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  • 平成28年2月|

「社会資本整備総合交付金等による事業等の実施状況について」


3 検査の状況

総合交付金は、前記のとおり、地方公共団体等が作成した整備計画ごとに自らが目標を設定したり、事後評価を実施したりなどする制度であることなどから、検査の状況における各事態については、主に整備計画単位及び評価指標単位で分析した。

(1)整備計画の作成状況等

ア 整備計画の作成主体

整備計画の作成主体についてみると、前記の2,828計画のうち、単独の地方公共団体等で作成しているものが2,402計画、複数の地方公共団体等で作成しているものが426計画となっており、多くの整備計画は単独の地方公共団体等が作成している状況となっていた。また、426計画についてみたところ、その多くは、都道府県が作成主体となり管内市区町村等分を取りまとめて作成している状況となっていた。

イ 整備計画の作成に当たっての検討

(ア)社会資本整備に対するニーズ調査又は民間等の活動との連携等の実施状況

整備計画の作成に当たっては、地域住民等の意向や合意形成等を踏まえた事業実施の確実性や、民間等の活動との連携等による事業効果発現の確実性を検証することが求められる。また、年次報告書においても、最大限の成果を挙げるために掲げる目標は、国民のニーズに真に対応したものでなくてはならないとなっていることなどを踏まえると、総合交付金による社会資本整備においても、地域住民等の意向を把握した上で整備計画を作成することが重要であると考えられる。

そこで、2,828計画のうち、長寿命化計画の策定等のみで社会資本整備を実施することとしていない31計画を除いた2,797計画における社会資本整備に対する地域住民等のニーズ調査又は民間等の活動との連携等の実施状況についてみると、表2のとおり、地方公共団体等は、1,702計画(60.9%)においてニーズ調査を実施したり、地域を代表する団体と協力してまちづくりを実施するなどの民間等の活動との連携等を実施したりしていた。一方、1,095計画(39.1%)においてはニーズ調査、民間等の活動との連携等を実施していなかった。このうち、761計画(27.2%)については、地方公共団体等が点検等により把握した施設の安全性の確保が地域住民等のニーズに優先するなどのためとしていたが、334計画(11.9%)については、統計等から地域住民等のニーズを推測していたり、特段の理由もなくニーズ調査を実施していなかったりなどとしていて、地域住民等の意向の把握や民間等の活動との連携等を図って整備計画に反映しているか不明な状況となっていた。

表2 社会資本整備に対するニーズ調査又は民間等の活動との連携等の実施状況

主たる事業区分


整備
計画数



(a)

ニーズ調
査又は民
間等の活
動との連
携等の実

注(2)

ニーズ調
査、民間
等の活動
との連携
等の未実

整備計画
作成時に
ニーズ調
査実施
上位計画
等の作成
時にニー
ズ調査実
民間等の
活動との
連携等の
実施
点検等に
より把握し
た施設の
安全性の
面から事
業実施等
統計等か
ら地域住
民等の
ニーズを
推測等
注(3)
(b)
左の割合




(b)/(a)
①道路事業 564 321 52 152 117 243 186 57 (10.1%)
②港湾事業 86 65 25 27 13 21 16 5 (5.8%)
③河川事業 45 28 2 13 13 17 15 2 (4.4%)
④砂防事業 14 4 0 0 4 10 6 4 (28.6%)
⑤地すべり対策事業 2 1 0 0 1 1 1 0 (0.0%)
⑥急傾斜地崩壊対策事業 4 2 1 0 1 2 2 0 (0.0%)
⑦下水道事業 539 228 42 112 74 311 243 68 (12.6%)
⑧その他総合的な治水事業 10 10 3 3 4 0 0 0 (0.0%)
⑨海岸事業 34 26 5 15 6 8 7 1 (2.9%)
⑩都市再生整備計画事業 716 595 198 197 200 121 41 80 (11.2%)
⑪広域連携事業 35 15 1 10 4 20 3 17 (48.6%)
⑫都市公園等事業 308 152 35 77 40 156 110 46 (14.9%)
⑬市街地整備事業 174 92 26 34 32 82 65 17 (9.8%)
⑭都市水環境整備事業 9 7 2 3 2 2 1 1 (11.1%)
⑮地域住宅計画に基づく事業 143 70 19 37 14 73 48 25 (17.5%)
⑯住環境整備事業 114 86 28 32 26 28 17 11 (9.6%)
2,797 1,702 439 712 551 1,095 761 334 (11.9%)
注(1)
複数の基幹事業を実施することとしている整備計画については、整備計画における基幹事業の計画額が最も大きい事業を主たる事業として区分している(以下同じ。)。
注(2)
ニーズ調査又は民間等の活動との連携等の実施の内訳については、1計画1回答としているため、「ニーズ調査」と「民間等の活動との連携等」の両方を実施しているものを含んでいる。
注(3)
特段の理由もなくニーズ調査を実施していないなどの理由を含んでいる。
以上のことから、整備計画の作成に当たっては、必要に応じて、ニーズ調査による地域住民等の意向を把握したり、民間等の活動との連携等を検討したりして、これらを整備計画に反映するよう努める必要がある。
(イ)費用便益比の算出状況

国土交通省所管の補助事業については、公共事業の効率性及びその実施過程の透明性の一層の向上を図るために、「国土交通省所管公共事業の新規事業採択時評価実施要領」(以下「採択時要領」という。)等に基づいて、新規事業を評価の対象として、費用便益比(以下「B/C」という。)を算出するなどしている。

総合交付金による交付対象事業は、採択時要領等における評価の対象となっていないものの、2,828計画のB/Cの算出状況についてみると、表3のとおり、交付対象事業の効率性の検証にB/Cを用いていたり、B/Cの算出方法の一部を活用して評価指標を設定していたりしていた整備計画は855計画(30.2%)であった。

表3 交付対象事業に係るB/Cの算出状況

主たる事業区分 整備
計画数

B/Cの
算出有り

B/Cの算出
方法の一部を
活用して評価
指標を設定
①道路事業 564 243 105
②港湾事業 87 31 13
③河川事業 45 30 23
④砂防事業 14 14 10
⑤地すべり対策事業 2 2 2
⑥急傾斜地崩壊対策事業 4 4 4
⑦下水道事業 542 104 68
⑧その他総合的な治水事業 10 8 4
⑨海岸事業 34 15 8
⑩都市再生整備計画事業 721 174 55
⑪広域連携事業 35 23 0
⑫都市公園等事業 323 90 24
⑬市街地整備事業 180 51 13
⑭都市水環境整備事業 9 2 0
⑮地域住宅計画に基づく事業 143 23 2
⑯住環境整備事業 115 41 19
2,828 855 350

効率性を検証する方法には、B/C以外の方法もあるが、要綱において、交付対象事業は、効果的かつ効率的に行われる必要があると認められるものであることに留意するものとなっていること、B/Cが効率性を検証する方法として確立されていることなどから、交付対象事業の効率性の検証にB/Cを用いることが有益な場合もあると思料される。

上記について、事例を示すと次のとおりである。

<参考事例1>B/Cを用いて交付対象事業の効率性を検証しているもの

青森県は、計画期間を平成22年度から26年度までとする整備計画「青森県における海岸整備の推進(防災・安全)」において、基幹事業を海岸事業として横道海岸高潮対策事業等を実施し、津波、高潮及び波浪による災害から一定の水準の安全性が確保されていない地域の面積(以下「浸水面積」という。)を減少させるなどの評価指標を設定し、計画額を70億3200万円としていた。

そして、同県は、公共事業の効率性及びその実施過程の透明性の一層の向上を図るため、「青森県公共事業に係る事前評価及び継続評価の実施に関する要綱」(平成15年9月青森県制定)等に基づき、「海岸事業の費用便益分析指針」(平成16年6月農林水産省農村振興局、同省水産庁、国土交通省河川局、同省港湾局。以下「指針」という。)等を用いて、各海岸のB/Cを算出し、指針等におけるB/Cの便益算出過程で求められた浸水面積の減少量を活用して評価指標を設定するなどしていた。

ウ 評価指標の設定状況、内容等

(ア)評価指標の変化量に影響しない基幹事業の要素事業

2,828計画における評価指標数は、計7,862指標となっており、基幹事業の要素事業数は、計65,827事業となっている。

要綱によると、整備計画においては、評価指標により交付対象事業の目的を適 切に表現することに留意することなどとなっている。そのため、地方公共団体等は、評価指標の設定に当たっては、交付対象事業の目的を達成するために実施する基幹事業の要素事業が評価指標に及ぼす影響を考慮する必要があると考えられる。

そこで、基幹事業の要素事業の実施が評価指標の当初現況値から最終目標値までの変化量(以下「変化量」という。)に及ぼす影響についてみたところ、表4のとおり、評価指標の変化量に影響しない基幹事業の要素事業が532計画計7,285事業(65,827事業の11.1%)あった。

表4 評価指標の変化量に影響しない基幹事業の要素事業が含まれる整備計画

主たる事業区分 整備
計画数

評価指標の変
化量に影響し
ない基幹事業
の要素事業が
含まれる整備
計画数

基幹事業の要素事
業数
(a)
評価指標の変化量
に影響しない基幹
事業の要素事業数
(b)
左の割合
(b)/(a)
①道路事業 564 36,955 130 4,982 (13.5%)
②港湾事業 87 1,912 19 123 (6.4%)
③河川事業 45 1,976 15 160 (8.1%)
④砂防事業 14 1,357 3 13 (1.0%)
⑤地すべり対策事業 2 21 0 0 (0.0%)
⑥急傾斜地崩壊対策事業 4 539 1 23 (4.3%)
⑦下水道事業 542 10,102 151 1,099 (10.9%)
⑧その他総合的な治水事業 10 665 4 13 (2.0%)
⑨海岸事業 34 258 6 40 (15.5%)
⑩都市再生整備計画事業 721 6,257 57 223 (3.6%)
⑪広域連携事業 35 1,399 0 0 (0.0%)
⑫都市公園等事業 323 1,532 50 101 (6.6%)
⑬市街地整備事業 180 678 24 64 (9.4%)
⑭都市水環境整備事業 9 28 1 1 (3.6%)
⑮地域住宅計画に基づく事業 143 1,614 56 409 (25.3%)
⑯住環境整備事業 115 534 15 34 (6.4%)
2,828 65,827 532 7,285 (11.1%)

