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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第3 総務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

修繕等工事により国有財産台帳に登録を行うなどした建物及び工作物について、計上漏れとなっていた価格や計上する必要のなかった価格を反映して適正な価格に修正するとともに、台帳登録価格に計上する費用及び計上しない費用の区分を定めて関係部局に周知することなどにより、国有財産台帳価格の登録が適正に行われるよう改善させたもの


会計名
一般会計
部局等
総務本省、情報通信政策研究所、4総合通信局
国有財産の分類
(分類)行政財産 (種類)公用財産 (区分)建物
(区分)工作物
検査の対象とした国有財産
修繕等工事により国有財産台帳に登録を行うなどした建物及び工作物(平成25年度~29年度)
上記の件数及び価格(1)
178件 11億0839万余円
(1)について計上漏れとなっていた件数及び台帳登録価格
114件 2億2124万円
(1)のうち計上する必要がなかった費用が含まれていた件数及び台帳登録価格
21件 826万円

1 国有財産の概要等

(1) 国有財産の概要

総務省は、国有財産法(昭和23年法律第73号)等に基づき、その所管に属する国有財産を管理しており、総務省所管国有財産取扱規則(平成13年総務省訓令第54号)等に基づき、総務省大臣官房会計課長が国有財産に関する事務を総括するとともに、総合通信局等の部局に属する国有財産については当該部局の長(以下「部局長」という。)がその事務を分掌している。そして、部局長は、国有財産を管理するに当たっては、その分類及び種類ごとに、区分及び種目、所在、数量、価格等を記載した台帳(以下「国有財産台帳」という。)を備えることとなっている。また、国有財産法によれば、各省各庁の長は、その所管に属する国有財産について、毎会計年度間における増減及び毎会計年度末現在における現在額を集計して「国有財産増減及び現在額報告書」(以下「現在額報告書」という。)を作成し、財務大臣に送付することとされている。そして、財務大臣は、各省各庁の長から送付された現在額報告書に基づき「国有財産増減及び現在額総計算書」(以下「総計算書」という。)を作成し、内閣は、総計算書を国会に報告することとされている。

(2) 国有財産台帳に登録する価格

国有財産法第32条第2項の規定によれば、各省各庁の長等は、その所管に属し、又は所属に属する建物及び工作物の設置等に基づく価格等の変動があった場合は、直ちに国有財産台帳に記載し、又は記録しなければならないこととされている。そして、国有財産法施行令(昭和23年政令第246号)第21条の規定によれば、国有財産台帳に新たに登録する場合の価格(以下、この価格を「台帳登録価格」という。)は、建物、工作物等については、建築費等とすることとされている。また、「国有財産台帳等取扱要領について」(平成13年財理第1859号。以下「取扱要領」という。)によれば、建築費等は、建築又は製造に直接要した費用(消費税及び地方消費税に相当する額(以下「消費税等相当額」という。)を含む。以下「直接費用等」という。)とし、障害物の取壊し費その他の間接費(以下「取壊し費等」という。)は含めないこととされている。そして、建物、工作物の設置等に係る工事費が直接費用等と取壊し費等のいずれに区分されるかの判断に当たっては、工事費の費用項目によらず、その工事目的に応じて区分することに留意することとされている。すなわち、台帳登録価格の計算に当たっては、工事目的に応じて、直接費用等に相当する額は台帳登録価格に計上し、取壊し費等に相当する額は台帳登録価格に計上しないこととなる。

そして、工事費の費用項目は、取扱要領によれば、①建物、工作物等の建築又は製造に必要な材料費、労務費等の直接工事費、②間接経費である共通仮設費等(以下「共通費」という。)及び③消費税等相当額で構成することとされている。

また、取扱要領によれば、建物又は工作物に対し建物等の減耗を回復して原形に近づけるための工事である「純然たる修繕」を行った場合の工事費については、減価償却のいかんにかかわらず台帳登録価格に計上しないこととされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

