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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成29年3月|

各府省等における研究開発事業の実施状況等について


別表5 平成26、27両年度にCSTIの事後評価の対象となった6事業の主な評価結果

番号 評価年度 事業名 府省等名 研究開発期間(年度) 国費総額(予算額。単位は億円) 主な評価結果 備考
1 平成26 再生医療の実現化プロジェクト 文部科学省 15~24 347
  • ヒトiPS細胞の樹立に加え、安全性を向上したiPS細胞の効率的な樹立方法など、革新的な幹細胞操作技術に係る世界をリードする研究成果が得られたと認められる。
  • 再生医療による治療技術について、網膜変性疾患の治療法の開発の他、重点的取組を行った角膜、心筋、血小板、ドーパミン神経細胞についての研究課題が、その後「再生医療の実現化ハイウェイ」に採択され実用化に向けた加速的な取組につながるなど、再生医療の実現化への道筋に貢献した。
  • プロジェクト終了後において、再生医療の実現化に向けて残された課題としては、iPS細胞の初期化メカニズムの解明、免疫寛容機構の解明、iPS細胞の樹立方法や分化誘導法の標準化、安全性・有効性の評価方法の確立等があげられる。
  • 今後、これらの課題解決を図り、早期の実現化に向けて、健康・医療戦略推進本部を中心とした関係府省の連携によるシームレスな取組が期待される。
 
2 26 地域イノベーション協創プログラム 経済産業省 20~24 280.1
  • 地域イノベーション創出共同体形成事業により、地域の多くの研究機関が参加する共同体を概ね形成し、データベース作成による公設試等の機器の広域的な利用の促進が図られた。
  • 共同体に配置された技術コーディネータ・専門家による地域の企業等への支援については、利用度が必ずしも十分でなく、課題点の分析と今後の対応策の検討が必要である。
  • 地域の企業を支援する技術のプラットフォームが形成され、事業終了後も概ね維持されていると認められる。
  • 創造的産学連携体制整備事業において、産学連携プロデューサー及び産学連携スペシャリストの育成が図られたが、事業終了後の産学連携関連業務への定着率は約7割となっている。
  • 地域イノベーション創出研究開発事業、大学発事業創出実用化研究開発事業に関し、事業終了後3年後の事業化率についての目標設定に対して、半数近くの研究課題が3年未経過となっている。自己資金等による研究継続は評価されるが、現時点で目標値は未達成であり、継続的なフォローアップが必要である。
  • 研究成果の事業化による経済効果のみならず、研究開発成果の波及効果、大学、公設試等による技術プラットフォーム等の基盤形成による波及効果等、事業全体の効果発現に向けた継続的な取組が必要である。
  • 4つの事業のプログラム化による効果発現に向けた有機的な連携のためのマネジメント内容は明確となっていない。
  • プロジェクトマネージャー(PM)については、市場調査やユーザー企業のニーズ把握、販路開拓の取組等が成功事例における要因として把握される。
 
3 27 イノベーション創出基礎的研究推進事業 農林水産省 20~25 313
  • 両研究開発は、農林水産研究基本計画の重点課題に対応した研究課題が多く採択されている点、各研究課題の80%以上で目標以上の研究成果を上げている点、それらの中には科学技術的・社会経済的・国際的に大きな効果が得られている研究成果が存在する点、若手研究者の育成に実績が上がっている点、緊急課題に対して短期間に顕著な研究成果を上げている事例がある点は評価できる。また、マネジメントの面では、両研究開発で合計584件にも及ぶ研究課題について重複を避けている点、シーズ技術をシームレスに移行する仕組みの構築の必要性から実用化を実現すべき優れた研究成果を後継事業に引き継ぎ、次のステップに進めた点は評価できる。一方、研究課題の特徴と評価指標が必ずしも合致していない点、ベンチャーの育成の実績が7件しかない点、プログラムディレクター及びプログラムオフィサーの選定やマネジメントの内容及び役割分担に一部不明瞭な部分があることは、今後改善が必要な項目といえる。
3と4は一体で評価を実施
4 27 新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業 農林水産省 20~24 269
5 27 太陽エネルギーシステムフィールドテスト事業 経済産業省 19~25 153
  • 太陽光発電については、新技術の有効性検証等が実施され、化合物(CIS)系モジュールの既存技術に対する優位性や、大容量パワーコンディショナーの既存技術に対する優位性および国際競争力を有することが確認されている。また、実証の成果として作成された設置・施工のガイドラインは、メーカや施工業者において設置・施工の標準化・コスト低減のひな形として利活用されるとともに、新規参入者の参入障壁を低減する効果も認められた。外部有識者を含めた事業評価を行う等、マネジメントも適切に実施されている。
  • 太陽熱利用については、採択件数が太陽光発電の1/13程度と少なかったこと等から、新技術の有効性検証という当初の目的は達成されず、十分な普及促進にもつながらなかった。しかし、従来は不十分であった実フィールドでの熱量計測が進み、システム導入の有効な分野が整理されたことには一定の評価ができる。また、設置・施工・保守の手順等を定めたガイドラインは、メーカや施工業者の標準化・コスト低減につながっており、貴重な成果と認められる。
  • 以上より、太陽光発電と太陽熱利用の成果にはレベルの違いはあるものの、両者が置かれていた状況や国費投入に対する成果に鑑みたとき、本事業はその目的を概ね達成したものと評価できる。
 
6 27 第3次対がん10か年総合戦略に基づく研究開発 文部科学省
厚生労働省
16~25 1113
  • 目標の達成状況という観点では、「がんの年齢調整死亡率(75歳未満)20%減少」という数値目標に対して、本研究開発による貢献度の定量的な評価は難しいものの、新たな診断法や治療法等について顕著な成果をあげていることから、全体的には目標を概ね達成したものと評価できる。特に、ライフサイエンス分野の研究開発においては、中長期的な取組が必要であり、過去の研究開発によって得られた成果等が本研究開発に引き継がれ、医療現場において実用化に結び付けられた成果として、「重粒子線がん治療研究」等について顕著な研究事例が得られていることは、高く評価できる。また、本研究開発を構成する4つの研究開発ごとに見ても、新たな診断法や治療法等について顕著な成果をあげているものと認められ、高く評価できる。
  • 科学技術的・社会技術的・国際的な効果という観点では、ゲノム解析結果等のデータ公開、有望シーズの企業への導出、国際共同研究によるガイドラインへの反映などにより、高い効果がもたらされたものと認められる。
  • マネジメントの妥当性という観点では、過去の研究開発の課題を踏まえた体制の充実、資源投入の重点化などの対応を実施しているものがある反面、適切な対応を実施できていない面があることから、評価できる点と課題として残された点の両面がある。
  • 以上から、本研究開発全体としては、研究開発の目的を概ね達成したものと評価できる。ただし、目標達成の評価指標、省庁間連携等については、後継事業等において改善・検討すべき課題として残された。
 
(注)
主な評価結果は、総合評価としてコメントされている内容を記載している。