評価指標の変化量に影響しない基幹事業の要素事業について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>評価指標の設定に当たり、基幹事業の要素事業が評価指標の変化量に及ぼす影響を考慮していないもの

神奈川県海老名市は、計画期間を平成23年度から27年度までとする整備計画「海老名市の公共下水道における防災・安全の実現」において、下水道施設の長寿命化を実現することにより延命化を図るとともに耐震化を行うための管渠耐震対策等の要素事業計5事業を基幹事業である下水道事業として実施することとして、これにより耐震対策済み管渠延長を6%増加させるなどの評価指標の変化量を設定し、計画額を計3億7300万円としていた。

しかし、上記5事業のうち、2事業(計画額計2億4200万円)については、マンホール蓋の改築等であり、当該事業は評価指標として設定されている耐震対策済み管渠延長の変化量に影響しないものであった。

以上のことから、整備計画の作成に当たっては、基幹事業の要素事業の実施が評価指標の変化量に影響を及ぼすよう考慮して評価指標を設定し、交付対象事業の目的を適切に表現する必要がある。

(イ)評価指標の内訳とアウトプット指標等
a 国土交通省の評価指標に対する考え方

前記のとおり、国土交通省は、総合交付金の創設に当たり、従来の個々の事業のアウトプットに着目していたものを整備計画全体としてのアウトカムに着目するものとすることとしている。そのため、評価指標についてもアウトカムに着目したものであることが望ましいとしている。そして、同省は、広域連携事業の評価指標については、「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の施行について(技術的助言)」(平成19年国計調第20号国土交通事務次官通知)において観光入込客数等を参考として示したり、下水道事業の評価指標については、下水道処理人口普及率等の参考となる評価指標を記載した「全国下水道主管課長会議資料(平成22年4月23日)」を地方公共団体等へ配布したりするなど、評価指標の考え方を広く周知するなどしていた。

一方、同省は、これらのアウトカムに着目した評価指標の設定方法や変化量の算定方法については、評価指標を設定する際の基準としてではなく、あくまで参考として紹介するなどにとどめており、具体的な評価指標が適切かどうかについては、整備計画の公表による地域住民等のチェック及び評価に委ねているため、地方公共団体等の責任の範囲で対応することになるとしている。

b 評価指標の内訳

地方公共団体等が設定した評価指標の設定根拠についてみると、前記の国土交通省が周知するなどした評価指標を根拠にしているもののほか、道路事業においては、「費用便益分析マニュアル」(平成20年11月国土交通省道路局、都市・地域整備局)を参考として算出した短縮される走行時間としているものや、河川事業においては、「治水経済調査マニュアル(案)」(平成17年4月国土交通省河川局)を参考として算出した浸水から防護する家屋数としているものなどがある一方、適切な評価指標を把握できないことなどから、事業の進捗状況を表す整備延長等をそのまま評価指標として設定しているものがあった。

そこで、前記の2,828計画計7,862指標の内訳についてみたところ、表5のとおり、事業の進捗に伴い結果的に増加する整備延長、整備箇所、整備数、整備面積等のうちの一つの要素のみを評価指標として設定しているもの(以下「アウトプット指標」という。)が1,393計画において計2,823指標(35.9%)あった。そして、観光入込客数や下水道利用可能人口等を評価指標としたもので地方公共団体等がアウトカムとして設定した評価指標(以下「アウトカム指標」という。)が1,900計画において計4,281指標(54.5%)あった。また、アウトプット指標に該当せず、かつ、地方公共団体等がアウトカム指標として設定していない評価指標(以下「その他の指標」という。)が495計画において計758指標(9.6%)あった。

表5 評価指標の内訳

主たる事業区分
整備計
画数

アウトプッ
ト指標を設
定した整備
計画数

アウトカム
指標を設定
した整備計
画数

その他の指
標を設定し
た整備計画

評価指
標数計

(a)=(b)+
(c)+(d)
アウトプッ
ト指標数

(b)
アウトカム
指標数

(c)
その他の
指標数

(d)
①道路事業 564 1,183 297 466 341 634 52 83
②港湾事業 87 293 75 195 46 82 10 16
③河川事業 45 169 39 106 23 52 6 11
④砂防事業 14 52 9 23 13 24 5 5
⑤地すべり対策事業 2 5 0 0 2 4 1 1
⑥急傾斜地崩壊対策事業 4 15 0 0 4 14 1 1
⑦下水道事業 542 1,591 347 849 320 551 132 191
⑧その他総合的な治水事業 10 38 7 23 6 12 2 3
⑨海岸事業 34 61 11 29 27 31 1 1
⑩都市再生整備計画事業 721 2,348 113 159 694 2,019 109 170
⑪広域連携事業 35 81 2 2 35 79 0 0
⑫都市公園等事業 323 815 256 496 143 221 67 98
⑬市街地整備事業 180 492 82 160 106 237 59 95
⑭都市水環境整備事業 9 19 4 8 5 9 2 2
⑮地域住宅計画に基づく事業 143 401 100 200 58 152 25 49
⑯住環境整備事業 115 299 51 107 77 160 23 32
2,828 7,862 1,393 2,823 1,900 4,281 495 758
(注)
一つの整備計画において、複数の評価指標があるため、整備計画数計とその内訳の計は一致しない。
c アウトプット指標のみを設定した整備計画

整備計画ごとの評価指標の設定状況についてみたところ、表6のとおり、アウトプット指標のみを設定したものが635計画(2,828計画の22.5%)計1,185指標あった。

表6 アウトプット指標のみを設定した整備計画

主たる事業区分 整備計画数

(a)
アウトプット指
標のみを設定し
た整備計画数
(b)

左の割合
(b)/(a)
アウトプット
指標数
①道路事業 564 190 (33.7%) 288
②港湾事業 87 35 (40.2%) 99
③河川事業 45 18 (40.0%) 34
④砂防事業 14 1 (7.1%) 3
⑤地すべり対策事業 2 0 (0.0%) 0
⑥急傾斜地崩壊対策事業 4 0 (0.0%) 0
⑦下水道事業 542 111 (20.5%) 233
⑧その他総合的な治水事業 10 3 (30.0%) 7
⑨海岸事業 34 6 (17.6%) 13
⑩都市再生整備計画事業 721 6 (0.8%) 10
⑪広域連携事業 35 0 (0.0%) 0
⑫都市公園等事業 323 142 (44.0%) 264
⑬市街地整備事業 180 33 (18.3%) 49
⑭都市水環境整備事業 9 2 (22.2%) 4
⑮地域住宅計画に基づく事業 143 66 (46.2%) 138
⑯住環境整備事業 115 22 (19.1%) 43
2,828 635 (22.5%) 1,185

そして、これらの整備計画におけるアウトプット指標の対象となっている要素事業により整備等される施設等についてみたところ、通学路における歩道や自らの点検による危険箇所とするなど、より重要で緊急性の高いものをアウトプット指標の対象として選定している整備計画もあったが、そのような検討が行われているか不明な整備計画もあった。

年次報告書において、アウトプットとアウトカムとの因果関係を説明できる場合は、アウトプットに着目した指標の設定も認められているが、アウトプット指標のみを設定した整備計画であってアウトカムとの因果関係を説明できないものは、従来の個々の事業のアウトプットに着目したものと同様であり、整備計画全体としてのアウトカムに着目したものとなっていないと認められる。

(ウ)アウトカム指標の内訳

アウトカム指標を設定した1,900計画計4,281指標の内訳についてみたところ、表7のとおり、道路事業における短縮される走行時間、河川事業における浸水から防護される区域面積、下水道事業における下水道利用可能人口等のように、地方公共団体等が、整備計画作成時において交付対象事業が評価指標の変化量に与える影響を一定の方法で計算するなどして設定したアウトカム指標(以下「計算等によるアウトカム指標」という。)が860計画において計1,426指標(33.3%)あった。

一方、観光地へ至る道路整備により増加する観光入込客数、施設整備により向上する地域住民等の満足度のように、交付対象事業が評価指標の変化量に与える影響を計算するための一定の方法がないため、地方公共団体等が最終目標値を予測するなどして設定したアウトカム指標(以下「予測等によるアウトカム指標」という。)が1,197計画において計2,855指標(66.7%)あった。

表7 アウトカム指標の内訳

主たる事業区分 整備計
画数

計算等によ
るアウトカ
ム指標を設
定した整備
計画数

予測等によ
るアウトカ
ム指標を設
定した整備
計画数

アウトカム
指標数計

(a)=(b)
+(c)
計算等によ
るアウトカ
ム指標数

(b)
予測等によ
るアウトカ
ム指標数

(c)
①道路事業 341 634 184 282 193 352
②港湾事業 46 82 24 35 30 47
③河川事業 23 52 21 46 4 6
④砂防事業 13 24 13 24 0 0
⑤地すべり対策事業 2 4 2 4 0 0
⑥急傾斜地崩壊対策事業 4 14 4 14 0 0
⑦下水道事業 320 551 319 538 11 13
⑧その他総合的な治水事業 6 12 6 12 0 0
⑨海岸事業 27 31 26 29 1 2
⑩都市再生整備計画事業 694 2,019 118 207 652 1,812
⑪広域連携事業 35 79 4 4 34 75
⑫都市公園等事業 143 221 71 100 83 121
⑬市街地整備事業 106 237 40 77 73 160
⑭都市水環境整備事業 5 9 1 1 4 8
⑮地域住宅計画に基づく事業 58 152 9 17 51 135
⑯住環境整備事業 77 160 18 36 61 124
1,900 4,281 860 1,426 1,197 2,855
(注)
一つの整備計画計において、複数の評価指標があるため、整備計画数計とその内訳の計は一致しない。

