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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第44 独立行政法人国立病院機構|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

独立行政法人国立病院機構病院が重症心身障害者等に負担を求める日用品費について、負担を求める趣旨等を周知するとともに、患者負担額の具体的な算定方法等を周知するなどして患者負担額を適切に算定できるよう是正改善の処置を求めたもの


科目
その他医業収益
部局等
独立行政法人国立病院機構本部、5病院
日用品費の概要
重症心身障害者及び重症心身障害児に対して、機能訓練、日常生活上の世話等を行う療養介護に係る障害福祉サービス等として、紙おむつ、衛生用品等の日用品を提供したり、衣類等に係る洗濯等のサービスを提供したりするために要する費用
検査の対象
12病院
12病院における平成24、25両年度の日用品費の実支出額
3億7609万余円
12病院において平成25、26両年度に収入として計上された患者負担額
1億2989万余円
患者負担額を過小に算定していた病院数
5病院
過小に算定されていた患者負担額
2750万円(平成25、26両年度)

【是正改善の処置を求めたものの全文】

重症心身障害者等の日用品費に係る患者負担額の算定について

(平成27年10月13日付け 独立行政法人国立病院機構理事長宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 日用品費の概要

貴機構は、独立行政法人国立病院機構法(平成14年法律第191号)に基づき、医療の提供、医療に関する調査及び研究等を行っており、平成26年度末現在で143病院を設置している。そして、そのうちの73病院において、重症心身障害者及び重症心身障害児を受け入れている。

73病院では、入院している重症心身障害者及び重症心身障害児に対して、医療の提供を行うだけでなく、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17年法律第123号。平成25年3月31日以前は障害者自立支援法。以下「法」という。)等に基づき、機能訓練、日常生活上の世話等を行う療養介護に係る障害福祉サービス等(以下「療養介護サービス等」という。)として、生活支援員等による支援のほか、紙おむつ、衛生用品等の日用品の提供及び衣類等に係る洗濯等のサービスの提供を行うなどしている。

そして、法等によれば、重症心身障害者及び重症心身障害児に療養介護サービス等の給付を行った病院等は、療養介護サービス等に要した費用に充てるために、当該重症心身障害者又は重症心身障害児の保護者(以下、両者を合わせて「重症心身障害者等」という。)の居住地の市町村(特別区を含む。)又は都道府県から重症心身障害者等に支給されることとなる介護給付費等の支払を受けることができるとされている。また、病院等は、上記の日用品及びサービスの提供に要する費用(以下「日用品費」という。)のうち介護給付費等により賄われる額を超える部分については、重症心身障害者等に負担を求めることができるとされている。

このため、貴機構本部は、18年7月に各病院に対して「障害者自立支援法の施行に伴う日用品費等の取扱いについて」(平成18年総発0721001号、医発0721002号。以下「日用品費通知」という。)を発出し、重症心身障害者及び重症心身障害児が日常共通的に使用する日用品等の病院全体で一括して準備するものについては、重症心身障害者等に均等に割り振った額の負担を求めることとしている。そして、当該金額が、介護給付費等のうち日用品費に充当する額として定めた10,000円(月額)を超えない場合は負担を求めないこととし、これを超える場合についてのみ重症心身障害者等に当該超える部分(以下「患者負担額」という。)の負担を求めることとしている。また、患者負担額の変更は、年度ごとに行うこととしている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性等の観点から、患者負担額が適正に算定されているかなどに着眼して、73病院のうちの12病院(注1)において、24、25両年度の日用品費計3億7609万余円及び25、26両年度に収入として計上された患者負担額計1億2989万余円を対象として、日用品の購入契約書、重症心身障害者等宛ての患者負担額に係る請求書の写しなどを確認するなどして、会計実地検査を行った。

(注1)
12病院  甲府病院、まつもと医療センター中信松本病院、新潟病院、さいがた医療センター、北陸病院、あわら病院、福井病院(平成27年4月1日以降は敦賀医療センター)、紫香楽病院、賀茂精神医療センター、福岡東医療センター、肥前精神医療センター、琉球病院

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

12病院は、18年7月の日用品費通知を受けて、患者負担額を徴収するに当たり、前年度の日用品費の実支出額に基づいて算定した日用品費の月額金額から、介護給付費等のうち日用品費に充当する10,000円を控除した金額を当該年度の患者負担額にすることなどとして、18年度の患者負担額を徴収していた。

しかし、このうち5病院(注2)(25年度は肥前精神医療センターを除いた4病院)は、19年度以降、患者負担額の見直しを行っていなかったため患者負担額を変更していなかったり、患者負担額の変更は行っていたものの日用品費である洗濯代の一部を日用品費の実支出額に含めていなかったりしていた。そこで、25、26両年度について、それぞれ前年度の日用品費の実支出額に基づき算定した患者負担額の合計額と、実際に収納した患者負担額の合計額とを比較したところ、25年度1340万余円、26年度1409万余円、計2750万余円過小となっていた。

(注2)
5病院  新潟病院、さいがた医療センター、賀茂精神医療センター、福岡東医療センター、肥前精神医療センター

<事例>

さいがた医療センター(上越市所在)は、平成18年10月に、1人当たりの日用品費の患者負担額を8,000円と定めて重症心身障害者等から毎月同額を徴収しており、25、26両年度において、それぞれ延べ948人の重症心身障害者等から、年度ごとに756万余円の患者負担額を徴収していた。しかし、同センターは、患者負担額の見直しを行っていなかったため、患者負担額を変更していなかった。そこで、それぞれの前年度である24、25両年度の日用品費の実支出額から25、26両年度の1人当たりの患者負担額を算定すると、それぞれ14,988円、14,124円となり、実際に徴収した患者負担額8,000円は、これに比べて25年度6,988円、26年度6,124円少額となっていた。このため、25年度662万余円、26年度580万余円、計1243万余円が過小に算定されていた。

(是正改善を必要とする事態)

5病院において、患者負担額の見直しを行っていなかったことなどにより、重症心身障害者等に負担を求める日用品費を過小に算定している事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。

  • ア 5病院において、日用品費通知に従い、患者負担額の見直しを毎年度行う必要性についての理解が十分でないこと
  • イ 貴機構本部において、日用品費通知に患者負担額の具体的な算定方法等を示しておらず、各病院が患者負担額を算定するのに十分な内容となっていないこと、また、5病院に対する指導が十分でないこと

3 本院が求める是正改善の処置

73病院においては、今後も引き続き適切な療養介護サービス等を提供していくとともに、提供した日用品及びサービスに応じた適切な負担を求めることが必要である。

ついては、貴機構において、重症心身障害者及び重症心身障害児を受け入れている73病院に対して、患者に負担を求める趣旨等を周知徹底するとともに、患者負担額の具体的な算定方法等を周知するなどして患者負担額を適切に算定できるよう、是正改善の処置を求める。