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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 厚生労働省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(2)緊急雇用創出事業の実施に必要な機器等をリースにより調達し、当該機器等を事業終了後も継続して使用することが見込まれる場合において、合理的な基準に基づいてリース期間を設定することを実施要領に明示することなどにより、同事業の対象経費となる機器等のリース料が適切に算定されるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)高齢者等雇用安定・促進費
(項)東日本大震災復旧・復興高齢者等雇用安定・促進費
部局等
厚生労働本省
補助の根拠
予算補助
補助事業者
6道県
補助事業の概要
緊急雇用創出事業臨時特例交付金の交付を受け、失業者に対する短期の雇用・就業機会を創出して提供するなどの事業を実施するための基金を造成するもの
緊急雇用創出事業の概要
民間企業への委託等により、失業者に対する短期の雇用機会の創出等を図るもの
上記事業の終了後に受託者等が自らの負担によるなどして行う事業に係るリース料を含めていた事業数及び事業費
22事業 39億3578万余円(平成23年度〜25年度)
上記の事業に対する緊急雇用創出事業臨時特例交付金相当額
39億3578万余円
過大に算定されていたと認められたリース料
6億4225万余円(平成23年度〜25年度)
上記のリース料に対する緊急雇用創出事業臨時特例交付金相当額
6億4225万円

1 制度の概要

(1)緊急雇用創出事業の概要

厚生労働省は、平成20年秋以降、深刻な経済不安を背景にして、派遣労働者のいわゆる雇止めなどの雇用不安が社会問題化するなど、地域の雇用情勢が全国的に急激に悪化したことから、20年度に都道府県に対して、「平成20年度緊急雇用創出事業臨時特例交付金交付要綱」(平成21年厚生労働省発職第0130003号)等に基づき緊急雇用創出事業臨時特例交付金(以下「緊急雇用交付金」という。)1500億円を交付し、その後、平成25年度第1次補正予算まで累次の追加交付を行い、累計で1兆5798億余円を都道府県に交付している。そして、緊急雇用交付金の交付を受けた都道府県は、これを原資として緊急雇用創出事業臨時特例基金(以下「基金」という。)を造成し、失業者に対する原則として1年以内の短期の雇用・就業機会を創出して提供するなどの緊急雇用創出事業(以下「基金事業」という。)を実施している(基金事業の実施期間、対象となる経費(以下「対象経費」という。)等については、前掲「緊急雇用創出事業臨時特例交付金及びふるさと雇用再生特別交付金により造成した基金を活用して実施した事業において基金を補助の目的外に使用していたもの」参照)。

なお、25年度末時点での基金残高は、3779億0580万余円となっている。

(2)緊急雇用創出事業に必要となる機器等の取扱い

厚生労働省が定めた「緊急雇用創出事業実施要領」(平成21年職発第0130008号。以下「実施要領」という。)等によれば、基金事業を実施する場合に基金事業を受託した民間企業等(以下「受託者」という。)や自ら失業者を雇い入れて事業を実施する各都道府県及び各市町村等(以下、受託者と合わせて「受託者等」という。)が取得する財産は、取得価格等が50万円未満のものとし、50万円以上の財産の取得は認めないこととされている。そして、基金事業を実施する上で50万円以上の機器等を必要とする場合は、原則としてリース等により調達することとされているが、厚生労働省は、実施要領等において、基金事業の対象経費となる機器等のリース料の算定に用いるリース期間の設定方法については、明示していない。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、基金事業の対象経費となる機器等のリース料の算定に係るリース期間は適切に設定され、リース料が適切に算定されているかなどに着眼して、厚生労働本省、7道県(注1)及び5県(注2)管内の13市町において、23年度から25年度までの間に実施された基金事業を対象として、実績報告書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、7道県及びその管内の56市町村(上記5県管内の13市町を含む。)において実施された基金事業のうち、契約金額が100万円以上のリース契約を締結していて、当該リース契約に係るリース料を対象経費として計上している175事業(事業費計117億5307万余円、このうち機器等に係るリース料計13億1660万余円)を対象として、リース契約に関する調書の提出を受けて、その内容を確認するなどの方法により検査した。

(注1)
7道県 北海道、岩手、秋田、山形、山梨、愛媛、沖縄各県
(注2)
5県 岩手、秋田、山形、愛媛、沖縄各県

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

前記175事業のうち、3道県(注3)及び7道県管内の38市町村が委託するなどして実施した77事業(事業費計65億4392万余円、このうち基金事業の対象経費となるリース料計9億6427万余円)については、基金事業を開始するに当たり、事業を実施した道県又は市町村と受託者との間で締結された協定書等において、基金事業の終了後も受託者等が自らの負担によるなどして事業を継続して実施することが予定されていた。

そして、上記77事業のうち、道及び5県(注4)管内の17市町村(注5)が委託するなどして実施した22事業(事業費計39億3578万余円、このうち基金事業の対象経費となるリース料計7億7949万余円)については、機器等の使用可能年数として一般的に認められている「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和40年大蔵省令第15号)に定められた期間(以下「法定耐用年数」という。)よりも短期間となっている1年以内の事業期間又は当該事業期間内における当該機器等の使用期間(以下「事業期間等」という。)をリース期間と設定してリース料を算定しており、この額を基金事業の対象経費としていた。また、上記の22事業については、受託者等が基金事業の終了後も、リースにより調達された機器等をリース料の10分の1程度の低額で再リースしたり、低額で買い取ったりするなどして継続して使用していた。