予測等によるアウトカム指標の変化量については、地方公共団体等が、当初現況値等を踏まえた想定により設定したり、上位計画の目標値と一致させて設定したり、過去の傾向から設定したりするなどしていた。

そこで、前記の1,197計画における当該評価指標の変化量に影響する地方単独事業、他の事業主体の事業、民間の活動等との関係についてみたところ、360計画(30.1%)において、地方公共団体等は、これらの事業の影響を当初から想定していたのに、当該整備計画にこれらの地方単独事業等を記載していなかった。このため、交付対象事業と評価指標の変化量との因果関係が明確となっていない状況となっていた。

また、予測等によるアウトカム指標については、次のような事態も見受けられた。

a 観光客の増加等を掲げている整備計画

予測等によるアウトカム指標において観光客の増加等を掲げている225計画計275指標についてみたところ、144計画における計177指標(64.4%)については、ターミナル駅や高道路のインターチェンジ等から、観光客が訪れると想定した名所旧跡等の観光地や観光施設(以下、これらを「観光拠点」という。)への道路の整備を含んでおり、99計画における計121指標(44.0%)については、観光拠点等の整備を含むなどの状況となっていた。

また、55計画における計64指標(23.3%)において、当初現況値の把握方法の検討が十分でなかったため、観光客が訪れると想定した観光拠点と当初現況値を把握した箇所とが一致していない状況が見受けられた。これらの当初現況値は、評価指標の変化量の算定の基礎となるのに、交付対象事業の実施により観光客が訪れると想定した観光拠点の当初の状況を明確に示しておらず、交付対象事業と評価指標の変化量との因果関係が明確となっていない状況となっていた。

上記の交付対象事業と評価指標の変化量との因果関係が明確となっていないものについて、事例を示すと次のとおりである。

<事例2>交付対象事業と評価指標の変化量との因果関係が明確となっていないもの

鹿児島県は、計画期間を平成25年度から29年度までとする整備計画「九州西南部地域における広域的な観光活性化」において、観光客が訪れると想定した観光拠点となるフラワーパークかごしまなど7か所に至る道路整備を基幹事業である広域連携事業として実施して、同県における延べ宿泊者数を当初現況値の年間524万人から最終目標値の年間550万人へ26万人増加させるなどの評価指標の変化量を設定し、計画額を39億7000万円としていた。

しかし、当初現況値を把握する際の箇所は、県内全域の従業者数10人以上の宿泊施設を対象とするなどしていた。このため、観光客が訪れると想定した観光拠点7か所と当初現況値を把握する際の箇所が一致していなかった。

b 満足度の増加等を掲げている整備計画

予測等によるアウトカム指標において地域住民等の満足度の増加等を掲げている410計画計554指標についてみたところ、当初現況値を設定するために用いた満足度調査等の回答数は19件から7,360件と相当程度の開差が見受けられた。また、満足度調査等は郵送や自治会等に依頼して把握するなどしていた。

そして、上記の満足度調査等における説明内容をみると、表8のとおり、上記の410計画計554指標のうち、112計画における計146指標(26.4%)については、交付対象事業について説明しており、具体的箇所、評価指標や事業効果等を説明しているものもあった。

表8 満足度調査等における交付対象事業の説明内容

区分

交付対象事
業の説明有

交付対象
事業の説
明無し
具体的箇
所、完成予
想図等
評価指標や
事業効果
事業費等
整備計画数 410 112 68 26 26 302
評価指標数 554 146 88 40 48 408
注(1)
一つの整備計画において、複数の評価指標があるため、整備計画数の計とその内訳の計は一致しない。
注(2)
交付対象事業の説明有りの数は、複数回答可としているため内訳の計と一致しない。

交付対象事業の内容を説明した満足度調査等により評価指標の当初現況値を算定しているものについて、事例を示すと次のとおりである。

<参考事例2>交付対象事業の内容を説明した満足度調査等により評価指標の当初現況値を算定しているもの

愛知県あま市は、計画期間を平成18年度から22年度までとする整備計画「甚目寺駅周辺地区都市再生整備計画」において、基幹事業として都市再生整備計画事業を実施し、駅前空間の利便性の満足度を5段階評価で当初現況値の1.8ポイントから最終目標値の3.5ポイントへ向上させる評価指標の変化量を設定し、計画額を28億7500万円としていた。

そして、同市は、17年度に、評価指標の設定のために、甚目寺駅周辺地区管内の住民2,000人を対象として、甚目寺駅周辺地区の現状、甚目寺駅前ロータリーの整備や自転車駐車場整備等の内容や概要図、計画額を1世帯当たりに換算するなどした額等を記載したアンケート調査を実施し、駅前空間の利便性の現状に対する満足度の回答を639人から提出を受けて、これに基づき当初現況値1.8ポイントを算定するなどしていた。

しかし、302計画における計408指標(554指標の73.6%)については、毎年行っている地方公共団体等の全般的な取組に関する地域住民等の意向調査等が満足度調査等を兼ねているなどしており、交付対象事業について説明していなかったことから、これらの満足度調査等により算定された当初現況値は、評価指標の変化量の算定の基礎となるのに、交付対象事業を実施する前の状況に対する満足度を明確に示していなかった。そのため、交付対象事業と評価指標の変化量との因果関係が明確となっていない状況となっていた。

エ 事前評価

(ア)事前評価の実施状況

前記のとおり、整備計画を作成して国土交通大臣に提出しようとする地方公共団体等は、事前評価を行うとともに、事前評価書を整備計画に添付することとなっている。そこで、2,828計画から特定計画527計画を除いた2,301計画における事前評価の実施状況についてみたところ、表9のとおり、2,114計画(91.9%)において事前評価を実施していたものの、このうち108計画(5.1%)については国土交通大臣に事前評価書を提出していなかった。また、187計画(2,301計画の8.1%)については事前評価を実施していなかった。そして、国土交通省は、上記の108計画と187計画の計295計画について、整備計画に事前評価書が添付されていないにもかかわらずそのまま確認せずに受領している事態が見受けられた。

表9 事前評価の実施状況

主たる事業区分 整備計画数
特定計画
特定計画
以外の整
備計画数

事前評価を
実施してい
たもの

事前評価を
実施してい
なかったも
うち国土交通大
臣へ事前評価
書を提出してい
なかったもの
①道路事業 564 122 442 375 66 67
②港湾事業 87 4 83 80 0 3
③河川事業 45 0 45 39 1 6
④砂防事業 14 0 14 14 0 0
⑤地すべり対策事業 2 0 2 2 0 0
⑥急傾斜地崩壊対策事業 4 0 4 4 0 0
⑦下水道事業 542 1 541 516 10 25
⑧その他総合的な治水事業 10 0 10 10 0 0
⑨海岸事業 34 1 33 32 0 1
⑩都市再生整備計画事業 721 303 418 410 6 8
⑪広域連携事業 35 18 17 16 0 1
⑫都市公園等事業 323 49 274 212 9 62
⑬市街地整備事業 180 1 179 169 16 10
⑭都市水環境整備事業 9 0 9 9 0 0
⑮地域住宅計画に基づく事業 143 28 115 114 0 1
⑯住環境整備事業 115 0 115 112 0 3
2,828 527 2,301 2,114 108 187
(イ)事前評価の結果
a 事前評価書の内容

前記のとおり、事前評価は、整備計画の目標の妥当性、整備計画の実現可能性等に関する項目を検証することになっている。そして、地方公共団体等は、国土交通省が示した様式を参考に、自主的・主体的に検証項目を設定したチェックシート形式の事前評価書を作成している。国土交通省が示した様式は、総合交付金創設時に、従来の交付金(まちづくり交付金、地域住宅交付金、地域自立・活性化交付金)で参考に示されていた様式を参考として同省のホームページで公表しているものである。また、Q&Aにおいて、検証項目については、①上位計画等との整合性、②地域の課題への対応、③整備計画の目標と定量的指標の整合性、④定量的指標の明瞭性、⑤整備計画の目標と事業内容の整合性、⑥事業の効果の見込みの妥当性、⑦円滑な事業執行の環境、⑧地元の機運の8事項が例示されている。

事前評価を実施した2,114計画のうち事前評価書で検証事項が確認できた1,993計画について、検証事項の設定及び検証状況をみたところ、上記の8事項全てを検証していたものが1,502計画(75.4%)、一部の事項について検証していなかったものが491計画(24.6%)となっていた。上記の8事項のうち、整備計画の目標と事業内容の整合性については、ほとんどの整備計画で検証していたが、地元の機運については、検証していなかった整備計画が多かった。

しかし、事前評価に当たっては、前記のとおり、地域住民等の意向や合意形成等を踏まえた事業実施の確実性を検証することが求められており、年次報告書においても、最大限の成果を挙げるために掲げる目標は、国民のニーズに真に対応したものでなくてはならないとなっていることなどから、評価内容が適切なものとなるよう国土交通省が例示した8事項を全て検証することが望まれる。

b 上位計画等との整合性について

Q&Aにおいて、整備計画の目標の妥当性の検証事項の一つとして上位計画等との整合性の確認が例示されているが、前記の1,993計画のうち上位計画等との整合性を確認していなかったものが77計画(3.9%)となっていた。また、上位計画等との整合性を確認していた1,916計画のうち、1,094計画(57.1%)において整合性を確認した上位計画等の名称を事前評価書に記載していなかった。

