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厚生年金保険の老齢厚生年金の支給が適正でなかったもの[厚生労働本省](49)


会計名及び科目
年金特別会計(厚生年金勘定) (項)保険給付費
部局等
厚生労働本省
厚生年金保険の事業に関する事務の一部を委任し、又は委託している相手方
日本年金機構
支給の相手方
31人
老齢厚生年金の支給額の合計
38,128,912円(平成25年度~27年度)
不当と認める支給額
18,030,368円(平成25年度~27年度)

1 保険給付の概要

(1) 厚生年金保険の給付

厚生労働省は、厚生年金保険の事業に関する事務を所掌しており、当該事業に関する事務の一部を日本年金機構(以下「機構」という。)に委任し、又は委託している。そして、機構は、同省の監督の下に、本部、全国9ブロック本部(平成28年4月1日以降は本部に統合)、312年金事務所等において、当該委任され、又は委託された事務を実施している。

厚生年金保険(「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」参照)において行う給付には、老齢厚生年金等がある。

(2) 老齢厚生年金

ア 老齢厚生年金の支給の原則

老齢厚生年金では、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)により、厚生年金保険の適用事業所に使用された期間(以下「被保険者期間」という。)を1か月以上有し、老齢基礎年金に係る保険料納付済期間が25年以上ある者等が65歳以上である場合に受給権者となる。

イ 特別支給の老齢厚生年金

特別支給の老齢厚生年金では、当分の間の特例として、原則60歳以上で被保険者期間を1年以上有し、老齢基礎年金に係る保険料納付済期間が25年以上ある者等が受給権者となっている。

ウ 特別支給の老齢厚生年金の給付額

特別支給の老齢厚生年金の給付額は、受給権者の被保険者期間、被保険者期間における報酬、生年月日等を基に算定される額(以下「基本年金額」という。)などとなっている。

エ 特別支給の老齢厚生年金の支給の停止

特別支給の老齢厚生年金の受給権者が、厚生年金保険の適用事業所に常用的に使用されて被保険者となった場合において、総報酬月額相当額(注)と基本月額(基本年金額を12で除して得た額)との合計額が280,000円を超えるときなどには、基本年金額の一部又は全部の支給等を停止することとなっている。

そして、この場合の支給停止の手続は次のとおりとなっている。

① 厚生年金保険の適用事業所の事業主は、常用的に使用している者が受給権者であるときは、その者の年金手帳により氏名、基礎年金番号等を確認した上で、資格取得年月日、報酬月額等を記載した被保険者資格取得届を年金事務所に提出する。

② 年金事務所は、これを調査し確認した上で、届出内容を機構本部に伝達する。

③ 機構本部が届出内容に基づいて算定した受給権者に係る年金の支給停止額を厚生労働本省(以下「本省」という。)が確認し、決定する。

(注)
総報酬月額相当額  標準報酬月額と、受給権者が被保険者である日の属する月以前1年間の標準賞与額(総額)を12で除して得た額との合算額

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、厚生年金保険に係る届け書の提出が適正になされているかなどに着眼して、9ブロック本部の管轄区域内に所在する88年金事務所が管轄する事業所のうち、特別支給の老齢厚生年金の受給権者等を使用している159事業所について、25年度から27年度までの間における老齢厚生年金の支給の適否を検査した。

検査に当たっては、本省において機構本部から提出された関係書類により、また、上記の88年金事務所において事業主から提出された厚生年金保険に係る届け書等の書類により会計実地検査を行い、適正でないと思われる事態があった場合には、更に年金事務所に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 検査の結果

検査したところ、7ブロック本部の管轄区域内に所在する20年金事務所が管轄する26事業所の特別支給の老齢厚生年金等の受給権者31人については、当該事業所において常用的に使用されていて厚生年金保険の被保険者資格要件を満たしており、総報酬月額相当額と基本月額との合計額が280,000円を超えるなどしていた。このような場合には、機構本部において、基本年金額の一部又は全部の支給等を停止するための手続をとる必要があったのに、事業主から被保険者資格取得届が提出されていなかったことなどからこの手続がとられておらず、本省は、これらの31人について、基本年金額の一部又は全部の支給等を停止していなかった。

このため、上記の31人に対する老齢厚生年金の支給(支給額38,128,912円)のうち18,030,368円については、支給が適正でなく、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、受給権者又は事業主が制度を十分理解していないなどしていて、事業主が前記の届出を適正に行っていなかったのに、前記の20年金事務所においてこれについての指導及び調査確認が十分でなかったこと、また、本省において機構に対する監督が十分でなかったことによると認められる。

なお、これらの適正でなかった支給額については、本院の指摘により、全て返還の処置が執られた。

これらの適正でなかった支給額をブロック本部ごとに示すと次のとおりである。

ブロック本部名 年金事務所 本院の調査に係る受給権者等数 不適正受給権者数 左の受給権者に係る支給額 左のうち不当と認める支給額
      千円 千円
東北 米沢 1 18 5 2,636 960
北関東・信越 宇都宮西等 5 41 9 11,298 6,061
南関東 平塚等 3 9 3 3,350 1,755
中部 静岡 1 10 1 2,503 1,365
近畿 天王寺等 5 47 7 14,299 5,488
四国 高松西等 3 20 4 2,538 1,443
九州 西福岡等 2 13 2 1,500 957
20か所 158 31 38,128 18,030