しかし、基金事業において調達した機器等について、事業期間等をリース期間と設定しリース料を算定して、この額を基金事業の対象経費とすることは、基金事業の終了後に受託者等が自らの負担によるなどして行う事業で使用する当該機器等に係るリース料も基金事業の対象経費に含めることになる。このため、基金事業の終了後も受託者等が継続して使用する見込みのある機器等をリースにより調達する場合のリース料の算定に当たっては、事業期間等をリース期間として設定するのではなく、法定耐用年数等の合理的な基準に基づいてリース期間を設定し、事業期間等に発生した分のリース料のみを基金事業の対象経費とするのが適切であると認められる。

そして、前記の22事業について、リースにより調達された機器等の法定耐用年数をリース期間と設定しリース料を算定して事業期間等に発生するリース料のみを基金事業の対象経費とすると、のとおり、リース料は計1億3724万余円となり、当初基金事業の対象経費として計上したリース料計7億7949万余円との差額6億4225万余円は過大に算定されていたと認められた。

(注3)
3道県 北海道、岩手、沖縄両県
(注4)
5県 岩手、秋田、山形、愛媛、沖縄各県
(注5)
17 市町村 盛岡、花巻、北上、一関、釜石、二戸、奥州、にかほ、鶴岡、西予、名護各市、下閉伊郡山田、九戸郡洋野、雄勝郡羽後、国頭郡本部、島尻郡南風原各町、国頭郡今帰仁村

表 過大に算定されていた額の道県別内訳

(単位:件、千円)
道県 実施主体 事業数 事業費支払額   法定耐用年数をリース期間と設定し算定したリース料 過大額
基金事業の対象としたリース料(A)
(B) (A−B)
北海道 北海道 1 25,149 464 83 381
岩手県 盛岡市 2 423,456 173,058 36,213 136,845
花巻市 1 152,846 52,998 10,740 42,257
北上市 1 1,127,865 7,864 1,123 6,741
一関市 1 275,913 112,998 29,756 83,241
釜石市 1 21,043 5,836 273 5,563
二戸市 1 121,342 53,743 5,206 48,537
奥州市 1 339,595 132,993 19,743 113,250
山田町 1 430,593 18,808 2,522 16,285
洋野町 1 184,580 53,432 6,846 46,586
秋田県 にかほ市 3 409,499 31,761 2,744 29,016
羽後町 1 98,800 33,964 3,955 30,008
山形県 鶴岡市 1 129,913 51,675 10,599 41,075
愛媛県 西予市 1 118,518 40,297 5,961 34,336
沖縄県 名護市 1 30,543 2,434 289 2,145
今帰仁村 1 10,088 1,600 228 1,371
本部町 2 15,700 4,338 648 3,690
南風原町 1 20,333 1,223 305 917
1道17市町村 22 3,935,781 779,493 137,242 642,251

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

岩手県九戸郡洋野町は、平成24年度に、コールセンター業務等の実施によって、コールセンター等の情報通信技術を活用した新たな業種に対応できる人材を育成することを目的とする「コールセンター人材育成事業」を基金事業として契約金額1億8989万余円(変更契約金額2億2209万余円)で株式会社Aに委託し、同会社が当該事業を実施したことを確認して、1億8458万余円を同会社に支払っており、岩手県は同町に対して、基金を財源として同額の補助金を交付していた。そして、本件基金事業が開始される前の24年3月に同町と同会社との間で締結された「事業所立地に関する協定書」等において、同会社が基金事業の終了後も自らの負担によるなどしてコールセンター業務等を継続して実施することが予定されていた。

同会社は、コールセンター業務用機器等のリース料について、法定耐用年数(6年等)よりも短期間となっている基金事業の期間内の使用期間(以下「使用期間」という。)である8か月をリース期間と設定し5343万余円と算定して、同額を基金事業の対象経費としていた。

しかし、基金事業において調達した機器等について、使用期間をリース期間と設定しリース料を算定して、この額を基金事業の対象経費とすることは、基金事業の終了後に同会社が自らの負担によるなどして行う事業で使用する当該機器等に係るリース料も基金事業の対象経費に含めることになる。

このように、前記の22事業において基金事業の終了後に受託者等が自らの負担によるなどして行う事業で使用するリース機器等に係る経費分も含めて基金事業の対象経費としていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、厚生労働省において、基金事業に必要となる機器等をリースにより調達する場合に、基金事業の対象経費となる機器等のリース料の算定に用いるリース期間の設定方法を実施要領等に明示していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、厚生労働省は、27年5月に実施要領を改正して、委託者と受託者との間で文書等により基金事業の終了後における当該基金事業によらない事業の継続について合意があったとみなされる場合は、原則としてリース物件の法定耐用年数をリース期間として設定し、リース期間を通じた均等払いとすることとして、事業期間等に発生した分のリース料のみを基金事業の対象経費とすることを実施要領に明示するなどし、同年4月1日に遡及して適用することとして、都道府県等に対して周知を図る処置を講じた。