地方公共団体等が上位計画と位置付けている計画についてみたところ、国土利用計画法(昭和49年法律第92号)に基づいて作成された国土利用計画、重点計画法に基づいて作成された社会資本整備重点計画(以下「重点計画」という。)等、交付対象事業によって様々な計画が位置付けられていた。

これらのうち、重点計画は、社会資本について、計画期間中における整備の方向性を明確にし、整備に関する政策目標と国民が享受する成果を示すとともに、限られた財源の中で効果的かつ効率的に整備を実施するための取組を明らかにするものである。このため、重点計画に位置付けられている事業を交付対象事業として実施する場合には、整備計画において重点計画を上位計画と位置付けるとともに、事前評価において重点計画と整備計画との整合性を確認し、その結果を公表することが重要である。

そこで、重点計画に位置付けられている事業を交付対象事業としていて、地方公共団体等が重点計画を上位計画と位置付けている1,066計画について、重点計画との整合性の確認状況をみたところ、表10のとおり、確認していなかったものが647計画(60.7%)となっていた。また、確認していた419計画のうち、事前評価書に重点計画名を記載していなかったものが293計画(69.9%)となっていた。

表10 重点計画を上位計画と位置付けている整備計画の重点計画との整合性の確認状況

主たる事業区分 重点計画を
上位計画と
位置付けて
いる整備計
画数
(a)

重点計画との整合性の確認状況
確認してい
たもの

確認してい
なかったも

(b)

うち事前評価
書に重点計画
名を記載して
いなかったもの
左の
割合
(b)/(a)
①道路事業 253 149 104 104 (41.1%)
②港湾事業 58 21 7 37 (63.8%)
③河川事業 33 23 15 10 (30.3%)
④砂防事業 13 13 7 0 (0.0%)
⑤地すべり対策事業 2 0 0 2 (100.0%)
⑥急傾斜地崩壊対策事業 3 2 1 1 (33.3%)
⑦下水道事業 344 88 64 256 (74.4%)
⑧その他総合的な治水事業 10 5 2 5 (50.0%)
⑨海岸事業 22 11 6 11 (50.0%)
⑩都市再生整備計画事業 95 32 32 63 (66.3%)
⑪広域連携事業 14 12 3 2 (14.3%)
⑫都市公園等事業 104 24 18 80 (76.9%)
⑬市街地整備事業 59 16 12 43 (72.9%)
⑭都市水環境整備事業 6 6 6 0 (0.0%)
⑮地域住宅計画に基づく事業 23 7 7 16 (69.6%)
⑯住環境整備事業 27 10 9 17 (63.0%)
1,066 419 293 647 (60.7%)

以上のことから、交付対象事業の実施に当たっては、整備計画と上位計画等との整合性を確認することが必要であり、事前評価に当たっては上位計画等との整合性に関する検証事項を設定及び検証するとともに、整備計画と整合を図った上位計画等の名称を事前評価書に記載することも重要である。

オ 整備計画等の公表

(ア)公表状況

前記のとおり、整備計画は、地域住民等のチェック及び評価を受けるために公表することとなっており、その公表状況についてみたところ、表11のとおり、2,828計画から特定計画527計画を除いた2,301計画のうち、公表していたものは1,977計画(85.9%)、公表していなかったものは324計画(14.1%)となっていた。

表11 整備計画の公表状況














(a)

























(b)

公表方法







(b)/
(a)
(%)

ホー
ムペ
ージ




























掲載項目

































2,301 1,977 1,774 1,497 277 273 270 267 164 47 112 244 195 35 8 324 14.1
(注)
ホームページを含む複数の方法で公表している場合、公表方法はホームページとして集計している。
(イ)公表方法

事務連絡等において、整備計画は、ホームページ等を活用して地域住民等の目に触れやすい方法により公表することが望ましいとなっていることから、公表していた1,977計画における公表方法についてみたところ、表11のとおり、ホームページに整備計画書を掲載していたものは1,497計画(75.7%)、ホームページに整備計画の概要を掲載していたものは277計画(14.0%)、閲覧請求に応ずるなどとしていたものは195計画(9.9%)、その他は8計画(0.4%)となっていた。

そして、上記の277計画における掲載項目についてみたところ、表11のとおり、整備計画に記載することとなっている項目のうち、全体事業費を掲載していたものは47計画と少なかった。また、上記の195計画の閲覧請求先等の明示状況についてみたところ、公報による告示、ホームページ等により閲覧請求先等を明示していたものは35計画(17.9%)となっており、残りの160計画(82.1%)は閲覧請求先等を明示していなかった。

また、整備計画の公表と併せて事前評価の結果も公表することとなっていることから、整備計画をホームページで公表していた1,774計画のうち事前評価を実施していなかった98計画を除いた1,676計画における事前評価の結果の公表状況についてみたところ、公表していたものは512計画(30.5%)となっており、残りの1,164計画(69.5%)は公表していなかった。

(ウ)公表時期

公表していた1,977計画における公表時期についてみたところ、計画期間の初年度までに公表していたものは1,593計画(80.6%)、翌年度に公表していたものは254計画(12.8%)、翌々年度以降に公表していたものは130計画(6.6%)あり、中には計画期間の終了後に公表していたものが29計画(1.5%)あった。

また、整備計画の公表は、地域住民等のチェック及び評価を受けるために行うこととなっているものであり、少なくとも計画期間中は公表し続ける必要があると思料されることから、公表期間についてみたところ、計画期間終了前に公表を終えていたものは35計画(1.8%)あり、中には公表期間が2週間と短期間になっていたものもあった。

(2)効果促進事業の実施状況

効果促進事業の実施状況についてみたところ、22年度から25年度までの間に実施した効果促進事業の要素事業数は、2,828計画のうち931計画計6,704事業となっていて、その内容は、施設整備、点検、調査、イベントの実施等となっていた。

ア 基幹事業との一体性

効果促進事業は、整備計画の目標を実現するために、基幹事業と一体となってその効果を一層高めるために必要な事業等となっており、計画通知で示された整備計画の参考様式によれば、一体的に実施することにより期待される効果を記載して、その記載の中において、一体的に実施する基幹事業の要素事業を明記することとなっている。

そこで、効果促進事業の要素事業と基幹事業の要素事業との一体性についてみたところ、前記の931計画計6,704事業のうち104計画計605事業(交付金交付額計86億余円)は、同一の整備計画において一体的に実施する基幹事業の要素事業がなかった。

その理由についてみたところ、表12のとおり、防災・安全交付金事業の創設等に伴い整備計画を分割したことなどによるものが25計画75事業、当期整備計画において道路ストック総点検や長寿命化計画の策定等を行い、次期整備計画において基幹事業を実施することとしたことによるものが40計画195事業、基幹事業の特定の要素事業に区分できないことなどによるものが64計画335事業となっていた。

表12 同一の整備計画において一体的に実施する基幹事業の要素事業がなかった理由

区分
理由
整備計画を分割した
などのため
次期整備計画で基幹
事業を実施するため
特定の要素事業に区
分できないなどのた
整備計画数 104 25 40 64
要素事業数 605 75 195 335
(注)
一つの整備計画において、複数の理由があるため、整備計画数の計と理由の計は一致しない。

同一の整備計画において一体的に実施する基幹事業の要素事業がなかった事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例3>同一の整備計画において一体的に実施する基幹事業の要素事業がなかったもの

北海道及び管内64市町は、計画期間を平成22年度から26年度までとする整備計画「都市公園等の整備による安全で快適な都市環境の形成」に基づいて、基幹事業や効果促進事業として公園の整備等を実施している。

しかし、効果促進事業の要素事業と基幹事業の要素事業との一体性についてみたところ、上記65道市町のうち6町については、効果促進事業として遊戯施設の改築更新等(23年度から25年度までの交付金交付額4343万余円)を実施しているにもかかわらず、一体的に実施する基幹事業を実施していなかった。

以上のように、同一の整備計画において一体的に実施する基幹事業の要素事業がない効果促進事業があり、基幹事業の要素事業との一体性が確保されていなかった事態が見受けられたことから、国土交通省は、基幹事業との一体性の確保について検討する必要がある。

イ 経常的な経費

前記のとおり、効果促進事業は、要綱において、交付金事業者の運営に必要な人件費、賃借料その他の経常的な経費への充当を目的とする事業等については総合交付金の交付対象外とすることとなっているが、国土交通省は、上記の経常的な経費の範囲について明確に示してはいない。

一方、前記のとおり、都市再生整備計画事業の提案事業は、効果促進事業と同様に基幹事業と一体となってその効果を増大させるために必要な事業等となっており、効果促進事業とほぼ同様の事業要件となっている。そして、都市再生整備計画事業は、総合交付金が創設される以前はまちづくり交付金により実施されており、その提案事業については、「まちづくり交付金制度の適正な活用について」(平成20年9月国都事第14号)において、提案事業の調査、イベント等の実施に係る費用のうち、従前から定例的に実施している調査やイベント等と同一のものを実施するために要する経費は、まちづくり交付金による事業を実施しない場合でも必要となる経常的な経費と考えられるため、これを交付対象事業費に計上することができないこととなっている。

したがって、地方公共団体等が整備計画の開始前から実施している事業で、かつ、法令又は条例に基づいて実施している事業については、総合交付金により実施しない場合においても引き続き実施する可能性が高いことから、経常的な経費に該当すると思料される。

