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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 農林水産省|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • (2) 工事の設計が適切でなかったもの

揚水機場に設置した高圧受変電設備等の設計が適切でなかったもの[農林水産本省](236)


(1件 不当と認める国庫補助金 21,056,054円)

  部局等 補助事業者等 間接補助事業者等 補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(236) 農林水産本省 青森県
(事業主体)
農山漁村地域整備交付金 25、26 91,959 50,577 38,283 21,056

この交付金事業は、青森県が、三戸郡南部町地引地区において、安定的な用水供給を確保することなどを目的として、既設の揚水機場を更新するために、高圧受変電設備1面、補機計装盤1面及び主ポンプ盤2面(以下、補機計装盤と主ポンプ盤を合わせて「補機計装盤等」という。)等を製作し、別途工事で整備した建築物に据え付けるなどの工事を実施したものである。このうち、据付工事は、高圧受変電設備及び補機計装盤等を地上2階建ての建築物の2階に設置し、それぞれをアンカーボルトで基礎コンクリートに固定するものである。

同県は、高圧受変電設備及び補機計装盤等の耐震設計計算については、「建築設備耐震設計・施工指針2005年版」(国土交通省国土技術政策総合研究所及び独立行政法人建築研究所監修。以下「耐震設計指針」という。)等に基づいて行っており、耐震設計指針によれば、設備機器を固定するアンカーボルトの設計に当たっては、地震時に作用する引抜力(注)が許容引抜力(注)を上回らないようにすることとされており、設置する建築物の階数等に応じて定められている係数である設計用標準震度を用いるなどして引抜力を算出することとされている。同県は、本件工事の請負人に耐震設計計算等を行わせており、請負人が高圧受変電設備及び補機計装盤等に適用する設計用標準震度を1.0として耐震設計計算を行ったところ、高圧受変電設備は径12mmのアンカーボルト8本、補機計装盤等は径16mmのアンカーボルト8本でそれぞれ基礎コンクリートに固定すれば、地震時にアンカーボルトに作用する引抜力がいずれも許容引抜力を下回ることなどから、耐震設計計算上安全であるとして、耐震設計計算書等を同県に提出していた。そして、同県は、これを審査するなどした上で承諾し、これにより請負人に施工させていた。

しかし、耐震設計指針によれば、2階建て建築物の2階に設備機器を設置する場合に用いる設計用標準震度は1.0ではなく、2.0とすることとされている。

そこで、設計用標準震度を2.0として改めて耐震設計計算を行ったところ、地震時にアンカーボルトに作用する引抜力は、高圧受変電設備については16.5kN/本、補機計装盤等については19.2kN/本となり、それぞれの許容引抜力9.2kN/本、12.0kN/本を大幅に上回るなどしていて、耐震設計計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。

したがって、高圧受変電設備及び補機計装盤等(工事費相当額計38,283,734円)は、アンカーボルトの設計が適切でなかったため、地震時に転倒するなどして破損するおそれがあり、地震時における機能の維持が確保されていない状態となっていて、これに係る交付金相当額計21,056,054円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、請負人が作成した耐震設計計算書に誤りがあったのに、これに対する審査が十分でなかったことなどによると認められる。

(注)
引抜力・許容引抜力  「引抜力」とは、機器等に地震力が作用する場合に、ボルトを引き抜こうとする力が作用するが、このときのボルト1本当たりに作用する力をいう。また、当該ボルトに作用することが許容される引抜力の上限を「許容引抜力」という。