総務省では、庁舎の老朽化等に伴って、建物や工作物の修繕、模様替に係る工事(以下「修繕等工事」という。)を継続的に行っている。

そこで、本院は、正確性、合規性等の観点から、修繕等工事に係る台帳登録価格は適正なものとなっているかなどに着眼して、総務本省、自治大学校、情報通信政策研究所及び5総合通信局(注1)において、平成25年度から29年度までの間に実施した修繕等工事により国有財産台帳に新たに登録を行うなどした建物及び工作物のうち178件(国有財産台帳価格計11億0839万余円)を対象として検査を実施した。検査に当たっては、総務本省において、国有財産台帳等の関係書類を確認したり台帳登録価格の計上方法についての考え方を聴取したりするなどして会計実地検査を行った。

(注1)
5総合通信局  東北、関東、信越、近畿、中国各総合通信局

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 台帳登録価格に直接費用等が計上されていなかったなどの事態

取扱要領では前記のとおり、直接費用等及び取壊し費等の区分に関して、工事目的に応じて区分することに留意することとされているが、総務省は、その区分を明確に定めていないなどしていた。そのため、前記の建物及び工作物178件のうち、総務本省、情報通信政策研究所及び3総合通信局(注2)における113件の台帳登録価格計6億5474万余円については、直接費用等に該当する工事費のうち労務費の一部及び消費税等相当額が計上されていなかったり、共通費についてその全額が取壊し費等に該当すると区分して全額を計上していなかったりなどしていた。

また、前記の178件のうち、総務本省において国有財産台帳の登録手続自体を怠っているという事態が1件見受けられた。

これらの結果、114件の修繕等工事の契約金額のうち、直接費用等計2億2124万余円(直接工事費計1億0335万余円、共通費計1億0120万余円、消費税等相当額計1668万余円)が台帳登録価格に計上漏れとなっていた。

(注2)
3総合通信局  東北、関東、信越各総合通信局

上記について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

総務省は、平成28年度に中央合同庁舎第2号館執務室のファンコイルユニット(空気調和機)設置作業を1401万余円で契約し、工事しゅん工後、共通費についてその全額が取壊し費等に該当すると区分するなどして、契約金額から共通費等222万余円を控除して、台帳登録価格を1178万余円としていた。

しかし、共通費等222万余円のうちには、当該工作物に係る直接費用等に該当する費用が含まれており、192万余円(直接工事費13万余円、共通費164万余円、消費税等相当額14万余円)が台帳登録価格に計上されていなかった。

(2) 台帳登録価格に純然たる修繕に該当する費用等が計上されていた事態

前記の178件のうち、総務本省及び3総合通信局(注3)における21件の台帳登録価格計1億7450万余円については、純然たる修繕に該当する費用を控除するなどしておらず、計上する必要のなかった計826万余円(直接工事費計784万余円、消費税等相当額計41万余円等)が含まれていた。

(注3)
3総合通信局  関東、信越、中国各総合通信局

このように、台帳登録価格が適正に計上されておらず、この国有財産台帳の価格を基に毎年度の現在額報告書等が作成されており、国有財産の価格が投下した費用の実績を適切に反映していない事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、総務本省において取扱要領で留意することとされている直接費用等及び取壊し費等の工事目的に応じた区分等を明確に定めていなかったこと、総務本省、情報通信政策研究所及び4総合通信局において取扱要領等に対する理解が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、総務省は、令和元年9月までに、前記の計上漏れとなっていた台帳登録価格等について、国有財産台帳価格の修正登録を行った。また、総務本省は、元年9月に、国有財産台帳に登録する建物及び工作物について、台帳登録価格は契約金額の総額を基本として、契約金額のうち純然たる修繕等に該当する費用がある場合は控除すること、共通費のうち台帳登録価格に計上する項目と計上しない項目との整理及び台帳登録価格に計上しない項目の具体例等を明記したマニュアルを策定し、関係部局に周知徹底する処置を講じた。