そこで、前記の931計画計6,704事業についてみたところ、35計画計71事業(交付金交付額計65億余円)において、上記の事業を効果促進事業として実施していた。 上記について、事例を示すと次のとおりである。

<事例4>整備計画の開始前から実施していた事業を効果促進事業として実施していたもの

さいたま市は、計画期間を平成22年度から26年度までとする整備計画「さいたま市における緑の保全と創出」に基づいて、基幹事業として緑地保全事業を実施し、当該基幹事業と一体となって実施する効果促進事業として、保存緑地保全地区補助事業(23年度から25年度までの交付金交付額8250万円)を実施している。

この事業は、同市の条例で定めた緑地の保全を行うために地権者へ助成を行うものである。

しかし、上記の事業は、同市が13年5月に定めた「さいたま市みどりの条例」の目的を達成するために、13年度以降継続して実施しているものであった。

以上のように、経常的な経費について、整備計画の開始前から実施していたなどの事業を効果促進事業として実施していた事態が見受けられたことから、国土交通省は、効果促進事業の対象となる事業の取扱いなどを検討する必要がある。

ウ 住宅の耐震改修に関する事業及び都市再構築戦略事業

効果促進事業について、ア及びイの事態のほかに、次の事態が見受けられた。

(ア)住宅の耐震改修に関する事業

基幹事業である住環境整備事業のうち住宅・建築物耐震改修事業は、地震の際の住宅・建築物の倒壊等による被害の軽減を図るために、住宅・建築物の耐震性の向上に資する事業について、地方公共団体等に対して、国が必要な助成を行うものである。当該事業のうち、住宅の耐震改修に関する事業は、個人の資産を形成することなどから、国の負担割合は、原則として交付対象事業費の11.5%と住環境整備事業の他の事業と比べて低くなっており、また、地震に対して安全な構とする旨の勧告を受けたものであることなど事業実施の必要性を客観的に担保する一定の採択要件に該当したものを交付対象としている。一方、前記のとおり、効果促進事業は、国の負担割合が原則として交付対象事業費の50%となっており、事業実施に当たって上記の採択要件は求められていない。

そこで、住宅の耐震改修に関する事業の実施状況についてみたところ、22年度から25年度までの間に、2,828計画のうち47計画において計66事業(交付金交付額計66億余円)実施していた。このうち上記の採択要件を満たすものなどについて、基幹事業として実施すると国の負担割合が低いことなどから効果促進事業として実施していたものは34計画34事業(同計41億余円)、提案事業として実施していたものは10計画10事業(同計3億余円)となっており、基幹事業として実施していたものは22計画22事業(同計22億余円)となっていた。

(イ)都市再構築戦略事業

基幹事業である都市再生整備計画事業においては、地域の創意工夫を生かして行うイベントの開催、社会実験等を提案事業として実施することが認められている。一方、都市再生整備計画事業のうち、まちの活力の維持・増進、持続可能な都市構への再構築の実現を図ることを目的とする都市再構築戦略事業(24、25両年度は地方都市リノベーション事業)については、基幹事業を集中して実施して都市の再構築の早期実現を図るために、都市再生整備計画事業の他の事業と比べて基幹事業の国の負担割合が引き上げられていることなどから、提案事業が総合交付金の交付対象外となっている。

そこで、都市再構築戦略事業の実施状況についてみたところ、24年度から26年度までの間に、2,828計画のうち47計画において実施していた。このうち、都市再構築戦略事業は提案事業が総合交付金の交付対象外となっているため、前記の提案事業に該当する事業を効果促進事業として実施していたものが21計画計70事業(交付金交付額計9億余円)見受けられた。

以上のように、基幹事業として実施可能な事業等や、提案事業が交付対象外とされている事業において提案事業に該当する事業を、効果促進事業として実施していた事態が見受けられたことから、国土交通省は、効果促進事業の対象となる事業の取扱いなどを検討する必要がある。

(3)中間評価及び事後評価の実施状況等

ア 中間評価の実施状況等

前記のとおり、地方公共団体等は、必要に応じて、交付期間の中間年度の終了後において評価を行い、これを国土交通大臣に報告することとなっている。そこで、2,828計画のうち、交付期間の中間年度が終了した1,387計画の中間評価の実施状況をみたところ、表13のとおり、1,299計画(93.7%)において中間評価を実施していなかった。中間評価を実施していない理由について地方公共団体等に確認したところ、任意規定のため中間評価の必要性を認識していなかったり、事業がおおむね順調に進捗していたため評価するまでもないものであったりとの理由が多かった。

表13 中間評価の実施状況

主たる事業区分 中間年度
が終了し
た整備計
画数

うち中間
評価を実
施してい
たもの
うち中間
評価を実
施してい
なかった
もの

中間評価を実施していなかった理由
任意規定
のため
事業がお
おむね順
調に進捗
していた
ため
事業期間
が短いた
制度の理
解不足の
ため
その他
①道路事業 213 31 182 100 38 11 1 32
②港湾事業 64 5 59 46 14 1 0 6
③河川事業 30 0 30 24 4 0 0 2
④砂防事業 7 0 7 5 0 0 0 2
⑤地すべり対策事業 2 0 2 0 1 0 0 1
⑥急傾斜地崩壊対策事業 2 1 1 0 0 0 0 1
⑦下水道事業 351 15 336 113 138 40 34 64
⑧その他総合的な治水事業 5 1 4 4 0 0 0 0
⑨海岸事業 28 4 24 19 4 1 0 3
⑩都市再生整備計画事業 282 22 260 131 89 9 9 27
⑪広域連携事業 5 0 5 2 3 0 0 0
⑫都市公園等事業 146 5 141 58 51 10 6 20
⑬市街地整備事業 104 2 102 36 39 9 5 15
⑭都市水環境整備事業 2 0 2 2 0 0 0 2
⑮地域住宅計画に基づく事業 89 0 89 57 28 4 0 4
⑯住環境整備事業 57 2 55 33 9 2 3 8
1,387 88 1,299 630 418 87 58 187
(注)
一つの整備計画において、複数の理由があるため、整備計画数の計と理由の計は一致しない。

そして、上記の1,387計画のうち中間評価を実施していた88計画(6.3%)における実施時期についてみたところ、中間年度中に実施していたものが34計画(88計画の38.6%)、中間年度の翌年度以降に実施していたものが54計画(同61.4%)となっていた。

また、中間評価を実施した地方公共団体等に対して、中間評価を実施したことによるメリットについて確認したところ、60計画(同68.2%)において進捗状況の確認を行ったことにより事業の課題が抽出され、その後の事業の実施に資することとなったとの意見が多かった。

一方、中間評価等を実施せずに計画期間を6年以上に延長すると、長期間評価を実施せずに事業が継続することが懸念されたことから、計画期間を6年以上に延長していた16計画(1,387計画の1.2%)について、中間評価等の実施状況をみたところ、全ての整備計画において計画期間を延長する際に中間評価等を実施していなかった。

上記について、事例を示すと次のとおりである。

<事例5>中間評価等を実施せずに計画期間を6年以上に延長していたもの

高知県は、計画期間が平成22年度から30年度までの整備計画「高知県における安全・安心なすまいづくり・まちづくりと活力ある地域づくり」に基づいて、地域住宅計画に基づく事業等(計画額200億6014万円)を実施している。当該整備計画は、当初、22年度から26年度までの5年間を計画期間とする社会資本整備総合交付金事業として計画していたが、25年度に防災・安全交付金事業の整備計画に一部事業を切り出し、26年度に社会資本整備総合交付金事業と防災・安全交付金事業の両整備計画の計画期間を30年度まで延長する整備計画に組み替えていた。

しかし、計画期間を延長する際、その後の事業の実施に評価結果を反映するなどの方策を検討しておらず、中間評価等を行っていなかった。

したがって、中間評価の実施によりその後の事業の実施に資するなどメリットがあることから、可能な限り中間評価等を実施して事業の進捗状況等について検証を行い、その結果をその後の事業の実施に反映するなどの方策を検討することが重要である。

イ 事後評価の実施状況等

(ア)事後評価の実施状況

前記のとおり、地方公共団体等は、交付期間の終了後又は交付期間の最終年度中に、整備計画の目標の実現状況等について評価を行い、国土交通大臣に報告することとなっている。そこで、2,828計画のうち26年度までに交付期間が終了した1,332計画の事後評価の実施状況をみたところ、表14のとおり、574計画(43.1%)において事後評価を実施していなかった。事後評価を実施していない理由について地方公共団体等に確認したところ、地方公共団体等において評価基準が定められていないことなどから、今後実施する評価方法を検討中であるためとの理由が最も多かった。

表14 事後評価の実施状況

主たる事業区分 交付期間
が終了し
た整備計
画数

うち事後
評価を実
施してい
たもの
うち事後
評価を実
施してい
なかった
もの

事後評価を実施していなかった理由
評価方法
を検討中
のため
データの
取得に時
間を要し
たため
関連事業
が実施中
のため
が実施中
のため
制度の理
解不足の
ため
その他
①道路事業 209 102 107 23 22 12 1 74
②港湾事業 48 10 38 11 2 1 6 21
③河川事業 20 3 17 0 0 1 0 16
④砂防事業 7 3 4 0 0 0 0 4
⑤地すべり対策事業 1 0 1 0 0 0 0 1
⑥急傾斜地崩壊対策事業 1 0 1 0 0 0 0 1
⑦下水道事業 215 56 159 89 18 7 16 44
⑧その他総合的な治水事業 4 0 4 3 0 0 0 1
⑨海岸事業 16 3 13 2 1 1 1 8
⑩都市再生整備計画事業 459 441 18 6 4 1 1 6
⑪広域連携事業 18 6 12 4 6 0 0 2
⑫都市公園等事業 163 47 116 34 11 14 18 39
⑬市街地整備事業 74 22 52 26 4 5 1 16
⑭都市水環境整備事業 5 0 5 1 1 1 0 2
⑮地域住宅計画に基づく事業 54 48 6 1 2 0 0 3
⑯住環境整備事業 38 17 21 15 2 1 0 3
1,332 758 574 215 73 44 44 241
(注)
一つの整備計画において、複数の理由があるため、整備計画数の計と理由の計は一致しない。

