ページトップ
  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第15 防衛省 |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(6) 会社に保管させている航空機用エンジンについて、物品管理法等に基づき品目、数量及び保管期間を明確にするとともに、会社への引渡しを計画的に行うことにより、保管期間の長期化を防止するよう改善させたもの


会計名目
一般会計
部局等
航空幕僚監部、航空自衛隊補給本部、航空自衛隊第2補給処
物品の分類
(分類)防衛本省 (細分類)防衛用品 (品目)防衛用航空機用機器
契約の概要
オーバーホール等が見込まれる航空機用エンジンを会社に無償で保管させるもの
無償保管契約に基づき会社に保管させていたエンジンの台数及び物品管理簿上の価格
81台 161億5912万余円(平成24年12月末現在)
上記のうち会社に1年以上保管させていたエンジンの台数及び物品管理簿上の価格
62台  124億3169万円

1 航空機用エンジンの管理等の概要

(1) 航空機用エンジンの概要

航空自衛隊は、各種航空機を多数運用しており、航空機用エンジン(以下「エンジン」という。)が所定の使用時間に達するなどした場合には、信頼性の維持等を目的に、分解、点検、修理等を行う一連の作業(以下「オーバーホール」という。)等を、エンジンを製造等した会社(以下「会社」という。)に委託して実施している(以下、オーバーホール等を実施するために締結する契約を「オーバーホール等契約」という。)。そして、オーバーホール等のために航空機から取り外されたエンジンは、国の物品として、物品管理法(昭和31年法律第113号)等に基づき管理することとされている。

(2) 国以外の者の施設における物品の管理

物品管理法では、国の物品は国の施設において保管することが原則となっているが、同法第22条ただし書の規定において、「物品管理官が国の施設において保管することを物品の供用又は処分の上から不適当であると認める場合その他特別の理由がある場合は、国以外の者の施設に保管することを妨げない」と定められている。そして、国以外の者の施設において国の物品を保管しようとする場合は、物品管理法施行令(昭和31年政令第339号)により、当該物品の品目、数量、保管期間等を明らかにして、国以外の者と契約をするなど保管のために必要な措置を講ずることとされている。

物品管理官の事務の一部を分掌する航空自衛隊第2補給処長は、オーバーホール等契約の締結から分解、点検、修理等の作業の着手までの期間を短縮し、円滑にオーバーホール等を実施するため、オーバーホール等契約の締結前にエンジンを会社に引き渡して会社において保管することが合理的であり、物品管理法第22条ただし書に規定する特別の理由に該当するとして、毎年度、会社と無償保管契約を締結した上で、オーバーホール等契約の締結前にオーバーホール等の対象となるエンジンを会社に引き渡し、会社の工場に保管させている。

また、平成18年に、企業に無償で保管させていた物品の一部が無断で廃棄されているなどの事態が明らかとなったことから、防衛省は、企業に無償で保管等させている物品の管理の適正化等を図ることを目的に各幕僚長等に通達を発し、保管の対象となる物品を主たる契約の履行に必要なものなどとしている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性等の観点から、会社に保管させているエンジンについて、物品管理法等に基づいた適切な手続及び管理が行われているか、年度ごとに締結するオーバーホール等契約の対象となる予定数量に基づき計画的に引き渡されているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、24年12月末現在において会社に無償で保管させているエンジン81台(物品管理簿上の価格計161億5912万余円)を対象として、航空幕僚監部、装備施設本部、航空自衛隊補給本部、航空自衛隊第2補給処等において、3会社との間の無償保管契約書、管理換票、物品管理簿等の関係書類を精査するとともに、このうち2会社において、保管させているエンジンを現地において確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、20年度から24年度までの各年度において第2補給処が各会社と締結していた無償保管契約の内容は、毎年度とも、オーバーホール等契約の締結前に引き渡す全てのエンジンを包括的に対象としていて、保管の対象となるエンジンの品目及び数量は明らかにされておらず、また、保管期間についても、引渡し後オーバーホール等契約が締結されるまでの間等とされており、個々のエンジンごとの保管期間は明らかにされていなかった。

そこで、会社に保管させているエンジンの実際の保管期間についてみたところ、第2補給処は、年度ごとに締結するオーバーホール等契約の対象となる予定数量に基づくことなく、所定の使用時間に達するなどしたエンジンを順次、会社に引き渡していたため、24年12月末現在において、会社に引き渡した後1年以上を経過しているにもかかわらずオーバーホール等契約を締結せずに会社に保管させたままとなっているエンジンが、62台(物品管理簿上の価格計124億3169万余円)見受けられた。このような事態は、円滑にオーバーホール等を実施するためという前記の特別の理由に沿った取扱いとなっておらず、適切でないと認められた。

このように、航空自衛隊において、多数のエンジンについて、品目、数量及び保管期間を明らかにしないまま、オーバーホール等契約を締結することなく、1年以上にわたって会社に保管させたままとなっている事態は、物品管理法等に違反するのみならず、会社における保管期間が長期にわたることにより、国以外の者の施設に保管させているエンジンに不測の事態が生ずるおそれが高まることから適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、航空自衛隊において、次のことなどによると認められた。

  • ア 国以外の者の施設に保管させる物品について、物品管理法等に基づき適切に管理することの重要性についての理解が十分でなかったこと
  • イ 無償保管契約が円滑にオーバーホール等を実施するために認められる例外的なものであることについての理解が十分でなく、年度ごとに締結するオーバーホール等契約の対象となる予定数量に基づくことなく、所定の使用時間に達するなどしたエンジンを順次、会社に引き渡していたこと

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、航空自衛隊は、会社に保管させるエンジンの管理の適正化を図るよう、次のような処置を講じた。

  • ア 25年9月に、無償保管契約に基づき会社に保管させているエンジンについて、各エンジンの品目、数量及び保管期間を会社に通知した。
  • イ 同月に、補給本部に通達を発するなどして、今後、エンジンの無償保管契約を会社と締結する際には、物品管理法等に基づき品目、数量及び保管期間を明確にするとともに、年度ごとに締結するオーバーホール等契約の対象となる予定数量等に基づき計画的な引渡しを行うことにより、会社における保管期間の長期化を防止することとした。