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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第10 厚生労働省 |
  • 不当事項 |
  • 保険料

健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの[厚生労働本省](52)


会計名及び科目
年金特別会計(健康勘定)(款)保険収入 (項)保険料収入 (厚生年金勘定) (款)保険収入 (項)保険料収入
部局等
厚生労働本省(平成21年12月31日以前は社会保険庁)
健康保険及び厚生年金保険の事業に関する事務の一部を委任又は委託している相手方
日本年金機構(平成22年1月1日以降)
保険料納付義務者
556事業主
徴収不足額
健康保険保険料 404,392,501円(平成21年度〜25年度)
厚生年金保険保険料 842,732,164円(平成20年度〜25年度)

1 保険料の概要

(1) 健康保険及び厚生年金保険

厚生労働省は、平成22年1月1日に社会保険庁が廃止されたことに伴い、従来、社会保険庁が所掌していた健康保険及び厚生年金保険の事業に関する事務を所掌している。そして、同省は、当該事業に関する事務の一部を日本年金機構(以下「機構」という。)に委任又は委託して、機構は、同省の監督の下に、本部、全国9ブロック本部、312年金事務所等において当該委任又は委託された事務を実施している。

健康保険は、常時従業員を使用する事業所の従業員を被保険者として、業務外の疾病、負傷等に関して医療、療養費、傷病手当金等の給付を行う保険である。また、厚生年金保険は、常時従業員を使用する事業所の70歳未満の従業員を被保険者として、老齢、死亡等に関して年金等の給付を行う保険である。

そして、事業所に使用される従業員のうち、いわゆるパートタイム労働者等の短時間就労者については、労働時間、労働日数等からみて当該事業所に常用的に使用されている場合には被保険者とすることとされている。

(2) 保険料の徴収

保険料は、被保険者と事業所の事業主とが折半して負担し、事業主が納付することとなっている。

そして、事業主は、年金事務所(21年12月31日以前は、社会保険庁地方社会保険事務局の社会保険事務所又は地方社会保険事務局社会保険事務室)に対して、健康保険及び厚生年金保険に係る次の届け書を提出することとなっている。

  • ① 新たに従業員を使用したときなどには、資格取得年月日、報酬月額等を記載した被保険者資格取得届
  • ② 被保険者が退職等により資格を喪失したときには、資格喪失年月日等を記載した被保険者資格喪失届
  • ③ 毎年7月には、同月1日現在において使用している被保険者の報酬月額等を記載した被保険者報酬月額算定基礎届
  • ④ 被保険者の報酬月額が所定の範囲以上に増減したときには、変更後の報酬月額等を記載した被保険者報酬月額変更届
  • ⑤ 賞与を支給したときには、被保険者の賞与額等を記載した被保険者賞与支払届

これらの届け書の提出を受けた年金事務所は、その記載内容を審査するとともに、届け書に記載された被保険者の報酬月額に基づいて標準報酬月額(注1)を、また、被保険者の賞与額に基づいて標準賞与額(注2)を、それぞれ決定してこれらに保険料率を乗じて得た額を保険料として算定している。厚生労働本省(以下「本省」という。)は、その算定した額を保険料として調査決定するなどして徴収している(21年12月31日以前は、社会保険事務所等がこれを行っていた。)。

保険料の24年度の収納済額は、健康保険保険料7兆8659億余円、厚生年金保険保険料24兆1549億余円、計32兆0209億余円に上っている。

(注1)
標準報酬月額  健康保険では第1級58,000円から第47級1,210,000円まで、厚生年金保険では第1級98,000円から第30級620,000円までの等級にそれぞれ区分されている。被保険者の標準報酬月額は、実際に支給される報酬月額をこの等級のいずれかに当てはめて決定される。
(注2)
標準賞与額  各被保険者の賞与額から千円未満の端数を切り捨てた額で、健康保険では1か年度の支給累計額で540万円、厚生年金保険では1回の支給につき150万円がそれぞれ上限とされている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、被保険者資格取得届等の提出が適正になされているかなどに着眼して、9ブロック本部の管轄区域内に所在する215年金事務所において、短時間就労者を多数使用していると見込まれるなどの1,705事業主を対象として、20年度から25年度までの間における保険料の徴収の適否について検査した。

検査に当たっては、本省において、機構本部から提出された保険料の調査決定等の基礎となる書類により、また、上記の215年金事務所において、事業主から提出された健康保険及び厚生年金保険に係る届け書等の書類により会計実地検査を行い、適正でないと思われる事態があった場合には、更に年金事務所に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 検査の結果

検査の結果、9ブロック本部の管轄区域内に所在する175年金事務所が管轄する1,491事業所の事業主のうち556事業主について、徴収額が1,247,124,665円(健康保険保険料404,392,501円、厚生年金保険保険料842,732,164円)不足していて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業主が制度を十分理解していなかったり、誠実でなかったりして、次のように届出を適正に行っていなかったのに、上記の175年金事務所において、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったこと、また、本省において機構に対する監督が十分でなかったことによると認められる。

  • ア 被保険者資格取得届の提出を怠っていたもの

    372事業主 徴収不足額 1,085,371,274円

  • イ 資格取得年月日の記載が事実と相違していたもの

    62事業主 徴収不足額 89,225,504円

  • ウ 被保険者賞与支払届の提出を怠っていたものなど

    122事業主 徴収不足額 72,527,887円

徴収不足額の大部分を占める被保険者資格取得届の提出を怠っていた事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

A会社は、娯楽業の業務に従事する従業員299人を使用していた。同会社の事業主は、これらの従業員のうち220人については勤務時間が短く常用的な使用でないなどとして、年金事務所に対して被保険者資格取得届を提出していなかった。

しかし、上記の220人について調査したところ、同会社はこのうち56人を常用的に使用しており、被保険者資格取得届を提出すべきであった。

このため、健康保険保険料11,397,657円、厚生年金保険保険料19,031,120円、計30,428,777円が徴収不足になっていた。

なお、これらの徴収不足額については、本院の指摘により、全て徴収決定の処置が執られた。

これらの徴収不足額及び徴収過大額を労働局ごとに示すと次のとおりである。

ブロック本部名 年金事務所 本院の調査に係る事業主数 徴収不足があった事業主数 徴収不足額
健康保険保険料 厚生年金保険保険料
千円 千円 千円
北海道 札幌東等10 74 17 3,331 14,002 17,334
東北 青森等7 97 22 24,554 33,879 58,433
北関東・信越 水戸南等19 201 92 50,917 149,954 200,871
南関東 幕張等38 274 112 93,060 267,345 360,406
中部 岐阜南等24 162 62 33,588 62,559 96,147
近畿 大津等34 257 95 66,561 105,822 172,383
中国 広島東等12 119 43 28,689 40,514 69,203
四国 徳島南等6 71 21 8,023 13,475 21,499
九州 東福岡等25 236 92 95,664 155,178 250,843
175か所 1,491 556 404,392 842,732 1,247,124