そして、上記の1,332計画のうち事後評価を実施していた758計画(56.9%)における実施時期についてみたところ、交付期間の最終年度中に実施していたものが518計画(758計画の68.3%)、交付期間の最終年度の翌年度に実施していたものが195計画(同25.7%)、交付期間の最終年度から1年超経過してから実施していたものが45計画(同5.9%)あった。

事後評価の実施状況について、主たる事業区分ごとにみたところ、最も多かったのは、都市再生整備計画事業を主たる事業とするものが441計画(同58.2%)であり、このうち、交付期間の最終年度中に事後評価を実施していたものは397計画(441計画の90.0%)あった。交付期間の最終年度中に事後評価を実施したものが多かった理由は、まちづくり交付金交付要綱(平成16年国都事第1号、国道企第6号、国住市第25号国土交通事務次官通知)及びまちづくり交付金事後評価実施要領(平成18年国都事第16号、国道地調第2号、国住市第677号国土交通省都市・地域整備局長通知、道路局長通知、住宅局長通知)に基づき、交付期間の最終年度中に事後評価を行うことが義務付けられていたためと思料される。

事後評価は、交付対象事業の効率性及びその実施過程の透明性の一層の向上を図るために実施するものであり、事業の効果等の確認を行い、必要に応じて適切な改善措置を検討するとともに、同種事業等に事後評価の結果を反映することを企図するものである。

以上のことから、交付期間が終了する整備計画についてはやかに事後評価を実施し、必要に応じて適切な改善措置を検討するとともに、同種事業等に事後評価の結果を反映させていくことが必要である。

(イ)事後評価の評価内容等

事後評価については、要綱等において、1総合交付金を充てた要素事業の進捗状況、2事業効果の発現状況、3評価指標の最終目標値の実現状況及び4今後の方針について評価を実施することとなっている。

そこで、事後評価を実施していた758計画の評価内容についてみたところ、表15のとおり、1については548計画(72.3%)、2については583計画(76.9%)、3については758計画(100%)、4については586計画(77.3%)でそれぞれ評価を実施しており、他方、要綱等に定める評価項目の一部を評価していないものがあった。

表15 事後評価の評価内容

主たる事業区分 事後評価
を実施し
た整備計
画数

事後評価の評価内容
①要素事業の進捗
状況
②事業効果の発現
状況
③最終目標値の実
現状況
④今後の方針

①道路事業 102 44 58 37 65 102 0 34 68
②港湾事業 10 2 8 3 7 10 0 3 7
③河川事業 3 1 2 2 1 3 0 2 1
④砂防事業 3 0 3 1 2 3 0 1 2
⑤地すべり対策事業
⑥急傾斜地崩壊対策事業
⑦下水道事業 56 31 25 27 29 56 0 33 23
⑧その他総合的な治水事業
⑨海岸事業 3 0 3 1 2 3 0 2 1
⑩都市再生整備計画事業 441 410 31 428 13 441 0 422 19
⑪広域連携事業 6 3 3 3 3 6 0 3 3
⑫都市公園等事業 47 22 25 28 19 47 0 22 25
⑬市街地整備事業 22 16 6 13 9 22 0 14 8
⑭都市水環境整備事業
⑮地域住宅計画に基づく事業 48 7 41 24 24 48 0 37 11
⑯住環境整備事業 17 12 5 16 1 17 0 13 4
758 548 210 583 175 758 0 586 172

そして、事後評価を実施した758計画について、事後評価書における事業費の記載状況についてみたところ、計画全体及び要素事業別の計画額については520計画(68.6%)で記載していて、計画全体及び要素事業別の実績額については390計画(51.5%)で記載していなかった。

当初整備計画から最終変更整備計画までの要素事業の追加や削除、整備計画の目標、評価指標、最終目標値の変更状況等の記載状況についてみたところ、都市再生整備計画事業を主たる事業とする整備計画ではおおむね記載していたものの、他の事業を主たる事業とする整備計画ではほとんど記載していなかった。これは、まちづくり交付金の評価の手引き(平成20年8月国土交通省都市・地域整備局まちづくり推進課都市総合事業推進室作成)において、事後評価の方法及び様式が定められており、上記の事項が様式に明記されていたことなどによると思料される。

また、今後の方針を作成していた586計画(77.3%)についてみたところ、効果持続のための方策、最終目標値未達成の評価指標に係る改善策等を事後評価書に記載していた。なお、今後の課題を解決していくための方策としては、次期整備計画で実施するとしているものが最も多かった。

(ウ)評価委員会と地域住民等の意見聴取(パブリックコメント)

前記のとおり、地方公共団体等は、中間評価又は事後評価の実施に当たっては、評価の透明性、客観性及び公正性を確保するため、学識経験者等の第三者の意見を求めたり、地方公共団体独自の評価制度を活用したりすることができることとなっている。事後評価を実施した758計画のうち、学識経験者等の第三者の意見を(注6)求めるために評価委員会を開催するなどしていたものは、表16のとおり、544計画(71.8%)あった一方で、意見を求めていなかったものは214計画(28.2%)となっていた。

また、地域住民等から広く意見を収集し、それらの意見を反映して評価結果をまとめるために、事後評価原案を公表していたものは244計画(32.2%)あった一方で、公表していなかったものは514計画(67.8%)となっていた。

上記について、次期整備計画の作成に意見をいかしていた事例を示すと次のとおりである。

<参考事例3>次期整備計画の作成に学識経験者や地域住民等の意見をいかしていたもの

埼玉県坂戸市は、計画期間を平成18年度から22年度までとする整備計画「石井地区都市再生整備計画(第1期)」に基づいて、都市再生整備計画事業(交付対象事業費8億5715万円、交付金交付額3億3577万円)として土地区画整理事業等を実施しており、22年11月に事後評価原案を公表して地域住民等の意見を募集し、同年12月に評価委員会を開催して学識経験者等の第三者の意見を求め、23年3月に事後評価書をとりまとめていた。そして、地域住民等及び学識経験者等の第三者の意見であった、防災備蓄倉庫の整備及び土地区画整理事業の早期完了要望等について事後評価書に記載し、次期整備計画において、両事業等を計画するなどして、次期整備計画の作成に意見をいかしていた。

表16 評価委員会の開催状況及び事後評価原案の公表状況

主たる事業区分 事後評価
を実施し
た整備計
画数

評価委員会の開催状況 事後評価原案の公表状況
開催してい
たもの
  開催してい
なかったも
公表してい
たもの
  公表してい
なかったも

うち次期整
備計画の作
成に学識経
験者等の第
三者の意見

をいかして
いたもの
うち地域住
民等からの
意見を踏ま
えて事後評
価原案を見
直していた
もの
うち次期整
備計画の作
成に地域住
民等からの
意見をいか
していたも
①道路事業 102 46 4 56 5 0 4 97
②港湾事業 10 4 0 6 0 0 0 10
③河川事業 3 3 0 0 1 0 0 2
④砂防事業 3 1 0 2 0 0 0 3
⑤地すべり対策事業
⑥急傾斜地崩壊対策事業
⑦下水道事業 56 22 5 34 0 0 0 56
⑧その他総合的な治水事業
⑨海岸事業 3 1 0 2 0 0 0 3
⑩都市再生整備計画事業 441 427 95 14 229 21 27 212
⑪広域連携事業 6 0 0 6 0 0 0 6
⑫都市公園等事業 47 17 2 30 3 0 3 44
⑬市街地整備事業 22 13 1 9 5 0 1 17
⑭都市水環境整備事業
⑮地域住宅計画に基づく事業 48 4 0 44 0 0 0 48
⑯住環境整備事業 17 6 2 11 1 1 1 16
758 544 109 214 244 22 36 514

以上のことから、事後評価に当たっては、評価委員会等における学識経験者等の第三者の意見を踏まえたり、地域住民等からの意見を踏まえたりして、透明性、客観性及び公正性を確保した上で次期整備計画の作成に意見をいかすことが重要である。

(注6)
評価委員会  各地方公共団体等が事業の実施過程の透明性及び客観性を確保し、より効率的、効果的な事業の実施を図ることなどを目的として設置し運営する委員会

ウ 事後評価の内容及び分析等

(ア)整備計画の目標値の達成状況等

整備計画の最終目標値の達成状況についてみたところ、事後評価を実施していた758計画計2,186指標のうち、全ての評価指標において最終目標値を達成していたものが306計画計732指標(33.5%)、一部の評価指標において最終目標値を達成していたものが384計画計1,306指標(59.7%)、全ての評価指標において最終目標値を達成していなかったものが67計画計147指標(6.7%)であった。なお、事後評価時に統計手法の変更等により実績値の測定が不能としたものが1計画1指標であった。

上記の758計画計2,186指標について評価指標の達成率をみたところ、表17のとおり、最終目標値を達成(達成率100%以上)していた評価指標は1,430指標(65.4%)あり、最終目標値を達成していなかった評価指標は751指標(34.4%)あった。

(注7)
達成率次の算式により算出される変化率である。
達成率(%)= (実績値-当初現況値) ×100
(最終目標値-当初現況値)

