炊事機器計103台に係る調達契約計28件、支払額計6723万余円を対象に検査を行った。

検査に当たっては、29刑事施設等において、購入伺、仕様書等の書類を確認したり、調達部署の担当者から、調達台数の決定理由、災害時に炊事機器を使用して調理した食糧等を給与する対象として想定される人員(以下「給与対象人員」という。)、想定される用途等について聴取したりするなどして会計実地検査を行った。

(注1)
29刑事施設等  網走、月形、栃木、広島、高松、長崎各刑務所、立川拘置所、有明高原寮、駿府学園、丸亀少女の家、四国少年院、松山学園、福岡少年院、中津少年学院、大分少年院、函館、宇都宮、前橋、千葉、長野、静岡、広島、徳島、高松、松山、高知、大分、宮崎、鹿児島各少年鑑別所
(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

18刑事施設等(注2)は、23、24両年度に、計19件の調達契約により炊事機器を調達していたが、このうち2刑事施設等では管下の5拘置支所用に、16刑事施設等では本庁用にそれぞれ複数台調達していた。そして、18刑事施設等が調達した炊事機器の台数は、計21整備箇所 (注3) に対して計47台となっており、これらに係る支払額は計3089万余円となっていた。

(注2)
18刑事施設等  広島、長崎両刑務所、有明高原寮、丸亀少女の家、松山学園、函館、宇都宮、前橋、長野、静岡、広島、徳島、高松、松山、高知、大分、宮崎、鹿児島各少年鑑別所
(注3)
21整備箇所  広島刑務所呉、福山、三次各拘置支所、長崎刑務所島原、五島両拘置支所、有明高原寮、丸亀少女の家、松山学園、函館、宇都宮、前橋、長野、静岡、広島、徳島、高松、松山、高知、大分、宮崎、鹿児島各少年鑑別所

21整備箇所に整備された炊事機器は、いずれも、災害時にガス、電力等の供給が途絶えるなどした場合に、職員及び被収容者用の非常食の加熱、湯茶の給与、身体の清拭等に使用する湯を沸かしたり、炊飯したりするなどの目的で調達されていて、取扱説明書等によれば、1台で20℃の水60Lを20分で沸騰させ、あるいは米飯100名分を20分で炊飯するなどの能力を有していた。

上記のとおり、炊事機器は、災害時において職員及び被収容者用の湯を沸かすことなどを目的として調達したものであり、各整備箇所の職員定員及び被収容者の収容定員の合計が給与対象人員と認められた。そして、21整備箇所の施設ごとの職員定員、被収容者の収容定員、給与対象人員及び炊事機器の調達台数は、表のとおりであり、炊事機器を2台調達している施設の給与対象人員は24名から92名まで、3台調達している施設の給与対象人員は31名から103名までとなっていた。

表 21整備箇所における給与対象人員、炊事機器の調達台数等の状況(単位:名、台)

整備箇所名 職員定員(A) 被収容者の収容定員(B) 給与対象人員(A)+(B) 炊事機器の調達台数
広島刑務所呉拘置支所 19 70 89 3
広島刑務所福山拘置支所 20 70 90 3
広島刑務所三次拘置支所 10 21 31 3
長崎刑務所島原拘置支所 10 15 25 2
長崎刑務所五島拘置支所 11 13 24 2
有明高原寮 30 60 90 2
丸亀少女の家 32 60 92 2
松山学園 30 59 89 2
函館少年鑑別所 14 20 34 2
宇都宮少年鑑別所 18 40 58 2
前橋少年鑑別所 22 26 48 2
長野少年鑑別所 17 20 37 2
静岡少年鑑別所 26 55 81 2
広島少年鑑別所 33 70 103 3
徳島少年鑑別所 15 19 34 2
高松少年鑑別所 19 24 43 2
松山少年鑑別所 17 30 47 2
高知少年鑑別所 16 32 48 2
大分少年鑑別所 15 22 37 2
宮崎少年鑑別所 16 20 36 3
鹿児島少年鑑別所 16 20 36 2

(注) 職員定員及び被収容者の収容定員は平成25年度の数値である。

上記の各刑事施設等は、炊事機器を各整備箇所にそれぞれ複数台調達した理由について、湯沸かしなどは職員用と被収容者用とに分けて行う必要があることから、職員用と被収容者用とに炊事機器をそれぞれ1台ずつ整備する必要があるなどとしていた。しかし、災害時の湯沸かしなどを、職員用と被収容者用とに分けて別々の炊事機器で行わなければならない合理的な理由は認められず、1台の炊事機器で職員用と被収容者用の湯沸かしなどを同時に又は時間を調整した上で行うこととしても特段の支障はないものと認められた。

また、本件炊事機器の湯沸かし及び炊飯の能力に照らせば、21整備箇所のそれぞれの給与対象人員からみて、湯沸かしの場合であれば、1台の炊事機器による1、2回程度の湯沸かしで、職員と被収容者全員の必要分を賄うことが十分可能であると認められた。また、炊飯の場合であれば、1台の炊事機器による1回の炊飯で、職員と被収容者全員分の炊飯を行うことが可能であると認められた。

したがって、21整備箇所においては、炊事機器の能力、給与対象人員等に照らして、1整備箇所当たり炊事機器1台で災害時に想定される用途に対応することが可能であり、21整備箇所において必要な各1台を除いた計26台の炊事機器(支払額1585万余円)については、施設の規模等に照らして調達台数が過大であると認められる。

なお、21整備箇所において上記のように炊事機器が過大に整備されている事態が見受けられる一方で、18刑事施設等以外の11刑事施設等が炊事機器を整備した整備箇所の中には、同種又は同等の能力を有する炊事機器が配置されているものの、21整備箇所と比較すると、その配置台数が整備箇所の給与対象人員からみて必ずしも十分なものとなっていない整備箇所も見受けられた。

(是正を必要とする事態)

以上のように、整備箇所において、炊事機器の能力、給与対象人員等に照らして、炊事機器の調達台数が過大となっている事態は適切とは認められず、是正を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、18刑事施設等において、炊事機器の能力、給与対象人員等を踏まえた経済的な調達を行うことについての検討が十分でなかったことにもよるが、貴省において、炊事機器の整備に当たって、整備箇所の職員定員、被収容者の収容定員等を考慮して十分な検討を行い、整備箇所の規模等に応じた台数を整備することの必要性についての認識が欠けていたことなどによるものと認められる。

3 本院が要求する是正の処置

大規模地震等の災害に対する防災対策の充実強化は、我が国の喫緊の課題である一方、近年の厳しい財政状況の下、防災用物品の調達については、必要な物品を必要な箇所に整備するなど限られた予算の効果的な執行が特に求められている。

ついては、貴省において、刑事施設等に配置する炊事機器の台数を施設の規模等に応じたものとすることにより、災害時に必要とされる施設において有効に活用されるよう、炊事機器の配置について、整備箇所の職員定員、被収容者の収容定員等を考慮して十分に検討を行い、他整備箇所への管理換等の方針を策定するよう是正の処置を要求する。