そして、評価指標の最終目標値の達成状況をみたところ、河川事業又は下水道事業を主たる事業としているものは、最終目標値を達成していた評価指標の割合が比較的高い傾向が見受けられた。河川事業又は下水道事業を主たる事業とするものは、アウトプット指標の割合が多く、アウトカム指標も前記の表7のとおり、計算等によるアウトカム指標の割合が多いことから、事業が計画どおり実施されると、実績値が最終目標値と一致する傾向にあり、最終目標値を達成していた評価指標が多かったと思料される。

表17 事後評価時における最終目標値の達成率

主たる事業区分 (上段)
整備
計画数
(下段)
評価
指標数
(a)


最終目標
値を達成
していた
評価指標
の割合
(b)/(a)
達成率
最終目標値未達成(751指標) 最終目標値達成(1,430指標) 測定不
能の評
価指標
マイ
ナス
0%
以上
50%
未満
50%
以上
100%
未満
100% 100%

300%
未満
300%
以上
500%
未満
500%
以上

(b)
①道路事業 102 9 15 43 67 28 57 5 5 95 0
220 12 17 68 97 36 72 7 8 123 0 (55.9%)
②港湾事業 10 0 2 2 4 7 4 0 1 12 0
31 0 6 2 8 17 5 0 1 23 0 (74.2%)
③河川事業 3 0 1 1 2 2 1 0 0 3 0
12 0 2 1 3 7 2 0 0 9 0 (75.0%)
④砂防事業 3 0 0 3 3 2 2 0 0 4 0
17 0 0 5 5 8 4 0 0 12 0 (70.6%)
⑤地すべり対策事業
⑥急傾斜地崩壊対策事業
⑦下水道事業 56 0 6 12 18 42 26 1 2 71 0
132 0 6 17 23 74 32 1 2 109 0 (82.6%)
⑧その他総合的な治水事業
⑨海岸事業 3 0 1 1 2 2 0 0 0 2 0
5 0 2 1 3 2 0 0 0 2 0 (40.0%)
⑩都市再生整備計画事業 441 151 110 158 419 149 335 103 94 681 3
1,466 179 131 192 502 184 543 116 118 961 3 (65.6%)
⑪広域連携事業 6 4 0 0 4 1 2 0 0 3 2
12 6 0 0 6 1 3 0 0 4 2 (33.3%)
⑫都市公園等事業 47 1 5 12 18 31 13 0 1 45 0
84 1 7 15 23 42 18 0 1 61 0 (72.6%)
⑬市街地整備事業 22 4 4 4 12 11 12 1 5 29 0
52 4 5 5 14 15 17 1 5 38 0 (73.1%)
⑭都市水環境整備事業
⑮地域住宅計画に基づく事業 48 4 12 24 40 23 23 4 1 51 0
124 5 20 29 54 32 33 4 1 70 0 (56.5%)
⑯住環境整備事業 17 3 5 3 11 8 5 0 1 14 0
31 4 5 4 13 10 7 0 1 18 0 (58.1%)
758 176 161 263 600 306 480 114 110 1,010 5
2,186 211 201 339 751 428 736 129 137 1,430 5 (65.4%)
(注)
一つの整備計画において、複数の評価指標が達成率の欄に分類されているため、事後評価を実施した整備計画の計と達成率の欄の整備計画の計は一致しない。

達成率の分布傾向についてみたところ、達成率500%以上のものが137指標(6.3%)、マイナスのものが211指標(9.7%)見受けられるなど、最終目標値に対し実績値が大きくかい離している評価指標があった。例えば、評価指標数が最も多い都市再生整備計画事業を主たる事業とするものについては、達成率500%以上のものが118指標(5.4%)、マイナスのものが179指標(8.2%)となっていた。

そこで、表17の達成率を評価指標の設定方法ごとに分類したところ、表18のとおり、2,186指標のうち、最も多い設定方法はアウトカム指標が1,478指標(67.6%)で、このうち、予測等によるアウトカム指標が1,151指標(52.7%)となっていた。そして、アウトカム指標に占める予測等によるアウトカム指標の割合についてみたところ、全体では1,478指標のうち1,151指標(77.9%)であったが、達成率がマイナスとなっていた評価指標では195指標のうち180指標(92.3%)と全体に占める割合よりも高かった。また、500%以上となっていた評価指標も114指標のうち109指標(95.6%)となっており、全体に占める割合よりも高くなっていた。このように、最終目標値に対して実績値が大きくかい離していた評価指標については、予測等によるアウトカム指標が多い傾向となっていた。

表18 評価指標の達成率を評価指標の設定方法ごとに分類したもの(16事業)

(上段:整備計画数、下段:評価指標数)
評価指標の設定方法 達成率 測定不
能の評
価指標
合計
最終目標値未達成(751指標) 最終目標値達成(1,430指標)
マイ
ナス
0%
以上
50%
未満
50%
以上
100%
未満
100% 100%

300%
未満
300%
以上
500%
未満
500%
以上
1 アウトプット指標 0 33 74 107 157 69 5 0 231 0 338
0 43 87 130 215 85 5 0 305 0 435
2 アウトカム指標 166 124 181 471 129 405 97 92 723 5 1,199
195 139 210 544 155 555 105 114 929 5 1,478
(1)計算等によるアウトカム指標 15 16 56 87 70 99 8 5 182 0 269
15 18 68 101 88 124 9 5 226 0 327
(2)予測等によるアウトカム指標 151 108 125 384 59 306 89 87 541 5 930
180 121 142 443 67 431 96 109 703 5 1,151
3 その他の指標 12 13 19 44 28 34 14 23 99 0 143
16 19 42 77 58 96 19 23 196 0 273
178 170 274 622 314 508 116 115 1,053 5 1,680
211 201 339 751 428 736 129 137 1,430 5 2,186
(注)
一つの整備計画において、複数の評価指標が達成率の欄に分類されているため、事後評価を実施した整備計画の計と達成率の欄の整備計画の計は一致しない。

なお、予測等によるアウトカム指標の設定が最も多かった事業区分は、都市再生整備計画事業を主たる事業とするものであり、表19のとおり、アウトカム指標の計1,156指標のうち、予測等によるアウトカム指標が990指標(85.6%)となっていた。そして、このうち、達成率がマイナスとなっていた評価指標は153指標(165指標の92.7%)で、達成率が500%以上となっていた評価指標は96指標(100指標の96.0%)となっていた。

表19 評価指標の達成率を評価指標の設定方法ごとに分類したもの(都市再生整備計画事業)

(上段:整備計画数、下段:評価指標数)
評価指標の設定方法 達成率 合計
最終目標値未達成(502指標) 最終目標値達成(961指標) 測定不
能の評
価指標
マイ
ナス
0%
以上
50%
未満
50%
以上
100%
未満
100% 100%

300%
未満
300%
以上
500%
未満
500%
以上
1 アウトプット指標 0 10 18 28 41 18 4 0 63 0 91
0 10 18 28 44 32 4 0 80 0 108
2 アウトカム指標 141 97 135 373 91 213 88 79 471 3 847
165 106 148 419 97 441 96 100 734 3 1,156
(1)計算等によるアウトカム指標 12 8 29 49 42 31 6 4 83 0 132
12 8 29 49 42 65 6 4 117 0 166
(2)予測等によるアウトカム指標 129 89 106 324 49 182 82 75 388 3 715
153 98 119 370 55 376 90 96 617 3 990
3 その他の指標 12 12 16 40 25 30 13 18 86 0 126
14 15 26 55 43 70 16 18 147 0 202
153 119 169 441 157 261 105 97 620 3 1,064
179 131 192 502 184 543 116 118 961 3 1,466
(注)
一つの整備計画において、複数の評価指標が達成率の欄に分類されているため、事後評価を実施した整備計画の計と達成率の欄の整備計画の計は一致しない。

前記の表17のうち、評価指標の達成率がマイナスとなっていた211指標について、事例を示すと次のとおりである。

<事例6>評価指標の達成率がマイナスとなっていたもの

神奈川県南足柄市は、計画期間を平成20年度から22年度までとする整備計画「天狗伝説の里地区都市再生整備計画」に基づいて、都市再生整備計画事業(交付対象事業費5億2400万円、交付金交付額2億0960万円)として道路整備、公園整備等を実施している。そして、同市は、当該整備計画の評価指標に年間の観光入込客数の増加を掲げて、当初現況値を年間67万5000人とし、最終目標値を年間71万4000人としていた。しかし、22年度に実施した事後評価においては、実績値が年間38万5800人に減少していて最終目標値を大幅に下回っており、達成率はマイナス741.5%となっていた。これは、評価指標の設定に当たり、当初現況値を推計値により把握していたことなどによるものであった。

以上のことから、予測等によるアウトカム指標の設定に当たっては、実績値が..最終目標値と大きくかい離する可能性があることに十分留意して、当初現況値や実績値を適切に把握等する必要がある。

(イ)評価指標の達成率と事業の進捗率の関係

前記の表17の達成率を事業の進捗率ごとに分類したところ、表20のとおり、進捗率が100%以上であるにもかかわらず最終目標値を達成していないものが410指標(1,475指標の27.8%)あった。一方、進捗率が100%未満であるのに最終目標値を達成しているものが367指標(711指標の51.6%)あった。

表20 評価指標の達成率を進捗率ごとに分類したもの

(上段:整備計画数、下段:評価指標数)
進捗率
達成率 合計
最終目標値未達成(751指標) 最終目標値達成(1,430指標) 測定
不能の
評価
指標
マイ
ナス
0%
以上
50%
未満
50%
以上
100%
未満
100% 100%

300%
未満
300%
以上
500%
未満
500%
以上
100%未満 60 83 130 273 69 169 31 28 297 3 573
72 101 168 341 87 215 32 33 367 3 711
100%以上 118 87 144 349 245 339 85 87 756 2 1,107
139 100 171 410 341 521 97 104 1,063 2 1,475
178 170 274 622 314 508 116 115 1,053 5 1,680
211 201 339 751 428 736 129 137 1,430 5 2,186
(注)
一つの整備計画において、複数の評価指標が達成率の欄に分類されているため、事後評価を実施した整備計画の計と達成率の欄の整備計画の計は一致しない。

特に、上記の410指標については、進捗率が100%以上であるにもかかわらず最終目標値が未達成となっていることから、事後評価書によりその理由を確認したところ、事後評価の実施時期が事業の進捗状況を考慮しないものであったり、設定した評価指標が社会情勢等の影響を大きく受けるものであったり、整備した施設の利用形態等を的確に把握せずに評価指標を設定したりなどしていたためであるとなっていた。

したがって、評価指標の設定等に当たっては、当初現況値や実績値を適切に把握等する必要がある。

(ウ)実績値の算定方法

事後評価を実施していた2,186指標について、事後評価時における評価指標の実績値の算定方法をみたところ、算定方法の正確性に疑義があると事後評価書に記載されているものなどが56指標(2.6%)となっていた。実績値は公正な評価の判断に資する根拠となる数値であることから、算定に当たっては正確性に十分留意する必要がある。そこで、上記の56指標についてみたところ、満足度等を評価指標としたものについては、事業効果を正確に把握できるアンケート項目を設定していなかったり、事業実施中に調査を行っていたり、測定条件の変化を考慮していなかったりしていた。また、施設利用者数を評価指標としたものについては施設が未完成であったため類似施設から利用者を推計していたり観光入込客数を評価指標としたものについては事業で整備した施設と異なる施設の利用者数から観光入込客数を推計していたりしていた。さらに、評価指標が最終目標値を達成していたとする整備計画において、実際は最終目標値を達成していなかった事態等があった。

上記の56指標のうち、事業効果を正確に把握できるアンケート項目を設定していなかった事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例7>事業効果を正確に把握できるアンケート項目を設定していなかったもの

北海道古平郡古平町は、計画期間を平成23年度から26年度までとする整備計画「古平町市街地地区都市再生整備計画」に基づいて、都市再生整備計画事業(交付対象事業費7億1846万円、交付金交付額2億8726万円)として道路整備、公園整備等を実施している。そして、同町は、当該整備計画の評価指標として防災に対する満足度、道路環境に対する満足度、広場・緑地に対する満足度等を設定していた。しかし、26年度に実施した事後評価において、いずれの評価指標も最終目標値を達成していなかった。そこで、評価指標の測定に使用したアンケートの設問についてみたところ、いずれも整備計画外の道路環境や広場・緑地を含む町全体にわたる設問であることなどから、事業効果を正確に把握できるアンケート項目となっていない状況であった。

また、評価指標が最終目標値を達成していたとする整備計画において、実際は最終目標値を達成していなかった事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例8>最終目標値を達成していたとしていたが、実際は最終目標値を達成していなかったもの

北海道虻田郡喜茂別町は、計画期間を平成18年度から22年度までとする整備計画「喜茂別市街地地区都市再生整備計画」に基づいて、郷の駅の新設を含む都市再生整備計画事業(交付対象事業費9億7350万余円、交付金交付額3億8762万余円)を実施しており、当該整備計画の評価指標の一つとして新設する郷の駅の年間立ち寄り客数を掲げ、その最終目標値を50万人としていた。そして、22年度に実施した事後評価において、年間立ち寄り客数は63万5000人であったとして最終目標値を達成したと評価して、その効果発現要因を地元農産物の直売等による立ち寄り客数の増加によるものとしていた。

しかし、同町は、事後評価を計画期間の最終年度である22年度中に実施したことから、年間立ち寄り客数63万5000人を、郷の駅開設直後の5月から8月までの4か月間の立ち寄り客数を4で除して12を乗じて算出しており、冬期には地元農産物の直売ができなくなること、観光客が減少することなどから立ち寄り客数が減少することを考慮していなかった。そこで、会計検査院において、実績値を用いるなどして年間立ち寄り客数を算出したところ、年間立ち寄り客数は約45万人となり、最終目標値を達成していなかった。

以上のことから、適切な事後評価を行うためには、事業効果を正確に把握するためのアンケート項目を設定したり、実績値の算定調査を適切な時期に実施したり、測定条件の変化を考慮したりするなどするとともに、実績値の算定方法について公正な評価の判断に資するよう正確性等に十分留意する必要がある。

(エ)地方公共団体等による最終目標値の達成要因の分析状況

前記の2,186指標について、最終目標値の達成要因の分析状況をみたところ、表21のとおり、最終目標値の達成又は未達成の要因分析を行っていなかったものが274指標(2,186指標の12.5%)あり、このうち、最終目標値が未達成にもかかわらずその要因分析を行っていなかったものが70指標(274指標の25.5%)となっていた。そして、最終目標値と実績値との間に差が発生していたものが1,758指標(2,186指標の80.4%)あり、このうち、差の発生要因を分析していなかったものが791指標(1,758指標の45.0%)となっていた。

表21 最終目標値の達成要因の分析状況

主たる事業区分 (上段)
整備
計画数
(下段)
評価
指標数
達成又は未達成の要因分析 最終目標値と実績値
行ってい
たもの
行ってい
なかった
もの

差が発生
していた
もの

差が発生
していな
かったも

うち最終
目標値が

未達成に
もかかわら
ず未達成
の要因分
析を行っ
ていな
かったもの

うち差が
発生した
要因分析
を行って
いなかっ
たもの
①道路事業 102 66 38 8 96 64 28
220 173 47 14 184 102 36
②港湾事業 10 5 5 1 5 3 7
31 22 9 1 14 5 17
③河川事業 3 2 1 1 2 2 2
12 10 2 2 5 3 7
④砂防事業 3 1 2 2 3 2 2
17 3 14 2 9 6 8
⑤地すべり対策事業
⑥急傾斜地崩壊対策事業
⑦下水道事業 56 37 22 6 36 22 42
132 92 40 8 58 37 74
⑧その他総合的な治水事業
⑨海岸事業 3 2 1 1 2 1 2
5 4 1 1 3 1 2
⑩都市再生整備計画事業 441 418 39 18 436 224 149
1,466 1,368 98 26 1,282 559 184
⑪広域連携事業 6 6 1 0 5 4 1
12 11 1 0 11 7 1
⑫都市公園等事業 47 35 12 3 26 11 31
84 67 17 3 42 14 42
⑬市街地整備事業 22 16 6 2 16 8 11
52 41 11 3 37 13 15
⑭都市水環境整備事業
⑮地域住宅計画に基づく事業 48 38 11 4 42 19 23
124 95 29 10 92 39 32
⑯住環境整備事業 17 14 3 0 12 3 8
31 26 5 0 21 5 10
758 640 141 46 681 363 306
2,186 1,912 274 70 1,758 791 428
(注)
一つの整備計画において、複数の評価指標が最終目標値の達成要因の分析状況の欄に分類されているため、事後評価を実施した整備計画の計と最終目標値の達成要因の分析状況の欄の整備計画の計は一致しない。

最終目標値を達成していた評価指標について主な達成要因をみたところ、事業の進捗が順調であったこと、事業を前倒しして実施したこと、想定外の外部要因により当初見込み以上の事業効果が発現したことなどとなっていた。一方、最終目標値を達成していなかった評価指標について主な未達成要因をみたところ、想定外の外部要因により当初見込んでいた事業効果が発現しなかったこと、事業の遅延等となっていた。

以上のことから、事後評価に当たっては、最終目標値の達成又は未達成の要因分析を行ったり、最終目標値と実績値との間に差が発生している要因分析を行ったりして、透明性、客観性及び公正性を確保した上で次期整備計画の作成に分析結果をいかすことが重要である。

エ 中間評価及び事後評価の結果の公表

前記のとおり、地方公共団体等は、必要に応じて、中間評価を行い、その結果を国土交通大臣に報告して、遅滞なく公表することとなっている。また、事後評価の結果についても同様に国土交通大臣に報告して、遅滞なく公表することとなっていることから、その公表状況についてみたところ、以下の事態が見受けられた。

(ア)中間評価の結果の公表

中間評価を実施していた88計画のうち国土交通大臣に中間評価書を提出していた58計画の中間評価の結果の公表状況についてみたところ、公表していたものは53計画(91.4%)、公表していなかったものは5計画(8.6%)となっていた。

上記の53計画における公表方法についてみたところ、ホームページに中間評価書を掲載していたものは33計画(62.3%)、ホームページに中間評価の結果の概要を掲載していたものは18計画(34.0%)、閲覧請求に応ずるなどとしていたものは2計画(3.8%)となっていた。

上記の2計画の閲覧請求先等の明示状況についてみたところ、閲覧請求先等を明示していたものは1計画となっており、残りの1計画は閲覧請求先等を明示していなかった。

(イ)事後評価の結果の公表

事後評価を実施していた758計画のうち国土交通大臣に事後評価書を提出していた694計画の事後評価の結果の公表状況についてみたところ、公表していたものは643計画(92.7%)、公表していなかったものは51計画(7.3%)となっていた。

上記の643計画における公表方法についてみたところ、ホームページに事後評価書を掲載していたものは534計画(83.0%)、ホームページに事後評価の結果の概要を掲載していたものは90計画(14.0%)、閲覧請求に応ずるなどとしていたものは18計画(2.8%)、その他は1計画(0.2%)となっていた。

上記の18計画の閲覧請求先等の明示状況についてみたところ、閲覧請求先等を明示していたものは5計画となっており、残りの13計画は閲覧請求先等を明示していなかった。